軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

620 ベビーラッシュ

なんか随分久々な気もするが……。

俺です!

そしておめでとう!

プラティが第二子を出産したぞおおおおおおおッ!?

おりゃああああああああッ!!

ふぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!

喜びに舞い上がる俺!

弟の誕生にジュニアだって大喜びだ!

「きんきじゃくやく」

ホレこの通り!

生まれてきたのは男の子で、我が家の次男だ!

プラティもよく頑張ってくれた!

本当にキミは妻の鏡だ!

ひゃっほううううううううッ!

ほーりーえんどぶらいとおおおおおおおおおッ!!

……と。

勢いで流すのはこれくらいにして。

出産前後は、俺も気が気じゃなくてプラティの傍を離れることができなかった。

ちょうど同じタイミングでピンクトントンさんやレタスレートらによるプロレス興行が準備されていて、いつもなら俺も『こんな面白そうなイベント乗らにゃあッ!!』って首突っ込むところだったが、さすがに今回ばかりはパスして妻につきっきりだった。

ヴィールも一緒に残ってジュニアの世話など見てくれたから心強かった。

プロレス興行の方にはバティやベレナ、さらにノーライフキングの先生まで付いてくれているので、まあ安心だろう。

レタスレートも、農場に来たばっかりの頃なら甚だ心配であったが、ここ最近は色んな意味で安心だからな。

むしろ安心できすぎるのが心配というか。

まあとにかく農場の多くの仲間の支えによって、俺は妻の出産に立ち会い集中できるということだった。

そして無事出産。

やっほい。

実際に子どもが生まれてまずすべきことは名前を考えることだ。

ジュニアに続けて男の子だからな。

ノリトと名付けることにした。

俺のかつての名前をもじったものだ。

長男、聖者キダンJrと次男ノリト。

この兄弟が終生仲よく、幸せに過ごすことができますように。

そして、めでたいのは何もウチだけに限らない。

まず魔王家でアスタレスさんが第二子を出産。

実はこれはけっこう前の話で、プラティの妊娠が発覚した時点で既にお腹が目立ち始めていたため、公の行事には姿を現さなかった。

冬明けには無事出産。

アスタレスさんの第二子は女の子だった。

ベルゼビアと名付けられた女児、公式には第二魔王女となった彼女には多くの祝いが届けられ、魔国にさらなる未来の広がりを予感させた。

そんな幸先を受けてのウチのノリト誕生である。

しかもそれだけではない。

奇しくもほぼ同じタイミングで出産の慶事を迎えた家庭が他にもあった。

まずは人魚王夫妻、アロワナさんとパッファのところ。

プラティとほぼ同じ時期に妊娠が発覚した彼の家も、新生児誕生のタイミングはほぼ同じだった。

しかし二人の故国、人魚国が受けた衝撃は比べ物にならない。

何しろ新たに即位した国王夫妻の間に授かった初子なのだから。

つまり、お世継ぎである。

伝え聞くところによれば、パッファが生んだのは男子。

つまりは王子様だ。

長子にして継承資格を持つ男子を出産できたというのは大手柄。

王妃としての責任を無事果たした形となった。

まあ本来赤ちゃんは無事生まれてくれたら性別なんて二の次だが、家庭にはそれぞれの事情がある。

その事情をつつがなくクリアできたのなら、まあいいではないか、という感じ。

アロワナさんとパッファの間に生まれたお子さんは、無事王子として正式な認定を受け、モビィ・ディックと名付けられた。

人魚王子モビィ・ディックである。

無事お世継ぎが誕生し、アロワナさん治世の人魚国はますます盤石。

最近ついに旧弊最後の一大勢力を排除し終わり、益々いい方向に進んでいるという。

めでたいことが続く中でさらにもう一つの極めつけ。

ヘンドラーくぅんとランプアイの夫妻の間にも第一子が誕生した!

