軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45 お家騒動

唐突に魔王の挑戦を受けることになった俺。

そこへタイミングよく救いの女神たちが帰ってきた。

「聖者様ー、ただ今狩りから帰ってきましたー!」

「今日はなんとキリサキシカ! キリサキシカが狩れましたよ! これでまたすき焼きを作ってくださーい!!」

山ダンジョンへ肉補給に行っていた。魔族三人娘だった。

猟果がよかったのかバティとベレナは大はしゃぎだったが、ただ一人、リーダー格のアスタレスさんは、すぐさま異常を察したようだ。

「……ま、魔王様!? 何故こちらに!?」

「アスタレス……!」

魔王の方も、アスタレスさんの登場に大きく動揺していた。

この二人、知り合いか?

知り合いに決まっているよな。アスタレスさんは魔王軍四天王。つまり魔王の腹心だったんだろ?

「やはりここに身を寄せていたか……! 八方手を尽くしても見つけ出せなかった。残る場所は、ここしかなかったからな……!」

「魔王様、そこまでして私を……!」

……?

なんか、二人の様子が変?

「私は失敗し、四天王の座を追われた身です。もはやアナタ様のお役に立つことはできません。私などにいつまでもかまっていては、反動派につけ入る口実を与えかねません……!」

「何を言う! お前は我にとって必要な人材なのだ! お前を失うなど絶対に考えられん!!」

「魔王様……! ゼダン様……!!」

……。

この雰囲気は?

「安心しろ、策は既に考えてある。すぐさまお前が魔王軍に戻れるよう取り計らうゆえ、もう少しだけ辛抱していてくれ……!」

そこまで言うと、魔王は改めて俺へと向き直った。

「取り込んでしまい申し訳ない。改めて勝負だ聖者殿。互いの聖剣を賭けて死力を尽くそうではないか」

「聖剣を賭けて?」

「そうだ。この勝負、勝った方が相手の聖剣を得る。不躾な挑戦の上に、さらなる条件まで付けて重ねて申し訳なく思う。しかし我には、どうしてもその聖剣が必要なのだ!」

いや、聖剣ぐらい勝負しなくても欲しいなら差し上げますが……。

でも魔王さんがさっきから何を求めているか、皆目見当がつかないんだけども?

「魔王様ッッ!? まさか聖者様と戦うつもりなんですか!?」

「いくらなんでも無茶すぎますよ!! 自殺と同じじゃないですかッ!?」

そして魔王の決意を聞いて、バティとベレナが騒ぎ出した。

騒ぎを聞きつけてプラティやヴィールもやってくる。混乱が拡大しそうになったため、ここは全員を抑えて、一から情報を整理し直すことにした。

* * *

とにかく魔王には家に上がってもらい、話を詳しく聞く。

和室のルールには慣れていないだろうからと洋間の方へ案内し、お茶をお出しした。

落ち着いてほしいという配慮だ。

「本来無関係のアナタ方を騒がせてしまい、本当に申し訳ない」

と魔王さん。

この人、何やかんや言って礼儀正しいんだよな非常に。少なくともこれまでウチに押し掛けた面子の中ではダントツに。

だからいきなり「戦え」と挑戦状を叩きつけられても、何やら怒る気になれない。

「改めて名乗ろう。我が名はゼダン。現魔族体制で魔王を務めている」

「あの、また基本的な質問で申し訳ないんだけど……」

魔王って代替わりするの?

さっきも「連綿と受け継いで……」って話してたし……。

「旦那様は召喚者だから、その辺知らないのは仕方ないわよね」

「魔王は、我ら魔族の支配者が名乗ることを許された称号だ。知勇に加え、徳にも優れた魔族が選出され、その座に就く」

プラティ、アスタレスさんが代わる代わる説明してくれる。

当然魔族だって、時が過ぎれば老いるから、衰えれば次の若い世代へバトンタッチする。

新しい魔王が選ばれるというシステムか。

よし。

この世界の魔王の定義は大体理解した。

「もっとも、その選出基準も今では建前と化しているがな」

魔王自身が自嘲気味に言った。

え? そうなの?

俺の中の魔王の定義、早速修正!

「もっとも優れた魔族が、魔王に選ばれるという建前は既に形骸化している。今では魔王は完全な世襲だ」

「何を仰います! たしかにゼダン様はアインロートの継承家系に生まれましたが、ゼダン様が選ばれた理由がそれのみでないことは全魔族が承知しております!!」

なんかアスタレスさんが興奮しておられる。

やっぱこの人、魔王さん大好き属性の人だろ。態度でわかる。

「我の家系は、魔王の名と共に怒聖剣アインロートも代々継承してきた。我が父も、我が祖父も、魔王として怒聖剣を振るい戦ってきた」

さっき抜いたあの剣か。

たしかに刀身を見ただけで物凄いオーラを放っていた。

妖刀か? と一瞬思ってしまうほどに。

剣としての強さは、俺の持っている邪聖剣? だっけ? より上なんじゃないかな?

「そして……、アスタレス、アレを持っているか?」

「当然です。どんなに零落れようと、これだけは手放すことができません」

魔王から促され、アスタレスさんが腰をガザゴソ言わせた。

そして一振りの剣を取り出す。

ただし折れた剣だった。根元からボッキリと折れている。

「これは……!?」

「妄聖剣ゼックスヴァイス。私の家系に代々伝わって……、いた、聖剣です」

でもボッキリ折れていますが。

それはもうボッキリと。

「今から数百年前。我が先祖がへし折ったのだ」

魔王さんが重々しく言う。

「魔族の社会において、確認されただけで五振りの聖剣が存在していた。その聖剣を継承する五つの家系が、魔族において最強の五名家とされてきた。遥か昔は、魔王の席もその五家で持ち回りにされていたらしい」

「しかしある時、魔族の真の頂点を決める内戦が勃発した。五名家は互いに争い、そして最後に一振りの聖剣が、他四振りの聖剣を叩き折って、戦いを決した」

「四振りの聖剣を折り、最後に残った一振りこそがこの怒聖剣アインロート。それ以後、アインロートを所持する我が家系が魔王職を独占することになったのだ」

へええ……。

なんか歴史の授業だな。

「そして敗北した四家系は、以後アインロートを所持する魔王家に忠誠を誓うこととなった。それが四天王の発祥だ」

「じゃあアスタレスさんも、元は聖剣を継承していた家系なの?」

「そうだ。この折れた聖剣は我が家系にとって、魔王へ捧げる忠誠の象徴となった。だから何があろうと――、折れて役立たずとなっても、――肌身から離すわけにはいかないのだ……!」

今アスタレスさんは、政争に敗北して都落ち状態。

にも拘らず所持し続けるというのだから、相当な思い入れなのだろう。

「以上が聖剣と、我ら魔族の関わりになるのだが、ここまで説明した上で改めてお願いしたい」

はい、なんでしょう?

と言うかこの説明、本件と絡むんですか? 無駄話してたわけじゃないんですね。

「かくなる上は、率直にお願いしよう。聖者殿、アナタの持つ邪聖剣ドライシュバルツを、アスタレスに譲ってくれないか!?」

「えええええええええええッッ!?」