軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40 毎日健康

『聖者様』

「だからその『聖者』ってやめてくれません? 既に皆が真似しだしてるんだけども!」

今日もノーライフキングの先生が遊びにやってこられた。

まあ、彼とのお話は楽しいので、毎日来てくれてもオッケーなのだが。

『今日は聖者様にお土産がありましての』

やっぱり聖者様呼びはやめてくれないのか。

そして土産?

というか先生には色々貰いっ放しで、そろそろ申し訳なくなってくるんですけど。

今度は一体何ですか?

『前に行っておりましたじゃろ? 卵を産む鳥が欲しいと。それに似た鳥型モンスターはいないかと』

はい、言いました。

我が開拓生活に、まだまだ多種多様にある足りないもの。

食材カテゴリに属するものの一つ卵。

卵は美味しいよね。

料理のレパートリーの幅が広がるよね。

野菜に肉、調味料も揃って、次はたしかに卵が欲しいところ。

そして卵を安定供給するにはそれを産むニワトリごと欲しいところだ。

しかしここはファンタジー異世界。

俺の知ってるニワトリがいるのかどうかも怪しい。

そこでダンジョンに巣食うモンスターの中で、ニワトリによく似た生態を持つ者がいないかと捜索中。

モンスターである角イノシシで豚肉の代用ができたみたいに。

我が妻プラティとヴィールの二人も、実際いるかどうかもわからぬニワトリ型モンスターを求めて探検隊を組織し、秘境ならぬダンジョンへ進入中。

ということで今もここにはいない。

ここ連日ずっとダンジョンを駆けずり回っている。

『あの話を聞いて、ワシの方でも、聖者様の意に適うモンスターはいないかと思いましての』

「先生の洞窟ダンジョンに?」

我が開拓地に隣接するダンジョンは、今のところ二つ。

先生が主をしている洞窟ダンジョンと、ヴィールが主をしている山ダンジョンだ。

鳥系モンスターが巣食っているなら大抵山ダンジョンだろうと、プラティもヴィールもそちらばかりを探索しているが……。

『それらしいのがおりました』

と先生が取り出す鳥。

「おお!」

大きさといい、シルエットといい、まさしくニワトリではないですか!!

これは期待が持てそうだ!

……と思ったが。

『ヨッシャモ、というモンスターでしてな。鳥型のくせに空を飛ばん種類で、だからワシのダンジョンに発生したんでしょう』

「はあ」

……俺は気づいた。

このヨッシャモとかいうニワトリ型モンスターにある、ちょっと見逃せない特徴を。

「でも先生」

『はい?』

「コイツ、トサカありますよね?」

トサカ。

ニワトリの頭についている、真っ赤なアレだ。

ニワトリなんだからトサカぐらいついてても当たり前だと思うだろう。

俺もそう思う。

ただ、トサカが付いているニワトリと言ったら。

「オンドリ……!?」

オスのニワトリだよな?

俺は欲しいのは卵を産むニワトリであって、それは間違いなくメスなんだが。

つまりメンドリ

と思っていると、ヨッシャモとかいうニワトリモドキが、急に俺から見て後ろを向いた。

……。

……肛門を見せつけるな。

…………いや、鳥は総排出口だっけ?

と思ったら、その穴から急にモコモコっと何かが出てくる。

それは薄い茶褐色で球状の……、卵?

卵だ!

コイツ、トサカがあるくせに卵を産みやがった!

よく考えたら、ダンジョンから発生する疑似生物のモンスターは、疑似であるがゆえに繁殖能力もなく、従って雄雌の区別もない。

男と女、両方の特徴を兼ね備えていても何ら問題はないということだ。

繁殖する必要がないなら何で卵を産むんだろう? という疑問も湧き出るが、まあそれはどうでもいい!

卵が安定供給できるようになった事実の前では些事!!

俺が宝物のように両手で卵を持っていると、ヨッシャモがツカツカ寄ってきた。

……このニワトリモドキ。

よく見たらグラップラーみたいな顔つきをしているな。

そのヨッシャモが、いきなり蹴爪キック!

「おうッ!?」

俺を狙ったものではなかった。

正確には俺の持っている、ヤツ自身が生んだ卵だ。

鋭利な爪キックで卵が真っ二つに両断され、その中身が零れ落ちる。都合のいいことに真下にあった皿の上に、白身と黄身が綺麗に広がった。

「これは……!」

黄身が、ほぼ球状と言わんばかりにしっかり盛り上がっている。色は黄色というよりオレンジ色。

白身も真水かと思えるほどの透明度。

「食ってみろと?」

俺が尋ねると、ヨッシャモは頷いた。

お言葉に甘えて、皿から直接生卵を吸ってみる。

俺だって元々は日本人。

生卵は普通にイケる。

「うまぁぁーーーーーーーーいッ!?」

即刻、先生のダンジョンから五羽ほど引き取ることになった。

* * *

先生は帰られた。

夜になって、山ダンジョンからヘロヘロになりながら帰ってきたプラティとヴィールは、事実に打ちのめされた。

「お目当てが洞窟ダンジョンの方にいたなんて……! そうとも知らず山ダンジョンを駆けずり回っていたおれたちの労力は一体……!?」

「んもう! サッパリ役に立たないわね山ダンジョン! 主の性格が影響してるんじゃないの!?」

「ああ!? だったらお前はおれの山で獲れるスクエアボアは一口たりとも食べさせねえ!!」

アイツらもすっかり口喧嘩が出来るほど仲良しになりやがって……。

でも、ケンカする子たちには、このヨッシャモ生みたて卵で作ったスクランブルエッグは食べさせないぞー。

……。

大好評だった。

徒労だったとはいえ、この味を求めて山ダンジョンを奔走したプラティ、ヴィールの二人にとっては感動もひとしおだろう。

ただ、こうなってくると卵焼き専用のフライパンが欲しくなってくるな。