軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

482 異世界青汁開発

ごきげんよう俺です。

今日は人魚たちの授業風景を参観中。

「この世でもっとも知的な行為は! 発明することよ!」

青空教室の教壇に立って、プラティが何やら熱弁している。

人魚国の名門校マーメイドウィッチアカデミア。

その在籍生徒の一部が農場に住み込むようになったのはいつ頃のことからか。

最近では人族魔族の留学生と一緒くたにされがちだが。

それでも人魚族だけが使う魔法薬の授業は、こうして人魚たちのみを対象に開かれる。

若い女人魚たちを対象に。

「新しい何かを創り出すということには、発想が必要になるのよ! その上で幾多もの試みと失敗を繰り返し、それにも挫けず進める直向きさも必要! つまり才能と努力! 二つ揃わなければ発明は遂行できないのよ!」

熱く語るプラティ。

今日の彼女は教師役だ。

彼女自身、既に名の知れ渡った魔法薬使いだし、ヒトに教える資格は充分ある。

それでも率先して人魚生徒たち教えてこなかったのは、まず第一に生まれたばかりのジュニアの世話が大変で、それどころじゃなかったこと。

第二に、同格の魔法薬使いであるパッファの方が精力的に教師役を務めていたので、なかなか彼女に出番が回ってこなかった、などの理由がある。

しかしジュニアも大きくなって段々手がかからなくなってきたし、パッファも念願叶ってアロワナさんと結婚、農場を巣立っていた。

ということでプラティが教壇に立つことが最近多くなってきた。

マーメイドウィッチアカデミアの人魚女生徒たちも、プラティに直接授業をつけてもらうのは感激のようだ。

人魚国の王女様にして、人魚族最高の魔法薬使い『六魔女』の一人に数えられるプラティだもの。

そんな彼女のご尊顔を拝するだけでもミーハー心を刺激されることだろうし、指導を受けたとまでなったら田舎で自慢の種となるに違いない。

そんなプラティ。

授業で一体何をやるのかと思ったら……?

「というわけで本日は、皆さんに発明をしてもらいます!」

中々に無茶なことを言い出しおる。

「アナタたちだけのオリジナル青汁を!」

んんー?

突然降って湧いたフレーズに、俺は戸惑いを覚える。

母親の勇姿を見てもらおうとジュニアを抱えつつ授業参観していた俺だが、さすがに質問せずにはいられなかった。

「ちょっとちょっとプラティさん?」

「何よ旦那様!? アタシは今、一人の教師! ここではプロフェッサーと呼びなさい!!」

プラティは、けっこう肩書で人格が左右される女性なんだよな。

さすが王族と言うか。

「じゃあプラティッサー」

「称号と名前を混ぜるのやめて!?」

「何故生徒に青汁を発明させようとしているの?」

青汁は、ここ最近農場で生まれたトレンドだ。

新開発したミキサーで色々なジュースを作った催しがあり、その時フルーツジュースや野菜ジュースとともに青汁も作った。

原料となる草葉をミキサーでグチャグチャにし絞るだけのシロモノだからな。

最後のオチとして利用させてもらったが、その辺でも大変優秀だった。

「旦那様が作った青汁を見た瞬間、私の心はときめいたのよ!!」

「夫としては別の部分にときめいてほしいな」

「青汁! それこそ私たち魔女にベストマッチする液体! 多数の薬草を調合し、手軽に飲んで体調を整える、ってことでしょう!?」

言われてみればたしかに……!?

そうか青汁って、魔法薬を作るプラティたちにとって、そんなに親和性の高いものだったのか!?

青汁と一口に言ったって、色んな草や葉っぱを混ぜて調合してあるに違いない。

魔法薬の調合と同じなのではなかろうか。

『何百種類の生薬配合!』とかCMで謳われると効きそうな感じするもんな!

「というわけで今日は、様々な薬草を配合してアナタたちだけのオリジナルブレンド青汁を発明してもらおうと思います。実技授業よ!」

『どういうわけだよ……!?』という生徒たちの戸惑いが物凄い。

言葉に出さなくても気配から匂い立つかのようだ。

「原料は、農場で栽培している薬草全般を使用するがいいわ! 一般的なものから世界に二つとない貴重な霊薬の元まで! 農場の薬草園は何でも取り揃えてあるわよ!」

薬草園って、家の裏手でプラティが世話しているあの……?

