軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

330 留学生vs農場五番勝負その二その三

「レタスレート……王女……?」

なんだその拍子抜けな表情は?

レタスレートが農場最強の人族でおかしいのか?

「ふっふっふ……、悪いけど手加減しないわよ。覚悟しやがるがいいわ……!」

「頑張ってくださいレタスレート」

傍らで友だちのホルコスフォンが応援していた。

その上で……。

「レタスレート様が次の対戦相手なんですか!?」

レタスレートは、滅ぼされた人間国の元・王女。

それだけ有名人で、留学生も何人かもその正体に気づいていたが……。

「そうだけど、何か問題でも?」

「いやいやいいやだって! 人間族最強が選考基準でしょう? 何と言いますか、いいんですか? あれが最強で!?」

そうは言っても、あくまで『農場在住』と範囲を絞っての最強だからな。

我が農場に住んでいる人間族は、レタスレートを除けばバッカスのところで働いている巫女さんたちぐらいのもの。

あとはミルクづくりしているサテュロスも厳密に人族サイドといえるようだが、どちらも戦闘職ではない。

「結果、このレタスレート農場在住人族の最強ということに……!」

「単なる消去法じゃないですか!!」

まあね。

留学生たちは、拍子抜けの極致みたいな感じになっていた。

先のベレナに比べてなお、この局面でのレタスレートの登場は意外すぎたのだろう。

場違いと言っていい。

「いいの……? 本当にやっちゃっていいの……?」

「ちょっと小突いただけで泣きそうなんだが……?」

「いくら人間国の王族に恨みがあるとはいえ……!?」

「弱い者いじめなど、魔王軍の軍人にあるまじき行為だ!!」

いずれの発言もレタスレートをクソザコ認定するところから出ているが……。

「来ないの? じゃあこっちから行くわよー」

もう試合は始まっていた。

レタスレートが駆け出した。ただその速度が、疾風すらも上回っていた。

「うわッ!?」

学生は驚いたことだろう。

気づいたら、自分のすぐ目の前にレタスレートが立っていたのだから。

「はあっ」

レタスレートの繰り出す拳。学生の一人が反射的に防御して、その拳を掴んだ。

しかしそれは、レタスレートがそうするように仕向けたのだった。

「力比べ、しましょう?」

「へ? うおおおおおおおおッ!?」

レタスレートの手を掴んだ生徒『王女様と肌接触』と感動する間もなく絶叫。

力に押されて腰が弓なりに反りかえる。今にも地面に倒れ込みそうだ。しかし地面に倒れないのは、学生の方が全力で抵抗し、力で押し返そうとしているからだろう。

しかしレタスレートの手はまったく押し戻されない。

「えッ!? どういうこと!?」

「力負けしている!? お姫様に!?」

周囲で見ている他の学生たちも大困惑。

レタスレートに押されている学生は、とりわけ体格がよくて力自慢のようだったが、それでもまったく抵抗できていなかった。

既に両手を添えて力を込めるが、レタスレートの片手にまったく敵わない。

「どういうことだ!? 人間国のお姫様がマッチョブルなんて聞いたことないぞ!?」

「それだけ怪力自慢なら、魔王軍との戦争でも活躍できたんじゃないの!?」

唐突過ぎるレタスレートの怪力設定に、若者たちは混乱するばかり。

そのただ中にいてレタスレートは得意げだった。元々調子に乗りやすいヤツだ。

「フフフフ……、私だって最初から華麗で最強だったわけではないわ。強さには弛まぬ努力の土台があるのよ……!」

華麗というわりには泥臭いパワータイプだが……。

「そう、私がこんなに力持ちになれたのは……、豆をたくさん食べたから!!」

「豆!?」

「豆を食べることによって得られる超パワー! エンドウ豆、落花生、ピーナッツ! さらにホルコスちゃんの納豆を毎日食べることで、私は超筋力を手に入れたのよ!!」

レタスレートはさらに力を込めて手を押す、相手の学生はついに支えきれなくなって海老反りのまま地面にめり込んだ。

……めり込んだ?

