軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

417 ゴンこつラーメン

こうして出来上がったラーメンを皆で試食してみた。

具はない。

試作品なので。

そもそもラーメンの具になりそうなチャーシュー、メンマ、煮卵、もやしといったものはまだ全然開発してないもんな。

ラーメンを機に開発が進みそう。

今はせめて刻んだネギを散らして……。

「「「いただきまーす」」」

俺とヴィールとプラティで一斉に食べてみる。

ちゅるちゅるずずずず……。

「うめえ!!」

まずヴィールが叫んだ。

「いいぞご主人様! 最初はうどんのパチモンかと思っていたが、これはこれで独特だ! 特に汁が違う! 時間かけただけあるな!」

大好評だった。

「うーん、私はうどんくらいあっさりめが好きだけど……?」

プラティは、添えられたスプーンの上にミニラーメンを作りながら言った。

女性はやっぱりミニラーメン作らないと気が済まんのか!?

「これはこれで好きな人はいそうね。……ぎゃあジュニア!? アンタはまだこの食べ物は早いわ! ママのおっぱいでも飲んでなさい!」

罵倒が罵倒にならない稀有な例。

ラーメンに手を伸ばすジュニアをなんとか宥めて、ラーメンの出来は大成功と言えよう。

「これであの豆女に対する新たな切り札を得たのだ。……しかし!これで手を緩めるのは三流のすることだ!」

えッ?

「ご主人様の創造したラーメンにさらなる手を加え、おれ独自の究極ラーメンを作り出すのだ! そうすれば二度と豆女羽女に負けないぞー!!」

過ぎたるは及ばざるがごとしって言うよね?

「ちょうどイノシシの骨を煮ている時に閃いたアイデアがあるのだ! さっそく実行だー!」

「ええぇッ? どこ行くのーッ!?」

スープまで一滴残らず飲み干してヴィールは飛び出していった。

放っとけないので俺もあとを追う。

「うーんラーメン美味しい」

プラティはジュニアと共に残った。

どんぶりはキミが洗っておいて。

* * *

ヴィールが訪れたのは酒蔵だった。

半神バッカスが取り仕切っている、あらゆる種類の酒が生み出される場所。

「ヴィールは何故ここに……!?」

酒とラーメンと何の関係が?

俺の疑問もかまわずヴィールは酒蔵の中をズンズン突き進み、一番奥へと行き着く。

そこにある酒瓶に蹴りを一発。

「今こそ目覚めるのだー」

『きゃあッ!? 何々なんですッ!?』

酒瓶の中から声が!?

それは、蔵内に並ぶ酒瓶の中でも取り分け大きく、人間が何人も入りそうな大きさだった。

その中で、酒らしき液体の中に浮かぶ巨大なトカゲ……。

いやドラゴン。

「これは……!?」

思い出した。

コイツはグリンツェルドラゴンのシードゥル!

いつだったか農場に訪ねてきたドラゴンだ!

