軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

496 皇帝復古

「崩壊したコイツの根城から、コイツの頭蓋骨だけ回収して、はや百五十年……」

『二年ぐらいしか経っておらんはずだが?』

「おやそうだっけ?」

『なんで正真正銘ノーライフキングである我を差し置いて、お前が不死者ジョークを飛ばすんじゃ?』

「時間の感覚がおかしくなるのは不老不死あるあるだからねえ」

なんでこんな軽快にボケツッコミを応酬させておるんだ?

ベルフェガミリアさんとノーライフキングの皇帝。

「でも二年もあれば充分らしくてね」

「何がです?」

「コイツが復活するの」

「えぃいッ!?」

ベルフェガミリアさんの話によれば、回収してきた皇帝の頭蓋骨を家の物置に放り込んでおいたらしい。

「なんでそんな無造作に!?」

「だって後始末面倒そうじゃない。とりあえず仕舞っておいて、どう処理するか後々考えておこうと思ったら……忘れてた」

いかにも面倒くさがりがやらかしそうな!

そうして存在を忘れ去られていた皇帝。

物置で誰の目にも留まらないまま、周囲のマナを吸収して少しずつ体を復元し、たっぷり二年かけて完全復元したのだという。

「完全に五体復元したコイツが、物置から出てきた時はそりゃーもうビックリした! ビックリしすぎて二度寝するところだった!」

「驚愕の際のリアクションじゃない!?」

ベルフェガミリアさんのお家としたら、当然魔都にあるんだろ?

地上最大の都市でノーライフキングが暴れ回るとか普通に考えて亡国の瀬戸際だけど、最初に発見したのがベルフェガミリアさんだったのが不幸中の幸い。

ワンパンで瞬殺し、事なきを得たという。

「そして再び頭蓋骨のみとなったのがこれです」

『くっそー! なんで我をこんな簡単に倒せるのだ!? 我はノーライフキングの皇帝なるぞー!?』

この場合、ノーライフキングの皇帝が弱いのか? それともベルフェガミリアさんがアホみたいに強いのか?

世界二大災厄という脅威の認識がぐんにゃり歪んできておる。

「いやいや、勘違いしてはいけないよ? ノーライフキングは普通に災害級のバケモノだからね。甘く見るなんて絶対ダメだ」

「アナタが言うと説得力があるような、ないような……!?」

「実際のところ僕でも、このガイコツは手に負えないんだよ。そりゃ瞬殺はできるけど完全には殺しきれなくてね。何度でも何度でも復活する。復活するたび僕が何とかしなきゃじゃ、面倒くさすぎるでしょう?」

「最後に本音が集約している?」

そして、話の本題がついに表れる。

「魔王様に相談したところ、ここを紹介されたんだ。聖者さんならきっといい手を考えてくれるってね。このガイコツを永遠に葬り去る方法を」

それでベルフェガミリアさんは、遠路はるばる我が農場へと足を運んでくれたのだという。

まあ転移魔法があれば一っ飛びなんだけどね。

『フフン……、下等なる生者どもめ……! 命に縛られた貴様らがどれだけ無い知恵を絞ろうと、この皇帝を滅しきることなどできぬわ!』

不敵に語る皇帝。

頭部のみで生意気な口ぶり。

『我は皇帝、究極の侵略者。禁じられし秘法によって生のくびきを脱し、命なき者の王となったからこそ我は永遠! 生の時間という有限の内にある者どもが、無限たる我に届くことなどありえぬわ!!』

「って言ってるんだけどさー? どうしたものか?」

一応困ってる風ではあるが、心底困った様子でもないベルフェガミリアさん。

きっとこの人、本気になったら何でも成し遂げちゃうんだろうな。でもこの人は死ぬまで本気になることがない面倒くさがりだから。

「僕も魔王軍の立場上コイツを放置できなくてさ。遠くのお山に捨ててきても、そこで復活して悪さもするなら後味が悪いし。魔王様の話では農場の聖者殿にできないことはないというじゃない? その万能性で、ここはどうか一つ……?」

いや、そんなこと言われても俺自身はそんな万能じゃないですよ?

土いじりが得意なだけの、他は何もできない男です。

それを一緒に農場に住む者たち……プラティやヴィール、オークゴブリンたち、エルフやサテュロス、ガラ・ルファなどが協力して色んなことができているだけだ。

「皆で力を併せてこそ、できないものはないんだよ……!」

「なるほどねー、協力こそが大事なんだねー?」

ほっこりする俺とベルフェガミリアさん。

この人と一緒だと気持ちがゆったりしてしまう。それを嘲笑うかのように……。

『くだらん! 人が群れようとするのは弱いからだ! 人であることを超越した我は、完全究極である我一人いるだけですべてが足りる!』

煩い髑髏。

『文句があるなら、貴様の頼もしい仲間の中から何とかできる者を連れてくるがいい! そんな者いるわけないがな! 永遠に存在し続けるノーライフキングを制する者など!!』

ではリクエストに応じてお呼びするとしますか。

さっき羅列した名前にもあえて含めなかったのは、ここでご登場いただくためのヒキであった。

この御方こそ、農場設立時から共にいる最高の協力者。もっともお世話になった人。

満を持して登場いただきましょう!

