軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

404 オークボたちが動かす城

はい。

俺です。

時間を少し遡りまして……。

ダルキッシュさんの領から出撃する間際辺りのことです。

* * *

「オークボ城を動かす」

これは企画会議に出てきた案の一つだ。

オークボ城が動き出したら、お客さんもさぞかしビックリするだろうなあ、と。

それ以上は特にない。

元々ユーザー挑戦型のイベントである風雲オークボ城で、城が動いたから何かあるのかというと、本当に何もない。

見る人が驚いて終わり。

でも楽しそうだから作る。

それが趣味の世界だろう。

オークラ、オークマ、オークニヌシ、オークトーバーたちは、俺たちが博覧会を開催中に同時並行でオークボ城の第二回用『新』アトラクションを手掛け、動くオークボ城も見事完成させたということだった。

「とは言っても天守閣だけですがな」

「城郭全体を動かすのはさすがに……。自然物も含まれますので……」

謙遜も覚えるオークたち。

さすがだな。

「天守閣でも動かせるだけ凄いよ!」

本当にな。

ここで説明しておくと、天守閣というのはあくまで城の一部。お城のど真ん中で煌びやかに聳え立っているアレだ。

名古屋城でシャチホコ載っているアレとも言える。

特に意味なくお城のシンボル的な施設なのだが、だからこそ動かしたら皆驚きそう!

ということで動くようにしてみました。

「……これを動かして戦場まで行くというのですか?」

概要を聞かされまず戸惑ったのは領主ダルキッシュさん。

困惑第一号だ。

「皆きっと度肝を抜かれるでしょう?」

「たしかに抜かれるでしょうが……!?」

戦いというのはビビらせたら勝ちという側面もある。

その点において我らが動くオークボ城(天守閣のみ)ほど効果的なものはあるまい!

「ご安心ください! 新開発の移動式オークボ城には他にも様々な設備を搭載してあります! きっと戦いの役にも立ちましょう!!」

「おお!?」

そして早速オークボ城は戦地に赴くこととなった。

「オークボ城、発進!!」

俺の掛け声と共に城は地面から離れ、適切な速度で進んでいく。

「ほ、本当に城が動いたあ……ッ!?」

驚愕に顎が外れ、目玉が飛び出さんばかりのダルキッシュさん。

「凄まじいです聖者様! 聖者様のお力は、ここまで進んでいたのですね!?」

「はっはっは、それほどでもありません」

「いいえ、聞き及んでいます。聖者様の本拠地には、みずからの力で動く船があるとか!? この城にも人智を超えるカラクリが組み込まれて、それで動いているのですね!?」

魔法蒸気船のことを聞き及んでいましたか。

しかし、この移動式オークボ城には、それとはまた別の動力源が使用されているのです。

その動力源とは……!!

「オークたちが担いで運んでいる」

「はあああああああッ!?」

天守閣の底には、我が農場のオークが総がかりで城を持ち上げ、えっさほいさと担ぎ運んでいるのだ。

御神輿みたいな?

つまり移動式オークボ城。

動力。

人力!

「まさかそんな原始的な!?」

「他にやりようなかったし……」

さすがに車輪付けたり、キャタピラ付けたり?

駆動機関を開発して実用化するには時間とか色々手間暇かかりすぎる。

なのでもっとも手近な駆動機関。

人力に頼ることにしました!

いや、オークが担いでいるから正確にはオーク力?

「しかし大丈夫なのですか? いかにオークと言えどこんな巨大な城を担ぎ上げるなど……?」

ダルキッシュさんの心配ももっともだ。

俺も、隣の隣の領にあるという戦地までオークたちの体力がもつのかちょっと心配。

確認のため、オークボ城の底を窺ってみると。

城を担ぎ上げるオークたち……。

「わっしょいわっしょい」

「軽い」

「思ったより軽ぅーい」

「なあこれ、全員で担ぐ必要ないんじゃない? 半分くらいでいいよ」

「交代制にすればもっと楽になるということか! お前頭いいな!?」

思ったより大丈夫そうだった。

さすがウチのオークたちは特別製。天守閣を丸々持ち上げても余裕だった。

「このまま戦場へ殴り込みじゃあー」

「オレたちの神輿の凄さに度肝を抜かせてやるぜー」

「わっしょいわっしょい!」

ああっ、いつの間にかケンカ神輿のノリに?

そのまま戦地へと向かう城。

ウチの屈強オークたちは目的地までの道のりを城担ぎながら余裕で踏破し……。

* * *

そして実際戦場に着いて、俺たちのオークボ城は注目の的だった。

敵からも味方からも。

「凄いですよダルキッシュさん! 俺たち戦場で一番目立ってますよ!」

「それはそうなるでしょうが……!?」

それがいいことなのか悪いことなのか頭を悩ませるダルキッシュさんだった。

ともかく開戦。

なんやかやあって降伏勧告を拒否されたため、実際攻撃に移ります。

「カタパルト用意ー」

オークボ城の中腹辺りから出てくる砲身みたいなもの。

これも、風雲オークボ城新企画の一つだった。

名付けて人間カタパルト。

「発射!」

掛け声と共に砲身を使って発射されるのは、砲弾でも、投石機の石でもない。

人だ。

これは人間そのものを撃ち出すための砲台だったのだ!

