軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

273 思い上がったら

私は魔族エリンギア。

世界でもっとも高等な種族である魔族のエリンギア。

魔族は、最高種族となった。

人族を下し、地上の覇者となったことで頂点を掴んだのだ。

海の底にビクビクと隠れ住む人魚族。

その他大勢の亜人種など物の数ではない。

すべてが魔族にひれ伏し、支配を受けるがいいのだ。

我ら魔族が最強!

我ら魔族が支配者!

すべてを見下し、すべてを所有物とする!

それがこれからの魔族のスタンダードなのだ!

この私エリンギアはまだまだ若手の魔族として魔王軍の下っ端であるが、いずれは昇進して全種族の上に立つ所存。

そのためにも今のうちから気位を高く持って、支配者としての品格を養うのだ。

おお!

シリンギ、ヤドゥルザーク!

キミたちも同じ考えなのか?

同期の私たちは出世の段階も同じであろうから、私たちが四天王となる頃には、その時こそ魔族の天下だな。

他種族すべてを奴隷にし、魔族が支配してくれようぞ!

ラーティル、ロクホンギ、サザ!

キミらも同じ考えか!?

ん?

スタークは何を言っているのだ? 協調が大事?

協調など魔族同士で大切にすればいいので、他種族にまで分けてやる必要などない。

支配してやればいいのだよ。

テクトン、ゼックストも同じ考えなのか?

……わからん者がいるものよ。

まあいい、所詮少数派だ。

これから魔王軍の出世レースで優先的に蹴落としていき、私々の同調者だけで上層部を占めればいい。

フン。

そうすればいずれ魔族がすべての他種族を奴隷化する理想世界が実現する!

私たちの時代が魔族絶頂の時代なのだ!

早く出世したいなあ!

* * *

などと言い合っている日々が続くうち、我々は呼び集められた。

まず上官からこう言われた。

「最近、いくさの勝利に浮かれて『魔族は世界最高』などと傲慢な風潮が広まりつつある。魔王様は憂いておいでだ」

スッと青褪めた。

それは私が日頃から触れ回っていることではないか。

粛清?

もしや粛清されちゃう?

集められた中で私と同じようなことを言っている連中も軒並み青褪めていた。

しかしスタークたち軟弱派の顔触れも見かけるので、粛清じゃない?

せいぜい訓戒?

「そこで、お前たちには研修を受けてもらう」

研修?

上官はなおも続ける。

「これは魔王様直々の指示だ。お前たちは、とある場所へ出向き勉強してもらう。己の分際を。魔族もこの世界に生きる一種族に過ぎないことを実地で学んでもらう」

と言うのだ。

何だかわからないが、腑抜けたことを言う。

戦争に勝った魔族が最高の種族に決まっているではないか!?

既に私には最高種族としての誇りがある!

ちょっとやそっと説教されたくらいで考えを改めるなどと思うなよ!

研修などと何処へ連れて行くのか知らないが、逆にそこで魔族のこれからあるべき姿を示し、新しい魔族の時代を体現してくれよう!

そして、転移魔法で連れていかれた研修先は……。

* * *

想像を遥かに超える地獄だった。

ドラゴンがいた。

これがドラゴン。

世界二大災厄といわれるうちの一つ。

直接見るのは初めてだが、それはもう見ただけでわかる最強感。

ドラゴンが火を吐くさまを見た。

あの一吹きだけで魔都が壊滅するなと思った。

恐ろしい。

一緒に連れてこられた同期たちで、早くも失神する者たちが続出した。

ドラゴンの放つ覇気に当てられただけで意識がもっていかれる!?

「どうだ? 凄まじいであろう?」

と魔王様が言う。

「お前たちは日頃より魔族が世界最高の種族だと嘯いているようだが、ではお前たちはヴィール殿に勝てるのか? 彼女もこの世界に生きる一種族であることはたしかだぞ?」

勝てるわけない。

ドラゴンなんかに勝てるわけない。

ドラゴンだけでも意識がもってかれるクラスの衝撃だというのに、さらに驚くべき出来事があった。

そのドラゴンと互角に戦う相手がいたのだ。

しかもなんだ? あの種族は?

見た目の特徴が、私の知るどんな亜人種とも当てはまらない。

背中から翼が生えている種族など、この地上にいたか?

しかもその翼人間が、ドラゴンのブレスを結界めいたもので完全遮断し、かつなんか強力な攻撃魔法みたいなのを撃ち返している!?

互角!?

完全な互角!?

ドラゴンと互角に戦えるなんてノーライフキングぐらいしかいないんじゃないの!?

「あのホルコスフォン殿は、かつて天神が生み出した天使という種族だ。一度世界を滅ぼしたことがあるという」

魔王様が解説する。

はわわわわわわわわわわわ……。

はわわ!?

「どうだ? あの二人に魔族が挑んで勝利できると思うか? できないならば魔族が世界最高と思い上がる資格はないな?」

「魔王さん、どうですか調子は?」

「わはははは、どいつもこいつも覿面に度肝を抜かれておるわ。思った通りの展開だな!」

なんか魔王様に慣れ慣れしく話しかける人族が!?

え? 人族か?

何か微妙に違う気が……?

とにかく敗北種族の分際で魔王様と世間話など身の程知らず千万!

え?

ここの主!?

ドラゴンも天使も、この人族の配下?

…………………………………………す、すいません。

「でも、ここでダメ押ししておいた方がいいと思うんですよ。それでいいことを考えました」

「ほう、聖者殿が考えたことならきっと名案に違いない」

待って!

こちとらドラゴンと天使だけでお腹いっぱい過ぎるのにまだ何かあるの!?

「では先生お願いします」

『はい』

今度はノーライフキング来た!?

世界二大災厄のもう一方来た!?

「驚くのも無理ありませんが、まだ驚くところじゃありません。先生にはある方を呼んでいただくために来てもらいました」

え? 誰?

っていうか、これ以上驚くことなんてないだろう!?

「では先生、よろしくお願いいたします」

『よかろうでしょう。では。にゃ』

ノーライフキングがテキトーな呪文で杖を振りかざすと……。

次元が歪み、瘴気が漂う。

これはもしや召喚魔法!?

気づいた時には我々の前に神が降臨していた。

「冥神ハデスさんです」

気軽に紹介するな!?

我ら魔族の主神!?

っていうか神を召喚したの!?

魔族でなら専門の召喚術師ですら数十人がかりで上級精霊召喚がせいぜいなのに!?

さすが世界最悪のノーライフキングと恐れおののく暇すら与えられんのか!?

「ではハデスさん、お言葉を……」

『うむ』

そして例の人族っぽい男が神を促してる!?

何なのコイツもう!?

『えー、話は聞いておるぞ。お前らアレだろう? 魔族が世界最高! とかイキッておるそうだな?』

なんで神が私たちのこと聞き及んでいるの。

『神はそういうのよくないと思うぞ? この世界に住む人類は皆兄弟ではないか? 無闇に上下を決めたりせず仲よくな?』

そして神から直々に注意を受けた!?

これはどうしたらいいんだ!?