軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

281 仲良し計画

リテセウスとエリンギア。

この二人をもっと仲良くさせんといかん。

いや、現状は一方が一方を一方的に嫌ってるんだけど。

エリンギアはプライド高いからなあ。

自分の種族が最高だと信じて疑わない。そんな彼女にとって才能の塊であるリテセウスが許せないのだ。

今はまだ小康状態だが、いずれ憎しみは臨界点を越えて暴発することだろう。

さすれば全種族の若手を交流育成する今回の企画も間違いなく破綻する。

何とか手を打たねば……。

「どうすればいいかなあ?」

身近にいる妻プラティに相談してみる。

彼女も二人の険悪さを憂いていたらしく、既に用意してあった案を挙げてくれた。

「勝負させてみるっていうのは?」

『タイマンはったらダチぜよ』の法則か。

プラティは時おり脳筋なところが出る。

「でもそれ初日にやったからなあ……」

「そうねえ……」

それでまったく仲よくなれていない。

「逆に、敵としてじゃなく双方味方として戦わせてみるってのは?」

「双方味方?」

二人に同じ困難を与え、協力して乗り越えさせる。その協力によって友情が芽生える。

バディの法則か。

それはまだ試してないので、やってみる価値あるかも。

「採用だ! じゃあ、どんなミッションを与えればいいだろう?」

「順当なところで言えば、ダンジョンに放り込むとか?」

「普通に脱出を目指すのでもいいし、何かしらクエストを設定するのもいいな。難易度が上がれば上がるほど、絆も深まるだろうし!」

個人の感想です。

「よし、では早速二人をダンジョンに放り込もう! 先生のダンジョンにするかヴィールのダンジョンにするか、どっちにしようかな!?」

そのためにはまず二人を探さなければ。

何処にいるかなアイツら!?

そう思って飛び出した矢先に、「きゃああああッ!?」と悲鳴が聞こえた。

絹裂く乙女の悲鳴だ。

「むむッ!? 何事だッ!?」

悲鳴のした方に行ってみると、そこになんと探しているリテセウスとエリンギアがいた。

二人一緒に。

何をしているのか?

もしやエリンギアがもう目障りなリテセウス抹殺計画を実行に移したのか!?

と思ったら……。

エリンギアは、押し倒したリテセウスの上に覆いかぶさるようにして……。

その唇を奪っていた。

「むぐううううううッ!?」

リテセウスが苦しげに呻く。

そしてプハッと唇が離れたら……。

「せッ、聖者様! 助け、助けて……! むぐうううううッ!?」

またキスされた。

もしやさっきの乙女のような悲鳴を上げたのはコイツか!?

「むぐううううッ! むぐうううううッ!!」

唸り声で助けを求められても。

えーと。

リテセウスがエリンギアに襲われている。

その可能性は元から危惧していたものの、実際に起きたこの事態は、想定していた襲われとは若干異なっていた。

まさか性的に襲われていようとは。

しかも、この場合、被害と加害がスタンダードとは逆じゃない?

女子が男子を襲っている。

いや、最近じゃ特におかしくもないのか?

……とにかく、このままにはしておけまい。

「……おい」

「むはあッ♡♡ はぐ♡♡ おほふ♡♡ もぶぶぶぶぶぶ……♡♡」

「おいってば! エリンギアッ!!」

「はッ!?」

大声で呼びかけて、やっとこっちに戻ってきたエリンギア。

今までは違う世界に没入していた。

「えッ!? 何ッ!? 聖者様!? 何故こんなところに!?」

「こっちのセリフだ!!」

白昼堂々何をやっておるか!?

農場の風紀を乱すのはご法度だぞ!?

「違うのです! これは! リテセウスを襲っていたのです!」

「何も違わないじゃねーか」

「そうではなく、この生意気な人族を亡き者にしようと命を狙ったのです! そういう意味で襲ったのです!」

益々ダメだけど。

「それでどうして、こんな桃色っぽくなった?」

「乙女にそんなことを聞くんですか!? 聖者様は破廉恥ですね!」

酷い理不尽を見た。

「と、とにかく貴様!」

「はい!?」

エリンギアのよくわからない激情の矛先がリテセウスに向いた。

「私を辱めた以上は、責任を取る気はあるんだろうな!?」

「むしろ僕が辱められた気が!?」

「細かいことはどうでもいい!!」

こんな理不尽がまかり通るのを、俺は今まで見たことがない。

「こうなったら貴様、私のことをしっかり娶ってもらうからな! ……人族の英雄に私が手綱をつけるのだ!」

こうして。

何かよくわからんうちにリテセウスとエリンギアは付き合いだした。

* * *

「ダーリン、私のこと好き?」

「あ、あの……!?」

「好き?」

「好きです……!!」

「私も好きー」

そして人目も憚らずイチャつき出した。

さすがに周囲の多くの者たちも、異様な光景に息を飲んだ。

「あの魔族女……!! リテセウスが大嫌いじゃなかったのかよ……!?」

「甘いわね、あれがツンデレってヤツよ」

「あれが!?」

「しかし、あそこまで大胆にツンからデレを裏返すとはもはや力技……! あなどれない女だ……!」

一緒に勉強する若手たちも息を飲んだ。

これに対するエリンギアの釈明。

「甘いな。これが巧妙に時勢を見抜いた私の策だとわからんのか?」

何が?

「リテセウスは、人族最高の英雄だ。それを取り込むために女の武器まで用いた私の覚悟に感じ入るがいい。これでリテセウスは、私を愛するがために魔族と敵対できず、英雄を夫にした私の価値も魔王軍で上がる!」

「夫!?」

知らないうちに話が進んでリテセウスは驚愕する。

もはや逃げ場がない。

「ねえねえダーリン、子どもは何人ぐらい欲しい?」

「気が早いんでは?」

「私は二十人ぐらい生みたいな」

「多い!?」

うーん。

まあ、リテセウスくんも才気煥発過ぎるところがあるから、エリンギアみたいな問題のある奥さんを抱えることで差し引きゼロの穏当な人生になりそうだな。

と思った矢先。

なんとリテセウスくんの方からエリンギアにキスしてきた。

「わかった! 二十人作ろう! 世界で一番幸せな家庭を作ろう!!」

「あぁん素敵アナタ!」

リテセウスくんが現実に迎合した。

現状を全力で楽しむことによって人生の勝者の側に回った。

さすが才気煥発なリテセウスくんの見事な判断。

結果、ただのバカップルが誕生しただけだった。

直前に俺が考え出した『ダンジョンに放り込んで絆アップ計画』は無論立ち消え。

この企画が、各種族の間での交流を深めていこうというのも目的の一つだったので、カップル誕生は目的を果たしていると言えば果たしているが。

俺の想定する交流の段階を越えてきたなあ。

これが若さってことか……!?

お互い十代だもんなあ……!

勢いあるよなあ……!