作品タイトル不明
640 始祖竜、復活
うーん。
なんでかな?
太古のバケモノが復活した。
不死山の火口より這い上がり、両翼を広げ空へと舞い上がった。
その姿は、まさしくドラゴン。
これまで何体ものドラゴンを見てきたからわかる。見間違えようがない。
不死山に封印され、世界と共に神々を滅ぼすと言われた怪物はドラゴンだった!!
でもなんでコイツ唐突に復活したの?
心当たりはあった。
俺の『至高の担い手』だ!
俺の手に宿る神からのギフトは触れたものの潜在能力を百%以上引き出す。
それをもって不死山の奥に眠る怪物を呼び覚ましてしまったようだ!
いやだって。
ジュニアが火口見学するのに躓いたりしたら危ないだろうって、地面の石をホイホイ拾って取り除いたりしてたのよ。
その時地面にも触れてさ。
それがまずかったらしい。
地面越しに怪物へ『至高の担い手』が作用したようで、それが復活のトリガーになってしまったようだ。
なんてことしてくれたんだ!?
『グフォウグフォウグフォウ……! おれ様は最初にして最強の竜……! プロトガイザードラゴンのテュポン……!』
火口から出てきた竜がなんか喋った!?
『おれ様の復活を許したということは神々め。ついに超えてはならぬ一線を越えるほどにまで傲慢を極めつくしたか? 我が複製どもも排除し、おのれらが世界の主だと勘違いし、すべてを滅し弄ぶほどに邪悪を極めたか? そんな貴様らを罰するためにおれ様は蘇った……!』
誰に対して語ってるんだろう?
火口から現れた巨竜は、いかにもな説明口調を独り言のように唱え続ける。
『この世界は、神々が生み出したもの。その神々は万象母神ガイアが生み出した。すべての母たるガイアは危惧した。いつか自分の子女たる神々が、あまりにも大いなる自分たちの力を過信し、慢心するのではないかと』
……その話どっかで聞いたことある。
ああ、あれだ。
先代ガイザードラゴンのアル・ゴールさんが言ってた。
ドラゴンが生み出された理由。
神との関係性だ。
「神々が慢心した時罰する役目を受けたのがドラゴンって話?」
ドラゴンはそのために生み出されたって?
『そうだ。この地上の生物すべてが神々の生み出したものであるのに対し、我らドラゴンだけが万象母神ガイアより直接生み出された。それこそ我らドラゴンが特別であり、神と同等あるいはそれ以上である理由』
なんか会話が成立した。
語りたがりだな太古の怪物竜? ずっと封印されてて人恋しかったのかな?
『しかし、真なる意味で最強無敵であるのはガイアより直接生み出された最初の竜……始祖竜たるおれ様だけだ。他のドラゴンは所詮、我が複製。我が力を写し取られたコピーにすぎぬ』
コピーは続けられたら劣化する。
コピーをさらにコピーし、コピーのコピーをまたコピーし、コピーのコピーのコピーをまたコピーして……としていくとオリジナルからどんどん遠ざかって違うものになってしまう。
あるいは、オリジナルからさらに劣ったものに……!?
『そうして劣化していった複製竜どもがいつか、神々をけん制しきれず押し切られる時が来るやもしれぬ。その時のため究極始原たるおれ様を保存し、もしもの時に備えることをガイアは思い決めたのだ』
「そのためにアンタは、不死山の火口に封じられていたのか……!?」
『よくわかるではないか……! おれ様こそが真なる神の誅戮者。傲慢を極めし神々どもの処刑役。究極至高にして唯一無二の存在。それがこのおれ様、原始皇帝竜プロトガイザードラゴンのテュポン様だあああああッ!!』
コイツが、世界で最初に生み出された始祖竜?
万象母神ガイアが直接生み出した?
そんなこと、何年か前に直接母神様にあった時は一言も語ってなかったけど!?
なんでそんな大事なこと教えてくれなかった!?
もうずいぶん昔過ぎて忘れてしまってたとか!?
ありえるな神々のテキトーぶりを考えたら!
『さて……、この世界はもう既に節度を失った神々どもによって蹂躙され、かつての美しさを失っていることだろう。それこそがおれ様復活のトリガーなのだからな』
「いえ、違います」
神々はおおむね節度をもって、時折暴走することもありますが、世界もこんなに美しいですよ?
