軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

495 最強四天王訪問

俺ですが……。

緊急事態です。

ベルフェガミリアさんが農場に訪問してこられた。

魔王軍四天王の一人、しかもその中で最強と呼ばれる男。

実力は、魔国の王たる魔王さんをも凌ぐと言われ、実のところ四天王最強どころか人類最強を名乗ってもおかしくないとかされている。

また前魔王さんの非嫡出子でもあり、その気になればみずから魔王の座を簒奪することもできるという設定てんこ盛りなお方。

これまで我が農場と強いて関わることがなく、農場に来ること自体まったく皆無だったのであるが、今回お迎えすることとなった。

何故か唐突に。

いつかは、そういう日が来るかもとは思っていたのだが、何の前触れもなしに来るところが意表を突いて……。

この人らしいという気がしないでも……。

「ベルフェガミリア様が……!?」

「数百年ぶりに任命された魔軍司令……!?」

「あんな超大物まで訪問してくるなんて……この農場やっぱ凄い……!?」

と言って驚くのは、農場に留学している魔族の若者たちだ。

彼らも元来の所属は魔王軍だけあって、彼のこともよく知っているようだな。

それに対し、人族や人魚族の留学生たちは……。

「あれが魔王軍の四天王? なんか弱そうじゃね?」

「表情もほややんとしてるしさあ?」

「全体的に覇気がないというか、あんなのが魔王軍最強だなんて、ちょっと拍子抜けね?」

と舐め腐ったことを言っている。

たしかにベルフェガミリアさんは、常に隙あらば怠けようとするし、覇気の欠片もない。

素人であれば、押し隠された強さの片鱗も見つけ出すことができない。

彼の強さの類とはそういうものだ。

同じ強者だけが、彼の強さに気づいて恐れる。

その証拠に、のほほんとしている学生たちとは対象的に、ベルフェガミリアさん訪問と同時に緊張感がグッと上がる者たちがいた。

農場で働くオークやゴブリン全員だ。

「なんだこの不気味な殺気は……!?」

「わかるようで捉えどころがない……!? こんな怪しい気配は今まで感じ取ったこともない!?」

「それでいて強さ巨大さはハッキリわかる。押し隠そうとしてなお隠しきれない。重厚さ……! それが真の強者というものなのか……!?」

わかる者にはわかるってことらしい。

オークゴブリンたちだけでなく、ポチたちも彼を見るなり姿勢を低くして唸り声をあげていた。

「グルルルルルルル……!? クーンクーン!?」

獣の野生も、強者の奥底を見抜くことができるんだろうか?

「あの男、できるですー?」

「あたしたちじゃなきゃ、みのがしてるですー?」

そして大地の精霊たちも気づいたようだ。

何故?

とまあ、そうした周囲の反応はいい加減にしておくとして……。

ベルフェガミリアさんご当人のことだ。

「いやあ、ここはいい場所ですね。静かで長閑で平和で、僕もこういうところで年中怠けていたいものですよ」

お褒めいただきありがとうございます。

しかしここで怠けている者などヴィールを除いて誰もいませんがな!

「それで、今日はどのようなご用向きで?」

「ZZZZZZZ……」

「寝るなッ!?」

ちょっと目を離した隙に、その辺にハンモック張って寝始めやがった!?

なんと鮮やかな手際?

この輩、怠け慣れしておる!?

「しかしこの農場にいる限り怠惰など許さない! 目覚めよ! そして歓迎を受けるがいい!!」

「うわはー?」

ハンモックをひっくり返し、ベルフェガミリアさんを地面に落とす。

「ZZZ……」

「しかしまだ寝てる!?」

真の怠けを極めた者には、地べたであろうとベッドの上と変わらないのか!?

「しかし起きてください! アナタ何のためにウチに来たんですか!?」

「あははは、すまないね、この地があまりに寝心地もとい居心地がいいもので」

肩をガクガク揺さぶることで、やっと御起床くださったベルフェガミリアさん。

ヤバいぞこの人。

明らかに今まで出会ってきた何人かと同じ、話が一向に進まないタイプだ!!

