軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

483 至高の葉素材

「やっぱり学生風情からアイデアを募るのはダメね! 所詮小娘どもよアテにならないわ!」

学生をアテにするな。

一人の母親として、青汁大量販売からの養育費ゲットをもくろむプラティ。

しかし、その計画には何よりもまず売り物である青汁を完成させなければならない。

青汁と言えば、誰もが認める健康食品。

プラティの目の付け所はいいと思う。

健康のためという大義名分があり、しかも消耗品として継続して買ってくれる健康食品ほど売り物として優秀なものはない。

魔法薬を製造する人魚との親和性も高いしね。

「しかし! 若さゆえの奇抜な発想もあるかと試してみたけど、てんでダメねアナタたち! 所詮マーメイドウィッチアカデミアは人魚国屈指の名門校! そこに通うエリートは思春期のうちから頭が硬化していると見えるわね!」

プラティの名門校ディスが甚だしい。

そんなマーメイドウィッチアカデミアを中退した経歴を持つプラティだから僻みでもあるのだろうか?

とにかくこんなプラティの目論見に振り回された生徒さんたちには申し訳なさでいっぱいだ。

「こうなってはアタシみずから動くしかなさそうね! この六魔女の一人『王冠の魔女』と謳われた、このプラティが!!」

「最初からそうしてくれ」

キミの儲け話だろう?

「というわけで生徒諸君! 授業なんてやってらんねーから、あとは自習ね! 大丈夫、本当に才能ある子はヒトから教えられなくても大成するのよ、このアタシのように! それでは起立! 礼! 突撃!」

学校というシステムを全否定するような暴論を吐いてプラティは走り去っていった。

青汁の試作を強要される以外、まだ何も教わっていない人魚生徒たちを残して。

――『教師としてはパッファさんの方が明らかに優秀だったな……!』

そんな少女人魚たちの心の叫びが響き渡るかのようだった。

ゴメンね?

とにかくプラティの暴走はこちらで預かるので、人魚女生徒の皆さんは学業に専念していただきたい。

* * *

「それじゃあ見せてやろうじゃないの! 魔女が創り出す、本物の最高品質青汁ってヤツをね!」

プラティが、ついにみずから青汁を創造しようとしております。

仮にも『魔女』と呼ばれるほど凄腕の魔法薬調合師。そんなプラティが本気で青汁のブレンドをプロデュースしたら、一体どんな凄いものが生まれてしまうのか?

ちょっと興味はある。

「実を言うと配分は決めてあるのよね! 何をどれだけ混ぜて、このプラティ様オリジナル青汁を作成するか!」

「えッ? そうなの?」

ではその気になるレシピを見てみよう。

薬草:少々。

毒消し草:ほんの少し。

ツタの葉:気持ち程度。

やまびこ草:あれば入れる。

他。

「…………」

なんか、意外と普通だな?

どれも村の道具屋で売ってそうな、ごく有り触れた原料だ。

たしかに高級すぎる素材を取り揃えて原価が高まれば商売にならないと、エンゼルの時にも言っていたが……。

「ふふふ、素材が普通過ぎてがっかりしたかしら旦那様?」

「い、いや、そんなことは……!?」

「取り繕わなくてもいいのよ? たしかに現状揃えた素材は、魔女のアタシが扱うにはあまりに普通過ぎる。肩透かしと感じるでしょう。でも舐めないでほしいわね。素材はまだ全部揃っていないのだから!」

なんだって!?

「むしろ今揃っているのはおまけに過ぎないわ! こういうのには一種類だけ凄いものを用意して、それを目玉にした方が食いつきがいいのよ!」

なるほど!

『タウリン五億ミリグラム配合!』とかそういう感じのヤツだな!?

「アタシの素材にはそういう目玉となる一点がまだ足りていないの! それさえ加わればアタシのパーフェクト青汁が完成する! でもそれは、まだアタシの手の中にはない……!」

「え?」

プラティの手元にない薬材があるというのか?

割りとこの農場、なんでも育ててるし収穫できていると思ったが、慢心だったか……!?

「ち、ちなみにその最後の素材とは?」

「世界樹の葉よ!!」

……。

また耳馴染みのあるフレーズが出てきた。

世界樹の葉と言えば、RPGでよくある蘇生用のアイテム。

こっちの世界にもあったのか……?