アナタが復活したのは手違いです。
俺の『至高の担い手』による誤作動復活というか、実のところ『至高の担い手』自体が神の暴走と言ってしまえなくもないのが痛いところだ。
『神々の慰みものと化したこの世界は、もはや存在する価値はない。一思いに消し去ってくれるのが情けと言うもの。この究極至高、唯一無二の存在、原始皇帝竜プロトガイザードラゴンのテュポン様が慈悲の滅びをくれてやろう!!』
「わー、待って待って」
それは困る。
この世界は実に上手くいっていて、まだまだこれからなんですから。
人々の希望に続く未来を強制終了させないで。
『我が終焉のブレスによって滅するがいいわー!! ……アレ?』
その時になって最初の竜はやっと気づいた。
自分の置かれた状況の異様さに。
『なんだこれは? おれ様の体が小さくなってないか? ここはどこだ? 谷間? 迷路? いや宇宙? わけがわからん、ここは一体どこなのだあああああッ!?』
復活した始祖竜は、その瞬間に亜空間に閉じ込められて、出口のない歪曲通路をさまよっていた。
その様子を俺たちは、虚空に浮かんだモニターみたいなもの越しに眺めている。
『「九曲黄河陣」』
『老師の使う次元仙術の一つにゃー』
いつものごとく博士が解説してくれる。
『老師が仙術で作りだしたこの異空間に放り込まれると、能力を何十分の一にされて、出口のない無限ループを彷徨い続けるにゃー。しかも通常空間の何倍も疲労して異空間内にいるだけで消耗し続けるにゃー。いかなドラゴンと言えどもこの極悪空間から逃れることあたわずにゃー』
まーたノーライフキングがドラゴンを圧倒した。
哀れプロトガイザードラゴン。きっと世界の始まりにはなかったのだろう怪奇極まる次元仙術の攻略法がわからず五里霧中の暗中模索。
『ぐおおおおおおッ!? おのれこんな異空間ぐらい我が竜力で力ずくでこじ開けてくれるわー!! ダメだあああああッ!?』
『我天命に復す』
どうやら老師は、このように誤作動で怪物が復活した時のために押さえつける役割を担っていたようだ。
二重安全装置。
これほどまでに凄まじい折り重なりが不死山にはあったのか。
『さーて、プロトガイザードラゴンも充分に弱ってきたことだし。そろそろとどめだにゃー。グリンツェルドラゴンのヴィールよ! トリはキミに決めたにゃー!』
「結局ドラゴンは死体モドキどもの手玉に取られるんだなー」
御指名を受けたヴィールだが、やっぱりノーライフキングによってしてやられるドラゴンのエピソードが繰り返されることに釈然としない様子。
『まあそうヘソを曲げんにゃー。ノーライフキングは知恵と経験で、竜を封じられるだけの秘術を使えるにゃ。でもそこまでにゃ。正面切ってのパワーならどうしてもドラゴンには敵わないから最後の一撃をおぬしに任せたいにゃー』
「ノーライフキングはドラゴンを無力化するだけの策はあっても、殺せるだけの力はないんですね」
だからノーライフキングとドラゴンが戦えば決着のつかない千日手になる。
両者に絶対的な優劣はないんだ。
ってことで気を落とすなよヴィール。
「はいはい、そうやっておだてられるのもお前らの作戦のうちって気がするのだ。あーやる気でねえ……」
「ヴィールおねえちゃ、がんばえー」
『うおおおおおおおッッ!! ジュニアにいいところ見せるためにやったるのだああああああッッ!!』
ジュニアの声援によって俄然やる気の出たヴィール。
早速ドラゴン形態に戻って、老師の敷いた亜空間仙術『九曲黄河陣』の中へと飛び込む。
「ヴィールまで異空間に入っちゃって大丈夫なの?」
『味方の識別機能もついてるから問題ないにゃー』
便利すぎる。
やっぱ最高クラスのノーライフキング、ヤベェ。
既に異空間内の効果で、全力の数百分の一まで弱体化させられたプロトガイザードラゴン。
ウッキウキで飛び込んできたヴィールに抗うすべはなかった。
『おう……? なんだお前は、おれ様の複製か? ……ぐおおおおおおッ!? 何だこの圧倒的な竜力は!? しかもこの変な空間で弱ったおれ様には辛いッ! いや待て! お前も竜なら、こんな卑劣な方法で勝って嬉しいのか!? 竜としての、絶対強者の誇りは……!?』
『どんな手を使おうと、最終的に、勝てばよかろうなのだぁーーーーーーーーーーッ!!』
決めゼリフが決まった。
ヴィールは最後に必殺ドラゴンスクリューでプロトガイザードラゴンの膝関節をぶっ壊して完全勝利した。
オリジナルを越えるコピーがある。
それを人は進化と呼ぶ。
なんか上手いこと言ってまとめてみました。