『あらあらヴィールお姉さま、お久しぶりですわ。最近ちっともお顔を見せてくださらないで?』

「お前のことすっかり忘れてたからな、しかし今思い出したのだ!」

現存するドラゴンはほとんどすべて兄弟姉妹。

このシードゥルもヴィールの妹のようなものだ。

何故酒の中に浸かっているかは理解に苦しむが……。

『今日もいいお酒が熟成されていますわ。わたくしから染み出すドラゴンエキスのお酒は最高の美味ですわよ』

説明されても理解に苦しむ。

要はハブ酒のようなものか。理解しがたいけれど。

『あまり起こしてほしくないのですわ。お父様の後継者が決まるまで静かに息をひそめていたいのです』

「父上ならとっくの昔に倒されたぞ。今はアードヘッグが新たなガイザードラゴンだ」

『えええッッ!?』

ビックリ仰天の酒瓶ドラゴン。

『何ですのそれ!? 初めて聞きましたわよ!? なんで誰も教えてくれないんですか!?』

「そんなことより新しい仕事があるのだ。さっさと酒瓶から出てくるのだー」

ヴィールはドラゴンならではの強引さで妹竜を酒瓶から引っ張り出す。

そして酒蔵の外へと連れ出していった。

「…………」

あとに残るは正真正銘酒しか入ってない巨大酒瓶のみ。その酒には、さっきまでいた雌竜のエキスがたっぷりと染み出している……。

「まさか……!?」

ヴィールが何をしようとしているのか。なんかわかってきた。

* * *

「ふぃー、いいお湯ですわー」

予感的中。

悪い予感だったが。

酒瓶から出されたばかりのドラゴン、シードゥルが、今度は鍋で煮られていた。

巨大な鍋で。

「まさかと思ったが……!?」

とんこつスープからヒントで得たのであろうヴィール。

豚骨ではなく、ドラゴンから出汁を取ってラーメンのスープを作る気かッ!?

「すべての生物の頂点に立つドラゴン! そのドラゴンからとったスープこそがもっとも美味いはずだ! これで豆女羽女にも絶対勝てるのだー!!」

「はー、ヴィールお姉さまも毎回変なこと考えますわね?」

煮られている当人……シードゥルさんと言ったな?

彼女は煮られるにあたってドラゴン形態から人間形態へ変身し、ちょうど人一人入る程度の巨大鍋にすっぽり収まっていた。

そこから直火に掛けられていて、あるいはドラム缶風呂のような風情がある。

ただ水面というか湯面は沸騰でボコボコ泡立っており、まるで地獄風呂のようであったが……。

「いーお湯ですわー。これまではぬるーいお酒の中に浸かってましたから。熱いのもいいギャップですわー」

熱湯コマーシャルだったら危険すぎて怒られるぐらいの温度でも、ドラゴンにとってはぬるま湯と変わらない。

人化して、お色気たっぷり豊満体シードゥルさんの入浴シーンのはずなんだけど、サッパリいやらしさが伴わないのはなんでだろう?

「スープが出てきたところで味を調えるのだー。玉ねぎを入れるのだー、ネギを入れるのだー」

「これが入浴剤というヤツですのね! お肌に効きそうですわ!」

色々ずれたやりとりを聞きつつ、俺が止めたところでドラゴンが止まるわけもないと思い放置。

母屋に戻って、ラーメン目当てに集まってきている住人たちに、先に角イノシシで取ったとんこつスープのラーメンを振る舞ってあげた。

新作料理が出来た時の恒例行事だからな。

そうしてとんこつラーメンが大盛況のうちに平らげられ、ある程度時間も経ったところで、再びヴィールの方を見にいってみた。

* * *

「完成したぞご主人様!」

完成したらしい。

ヴィールが差し出すどんぶりの中には、なんか想像したこともないような神々しい輝きを放つスープに浮かぶ麺。

「これが究極のドラゴンラーメンなのだ! いや、とんこつラーメンのドラゴンバージョンだから、ドラゴンこつラーメン。……略してゴンこつラーメンだな!!」

畳みかけようとして来るな。

「ヴィールお姉さまのお役に立てて光栄ですわー」

シードゥルさんはいまだにドラム缶風呂もとい鍋に身を浸して温泉美女気分だった。

住み処を酒瓶から鍋に移した?

「さあご主人様! 早速試食するがいい! おれとシードゥルの合作ラーメンを!」

「断る」

「ええええぇーッ!?」

まあ聞いてほしい。

何故俺が試食を断固拒否するのか。

以前同じようなノリでドラゴン酒作ったことがあったじゃん?

それを試飲した時、作り主のバッカスからなんて言われたか覚えてる?

『ドラゴンのエキスが混じった酒は強力だから、あんまり飲むと不老不死になるぞ』

……だってさ!

「ドラゴンからとった出汁も似たようなものと容易に想像できる! 危険すぎて口にできるか!!」

「…………ッ!」

指摘するとヴィールは、ゴンこつラーメンをいったん置いて、膝から崩れ落ちた。

「……おれも途中から、そうじゃないかなって思ったのだ」

「気づいた時点でやめろよ」

何故最後まで突き進んでしまうのか?

結局ゴンこつラーメンは、同族として効能を受け止めきれるヴィールが一人で消費しましたとさ。