軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

533 新・龍帝城の戦い S級冒険者編

S級冒険者のシルバーウルフだ。

ここが龍帝城!

竜の皇帝が支配する極レアダンジョン!

こうした珍しいダンジョンに入れるのは冒険者にとって至上の喜び!

ここに入れた時点で満足して、勝負とかどうでもいいってなるわ!

……いやダメ?

そうだな。

この勝負の結果如何で、冒険者の魔国進出が左右されるんだ。

ここからもっと多くの未見ダンジョンへ入れるか、我々の頑張りにかかっている。

普段からS級冒険者とチヤホヤされている我々だ。その肩書きに相応しい働きをしようではないか!

……と奮っていた矢先。

* * *

「うわー!? カトウくんが脱落したーッ!?」

早速一人ダンジョンの罠にかかって餌食になった。

今まで見たこともないような特殊な罠だ。

我々S級冒険者は、皆それぞれ常人を超える鋭敏な感覚を持っていて、それを元に罠を察知し、乗り越える。

しかし今回の罠は一味違った。

まず聞こえてきたのは音だ。

これはS級冒険者でもっとも鋭敏な聴覚を持つゴールデンバットが真っ先に気づいた。

私やブラックキャットも聴覚は鋭い方だから、すぐに音がおかしいことに気づいた。

音は持続して鳴り続け、しかも抑揚があって弾みもあり……、音楽?

これは音楽か?

と思った瞬間もう遅かった。

我々は術中にハマっていた。まず落ちたのは異世界人のカトウくんだった。

「かッ、カトウくん!?」

彼は、その音楽が奏でる軽快なリズムに乗って踊りだした。

しかも独特な振り付けで。

リズムに合わせて両手を肩ごと、小刻みに上げ下げしている!?

「どうしたんだカトウくん!? 何だその動きは!?」

異常に慌てる私たちだが、カトウくんは口では答えず親指を立ててジェスチャーする。

なんで身振り手振りなんだ!? 喋っちゃいけない決まりでもあるのか!?

くっそ、しかし音楽は軽快だし、カトウくんの踊りも楽しそうでつい真似したくなってしまう!?

「ニャカニャカ♪ニャンニャカニャンニャカ♪ニャンニャーカ♪ニャカニャカ♪ニャンニャカ……♪」

既にブラックキャットが音楽に乗った!?

常からノリのいいヤツだから!?

「くッ!? 気をつけろ! これは恐らく音楽自体が私たちを陥れる罠だ!!」

音楽のリズムに私たちを巻き込み、集中を乱す。

こんな罠、今まで遭遇したこともない! さすが竜王のダンジョンというべきか!?

動揺しているうちに、次の異変が起こった。

剣が置いてあった。

ダンジョンのど真ん中に細身のサーベル? あからさまに怪しいが……!?

しかしリズムに乗りまくっているカトウくん。警戒もせず無造作に剣を拾ってしまう。

「バカそんな警戒せず……ッ!」

ダンジョンで無警戒にものを拾うなんて死と同義なのに……!?

しかし意外にも何もなかった。

カトウくん、剣を拾ったあとも肩を上下させる独特の振り付けでリズムをとる。

そこへ……、あああーっと! ついに本格的な罠が!

カトウくん目掛けて何かが飛んできた!? 何だあれは!? 致死性の投擲凶器か!?

しかしカトウくん、それらを器用に受け止める。それも拾ったばかりのサーベルで!

飛んできたものの正体は、木か何かでできた輪っかだった。その輪っかの真ん中の穴にサーベルを通して、見事受け止める。

これは凄い!

「凄いにゃーん! 芸達者にゃーん!」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

思わず拍手してしまった!?

その拍手に応えるようにカトウくんは一礼し、また飛んでくる輪っかをサーベルに通す。

今度は連続だ。

上手くできるか!?

「……っていつまで続くんだこれは!?」

今だダンジョン内は軽快な音楽が流れている。

実にリズミカルで楽しげな空間だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。

私たちはダンジョンの奥へと進まねばならないのに!?

「カトウくん!? 遊びはいい加減終わりにして先に進もう! 他チームに後れを取ってしまう!」

しかしダメだ!

カトウくんは完全にあの軽快な音楽の虜になってしまい、我々の呼びかけなど届かない!

