軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

460 結婚式・最後のイベント

俺とプラティの結婚式も、様々な仕掛けを加えていくことで常時盛り上がって過ぎていく。

「おまつり楽しいですーッ!」

「ケーキおいしいですーッ!」

大地の精霊たちもご満悦だし……。

「ワンワンッ!!」

「ニャーッ!!」

ポチや博士も興奮気味だ。

披露宴中のお色直しもしっかり行われ、プラティは様々な柄のドレスで参列者たちの視線を集めもした。

「あれバティ!? 私と一緒に考えた『闇』や『無』や『阿頼耶識』のウェディングドレスは!?」

「改めて冷静になって考えたら、どれもナシだと思ったので破棄した」

しかしどんなお祭り騒ぎにも終わりは訪れる。

名残惜しいが、ここまで手を変え品を変え進めてきた結婚式も、最終段階へと差し掛かる……。

* * *

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございました」

締めの挨拶として新郎の俺自身がスピーチする。

皆が俺に注目。

「古来より、結婚には三つの袋が必要だと言われています。一つ目は、そう、……池袋?」

「旦那様、今その話いる?」

プラティのツッコミで、長くなりそうなスピーチのネタは中断された。

「ぶっちゃけて言いますと名残惜しくも、結婚式はまもなく終わりになります。そこで最後の最後に、もう一つだけ催し物を披露して締めくくりとさせていただきます」

『おおー』と上がる歓声。

「聖者様は、今度はどんな大事で私たちを驚かせてくれるのかな?」

「さっきが巨大ケーキだから今度は巨大おしるこよ! 巨大おしるこ大盤振る舞いよ!」

女子たちの中で、俺たちの結婚式が甘いもの大会のイメージになっている。

しかし残念、違います。

「これから行うのは……ブーケトスよ!」

ウェディングドレス姿もこれが見納めのプラティ進み出る。

その手には、鮮やかでボリュームたっぷりの花束が。

「?」

「ぶーけ、とす?」

「武家を 屠(と) す?」

皆ブーケトスの意味も分からず困惑しているようだ。

やはり前の世界の風習を持ち込むと、そうなるよな。今回はそんなことの連続だ。

「ふふふふふ、皆ブーケトスの遠大な意味をわからず困惑しているようね。ならばアタシから説明してあげるわ!」

既に俺から説明を受けているプラティ、したり顔でブーケを掲げる。

「この花束! 今日一日花嫁である私が持ち続け、結婚の幸せが満ち満ちているわ!」

「!?」「お、おう……!?」

圧倒される参列者たち。

「ブーケトスは、その幸せをお裾分けしようという意図よ! これからアタシが、花束を投げ放つ! 最初にとった者が、新たな花束の所持者よ!」

「「「「「?」」」」」

「つまり花束をとった者が……、次に結婚できる!!」

「「「「「!?」」」」」

いや、プラティさん?

そんな断定口調でいわなくても?

あくまでそういう迷信があるってことで、確定ではないですからね。

『ブーケ取ったのに結婚できなかった!!』てクレームつけられても困るし。

「いやいやまさか……!?」

「おまじないみたいなものでしょう? 私の田舎でもそんな風習あるもの……!」

うむ、冷静な女性たちは、あくまでお遊びなこの企画をしっかり把握しておる。

「でも聖者様の企画ならあるいは……!?」

「おまじないが、お 呪(まじな) いということも……!?」

そして段々本気にし始めておる!?