「っていうか世界樹あるの? この世界?」

「海育ちのアタシはよく知らないけど、どっかの森の奥深くにあるらしいわよ。物凄く大きくて樹齢何千年で、その根や幹や枝そして葉っぱすべてに霊力が宿っているという……!」

その葉には、さすがに死者を甦らせるまでの効果はないが、あらゆる毒を浄化し、生命力を与えるという。

「その世界樹の葉を青汁の主原料とすれば『世界樹の葉配合・健康青汁』として売り出すことができるわ! バカ売れ間違いなしよ!」

それはまあ……。

……たしかに売れそうな気はする。

絶対体にいいだろうし。

「というわけでアタシはこれから世界樹を見つけに行きます! 地上のどこかにあるらしいけど、アタシなら必ず見つけ出すことができるわ! ジュニアのためにも!」

子を想う母親に不可能はない。

まあ世界樹と言えばデカいわりに隠れてて、普通の人では見つけらないイメージ。

きっとこの世界でも人里離れた山奥とかにあって、相当な苦労を重ねなければたどり着けないんじゃないかな?

「そんな大変なものを原料に組み込んで大丈夫? コストかかってやっぱり値が上がったりしない?」

「大丈夫よ!! ウチの農場にはコストダウンの手段がたくさんあるでしょう! 世界樹のあるところまでヴィールに乗って飛んで行くとか!!」

そりゃドラゴンの翼なら世界中行けないところはないだろうが……。

ヴィールの気まぐれっぷりを考慮したら、とても安定供給は望めなさそうなんだが。

「そもそも世界樹がどこにあるのかもわからんし……」

っていうか本当にあるの世界樹?

人々の噂に上るだけで、実在しない夢の世界にあるものとかでは?

「大丈夫よ! 巷では実在が疑われている聖者の農場だって、こうして存在しているのよ! その主である旦那様が信じてあげられなくてどうするの!?」

そう言われるとぐうの音も出ないんだが……!?

そうか、俺自身も負けず劣らず夢の世界の住人だった!?

じゃあ世界樹もあると信じて、居場所を探してみるか。

その葉っぱを青汁に入れるために……。

* * *

「知ってるますよ世界樹のあるところなら」

まずは聞き込みで情報を集めようとした矢先……。

早速ヒットがあった。

証言者はエルフたち。

「私たちエルフが住む集落の中にあります。エルフは本来森に暮らす種族ですが、古くから住み暮らす森の中に集落を作ったりするんですよ」

いくつかある中の、もっとも大きな集落に世界樹はあるらしい。

「世界樹が守護してくれるお陰なんでしょうがね。一番大きな森の中で一番たくさんのエルフが住み、『エルフの都』なんて呼ばれていますよ」

「法術魔法のせいでどんどん小さくなっていった人間国の森とはえらい違いですよねー」

「「あははははー」」

なるほど、世界樹はエルフの森にあるのか……!?

だとすると一筋縄じゃ行かなそうだな。エルフと言えば森にこもって排他的な種族として有名だ。

世界樹の葉を分けてもらうどころか、森に入れてもらうだけでも困難を極めそう。

冒険の匂いがするぜ!!

「よし! 行ってみるか! 世界樹の葉を手に入れるために!」

「え? 聖者様、世界樹の葉が欲しいんですか?」

俺の決意表明に、聞き込みを受けていたエルフが反応した。

「なら普通に買えばいいんでは?」

「え?」

ここから話が変わってきた。

エルフたちの話では、世界樹のある大集落に住むエルフたちは、大きく栄えるだけに他のエルフより開明的らしい。

俗物的ともいえるが。

森の外にある魔族や人族の文明に興味を持ち、取引することがあるんだそうだ。

そういう時エルフ側の取引物としてもっとも使われるのが世界樹の葉。

エルフの都では、それこそ無限に生い茂るのに、外では百薬の長として珍重されている。

これほど美味しい商品はない。

「値は張りますけど、それなりに流通してますから商会に頼めば持ってきてくれますよ。シャクスさんに相談してみたらどうですか?」

とエルフたちに勧められてみたので、その通りにしてみた。

後日、大量の世界樹の葉が届けられた。

* * *

「不味い! もう一杯!!」

プラティが完成させた『世界樹の葉配合青汁』試作品を飲んでシャクスさんが叫んだ感想。

「いいですね! 世界樹の葉は高級品ではありますが、販売期間が長くてさすがにマンネリしていたんです! 新たな捻りを加えて、再びよく売れそうですよ!」

そうしてシャクスさんとこの商会で扱われるようになった青汁は魔都を中心に大ブームとなって、俺たち夫婦の下にも大金が雪崩れ込んできた。

当初の予定通りではあるが……。

「……なんか釈然としないな」

「そうね……」

俺とプラティは夫婦揃って、この胸にわだかまる肩透かし感を消し去ることができなかった。

この世界の世界樹って、けっこう俗なんだな……!?