軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

421 結婚したい人たち

はい俺です。

春が始まった時に立てた今年の目標を、さっそく実行に移すとしよう。

え? もう充分に遅いって?

そんな厳しいことをおっしゃらずに。俺もやるべきことはたくさんあるから順番にしないといけないのだ。

それで今年立てた目標。

『アロワナ王子とパッファを結婚させる』だ。

これまでいくつものカップルを成立させてきた我が農場。

カップル成立させすぎて『縁結び農場』のあだ名がついたぐらいだ。自称だけど。

でもカップルをたくさん成立させている実績は事実。

その中でもアロワナ王子とパッファのカップルは比較的初期にできた組み合わせ。

未来の人魚王となることが約束されているアロワナ王子と。

人魚界の異端児、六魔女の一人パッファ。

体制と異端。

秩序と混沌。

リーダーとアウトロー。

対極に見える二人だが、なんかウマが合って好き合うようになった。

もっともパッファの方は一目惚れっぽかったが。

一時期武者修行をして二人の関係はますます強化。

相思相愛となって、もはや結婚まで秒読み段階と思われたのに、しかし実際に結婚するかとなったら結婚しない。

去年辺りからずっと秒読みが続いている。

こりゃどういうことなんだ、どげんかせんといかん、ということで今回改まって関係者が集合し、対策を話し合うことになった。

余計なお節介と思うなかれ。

生物にとって子を産み殖やし育てていくことは、どんなことよりも優先すべき重大使命。

文明の助けがいまだ不充分で過酷な異世界だからこそ、その使命の重大性は高まる。

その前段階として結婚も大事。

周囲の者たちも一丸となって協力していかなければ!

ということで会議だ。

農場の俺の家に関係者が集合し、卓を囲んで話し合う。

議題『アロワナ王子とパッファは何故結婚できないのか?』。

デデン。

まずは当人たちの意見を伺おう。

アロワナ王子、パッファご自身だ。

「結婚したい……! 結婚したい……!」

既にパッファは机に突っ伏しながら泣いていた。

よほどアロワナ王子と結婚したいのだろう。なのに結婚できない。なんでだ。

「……まずは集まってくれた皆に礼を述べたい。私とパッファのために尽力、感謝に堪えぬ」

律儀なアロワナ王子だった。

こういう人だから皆から好かれるし、次期人魚王にもふさわしいのだろう。

「本当はな、私らごときのために皆の貴重な時間を奪って申し訳ない。辞退すべきなのだろうが、最近な……」

はい。

「この農場で、友人同士で歓談の場を設けるではないか。大抵私と、聖者殿と、魔王殿の三人でだ。するとな、聖者殿も魔王殿も既に子どもを授かって父親なわけではないか。……するともう子どもの話題しか出ないわけだな!」

はい。

申し訳ない。

「ウチの子のどこが可愛いとか、育児のこんなところが大変だとか、父親同士大いに盛り上がるわけだが、独身の私は話題に混ざれないわけだ! 一人取り残されるたびに思う! 私も結婚したい! そして子どもを得たいと!」

なんか本当マジですみません。

たしかにここ最近、魔王さんとのお喋りは九割以上子どものことが話題だった。

魔王さんとこの子がさ、ウチのジュニアより僅かに年上で経験談が参考になるんだもん!!

でもその横でアロワナ王子に疎外感を与えてしまっていたんだね!

ごめんちゃい!!

でもそういうことならアロワナ王子だってパッファに負けず劣らず結婚願望が強いということだな?

そんなに両名深く望んでいるというのに結婚できない何故なのか?