* * *

「ノーライフキングの先生!!」

『お呼びにあずかり光栄ですな』

我が農場にもっとも縁のあるノーライフキングさんです。

通称、先生。

ノーライフキングが関わる問題なら、やはりこの方に出ていただいた方がいいだろうとご足労いただいた。

餅は餅屋ならぬ、ノーライフキングはノーライフキングの先生だ!

『ぐほおおおおおおおッッ!?』

『ほう? これが今日のワシを呼んだ理由ですな。まあ、一応ノーライフキングとしては形が整っておりますな』

先生、ノーライフキングとして同類であるはずの皇帝を傲然と見下ろす。

頭骨オンリーではあるものの、完全な白骨である皇帝に対し、同じノーライフキングである先生だが、その様相は骨だけでなく極めて薄い皮で覆われている。

言うなればミイラ? と言うか即身仏?

ノーライフキングも色々な形態があるようだ。

『ばばばばば、バカバカバカな……ッ!? こんなところに我が同類が……!?』

『ワシとしては、お前ごときと同じに思われるのは不本意じゃ』

先生にしては厳しい口ぶり。

『ノーライフキングは、在り方そのものが規格外の怪物。生命としての寿命を克服し、肉体が半ばアストラル体となることで物質的劣化にも影響されぬ。きわめて完璧に近い永遠を得た存在。……しかし……』

しかし?

『そこまで御大層なものを使って成し遂げようとするのが世界征服とは……。矮小よの』

『なにいッ!? 我が壮大なる野望を貶しおるか!?』

『事実、お前が不死者と化してまで果たさんとした望みは、既に現世にて魔王ゼダン殿が、生者にありながら果たしているではないか。命ある者の世界は、命ある者が治めてこそ美しい。それがわからず無用の遠回りをしたお前はただ愚かだ』

『何をおおおおッ!?』

『あるいは身の程を弁えなかった仇か。人は自分に見合わぬ高望みをするほど醜く歪む』

いつになく先生の口ぶりが厳しい。

それはノーライフキングになりながら現世の人々に迷惑をかける皇帝へ、憤慨の心があるのだろうか?

『人の限られた寿命では解き明かせぬ真理。そこへたどり着くために無限の時間を浪費する。それがノーライフキングの本懐なのにゃー!』

『うおおおおおッッ!? 何だッ!?』

なんか横から小さな影が飛び出し、皇帝のドクロに体当たり。

手も足もない皇帝はあえなく吹っ飛ばされ、適度な丸みを帯びた頭骨はコロコロ転がっていく。

『うにゃーッ! うみゃみゃみゃみゃ! みんみー!』

『何だこの猫は!? やめろ! 我に猫パンチを浴びせるでない!?』

皇帝ドクロに襲い掛かったのは一匹の猫。

あの中途半端な丸みのせいで、独特な転がり方をする頭蓋骨。その軌道に誘われ猫は追っていく!?

『ふー、猫のサガなのにゃ。転がるものを見ると追わずにはいられないハンターの本能が刺激されたのにゃ』

『元々お前が吹っ飛ばしたんだろうが! 最初は転がってなかったわ!』

さて、この不意に意味もなく登場したかに見える一匹の猫。

しかしこの登場も必然だ。

この猫もまた、最近になって農場に住み着き始めたノーライフキングの一人。

その名も博士。

不死の王でありながら、見た目は猫でしかないという。

これまた究極の変わり種。

『はー、こんな見苦しい出来損ない、先生がイラつくのも当たり前なのにゃ。ガチ勢気取りのユル勢なんて、真のガチ勢から見たら不快でしかないのにゃ』

『ワシはそれほど真面目にノーライフキングになったわけではありませんが、それでもこの手の輩は許せぬものです。特に命ある者たちに迷惑をかける点が。聖者様に頼まれるまでもなく、このような邪悪は滅し、二度と復活せぬように取り計らいましょう』

先生が予想以上にヒートアップしている……!?

こちらからお願いするまでもなく、殺る気MAXだ!?

『どいつもこいつも舐め腐りおって……!』

対する皇帝に変化が起こる?

頭蓋骨のみであったのが……、急に頭蓋骨の底から尻尾みたいなのが生え出した?

ニュルリと?

そんな尻尾かと思えたものは違う、背骨だ。

頭蓋骨から、本来それと繋がるべきの頸椎、胸椎、腰椎と伸びていき、それらを全部まとめて背骨だ。

さらに背骨から肋骨、骨盤、手足の骨が生え出して、あっという間に全身の骨が生え揃った。

って言うか生えてくるものなの骨って!?

カルシウムたっぷりとか、そんなチャチなものじゃ断じてないぜ!?

『皇帝復活ッ! 同類風情で舐めた口を利く者どもが! 全世界の支配者たる皇帝の恐ろしさを思い知るがいい! そして然るのち、我が覇業を、この地から再開させるとしよう!!』