「そうそう用件ね。もちろんそれがあって訪問させてもらったんだよ。でなきゃ自主的な外出なんてしないよ、この僕がー?」

「自慢になってませんよ?」

「自慢じゃないけど、僕は怠けることに命を懸ける男だからね。何人であろうと僕の怠惰を邪魔することはできないよ。相手によっては僕の怠惰を邪魔すると殺すよ?」

冗談を言ってる目じゃない。

「でも問題は、殺したくても殺せない相手かなー? そう言うヤツが騒ぐと僕の方も大弱りさ。基本的な対策が取れなくて」

「基本的な対策って……?」

殺すこと?

「今日お邪魔させてもらったのも、そういう類の問題なのです。殺したくても殺せない、僕の怠惰を邪魔する者を、アナタたちに何とかしてもらおうと思って……」

「はい?」

説明も不足のまま、唐突に何かを手渡される。

一体何だと、俺の手中に移されたものを眺めてみると。

髑髏だった。

あるいはしゃれこうべ。

人間の頭蓋骨とも言う。

そういう言われ方が一般的だろうけど。

「…………!?!?!?!?!?」

何故俺は、唐突に頭蓋骨を手渡されているんだ?

どういう展開だこれは?

こんなんホラー映画だってないわ。

ビックリさせよう怖がらそうにしても突然すぎて理解が追い付かない。

状況の異常さを理解してこそ恐怖が生まれるんですよ!?

何にダメ出ししているんだ俺は!?

「さすが農場主さんは魔王様が認めるだけのことはあるねえ。突然頭蓋骨を持たされて叫び声も上げないなんて。肝が据わっている」

「以前もっと衝撃的なものを持たされたことがあるので?」

ソンゴクフォンの 生首(のようなもの) とか……!?

あれのインパクトに比べたら、生々しいものがすべて削げ落ちた頭蓋骨ぐらいで今さらねえ?

「で、この頭蓋骨が何なんです?」

復元して生前の身元を特定しろとでも?

ウチはそんな科捜研みたいなことはしてないんですがねえ?

『ぐおらーッ!? 無礼者ッ!!』

「うわッ?」

いきなり喋り出した!?

何がって? 俺の手の中にある頭蓋骨がだ。

これにはさすがにちょっとビックリした?

『偉大なる我を「この」呼ばわりなど! 我をモノ扱いするか! この偉大なる皇帝を! ノーライフキングの皇帝を!!』

「うわああああ……!? ベルフェガミリアさん? 益々何なんです、これ?」

いや、自己紹介自体は、既に本人がしたような気もするが。

「ノーライフキングの皇帝。その成れの果てさ」

ノーライフキング!?

というとあの!?

我が農場ではすっかりお馴染みの!?

「世界二大災厄の一方。ダンジョンの淀んだマナを吸収することによって人間であることを超越し、紛い物の永遠を得た怪物どもさ。コイツはそのうちの一体」

と言って頭蓋骨をヒョイと摘み上げる。

頭蓋骨のどこに摘み上げる部位があるのか謎だが。

「ですが、このドクロ俺の知っているノーライフキングとはけっこう違うんですけど……?」

いや、よく考えたら変わり種すぎるノーライフキングとはもう知り合いだった。

猫とか。

「一番の違いと言えば……、頭部だけなんですか? 普通だったら他の部位もしっかり揃っているはずでは?」

手足とか胴体とか?

頭部だけじゃまるで、パーツごとに買って全然揃ってないプラモデルみたいじゃないですか?

「これには深いわけがあってね……。コイツはもう既に敗れて力を失っているんだよ」

ベルフェガミリアさんの話によれば……。

この皇帝というのは野望を持ち、世界全土に攻め込もうとしていたらしい。時は人魔戦争の終結直後。まさに挙兵せんとしていたところ先手を打って殲滅させたのだそうな。

「ベルフェガミリアさんが倒したんですか!? 凄いですね!!」

「いや、皇帝を倒したのは通りすがりの旅行者さんらしいよ。世界の危機を救ったあと名も告げずに去っていったんだってさ」

何それカッコいい……!?

世界にはそんな英雄が、名を隠しながら住んでいるというのか? 一体誰なんだろう?

「僕はその後始末を命じられただけさ。その時この頭蓋骨を回収したんだけど……?」

話は再びこれに戻ってくる。

名もなき英雄に倒された皇帝。

しかし倒しても殺せないのがノーライフキングの恐ろしいところ。

五体砕かれ、頭部のみとなってもしぶとく生き残る、この怪物が新たなる騒乱を引き起こそうとしている。

『クッククククククク……!』