軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

447 人魚王夫婦、訪問

俺です。

アロワナさんとパッファ夫妻が農場に遊びに来た。

「早速かよ!?」

こないだ結婚式があったばかりだというのに!?

特にパッファは、この農場から巣立って感動の見送りをしたというのに、速攻里帰りされて、なんか気まずいというか……!?

遊びに来てくれたこと自体は嬉しいがな!!

「すまぬな聖者殿。唐突に王位を譲られたおかげで、これから死ぬほど忙しくなりそうでな」

そうだ。

彼はもうアロワナ王子ではなくアロワナ王になったのだ。

こないだの結婚式でついでとばかりに王位も譲られて、今や威風堂々たる人魚国の主。

責任も仕事量も、王子だった頃とは比べ物にならないはずだ。

「とりあえず私を頂点とする新体制を早急に形にしなければならん。ということでこれから数ヶ月はここに遊びにくる暇もなさそうなんでな。今のうちにというわけだ!」

なるほど、そういうことですか。

では思う存分お寛ぎください。自分の家だと思って。

実際数日前までここが自分の家だったヤツもおりますし。

「ご機嫌麗しゅうパッファ王妃陛下?」

「やめろよその呼び方!? 仰々しくてケツがムズムズするんだよ!?」

その数日前までウチに住んでいたパッファは壮大にプラティにイジられていた。

「いえいえ、そんなイジるだなどと不敬な。アタシはただ人魚王妃様に敬意を表するためにですなあ?」

「わざとらしいんだよ王女!? アタイだって覚悟はしてたけどこんなに早く王妃を譲られるなんて予想してなかったんだよ。全然慣れない……!?」

「いいじゃないですかパッファ王妃? よろしくお願いしますよパッファ王妃? 持ちつ持たれつでいきましょうよパッファ王妃? 粛清しますパッファ王妃?」

「やーめーろーッ!?」

プラティが超調子に乗って現王妃をイジり倒していた。

いい加減止めようかとも思ったが、それをアロワナさんに止められる。

「いや、パッファも人魚王妃であることに慣れてもらわねばならんからな。今少しイジられてもらおう。ああいうのにまったく動じなくなってくれれば理想だ」

なるほど。

国王夫妻も大変なんだなあ。のしかかる責任の重さが違う。

「パッファには私の伴侶として公私にわたって支えてもらわねばならん。とにかく人材が足りんのだ。新体制に影響を及ぼしてはいかんと多くの老臣が父上ともども引退するのでな。代わりに配置する若い人材の選別に四苦八苦していて……、……うん?」

「?」

どうした?

アロワナさん、話の途中でオレのことをジッと見つめて?

「……聖者殿、人魚国で宰相になってみないか?」

「いやいやいやいやッ!?」

何かと思えばまさかのヘッドハンティング!?

「ダメですよ! 俺には農場があるし! そもそも宮仕えなんて性に合いませんよ!」

「そうだな……、考えてみたら聖者殿を召し抱えるとなったら絶対魔王殿と揉めるだろうし、諦めるしか……!」

諦めるべきポイントそこなの!?

まあとにかく妙な展開になることは避けられた。よろしい。

「旦那様を召し抱えたくなるぐらい困ってるってことは、そんなに人材が不足してるの人魚国? 大丈夫?」

「いや、いるよ。有能な若手はいっぱいいるよ。けどな。若い分元々の役職が低位で、引退するベテランと同位に抜擢するには思い切りがいるというか……!?」

新体制の確立ってのは大変なんだな。

やっぱり。

「何より抜擢したいのはアイツだ! ヘンドラーだ!」

やっぱりここでヘンドラーくぅんの名が挙がりますか。

そりゃそうだろうな。実力、実績、人格、そして王当人からの信頼も含めて国内トップクラスだろう。

「ただアイツが元々無役なだけに、それこそ抜擢しづらくてなあ! 本当は大将軍にでも据えたいのに、軍籍にすらないアイツにそんな大役与えたらそれこそ軋轢が生まれる!!」

思い悩んでるなあ。

「せめてアイツが実家に帰順してたら角も立たないんだが、何故か今でも疎遠でなあ? ランプアイが結婚を機にその辺解決してくれると思ったのに……!?」

「何か事情があるんだろう、ランプアイは筋を通す女だ」

長くこの農場で一緒に働いてきた同格を擁護するパッファ。

ちょっと王妃の風格が出てきた。

「でもヘンドラーはどうしても腹心に欲しい。何かいい手はないものかな聖者殿? 上手くヘンドラーを活躍させて、かつ周囲からの軋轢を最小限にとどめるには?」

俺に聞かれてもなあ……!?