解説しよう。

まずは撃ち出す人間に魔法をかけ、一回だけならどんな衝撃でも吸収して無事でいられるようにする。

カタパルトから撃ち出す。

以上。

これで離れた所にも人自体を弾丸輸送できる。

高い壁すら飛び越えて。

これで城壁に囲まれた敵の本拠地に労なくこっちの手勢を送り込めるぞ!

「なんと大胆な発想……! 聖者様、こんな仕掛けをあらかじめ用意されていたのですね?」

「これも新アトラクションの一つなんですが」

ダルキッシュさんの興奮に応え、解説する俺。

元々の発端は『人が空を飛べるアトラクションを作ろう』というアイデアだった。

空を飛ぶのは気持ちいいし、一旦空を飛んで狙ったところに着地するゲームなんか程よく難しくて楽しいかなあと。

それで作成された人間カタパルト。

発射動力はゴム? 空気? 火薬? リニア?

これも人力です。

射出しオークから背中を押してもらう。それだけで人は空を飛ぶ。

オークが背中を押し出す際に肝心の衝撃吸収魔法が解けてしまわないかという懸念があったが、それも改良と練習を重ねて解決できた。

さあオークボ城の人間砲台よ! 敵の防御を越えて内側に! 我が精鋭たちを送り込むのだ!!

「ちなみに、カタパルト? で敵陣に送り込んでいる兵士たちは……?」

「ウチに学びに来ている留学生たちです」

農場留学事業でウチに住み込んでいる、前途有望な少年少女。

彼らをカタパルトで随時撃ち出している。

最初に言った通り、農場は直接戦争に関わるつもりはない。

オークボとかゴブ吉とかが直接戦線に出てきた時点でワンサイドゲームになってしまい、後々まで世界のパワーバランスに陰を落としかねないからだ。

オークボ城で出陣した時点で台無し感もあるけれど……!

その点、留学生たちは将来こっちの社会に戻って活躍することが嘱望される人材。

彼らが前線で活躍しても問題ないし、むしろ未来のエリートたちの華々しいデビューとなるだろう。

『臆するなッ。お前たちが普段学んでいることを存分に発揮すれば、あの程度の敵陣苦もなく蹴散らせるはずだ……!』

生徒たちが心配で同行してきた先生。

俺の隣でエキサイトなさっている。

『一人も欠けてくるでないぞ! お前たちは強い! お前たちならできる! お前たちは腐ったみかんではない!』

「先生、落ち着いて……」

興奮しすぎてアナタが出てったらそれが一番酷いワンサイドゲームですからね?

「……とはいえ心配する暇もなくこっちの圧勝が決まりそうです」

実は、城壁の中はリアルタイムで状況把握。

ベレナが千里眼魔法で中の様子をつぶさに見せてくれる。

「魔族対魔族なら阻害魔法で対抗されてこう簡単にはいきませんけどね……」

ベレナの魔法越しに見せられた敵陣の様子は、普通に無双する留学生たちの雄姿だった。

さすが毎日先生に指導されているだけあって、強い。

「内部では、要人を人質に取っている何者かがいる様子。兵士がやむなく従っている理由はこれか……!?」

ではその人たちを解放して一件落着

ともいかず……。

「ではここでダメ押しに奥の手を使ってみましょうか!」

「奥の手!?」

本当はただ俺たちが使いたいだけなんですけど。

この新作、動くオークボ城に搭載された最終兵器……。

「主砲を使う!」

「しゅほう!?」

日本男児に生まれた俺はやっぱり大艦巨砲主義の呪縛から逃れられない。

デカいの一発ぶっ放してこそ勝利ですよ。

オークボ城から伸びる、あからさまにヤバげな砲身。

規模が人間カタパルトの数倍はあった。

「あの砲身から発射されるのは、オークボの湧き起る覇気! 究極オークのパワーをビーム砲として使うのです!」

「ここまで来てまだ人力頼みなのですか!?」

まあ、このオークボ城の施設すべてオーク頼みですよね?

ともかくオークボが全力で放出する覇気は、指向性をもって飛ばせばあの程度の都市ぐらい百回は消滅させられる!

これこそオークボ城の切り札に相応しい!

オークボの覇気を砲弾とする、その兵器は名付けて『覇動砲』!

撃つぜ必中、対閃光防御!

「あ、ちょっと待ってくださーい」

俺がノリノリのところでベレナから注進。

「敵地突入した生徒から手旗信号が入りました。『我、敵指揮官を虜囚せり』。うーん、戦闘終了ですねー」

「そうですか……」

オークボ城最高の切り札を使うことなく戦いは、俺たちの圧勝に終わった。

「本当にそれでよかったですけれどねッ!」

ダルキッシュさんにめっちゃ怒られた。

さすがに最後の方が悪乗り過ぎたか。