「ついに本気になる時が来たようね……!」

中でも、体から濃厚な魔力を噴出させて超本気モードとなっているのは、留学生のエリンギア。

既に彼氏がいる彼女は『結婚』という響きがことさら身近であるようだった。

まだ学生のくせに。

無論、既婚者の方々は悠然とされておるが……。

「……ほんの二、三ヶ月前のアタイだったら、邪魔者皆殺しにしてでも花束を取りに行っただろうね」

と呟くのは新婚ホヤホヤのパッファ。

主に未婚女性を中心にボルテージが沸騰。

「私こそがあのブーケを……!」

「聖者様のご利益、濃厚確実……!」

「プラティ様のあとに続くのは私よ!」

「結婚したい! 結婚したい! 結婚したい! 結婚したいッッ!!」

発する気配の質が獣じみていた。

とても結婚式の佳境とは思えず、どっちかというと修羅の巷。

「んじゃあ投げるわよー! 皆血みどろになって奪い合ってねー!」

といいつつ美しい投球フォームを見せるプラティ。

ところでブーケトスって、本来誓いの儀式が終わってすぐ行われるものだが、今回はイベントの盛り上がりを意識して披露宴の最後に持ってきた。

しかしこんな盛り上がり方をするとは。

「ふぉーい」

プラティの強肩から投げ放たれるブーケは、思った以上に高く、遠くへ飛ぶ。

「「「「「おきゃあああああああーーーーーーーッッ!!」」」」」

獣じみた咆哮を発しつつ、ブーケへ向かって駆け寄る未婚女性たち。

もう怖い。

どっちかというと生肉に押し寄せるピラニアの群れであった。

いまだブーケは空中にあるが、あれもまた物質である以上ほどなく重力に引かれ地表に落ちた暁には、うら若き乙女たちに腸を食い破られそう。

花束に腸はないんだけど。

しかし。

そうはならなかった。

花束が高度を上げて飛んだ。

「は!?」

なんでそういうことに!?

なんか途中から、明らかに新たな勢いを得たような速度でブーケが空を飛んだ!?

多段ロケットが点火した感じ?

でも何故!?

もちろんブーケは地面に落ちることなく、下界の未婚乙女たちを嘲笑うように上昇していく。

「推進魔法薬はうまく機能したみたいね」

と俺の隣で呟くのは新婦プラティ。

やっぱりキミの仕業か!?

「だってー、せっかくアタシたちの結婚式だもの、最後の締めもエキサイティングしたいじゃない?」

「だからってこんな細工を!?」

「アタシの手から始まるイベント、そう簡単にクリアさせるわけがないじゃない。それなりの超激難易度になるよう調整しておいたわ!」

余計なことを!

既にブーケは空中を飛びながら、右に曲がったり左に曲がったり、と思ったらいきなり真後ろに下がったりとめちゃくちゃ複雑な軌道で飛んでいる!?

これもプラティがブーケに仕込んだ魔法薬の効果なのかあああッ!?

「この程度で引き下がってたまるかあッ! おらああああああッッ!!」

しかし怯まないのはエリンギア!

魔族少女の彼女は、共にブーケを狙うライバル乙女の頭を踏んで飛ぶ!

「わ、私を踏み台にいいいッ!?」

「翔ぶが如く、『飛翔黒麗』!!」

なんか魔族らしく魔法を使って飛ぶ。

彼女も、農場留学生に選ばれる幹部候補だけあって才能豊か。農場でしっかり学んでもいるため、複雑軌道するブーケの動きも完璧に読み切って、着実に迫る。

「獲った!!」

傍から見ている俺もそう思った。

エリンギアの手が、ブーケを掴まんとしたまさにその時……!

『させませんぞッ!』

「なにぃ!?」

まさか! ブーケ自身がエリンギアを拒んだ!?

ツタみたいな触手を伸ばして、彼女の手を弾いた!?

「どういうこと!?」

「最後の切り札まで出させるとはさすがねエリンギア!!」

俺の隣で叫ぶプラティ。

またキミの仕業かよ!?

「こんなこともあろうかと最後の防衛機構、ブーケ自体に意思を込めておいたのよ!」

「そんなことできるの!?」

「ヴィールの山に住み着いてる樹霊を移しただけよ。同じ植物だからそこまで難しくなかったわ」

だからってやろうとしてできるのか!?

できるか。

俺の妻は『王冠の魔女』と呼ばれる凄腕だった!

『ふはははは! というわけで主プラティ様の命により、この意思あるブーケは断じて誰にも捕まりませんぞ! 私は自由! 何者にも囚われず! この空を縦横無尽に駆け回るのですあああああッ!!』

なんか妙なキマり方をした意思あるブーケは全速力を維持し、それでも必死に追い縋るエリンギアをついに振り切って、空の彼方へと消えていった。

キラーンと……。

空に一点の光明を残して。

「……ブーケが、逃げ切った!?」

そんなことってある!?

ブーケトスの意義が根底から覆ったんですが!?

誰も受け取ることができなかったら誰も次結婚できないじゃないか!

どうしてくれるんですか、こんな無茶な改造を施した張本人!?

「いやー興が乗りすぎちゃった、ごめんちゃーい!」

花嫁衣装のプラティは舌を出してテヘペロ笑うのだった。

それで誤魔化し切れると思ったのか? 誤魔化し切られるけど。

前々から思っていたことだが……。

プラティに催しごとを任せると高確率で難易度調整に失敗する。