軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

523 S級冒険者集結

私の名はシルバーウルフ。

ギルドからS級と認められた冒険者の一人である。

S級冒険者とは、冒険者の中でも特に実績と実力を買われ『最高の冒険者』と認められた者たちのことだ。

その審査は厳しく、世界にS級と認められた者たちはこの私シルバーウルフを含めて五人しかいない。

S級に選ばれるには生半可な成果では足らず、最高に栄誉あること。

だからこの私も、S級冒険者であることに誇りを持ち、その肩書きに恥じぬ働きをしようと常に心掛けている。

そんな私のことを周囲は『S級冒険者にしては真面目過ぎる』と揶揄してくることもある。

そのことをよく覚えてから、これから語ることを読み進んでほしい。

* * *

思いもしない呼びかけがあったものだ。

S級冒険者の全員招集とは。

普段、各々の独断で動くことを許されているS級冒険者は滅多なことで顔を合わせることはない。

本質からして自由気ままな連中なのだ。

あらゆる事象に囚われることなくみずからの欲求赴くままにダンジョン攻略に打ち込むからこそS級にまで上がれたというか……。

そういう連中なのだ。

だから冒険者ギルドの最高戦力だというのに基本放任でギルド側もやかましく言わない。

それが一番互いの軋轢を少なくするとわかっているからだ。

そんな『問題児』の言いかえとも言うべきS級冒険者たちを一挙に集めるなど、今までになかったこと。

それが今日行われるということは、何か大きな出来事が起こったということでもある。

これまでにないクラスの。

そんな重大な気配を察し、きちんと集まってくれたらいいんだが……。

「などという甘い期待を抱いた私がバカだった」

「日頃からいい加減な子が、ある日急に真面目になるなんて奇跡はないよねえ」

ギルド本部に設えられた会合の部屋。

そこで席についているのは私を含め二人しかいなかった。

向かいの席に座っているのは、私と同じS級冒険者ブラウン・カトウだ。

S級の中でも比較的新参ではあるが、実直な性格で呼べばちゃんと来てくれるのは本当にありがたい。

「キミが来てくれたおかげで本当に助かった……!? 危うく一人で伝達事項を読み上げることに……!?」

「それ傍目から見て悲しすぎるからやめましょうね?」

カトウくんは冒険者の中でもとりわけ珍しい出自。

人間国の王族の手によって召喚された異世界人なんだそうな。

戦争中、そうやって助っ人を際限なく呼び込んでいた王族だが、カトウくんもその一人だった。

しかし能力が戦争にそぐわないということで追放されてしまったんだという。

なんと勝手な話かと他人事ながら呆れてしまうが、カトウくんはそれでも逞しく生きた。

冒険者としてこの世界の生業を得て、ついにS級にまで上り詰めたんだから大したものだろう。

「おまけにS級になってからも増長せず、こうしてギルドからの求めにも即応してくれる」

「元が日本人ですので真面目なんでしょうねー? そういう意味ではシルバーウルフさんこそ凄いですよ」

褒め返してくる処世の高さ。

「こっちの世界で生まれ育って、ここまで真面目な性格になるなんて。だからこそギルドもS級冒険者の中でアナタを一番頼りにしてるんでしょう?」

「……犬に生まれたからだとからかわれるがな、お陰で」

私は、かつて人間国で多く生み出された獣人の子孫。

そのため頭部が狼のそれとまったく同じになっている。

私の遠い祖先が、失われし禁魔術によって野獣と合成されたためだというが、そのために狼の鋭敏な嗅覚を得て冒険者稼業の役に立ったり、半獣だなどと差別を受けたり、まあ善し悪しだな。

「ギルドマスターから信頼も厚くて、今日の用件も全部アナタから伝えられるんでしょう? 未来のギルドマスター筆頭候補じゃないですか」

「厄介ごとを押し付けられただけさ」

ギルドマスターも、他のS級と面と向かっては精神消耗すること著しいからな。

そんな変人ばかりだ。

「もう他に来ないようなら始めてしまうか。待ってるだけ時間の無駄な気がしてきた」

「二人だけの会議って会議って言えますかね?」

私とカトウくんだけで始めようとしたところに、異変が。

会合場所である建物が急に揺れ出した!?