ヘンドラーくぅんは、人魚王国の貴族にして人魚王アロワナさんとは身分の違いを越えたマブのダチ。

その信頼からアロワナ治世の人魚王国へ入り、国王の懐刀として活躍している俊才だ。

そんなヘンドラーくぅんに嫁いだランプアイは、プラティやパッファと同様、六魔女の一人に数えられる。

ランプアイもパッファもかつて農場で生活したことのある仲間だし、そんな六魔女のうち三人が同時に出産を迎えるなど。とても縁深い話ではないか。

そんなランプアイは結婚して帰国後、家庭に入ることなく近衛兵に復職して公私両面にわたって夫を支えているという。

先日など、身重でお腹がぼっこり重たくなっているというのに戦闘に参加して、十数人という賊をばったばったと薙ぎ倒したとか。

妊娠中の大きなお腹で。

共に出撃していたヘンドラーくぅんは、敵と戦うよりそっちの方が恐ろしくて生きた心地がしなかったと語っていた。

とにかく無事出産できてよかった。

二人が授かったのは女の子で、名をハーフムーンとつけられた。

第二魔王女ベルゼビア。

ウチの次男ノリト。

人魚王子モビィ・ディック。

ベタ家の新生児ハーフムーン。

これまた豪勢なベビーラッシュではないか。

新しい命が生まれてくることめでたいこと以外の何者でもない。

こんなにも新しい命がこの世界にお目見えし、今年もいい一年になること確実だ。

そんな中、人魚王アロワナさんさん夫妻……いやもはや一家と言っていいか。

……が農場へ遊びに来た。

* * *

「いやぁ、やはり転移魔法は便利ですなあ。子どもを連れてくるとなるとなおさら……!」

転移魔法なら瞬時に一っ飛びなので、移動中のトラブルやら考えなくていいですからね。

両親とともに訪れた人魚王子モビィくんは、今それぞれの母親に抱かれながら従兄弟同士の対面を果たしている。

「ほらノリト、従兄弟のモビィくんよ。一応アタシの兄の息子なんですからね」

ノリトを抱えるプラティ。

そしてモビィくんを膝の上に乗せたパッファ。

「私としちゃ、ウチの子にこんな無法者な叔母がいることが酷く不安なんだけど? 変なこと教えないでくれよな」

「はぁー? 六魔女のアウトローが教育ママにでもなりやがりましたか? あー?」

「あー? やんのか義妹? あー?」

「あー? そっちこそやんのか入り嫁が、あー?」

ママ友同士がメンチ切り出した。

間でジュニアが『話せばワカメ……』と言って仲裁していた。

二人とも母親になったからと言って別段変わる様子はなさそうだ。

プラティなど二人目だし今さらだからな。

「わざわざ訪ねてきてくださってありがとうございます。王様の仕事が忙しいでしょうに……」

実際、王位継承する前の王子様だった時分から農場へ遊びに来ているアロワナさんだったが。

即位されてから来訪頻度が格段に減った。

それはやはり国王として責任とやるべきことが倍増したからであろう。

「ははは……、父やゼダン殿と同じ立場に立って、二人の偉大さが改めて実感できました……!」

アロワナさんの苦笑が、やや煤けた印象を与える。

やっぱり王様の職務って大変なんだろうな。俺のような庶民からは想像する他ないのだが。

「何、私が王になってからの事業は着々と進んでいますからな。日を追うごとに負担が軽くなってくる感じです。それに私ももう父親ですから、これくらい手堅くこなさねば!」

しかしアロワナさん溌剌としている。

大変ではあるが充実している感じがひとしおだ。

「そういえば先日武泳大会が行われましてな。聖者殿も覚えていますでしょうか?」

「はい、それはもう……!」

武泳大会といえばたしか人魚国で行われる催しで、年に一回行われるバトルイベントだ。

男人魚の誇りと意地をかけて繰り広げられる最強トーナメント。

「それで今年はどなたが優勝なさったんですか?」

「私です!」

やっぱりね。

聞くまでもないことだった。

「ちなみに準優勝はヘンドラーですぞ! 昨年から二年続けての準優勝です!」

「今年で何連覇でしたっけ?」

「かれこれ四連覇ですな。父が打ち立てた十五連覇にはまだまだ及びませんが……」

アロワナさんにおける武泳大会の歴史。

元々は十何年も前から毎年出場していたのだが、精々決勝進出するまでが最高の成績だった。

それがあるきっかけから優勝。

そこから修行の旅に出たり、結婚したり、国王に即位するなど様々な進化を経て当たり前のように優勝するようになった。

俺も一回だけ出場したことがあるんだけど、所詮地上人だから海中ではなにもできず、無様に窒息死しかけたよな。

それでも準優勝だったけど。

以来、たびたびお誘いも来るのだが海中活動は命に関わるという言い訳でお断りしている。

「本当は再び聖者殿にも出場いただきたいが、陸人を無理やり海中に引き込んでは命に関わるかもしれませんからな……」

「そうなんですよ……」

「しかし心配ご無用! なんと聖者殿にも参加いただける新イベントを企画いたしました!」

えッ?

「今日訪問した第一の用件はそれなのです! 聖者殿! 我が人魚国主催、相撲大会に是非ともご参加を!」