軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44 魔王

こうしてアスタレス及び、二人の副官は我が開拓地に身を寄せることになった。

副官娘二人も、そろそろ副官娘呼びは可哀相なのでちゃんと名前で呼んであげよう。

一方がバティ。

もう一方がベレナ。

アスタレスさんも含めて、この三人にはゴブ吉らと共に農作業をさせてみた。

すぐに音を上げるかと思ったが意外に頑張る。

もはやここを追い出されたら他に行くところがないという強迫観念がさせるのか、必死にもなるのだろう。

ところで、この世界における魔族って、一体どんな存在なんだろう?

邪悪な種族?

人間の強化系?

答えは、違う神様が作り出した別種族なんだそうだ。

人族は、天神ゼウス。

魔族は、冥神ハデス。

あと人魚族は、海神ポセイドス。

それぞれ別の神様から生み出されたので、別種族。それ以外特に違いはないらしい。

種族によって優劣や正邪の差などなく、違いがあるのは起源だけ。

それだけで何千年と争い合っているらしい。

俺にとっては関係ないことなので、ケンカしないのであれば誰でも俺の開拓地にウェルカムだ。

「旦那様……、何だかゴメンね」

と唐突に謝ってきたのはプラティだった。

誰も目撃していない二人きりのタイミングを狙ってだけど。

「……何を謝るんだ?」

「だって、ここ最近のトラブルって大体全部、アタシに端を発しているから。申し訳ないなあって……!」

プラティらしくもない殊勝なセリフだった。

そんな畏まった態度は彼女には似合わない。

「トラブルも時にはいいさ。穏やかな平穏は当然基本だけど、その中でも小さな事件ぐらい起こらないと張り合いがない」

「そうよね! アタシもそう思って旦那様にトラブルを供給してあげてるのよ!」

かと思ったらすぐさま調子に乗る。

そんな感じで日々を過ごしていた時のことだった。

* * *

誰にも得手不得手はある。

アスタレスさんたちは、さすが元魔族の精鋭ということで、戦闘事が一番巧み。

そこで自然とダンジョンに入って、モンスターを狩ってくる仕事を任せるようになった。

今日も朝早くから山ダンジョンへと向かい、獣モンスターの肉をたくさん持ち帰ってくる予定。

他、プラティはいつも通り醸造蔵に篭って魔法薬や発酵食品の研究、製造。

ヴィールもいつも通り部屋でダラダラ。

ゴブ吉たちゴブリンは日常的畑仕事に精を出す。

そして俺は、オークボたちオークチームと共に、陶芸用の大窯を作成する計画に乗り出していた。

そんな中だった、客人がやって来たのは。

「客?」

ここに来る客といえば、二人しか思い当たらない。

近所の洞窟ダンジョンに住む先生か、プラティの兄アロワナ王子。

しかし今回の客はそのどちらでもなかった。

初めて見る人だった。

「お初にお目にかかる」

一目見ただけで、ただ者でないとわかる男だった。

偉丈夫、とでも言おうか。

見上げるほどの大男。筋骨たくましく隆々としている。

それなのに見る者を圧迫する威圧感はなく、その代わりとでも言うかのように見る者を飲み込む深い威厳があった。

これまでやって来た来訪者と、今回現れた彼のもっとも違う点は、現れるなりいきなり攻撃してこなかったということだ。

非常に礼儀正しく、軽率な敵意を見せない。

だからこそ最初に接触したゴブ吉たちも、大して揉めることなくすんなりと俺の下まで案内してきたのだろう。

「あらかじめ伺いも立てず、いきなり押しかけてきて申し訳ない。我らの側も立て込んでいるため、今回は急がせてもらった」

「はあ……!?」

「まず確認させてもらう。ここは聖者キダン殿の在所でよろしいか?」

「はい、そうですが……?」

なんだろう、この一つ一つ突き詰められていくような感じ……?

「我は、魔王ゼダン」

「?」

魔王?

魔王と言いましたか?

「あのー……、基本的な質問で申し訳ないんですが、魔王って偉い人のことですよね?」

「偉い……と言えばそうかな。魔族を率いる王者に与えられる称号。それが魔王だ」

やっぱり!

ですよね! 魔王が偉くないわけがないですからね!

「しかし、それは我自身の偉大さを示すものではない。魔王の称号は、先人たちが連綿と受け継ぐによって価値を高めてきた。我自身は、その重責を継承したばかりの若輩者にすぎん」

しかも人格者!

高い地位にいても決して驕ることなく謙遜しておりますよ!!

「偉大というのであれば、この魔王など及びもしない真に偉大なる者がいる。聖者キダン。アナタだ」

「ええー?」

「ドラゴンとノーライフキング、世界でもっとも恐ろしい二つを従え、失われた邪聖剣ドライシュバルツを携えるアナタは、世界最高の脅威と言って過言ではあるまい」

なんか俺の世間からの評価が異次元的なことになっとる。

それもこれもヴィールが外でやらかしたからか。

随分派手に脅し付けたそうだからな。俺の悪名が世界に轟き渡っているのか。

「いやー、でも待ってください? ここが、その、聖者の棲み処だからって、俺がその聖者というわけでは……!」

無駄な足掻きと思いつつ、ダメもとで言い逃れしてみる。

「いいや。アナタこそが聖者キダンで間違いない」

やっぱりダメだった。

「何故ならば共鳴し合っているからだ。アナタが持つという邪聖剣ドライシュバルツと……。我が持つ怒聖剣アインロートが」

シャラン……、と腰の鞘より抜き放たれる剣。

その刀身から放たれる気というか、オーラが……。凄くどこかで見た気がする。

「聖者殿。不躾な願いだが、我が挑戦を受けてもらいたい。我が怒聖剣とアナタの邪聖剣。どちらか勝るか、ここで白黒はっきりさせるのだ」