それに答えちゃうと、もはや俺も人魚国の政治に介入することになっちゃうじゃん?

でも困っているアロワナさんを見過ごすにもな……!?

「……新しい役職を創設したらどうですか?」

「おおッ!?」

「ヘンドラーくんのために。権力は少ないができることは多い、そういう役職を作ればいい。権力が小さければ他から目の敵にされることもないでしょうし、王の権力を代行すると言えばほぼ皆従うでしょう」

江戸時代の側用人みたいなシステムかな?

元々ヘンドラーくんがアロワナさんの直接指示で動いてきた人だから性に合うだろう。

それで実績を挙げてから大臣にでも将軍にでもなさるとよい。

「さすが聖者殿だ! このような政治向きの相談にたやすく答えてくださるとは!」

前の世界で歴史小説をたくさん読んだのが助けになったぜ。

うろ覚えで知ったかぶりができる!

「ならアタイが、ランプアイを通して打診しとくよ。私的なラインを使った方が意図が正確に伝わっていいだろ?」

「あらパッファ妃ったら、夫が望む人材を得るために独自の人脈を使おうだなんて益々お妃さまね」

「だから茶化すんじゃねーよ」

相変わらず新妃をイジる勢いが止まらないプラティ。

「でもまあアタイもな。こんな立場になるなんて夢にも思わなかったけど。旦那様のためなら王妃様だって勤め上げてみせらあ」

「パッファは実に、王妃としての自覚を備えるようになった」

アロワナさんが満足げに言う。

「式を挙げるまでに間を置いたのがよかったのかもしれないな。ここ農場での生活も幸いしてパッファには人をまとめ導いていく素養を養えた。まさか母上は、そこまで考えて我らの結婚を止めていたのではあるまいか……!?」

いやそれはない。

シーラ前王妃が二人の結婚をできるだけ遅らせていたのは、愛息が手から離れていくが嫌だったからに他ならぬ。

しかしそれがアロワナパッファ夫婦に心の整理の時間を与え、王として王妃としての心構えを形作ることへと繋がった。

それが結婚式からの不意打ち的王位継承へと現実のものとさせた。

ここまでの整いぶりを見ると本当に計算づくであったのかと勘繰りたくなるほどだ。

「いやあ、やっぱり結婚とはいいなあ。一緒に暮らすなら別に呼ばれ方など関係ないと思ったりしたが、いざ夫婦と呼ばれたら違うな! 前進した感があるな!」

そこまで喜んでくれたなら、俺たちも頑張った甲斐があったというものだ。

シーラ前王妃に結婚を許してもらうために、俺たちも随分知恵を絞ったり支援したりしたからなあ。

一番頑張ったのは当人ら二人なのだが。

念願叶って晴れて夫婦となれた二人。

彼らのこれからの生活に幸多かれと願う。

「ねえねえパッファ王妃、ところでお茶請けいる?」

「何だよいきなり? というかマジで王妃付けはやめないんだな?」

「ここにぬか漬けがあるんだけど食べる? アナタに代わって醸造蔵を預かるようになった新人の作よ?」

「お、いいねえディスカスのヤツがアタイの後釜をちゃんと務められてるかたしかめられるじゃねえか。あとで顔見に行こうとは思ってたんだが……」

「これ作ったのは別のヤツよー」

パッファは漬け物を一口齧って……。

「このぬか漬けを作ったヤツは誰だああああああッ!?」

ブチ切れた。

「漬け込みが甘い! 時間も置いてない! ぬか床も味が整ってなくてちぐはぐになってる! よくもアタイの跡目を名乗りながらこんな腑抜けた漬け物を作れたなああッ!?」

「おッ? キレた? 実はエンゼルが漬けたのよこれ!」

プラティは日々を楽しそうに生きておる。

俺との間にジュニアも生まれ、農場も日々発展している。

俺とプラティの夫婦生活に足りないものはないと思っていたが。

アロワナさんとパッファの結婚式に参列して気づいたのだ。

今更ながら……。

「……俺とプラティって結婚式してないよな?」

次にやるべきことが決まった。