作品タイトル不明
665 塔を建てよう・雪まつり編
着々と進む雪まつりの準備。
メインが雪像だからそれを作り出す過程こそが本番と言っても過言じゃないんだよな。
というわけで各自の雪像の途中経過を確認してみよう。
まずエルフ組、マエルガ。
木工班の彼女はさすがに日頃の作業がピッタリ合致するだけあって、飛び切りの傑作を用意してきた。
題材はベラスアレス神。
エルフの守り神を降臨させてからもっぱら彼女の創造的興味は守護神ベラスアレスに向いているらしく、この雪まつりでも一番得意なもので勝負に来た。
純白の軍神は、今のところ八割完成ってとこだろうか?
堂々と立つその姿が勇ましくも頼もしい。
あとオークたちは雪で天守閣を作っていた。
四層櫓建て。
立派な天守閣。
オークボが先頭に立ってまた凄いものを作ってるなあと思った。
あれならオークボ城としての連続性も保てるし、イベントのシンボルとしてはもってこいだなと思われた。
ドワーフ組やエルザリエルさん、農場留学生(卒業控え)エルフのポーエルたちも相変わらず熱中しているし、それに惹かれて他の農場の仲間らも思い思いの雪像制作に取り掛かっている。
で。
そういうものを見ていたら俺もなんか作りたくなってしまった。
俺もモノづくりの血が騒ぐんじゃああああ……!
という創作意欲の赴くままになんかやろうとしたところ……。
……困った。
何を作ればいいだろう?
ご存じの通り俺の『至高の担い手』は、芸術関係にはとことん無力。
そして造形によしあしがすべてのしかかる雪像づくりにおいて、その弱点は致命的なのだった……!
「俺は……雪像づくりに無力……!!」
俺自身絵心とかもまったくないしな。
雪でもってミロのヴィーナスでも作り上げて皆からの尊敬を勝ち取るというのも無理なのか?
しかし。
傍らではジュニアがことのほか雪遊びがお気に入りとなり、今度は雪でもって五百阿羅漢の作成に取り掛かっていた。
我が子ながら恐ろしい。
しかし俺も父親。
小さな息子に尊敬のまなざしで見上げられたい!
そのためにも千体千手観音立像や五百阿羅漢を超える大作を、雪でもって作り上げねば!!
何かいい手はないか?
何か……!?
……あッ、そうだ。
いいこと思いついた。
* * *
そして数日が経って……。
俺の労作は見事に完成を見た。
「やったあ! 出来たぞ! 自信作だ!」
歓声を歓ぶ俺の隣でプラティやヴィールが感情が消し飛んだような無表情をしていた。
一体どうした?
皆ともこの感動の喜びを分かち合いたいというのに?
「驚きすぎて感情が消えたのよ……!」
「ご主人様は、ヒトには『無茶するな』と言いながら自分こそが一番滅茶苦茶やるのだー。いつも忘れた頃に思い出させるのだな!」
プラティもヴィールも、どういう意図での発言だろう?
それよりもこれこれ。
凄くない?
俺が頑張って作ったんだぜ、雪だけで!
「知ってるわよ。制作過程はちゃんと見てきたんだから!」
「マジで雪だけで作ってたのだー、どういう理屈なんだ!?」
我が傑作雪像の勇姿を見よ!
気づいたんだ、俺の『至高の担い手』はたしかに芸術的な作業には向かない。
ならば既に在るものを再現する……という方向性で力を発揮してみてはどうか?
『再現』という作業であれば、至高の目標はコピー元にしっかり合わさること。
その目標に向かって『至高の担い手』は存分に至高を発揮できる。
ということで俺は雪で形作ってあるものを再現することを目指してみた。
どうせなら、皆が『あッ』とお驚くものがいいなあと思って、できるだけ大きいものをコピーして雪で再現してみようと思った。
大きいというのはそれだけで目を引くからな。
それで『至高の担い手』でコピーして雪で作ってみたんだ。
東京タワーを。
「「「「「うごおおおおおおおおおッッッ!?」」」」」
皆がビックリしているようで頑張った甲斐があったぜ。
東京タワー。
俺が前住んでいた世界でもっとも有名な建築物。
世界全体ではどうか知らんけど。
全長は三百三十三メートル。
東京スカイツリーに抜かれるまで日本一の高さを誇っていた巨大建造物だ!
それを雪で再現してみたぞ!
ちなみにスケールは1/1だ!
大きくないとみんなびっくりしないと思ってな!
前の世界の本物の東京タワーは赤く塗装してあるけれど、こっちの東京タワーは真っ白だ。
何しろ雪だからな。
見慣れたものが雪白で純白の目新しさが雪まつりの醍醐味ともいえよう!
「なんでこんなデッカイのを建ててしまったのだご主人様ー!?」
「皆にビックリしてもらいたくて」
「ビックリしたわよ!? ビックリしたけど限度ってものがあるでしょう!? 雪で作っていいデカさを明らかに越えてると思うんだけど!?」
でも作れたものはしゃーないと思いません?
大丈夫、『至高の担い手』でもってじっくり固めた雪だからな。
頑強さでもって強風が来ても地震でも崩れ去りはしないだろうよ。
足元からしっかり固めて、高度が増してくるとドラゴン馬のサカモトに乗って飛びながら雪を固めたさ。
それによってできたのが、この雪東京タワー!
こんなにデカいのを作製したお陰で、処分に困っていた雪も大部分使い尽くすことができたぞ。
元々それも目的だったから一石二鳥でよかったな!
「これ、どれぐらい遠くからでも確認できるんだろうな?」
「見慣れないものがいきなり景色に現れて混乱してるんじゃ……!?」
他の皆も動揺しているが、大丈夫大丈夫。
むしろ遠方からも確認できるのなら宣伝になっていいじゃない。
「こんなのが万が一にも崩れたら、瓦礫やらなんやらが天から降り注いで……!?」
「真下は確実に生き埋めなのだー」
疑り深いなあプラティもヴィールも。
『至高の担い手』だから大丈夫、大丈夫。
それで、どうかな?
これだけのものを作り上げた俺を、ジュニアは果たして尊敬してくれるだろうか?
「…………かっけぇ」
よっしッッ!!!!!!!!
ジュニアが聳え立つ雪東京タワーを見上げて、憧れの目をキラキラさせている!
これは小学校の作文で父親ベタ褒めちぎられる流れ!
『ボクのお父さんは、ビルを建てる仕事をしています』とか書かれたらカッコいいじゃん!?
ノリトはまだ年齢的に理解まで達していないようだが……。
しかし俺は今ここに息子からの尊敬を勝ち取ったぞ!
「子どもに好かれたいがためにやっていい範囲を超えてるわね……!?」
「ご主人様もジュニアたちが関わると限度がなくなるのだー」
戦慄するプラティにヴィール。
「いや、子どもに尊敬されるための努力くらい父親なら誰だってしてるだろう?」
「だからそれにも限度があるつってんのよ……。久々に痛感したわ。旦那様の規格外ぶりを……!」
しかし、それを度外視してもまた一つ、オークボ城雪まつり編を盛り立てる一作品ができたということじゃないか。
エルフやオークやドワーフといった名だたる異世界職人たちが粋を凝らして作り上げた石像。
プラティがゴブリンたちを率いて用意した雪使用アトラクション。
そして俺謹製の雪で作った東京タワー(1/1スケール)で、お客さんを愉しませる準備は万端だ!
次からいよいよ本格開幕。
オークボ城・雪まつり編の本番だ!