「ひいいいいいいッ!?」

「なんて馬鹿力……!?」

恐るべきは豆パワー。

豆によって無双の怪力を手に入れたレタスレートは、充分に農場最強の人族と言って過言ではなかった。

「豆を食えば誰だって、これぐらい力持ちになれるのよ! 豆さえ食えば!!」

「信じられるかッ!?」

レタスレートは、自分で地面にめり込ませた学生を、今度は逆に引っ張って土中から引っこ抜く。

当人はめり込まされた衝撃で既に意識を失っていたが、レタスレートは、その気絶学生の足を持って……。

「ふぃん……!」

持ち上げた。

天に掲げるように、棒か何かに見立てて。

「まだまだ行くわよー」

気絶学生を振り下ろし、横に振り薙いで、右手から左手に、左手から右手に軽快に持ち替えて。

要は人体それそのものをビュンビュン振り回している。

人の体をヌンチャクみたいに……!?

ビュンビュンビュンビュン風切る音を鳴らしながら、人体を振り回している……!

風圧で、土煙が舞い上がるほどに。

「さあ、何処からでもかかってらっしゃいー」

「「「「きゃああああああああああッ!?」」」」

しかし、そのあまりにも異様な光景に怖気づいた学生たちは、我先にと雪崩を打って逃げ散ってしまうのだった。

第二試合。

農場側レタスレートの勝利。

「豆さえ食べれば強くなれる!」

「そうですねレタスレート」

レタスレートとホルコスフォン、二人の豆愛による勝利だった。

* * *

「なんだキミたちー? 二連敗とは情けないなー?」

ベレナからレタスレートと立て続けにボコボコにされた留学生たち。

「では第三試合へと行きましょう」

「ちょっと待ってえええッ!?」

学生側からもはや聞き慣れたフレーズがまた繰り返された。

「も、もうけっこうです! 農場の強さ恐ろしさは充分理解できましたから!」

「そうは言っても、魔族人族と農場最強をお呼びだてしたんだから、やはり人魚族最強にもお出ましいただかないと完璧じゃないでしょう?」

そう第三試合の選手は、人魚族においての農場最強。

となれば出るのはやっぱりこの人。

「はぁい」

「「「「プラティ様ああああああッ!?」」」」

主に人魚族の、マーメイドウィッチアカデミア農場分校生が絶叫を上げた。

「パッファの方が出てくるかと思った? 別にあの子の方でもよかったけど、今日はお願いして代わってもらったの」

抱きかかえているジュニアを俺に預ける。

「せっかくママからアナタたちのことお願いされたのに出産、子育てと慌ただしくてかまってやれなかったものね。今日がいい機会、アタシからもしっかりアナタたちに教えて上げようと思って……」

これまでの対戦相手は、農場に来てから急激にパワーアップしたというパターンの輩たちだった。

しかし今回のプラティは、最初から強い。

「たっぷり勉強してね、アタシが『王冠の魔女』と呼ばれる意味を……!」

結果から言って、第三試合はそれ以前より遥かに増して一方的なものになった。

プラティの薬学魔法は凄まじいばかりに最強で、しかも強さの質で言えば『完璧』というタイプでの最強だった。

パッファ級の凍結魔法薬。

ランプアイ級の爆炎魔法薬。

ガラ・ルファの魔法細菌やゾス・サイラの魔法生物まで使って着実かつ円滑に蹂躙していく。

「何でもできる万能型、それが『王冠の魔女』の恐ろしさ」

解説役のパッファさんがコメントをくださる。

「突出した強みがない代わりに弱点もない。一部の隙もない堅実さ、まさに王侯の戦い方だよねえ」

元々格下が格上に勝つには隙なり弱点なりを突かなきゃならないんだから、隙も弱点も絶対ないのが特徴のプラティほど格下から見て絶望的な敵もない。

無論奇跡の大逆転など起きようはずもなく、プラティは学生たちを最後まで蹂躙し尽すのだった。