「霊薬草まであるんだ……!?」

「『この農場ならあるだろうな』という納得の方が先に来て、いまいち驚けない……!?」

ともかくも無茶ぶりされた人魚生徒たち。

『教師としてはパッファさんの方が有能だった』という評価をそのうち貰いそうだが、とにかくも授業をパスするには薬草数種類を調合させて青汁を完成させなければならない。

少女人魚たちは、若い感性で一体どんな見たこともない青汁をブレンドしてくれるのだろうか!?

「はいはーい! できたわよお姉ちゃん!!」

真っ先に手を上げた女生徒は、プラティの妹でもある人魚国の第二王女エンゼルだった。

いや、人魚王はこのたび代替わりしてアロワナさんが即位されたから……、王の妹は一体なんて言うの?

よく知らないから引き続き王女様の呼称で。

とにかくそんなエンゼルだ。

「ほう、一番手を取るとはさすが我が妹ね」

「当然よ! 王女のアタシに相応しいマーメイドロイヤル青汁をご賞味するがいいわ!」

なんか違う商標とごっちゃになってそうな印象のあるロイヤル青汁。

「お姉ちゃんの薬草園にある、もっとも高級な薬草を混ぜて作った青汁! 原料の貴重さからして一杯につき金貨百枚にはなるシロモノよ! 金額だけでも最高に達する青汁が、すべてにおいて最高であることも、明白!」

「不合格!」

「なんでーッ!?」

プラティが放つ衝撃波によって吹き飛ばされるエンゼル。

「高級品ばかりを混ぜて高級な青汁を作る! そんな安易な発想で合格を上げられるわけないでしょう!」

そりゃそーだ。

「調合とは創意工夫が試されるのよ! たとえ何の変哲もないフツーの薬草でも、調合次第で思いがけない効果を引き出す! それが調合師の腕の見せどころじゃない!」

「うんうん」

「それに高級品ばっかり使ってたら単価が上がりすぎるでしょう!? 品物一つ一つの値段を下げて、広く大きく売る方が儲けも出やすいのよ!!」

「うん?」

何の話?

単価? 儲け?

もしやプラティ……?

「青汁売って儲けようとしている?」

「うぐッ!?」

どうやら図星だったようだ。

何故今更お金に執着を? 元々王女様であるプラティは日銭なんて気にするタチじゃないだろうに?

『パンがなければ魚をお食べ』とか言いそう。

「だって仕方ないじゃない! 今の私たちにはジュニアがいるのよ!」

「うむ?」

「これからジュニアをどう育てていくにしても、お金はあった方がいいに決まってるのよ! 将来、どっかいい学校に通いたいとか言い出したらどうするの!? ジュニアの夢を応援するためにも、今のうちにできるだけお金を貯めておいた方がいいのよ!!」

主張が正しすぎて粉砕された、俺の心が。

たしかにプラティの言う通りだ。育児にはとかく金のかかるもの。これまでの俺は自給自足を意識して極力お金は持たないようにしてきた。

しかし子どもにまで親の生き方を強いるのは独りよがりだろうか。

ジュニアも今はあどけない赤ん坊だが、成長して夢を持ち、末は博士か大臣かってなるかもしれない! 縦社会の勇者に成り上がるかもしれない!

俺の子だし!

その時一銭の資金援助もできないんじゃ親としてあまりに不甲斐ない!!

「わかったよ! たしかに必要だねお金は!!」

「わかってくれたのね旦那様!!」

俺、異世界に来て初めてお金の必要性を知る。

親になるってこういうことなのか!?

「というわけで青汁は絶好の儲けになると思うのよー? 何せ健康食品だし、怪我や病気してなくても買ってくれるしね!」

「……」

「販売はパンデモニウム商会にお任せすればいいから、きっとウハウハよー!」

……プラティよ。

てことはつまりキミは、自分の儲け話のために人魚生徒たちからアイデアを募ろうと?

それって問題ないのかな?

「そう言うことならプラティ様! 私にナイスアイデアがあります!」

名乗りを上げる人魚生徒。

見覚えのない顔だな、初めて見る子か?

「コストは最小限! しかし儲けは最大限! その辺の雑草をちぎって粉にし『農場謹製の青汁』と謳えば爆売れ間違いなし! どうせ素人に違いなんてわかりません! テキトーでいいんですよテキトーで!」

「詐欺商法は厳罰ッ!!」

農場に来てる人魚女生徒って皆いいとこのお嬢様なはずなんだが……。

どうしてそんなあこぎなことを思いつく?

ともかくも食品偽装を行おうとした女生徒は、不合格の烙印と共にプラティから衝撃波で吹っ飛ばされていた。

……。

ところでプラティ、あの衝撃波一体どうやって出してるの?

魔法薬使ってる気配ないけど。

母親になって新たな技を獲得した?