軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

367 武泳大会・四強揃う

引き続き武泳大会が盛り上がっております。

とはいえ大詰め。

決勝トーナメントも順調に進み、残り試合は少ない。

人魚闘士たちも次々脱落して絞り込まれていった。

今や、試合場に残っている選手は僅か四人。

その四人によって優勝の座が争われる。

選ばれし四闘士の顔触れは。

まず人魚王ナーガス。

名実ともに人魚国の頂点に立つ男。過去十五年連続優勝の記録を樹立した王者は、沈黙を経ての復活参戦。伝説は続くのか? 今年も当たり前のように優勝をさらっていくのか?

次に人魚王子アロワナ。

前年度優勝者。修行帰りの実力はこれまでの試合で証明済み。大会において偉大なる父王を撃破し、次代の旗手を担う資格を得られるか?

三人目。

論客ヘンドラー。

『闘魚』の家系と呼ばれる軍人一族ベタ家の次男坊。その面目躍如というべきベスト4入りの快挙だが本職の論客の仕事はどうした? とツッコミ殺到。

四人目。

俺。

場違いですみません。

この四人で準決勝及び決勝戦が行われることになる。

注目はやはり人魚王ナーガス陛下とアロワナ王子による親子対決だろう。

人魚界におけるナーガス王の強さは伝説だが今、急激な勢いでアロワナ王子の武勇が迫りつつある。

このまま新世代が台頭するのか?

それとも旧世代が踏みとどまるのか?

人魚国の王位継承問題にまで関わってきて注目せざるを得ない一戦だ。

そんな王と王子の対戦だが、それが実現するのは決勝戦。

トーナメントで別のブロックに分かれてしまったから、決勝にて親子が相対するには準決勝を勝ち進まなければいけない。

その準決勝の対戦カードだが、まず……。

第一試合。

人魚王ナーガスvs俺。

第二試合。

アロワナ王子vsヘンドラー。

というカードになっております。

「俺お義父さんと戦うのッ!?」

その事実にまず俺がブルッた。

休憩中で空気のあるエリアにいるので普通に話せる。

「妻のお父さんとガチ試合とか!? 強弱実力とか関係なく嫌なんだけれども! 怖い!」

「大丈夫よー」

俺と彼とを繋ぐプラティがまったく他人事のように言った。

「パパけっこう武闘派だから、肉親だろうと本気で殴りあえれば満足する人なのよー」

「それはそれで怖い!!」

人魚王さんのあのマッシブな肉体から放たれる本気パンチを食らってみろ!?

俺の頭なんぞゴルフボールのティーショットのように飛んでいくわ!

「あの……、今からでも棄権できませんかねえ? 俺充分戦ったでしょう?」

準決勝進出ですよ?

ここまで来たら成果は上がったとして撤収を視野にですね……?

「何を言っているの旦那様? ここまで来た以上、目指すは優勝よ!!」

「とことん大きく出た!?」

ウチの嫁の野望が留まるところを知らない。

「史上初の、他種族による武泳大会優勝……! その栄冠を手にするのはウチの旦那様こそ相応しいんじゃなくて!? 今こそアタシの旦那様が世界一であることを人魚国中に知らしめる時よ!!」

プラティ抑えてください。

キミが俺のこと誇りたい気持ちは嬉しいけれども、強すぎる自己顕示欲は身を滅ぼすよ?

あと俺もウチのカミさんは宇宙一だと思っているけれども!

「……はッ、甘い甘い。海の水が砂糖水になるような甘い見通しだねえ?」

「なんですって!?」

そんな挑発的な物言いをしながら現れたのが『凍寒の魔女』パッファだった。

プラティとは魔女仲間。

「パッファ! アンタはまた農場の仕事をサボって!?」

「ガラ・ルファが残ってくれてるから大丈夫だろ?」

キミら帰ったら本当ガラ・ルファに謝ってくださいよね?