その辺りをまず検証していくとしよう。

「ではまずヘンドラーくんに話してもらおう」

「御意」

発言するのは論客人魚ヘンドラーくん。

アロワナ王子に忠実な男人魚だ。

普段人魚国に在住する彼は、地上住みの俺たちよりも人魚国の事情に詳しい。ナマの空気を心得ている。

そこを頼んで会議にお呼びした。

アロワナ王子が王子という地位にあるだけに、その立ち居振る舞いには国民感情を意識しなければいけない。

自分だけの意思で自分の人生を決められないのが公人だ。

対して恋人パッファは人魚国でもっとも恐れられる六魔女の一人。

それが王子様に嫁ごうとなれば差し障りもあることだろう。

王子が未来の王様ともなれば、その奥様は未来の王妃。

魔女なんかが王妃になったら国が潰れる! みたいな。

そんな逆風を恐れて結婚に踏み切れないかと思ったが……。

「そんなことはありませんね」

ヘンドラーくんからの冷静な分析報告。

「たしかに六魔女は無法者としての一面もありますが、他にも人魚国最高の魔法薬学師として憧れを集める存在でもあります。その一人と王子との熱愛となれば祝福する国民は大勢います」

そうなんだ。

でも全員てわけじゃないんでしょう?

「旧守派というか、やっぱりアウトローなんてけしからん! という勢力はあるんじゃ……?」

「無論います。いえ、いました」

ん?

「ちょうどよくと言いますか、先日の粛清で王家に反抗的な者どもは軒並み逮捕されたか凋落しましたので。ここで下手に行動を起こしてしくじれば、それ即とどめになりかねません。王子の縁談話に難癖つける度胸などないでしょう」

粛清のきっかけになったのが王女様であるプラティの縁談話だったからなおさらだね。

「というわけで国民感情の面でお二人の結婚を懸念する材料はないと思われます。僭越ながら私もお二人の結婚は大いに賛成です」

ヘンドラーくんめ締めに上手いこと盛り込みやがって、さすが論客。

「わたくしからも一言よろしいでしょうか?」

手を挙げたのはランプアイだった。

パッファと同じく六魔女の一人で『獄炎の魔女』と呼ばれる。

彼女からも何かいい案が……?

「わたくしとヘンドラー様の結婚についても話し合ってください」

「おいゴラァ!?」

……てなこともなく、単に要求だった。

ランプアイはヘンドラーくんとカップルである。

「この席は! アタイと旦那様のために話し合われてるんだよ! 横からしゃしゃり出てくんじゃねえ!」

パッファもマジギレでランプアイに掴みかかる。

「わたくしたちもそろそろ正式に一緒になりたいのです。アナタたちのことだけじゃなく、わたくしたちにも応援お願いします!」

「したけりゃ勝手に結婚すりゃいいだろお前らは! アタイたちは! それがままならねえから皆に助けてほしいんだよ!!」

たしかにそうだ。

アロワナ王子もパッファも、もうどぎついぐらい互いとの結婚を望んでいる。

それなのにできないということは、二人の気持ちの外に障害があるということだ。

しかしそれは人魚国の国民感情ではない。

さっきのヘンドラーくんの報告で証明された。

では他に何が……?

「決まっているじゃない」

ここでついにプラティが発言した。

会議の席にはついていたが、ジュニアを抱えてずっと沈黙を守り続けてきた彼女。

「兄さんとパッファ。二人の結婚を邪魔しているのは何より……ママよ」

「だよね」

「そうですよね」

「そりゃそうだ」

「わかりきったことだったよね」

「マジそれ」

「そうなのだ……!」

「そうだよッ!!」

最後にキレ気味の怒声を発したのは他でもないパッファ当人だった。

人魚王妃シーラ・カンヌ。

現人魚王ナーガス陛下の妻にしてアロワナ王子、プラティのお母さんでもある。

その人が長男の結婚に反対している……。

……のかな?

「ママも子離れできていないっていうか。どうもパッファに兄さんのこと獲られるのが嫌みたいなのよね。結婚自体は認めざるを得ないけど、できる限りズルズル引き延ばそうとしてる……」

その挙句に今日まで進展なし。

シーラ王妃の母親としての気持ちもわかるが、さすがにこれ以上は二人が可哀想だろう。

何か打開策を講じなければ……。

「問題の核心はママよ。ママさえ納得させれば二人は結婚できる」

プラティ、続ける。

「そこでアタシにいい考えがあるわ!」