軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

519 四天王集結

私の名はマモル。

魔王軍四天王が一人、『貪』のマモル。

貪聖剣ツヴァイブラウを継承せし由緒ある者である。

……まあ、入り婿なんだがね。

先代の『貪』の四天王であったラヴィリアン様は、政闘で競争相手を蹴落とそうとした結果、逆にそれでお咎めを受けて失脚。

腹心であった私が代わって四天王の座に就いた。

元々は四天王に就く資格もない庶民だったが、ラヴィリアン様のご息女を娶ることで入り婿となり、貪聖剣の継承家系に加わった。

ラヴィリアン様の家臣として、その御息女も姫君として敬服し、陰ながら守ってきた毎日。

その忠節ぶりからついたあだ名が『影からマモル』。

ラヴィリアン様当人のやらかしで、その家系は一時取り潰しの危機に見舞われたが、私があとを継ぐことによって何とか断絶を免れた形。

しかしそのためにとはいえ、長年仕えてきた姫様を妻にすることとなるとは……。

姫様はそれで満足なさっているご様子だが、私自身はいまでも姫様相手に敬語で話してしまう。

自分の妻なのに。

そのことで姫様から毎日のように怒られています。

私、夫なのに。

そんな感じで、私の四天王のお勤めは今日も弛まず進んでいくのです。

先代のやらかしもあって、私の四天王内での序列は四人中四番目。

最下位。

辛い。

それでもお世話になった恩師ラヴィリアン様、長く仕えお守りし、今では最愛の妻である姫様のためにも、使命を投げ出すわけにはいかない。

全力で四天王の務めを遂行して見せる!!

* * *

そして今日は、久方ぶりの四天王全体会議。

現役の四天王が四人揃って話し合うんだが、人間国との戦争が終結してあんまりやらなくなったなあ。

「四天王『貪』のマモル、ただ今到着した!」

「ん」

「遅いよ」

と気のない挨拶をしてくるのは、同じく四天王『妄』のエーシュマと『怨』のレヴィアーサ。

…………。

彼女ら、四天王になった順番で言えば私よりあとだったはずだがなあ?

先輩に対する敬意とかは!?

……と思ったが、ここで四天王同士いがみ合っても意味がないから黙っておく。

決して、彼女らの先代として後ろ盾でもあるアスタレス、グラシャラ両魔王妃に言いつけられたら怖いなあ、とか思ったわけじゃないぞ!?

私たち三人、いずれも最近代替わりした新人四天王だが、それより前の先代が二人、魔王様に嫁して魔王妃となり、残る一人は失脚。

後ろ盾の力の差がありすぎる。

そして四天王の残る最後の一人……!?

* * *

「やーやー、ごめんごめんお待たせお待たせ……!」

と言って入室してきたのが四天王筆頭『堕』のベルフェガミリア様。

先代四天王から唯一の残留者で、それゆえに現四天王のリーダー格という意味合いが強い。

いや意味合いどころか、今や魔軍司令の位を魔王様より与えられ、正式なる魔王軍の最高位にいる。

今、魔王軍でもっとも好き勝手にできる人はこの御方なのだ。

この御方に意見ができるのはそれこそ魔国の主としての魔王様ぐらいしかいない。

それくらいにベルフェガミリア様は今や強大なる存在なのだが、その強権の使い方というのが……!

「ベルフェガミリア様、毎回遅刻してくるのやめてくれませんか? こちらにも予定がありますので」

「いやー、早くこようとはしてるんだけどねー? なんていうの? 布団のぬくもりから抜け出せないって言うか……!」

「会議が始まるギリギリまで寝てるんですか!?」

このように怠けることにしか強権を使おうとしない。

いや、この方は前世代の頃からこんな感じだった気もするが……。

だからこそ誰にも注目されずに政変を乗り切った。

このような愚鈍に魔軍司令のが任されたのも、戦争終結で魔王軍も無用の長物となり、これから縮小が進んでいく。

衰退期の象徴としてのお飾りだなどと口さがなく言う者がいる。

しかしそれは間違いだ。

とんでもなく愚かな間違いだ。

ベルフェガミリア様の正体を知ることなく侮っていられる者は幸せ者だ。

逆に私のように、あの御方の隠された最強を見抜き、それを踏まえながら付き合わなくてはならなくなると……。

胃がいててててててててててててて……!?