「なんだ? 地震か!?」

どっすんどっすんと、規則的に揺れる床。

揺れはますます激しくなる……、というか震源が近くなる。

「すみませーん! 遅れましたー!」

ばぎゃごんとドアを開けて入室してきたのは、太ましい体つきの大柄女性。

「おー、ピンクトントンさん。来たんだ?」

「来ますよそりゃー! でも約束の時間に間に合わなかったー! ゴメンゴー!」

ピンクトントン。

コイツもS級冒険者の一人。

というかつい最近その資格を取った一番新顔だが実力は本物だ。

猪と合成された獣人の血を継いでいるそうで、そのせいか体つきも太く、パワーも絶大。

正面からの争いとなればもっとも強い冒険者とされ、新参ながらも一目置かれる。

「そんなあー! 私なんかートロ臭くていつもやんなっちゃいますよー! 足音も大きいしー!」

さっき建物全体を揺らしたドッタンドッタンいう音は……。

彼女の足音……!?

「さすがS級冒険者きっての武闘派と言われるだけはあるな? そういえばアレ、過去に素手でサイクロプスを殴り殺したことがあるって本当?」

「うふふー、シルバーウルフさーん!」

彼女の手が、肩に置かれた。

「乙女には秘密があるんですよー……?」

「ごっ、ごめんなさい……ッ!?」

俺の肩を掴む彼女の握力が凄まじい。

肩の骨が砕けるかと思った!? 怖い!?

「ダメですよシルバーウルフさん、ピンクトントンさんを怒らせたら死にますよ?」

「どこが彼女の怒りポイントかまだよくわからないし!!」

それくらいS級冒険者同士って繋がり薄いんだよ!!

「はあ、ともかく五人中三人が集まったんなら上出来か。とっとと説明してとっとと終わらそう」

「そうはいかないにゃーん!!」

なんだよ今度はッ!?

声がした!? しかも上から!?

見上げると何者かが天井に張り付いておる!?

「誰が来てないなんて言ったにゃーん!? 私は最初から、この天井に張り付いていたにゃーん!!」

「何で張り付いていた!?」

あの独特な語尾、聞き間違えはしない。

この声の主こそ、これまたS級冒険者の一人ブラックキャット!

ネコ科動物の因子を持った獣人の子孫だ。

張り付いていた天上から離れ、スタッと机の上に着地。

無駄のないスラリとした体つきが魅惑的な女性。

「こら! 机の上に乗るな! 降りなさい!」

「嫌にゃーん。机の上に登るのは猫の正当な権利にゃーん」

そんな権利はない!

獣人の中には、自分の中に交じった獣性に過剰なアイデンティティをもって必要以上に獣らしく振舞おうとするが、まさにそれがコイツだ。

たしかにネコ科動物の因子を得ることで身についたしなやかな体つき、俊敏性、暗闇でも利く視覚、平衡感覚などすべてダンジョン攻略で役立つものであり、彼女をS級に引き上げた要因だろう。

ただ、余計な部分というか。

猫の気まぐれな性格までトレースしなくてもいいんじゃないか。

「……お前、ずっと天井に張り付いていたのかよ?」

「そうにゃーん! 実は私が一番乗りにゃーん!」

なら何故ずっと隠れていた!?

意味があるのかその行為に!?

「お鼻自慢のシルバーウルフちゃんがいつ気づくか試してたにゃん。結果は散々だったにゃーんが」

「ぐぬッ!?」

「まったく気づけないにゃんてS級の名が泣くにゃーん? でもしょうがないにゃ! 私は毛づくろいすることによって自分の臭いを消すことができるにゃん!!」

そう言って自分の腕を舐めるブラックキャットのヤツ。

たしかにアイツはそうやって自分の臭いを消すことに秀でているのだ。

嗅覚を自慢にS級入りした私にとって、天敵……!

「私は体が柔らかいからどこだって舐めて綺麗にできるにゃーん! こうやって股の間も……!」

「わかった! わかったから人前でやらなくていい!?」

くっそ。

出てくる順番ごとに変人度が増して扱いづらくなる……!?

五人中四人まで出てきて、この分じゃ最後の一人はどんだけ変人になるんだって話だ!?

いや、知ってるけど。

まだ来ていない最後の五人目前にも会ったことがあるから知ってるけど。

たしかにアイツは変人だ!

「しんどいヤツが来る前にさっさと用件済ませて解散しよう」

「賛成にゃーん」「とっとと終わらせちゃいましょー!」「次行ってみよー」

皆も賛同してくれたので今日の議題!

魔王軍から申し込まれた勝負について……!

窓の戸が割れたー!?

破片が部屋の中に雪崩れ込んだー!?

暴風が吹き荒れたー!?

そして割れた窓から侵入してくるマントの男!

「呼ばれて飛び込んでやってきた……! オレこそがもっとも優れた冒険者……!」

噂をすればやってきた。

最後の五人目のS級冒険者……!

「S級冒険者ゴールデンバットここに見参」

「モノを壊しながら入ってくるな!!」

結局、気まぐれで何人呼びかけに応じるかわからないS級冒険者が全員揃った。

来るなら指定した時間通りに来いやッ!!