リズムに乗って、今度は吹き矢で風船を割り出した。

『ふっふっふ、無駄にゃ。お前たちはニャーの罠から逃れられないにゃ』

「煩いぞブラックキャット! 今大変なんだから黙ってろ!」

『違うにゃー』

「え!?」

よく聞いたら、口調こそ似通っているけれどブラックキャットではない!?

よく見たら、ダンジョンの一段高くなっているところに猫がいた。

ブラックキャットのような猫の獣人じゃない。猫そのものだ!

何故ダンジョンの中に猫が!?

『ニャーこそはノーライフキングの中でも最強クラス「三賢一愚」の一角、博士にゃ! このS級冒険者対策ダンジョンの設計施工を担当させていただきましたにゃ!』

猫がノーライフキング!?

どういうことだ!?

しかも私たち対策用ダンジョンだって!?

一度に浴びせかけられる情報量が多すぎる!?

「こりゃにゃーん!! キャラ被りにゃ! 猫キャラは私のポジションにゃーん! パクリ撲滅にゃ!!」

そして猫獣人のブラックキャットが、突如とした猫そのものの乱入で憤る。

アイデンティティの危機だ。

『うっせーにゃ猫ハーフごときが! こちとらお前の生まれる数千年前から猫やってるにゃ! キャリアが違うんにゃー!!』

猫と猫が争っている……!?

『フシャー!』と息巻きながら。ケンカ中の猫ってマジ怖い。

「それであの……、我々S級冒険者専用の対策ダンジョンというのは……?」

『よくぞ聞いてくれましたにゃ!』

猫博士? ブラックキャット頭の上に飛び乗る。

猫の上に猫が……?

『貴様らS級冒険者が、獣人ならではの超鋭敏な感覚でダンジョン攻略することは調べがついていたにゃ! そこでニャーは、それを逆手にとって「感覚で相手を惑わす」罠をふんだんに用意したにゃー!!』

「逆手に……!? 感覚で惑わす……!?」

あの軽快な音楽で踊り狂っているカトウくんのように……!?

『視覚、聴覚、嗅覚……、高性能すぎる感覚は時に余計なノイズを拾い、重大な齟齬をもたらすにゃ。それをトラップとして利用する。数千年を生きるノーライフキングが発案するに相応しい画期的なアイデアではないかにゃー!?』

「にゃーん!!」

ブラックキャットお前まで一緒に誇ってどうする!?

猫同士連帯感ができている!?

『既に聴覚を利用した罠で一人落としたにゃ! しかしこのエリアには、他にも感覚で侵入者を陥れる罠がたくさん用意してあるにゃ! 次の標的は貴様にゃ!』

「わ、私!?」

『シルバーウルフくんは、ワンコの獣人として嗅覚に優れているらしいにゃー? そんな貴様のために、これを用意しましたにゃ!』

「そ、それはー!?」

見覚えのある、ギザギザした果実。

「ドリアンか!?」

『お久しぶりですシルバーウルフさん』

いつだったか押し付けられた滅茶苦茶臭い果物!

あれを近くに置かれるだけで死ぬかと思った! その後十日ほど鼻が死んで冒険者活動を休止する羽目になったんだぞ!

「冗談じゃない! またあれの臭いをまともに嗅がされたら今度こそ冒険者生命終了だああああーーーッ!?」

『そんなつれない。共にオークボ城を踏破した仲ではありませんか』

ぎゃああああああッ!? 寄ってくるなあああッ!?

こんな最悪の罠を用意してあるなんて竜王の城恐ろしすぎる。

『にゃっはっは、効果覿面にゃー。やはりニャーは天才にゃね』

「シルバーウルフちゃんがあんなにビビるなんて、どんな臭いするにゃーん? 興味あるにゃーん!」

『あ、バカみずから嗅ぎに行くにゃ!? ニャーは貴様の頭に乗ってるから必然的にニャーも嗅ぎに行くことになるにゃー!?』

好奇心猫を殺す。

みずから嗅ぎに行ったブラックキャット、博士と共にドリアンのトゲトゲ果実に鼻を埋め、次の瞬間には……。

猫二匹の口が半開きになった。

「今がチャンス!!」

フレーメン反応の隙を突いてダッシュ!

このエリアを一気に駆け抜ける。

このフロアでカトウくんとブラックキャットを犠牲にすることでなんとか通過できた。

恐るべし竜王のダンジョン。

他のダンジョンとは一味も二味も違う!!