そして舌戦の続きである。

「武泳大会は、人魚族の由緒ある大会なんだよ? 他種族の優勝なんてありえない! 優勝するのはアタイのアロワナ王子と決まっているのさ!」

「なんですってぇーッ!?」

魔女同士が顔を合わせれば衝突するのが常のこと。

農場でよくある風景が、ここ武泳大会会場でも引き起こされた。

「当然だろう。武泳大会の優勝者は人魚の頂点に立つ者! それにもっとも相応しいのは、人魚王族にてもっとも若く逞しいウチの人! 高貴さと強靭さを兼ね備えたアロワナ王子なのさ!」

「アホ言ってんじゃないわよ!? アホのウチのお兄ちゃんよりアタシの旦那様の方が優勝できるに決まってるでしょう! 惚気で目が曇ってんじゃないのよ!?」

「そりゃこっちのセリフだぁー!!」

パッファはアロワナ王子の婚約者ということで、そりゃ王子を贔屓目で見るに決まっている。

対してプラティも、夫の俺一番であると信じて疑わない。

この言い争いは延々と決着つくことがない!

「待ってください……」

そこへ現れたのが新たなる魔女。

『獄炎の魔女』ランプアイ。

「皆さん大きな勘違いをしています。優勝するのはわたくしの恋人ヘンドラー様です!」

「これ以上話がややこしく!?」

ケンカを治めるどころか、自分の恋人推しで参戦してきて益々戦火が広がる結果に!?

「うふふふふふ、ピーピーと煩いわねえ小娘どもが」

シーラ王妃まで出てきた!?

「アナタたちは崇高なる武泳大会の歴史を理解していないわね。過去十五回の連続優勝を誇るアタシのダーリンが、その辺のポッと出若僧たちに後れを取るわけがないでしょう?」

そして自分の夫であるナーガス王の優勝宣言し始めた。

プラティ、パッファ、ランプアイ、そしてシーラ王妃の四人が、睨み合いながらバチバチ火花を飛ばし合う。

プラティは俺。

パッファはアロワナ王子。

ランプアイはヘンドラー。

シーラ王妃はナーガス王と。

ベスト4に進出した戦士たちの配偶者もしくは恋人なのだから。

「……お言葉ですがお義母様? アナタの言う『ポッと出若僧』の一人にはアナタの実の息子が含まれているわけですが?」

「そうよママ! アタシが選んだ旦那様を若僧呼ばわりは許さないわ! 優勝するのはウチの旦那様よ!」

「わたくしのヘンドラー様とて若僧ではありません! 質実剛健にて文武両道の烈士です!」

と若い魔女たちも果敢に言い返す。

思えばここに集う女性たち。

巷から『王冠の魔女』と呼ばれるプラティ、『凍寒の魔女』パッファ、『獄炎の魔女』ランプアイ。

そして秘密だが『 暗黒(アドビヤー) の魔女』であるシーラ王妃。

全員魔女だった。

魔女とは、女人魚の中で卓越した魔法薬使いに与えられる呼称。

現状、公に魔女と呼ばれるのが世界に六人しかいないのだが、そのうち四人がここにいる……!

「とにかく! 優勝するのはウチのダーリンです! 含蓄あって脂の乗り切ったダンディなダーリンが、二十代そこらの坊やに後れを取るわけがありません!」

「時代は移り変わってるのよ! ウチの旦那様がパパを海の果てまでぶっ飛ばすクライマックスを見やがるがいいわ!」

「だからその坊やの中に、アナタがお腹を痛めて生んだ息子が含まれていると……!」

「ヘンドラー様は誰にも負けません!!」

武泳大会の好成績者が男人魚のスターダムなら、六魔女こそ女人魚たちの憧れを一身に受ける頂点。

その魔女のうちの四人(一人は秘密だが)が会して大論戦を繰り広げているのだから、そりゃ目立つ。

周囲からの視線も引く。

「おい……! あそこでプラティ王女とシーラ王妃が親子ゲンカしてるぞ?」

「それに加わってるのは『凍寒の魔女』と『獄炎の魔女』!?」

「アロワナ王子が『凍寒の魔女』と婚約したという話は本当だったのか!? 国家の危機じゃないか!?」

「いや王女が既に魔女なのを考えたら、そこまで危機でもないかも」

「っていうかヘンドラーが魔女とお付き合いを!?」

「役職以外何でも持ってんなアイツ!?」

ベスト4に進出した全員に魔女のセコンドがついているという前代未聞の状況。

それらすべてをひっくるめて、大会はクライマックスへ向かっていく。