「僕が遅刻している間に案件は話し合ったんでしょう? どれくらいまとまったのか聞かせてよ?」

この人。

こうなることを狙ってわざと遅刻してきたんじゃ、と思えてくる。

そもそも魔軍司令となったこの御方が何か言うだけですべてが決まってしまうんだ。

そうせず、若い私たちに存分に論を戦わせる。

そうすることでより精密に案件を洗い、かつ後輩たちの思考と判断力を鍛えさせる場とする。

……ということを狙っての遅刻魔ではなかろうか?

「できるだけ結論だけ伝えてねー。考えるの面倒くさい」

……私の考えすぎか?

「……では、今日のもっとも大きな議題は、やはり軍縮事業に関わることです」

「まあ、そうだろうねえ。それが現状、魔王軍のもっとも取り組むべき大きな問題だからねえ」

さすがにベルフェガミリア様もそこはわかっていらっしゃる。

今まで魔王軍は、常に強く大きくあらんと自己の拡大に努めてきた。

それは永年の宿敵、人間国との戦争に打ち勝つために。

しかしその宿敵は、今生の魔王ゼダン様の手により滅ぼされて長きにわたる人魔戦争は終止符を打たれた。

もう、魔王軍に明確な敵はいなくなったのだ。

だからこそ魔王軍は肥大化しすぎた己が体を、逆に削ぎ落としていかねばならない。

平和に見合ったスマートな組織に作り替えなければ。

「しかし現在、軍縮の弊害が出始めています」

「軍縮の弊害、ねえ……」

たとえ人間国との戦争が終わっても、魔王軍は完全不用にはならない。

何故ならこの世界には、まだまだ人類を脅かす敵が無数に蠢いているからだ。

その代表というべきものがモンスター。

ダンジョンにて凝り固まった瘴気より生まれるそれは、凶暴性だけをもって生物に襲い掛かる凶悪。

それを野放しにしておいては、善良な魔国民の被害が留まることを知らない。だから駆除する必要がある。

「これまでその任務は、我ら魔王軍が当たってきました。人族軍を国境より押し返すことと並んで、魔王軍に課された重要任務の一つです」

「そこはおさらいだねえ……」

くッ!

いや、落ち着け、心を鎮めろ……!

「戦争終結から進んでいる軍縮で、魔王軍の人員も随分減りました。国庫の負担も軽くなった反面、限られた兵員によるダンジョン攻略は困難を極めています」

モンスターはダンジョンから生まれてくるものだから。

ダンジョンから溢れ出てくる前に中に入り、まとめて駆除してしまうのがもっとも効率的だ。

だから魔王軍の警備兵たちは定期的にダンジョンに入りモンスターを倒してきたのだが、それが折からの軍縮で兵員が減り、手が足りなくなってきている。

「中には少人数で逆にモンスターに囲まれ危うく全滅するところだったという際どい報告もあります。このまま魔王軍のダンジョン掃討能力が落ち、打ち漏らしたモンスターが集落に被害を及ぼせばそれこそ本末転倒かと……!」

「うん、その件はルキフ・フォカレ氏からもせっつかれててねー」

ルキフ・フォカレ!?

魔国の内政を一手に牛耳る魔国宰相!?

先ほど魔軍司令となったベルフェガミリア様に口出しできるのは魔王様ぐらいのものと言ったが、厳密には間違いだ。

もう一人いる。魔国を支える軍と政の二つそれぞれを支える魔軍司令ベルフェガミリア様と魔国宰相ルキフ・フォカレ様。

この二大巨頭のお互いのみが、魔王様を除いてそれぞれを牽制し合える。

「氏が言うに、人手を除かれた現場の苦労はもはや限界に達しているらしい。軍部は早急に手を打つべきだという。でも天下の宰相様が、どうやって現場の声を耳に入れたのかなあ?」

それ以前に、内政担当者から軍部のやりように口を挟まれるなど横紙破りでは?

そのような専横を許してしまうのも、軍縮が効率的に進んでいないから。

早急に改善しなければ。

「こうなっては、兼ねてより勘案していた、あの策を実施するしかありません」

「やっぱそうなるよねえ……?」

ベルフェガミリア様、気の進まぬ表情。

しかしこうなっては打てるのはあの一手しかない。

モンスター駆除のための人手が足りぬなら、民間から補充する。

民間のモンスター駆除、ダンジョン探索の専門家……。

冒険者を、魔国にも取り入れるのだ!!