軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

233 城を建てる話

鰹節づくりが一段落し、俺は冬の持て余した時間を、鰹節によって広がる料理レパートリーの開拓に充てている。

そんな折だった。

オークボが、なんか俺にお願いしに来た。

しかもオークボだけじゃなく他のオークも数多く引き連れて……。

「我が君に、お願いがございます」

「何?」

オークボたちの方から俺にお願いしにくるとは珍しい。

彼らオークは、我が農場の作業を円滑にするためにダンジョンから連れてきた経緯はあるものの、今や立派な仲間で散々助けられてきた。

そんな彼らが改まって頼みに来るのだから大抵のことは叶えてあげたい。

「言ってみたまえ」

「先日の我が君の御業、我ら一同心から感服いたしました!」

変な前振りから入る。

オークボたちも、ウチに来てから相当レベルアップしたけど妙な仰々しさまで覚えてしまったな。

「マナメタルの船! あのように奇妙でかつ合理的、誰も想像したこともないものを完璧に仕上げる我が君の絶技! 我ら一同心より圧倒されました。あれぞまさに神の技!」

「いやいや……!」

ちょっとほめ過ぎですよオークボくん。

……あ、ズッキーニ食べる?

「我らはまだまだヒヨッコでした……! 数多くの家を建て、蔵を建て、水路を引いて、実績を上げてもまだ我が君の足元にも及ばぬ……! そこで思ったのです!」

「何を?」

「我々もさらなる実績を上げたい! これまでにないものを建設してさらなる技術を身に付けたい! と思うのです!!」

これまでにないものを建設、って……。

「何を建てるの?」

「城です!!」

城か。

何言ってんだコイツ?

いやいや待て待て。俺の可愛いオークボたちが真剣に頼んでいるのだ。

こちらも真剣に聞いてあげようではないか。

「……し、城建てたいの?」

「御意! これまでにないほど大きいものを!」

我が農場で、住人が寝起きする家屋や、収穫物を保存する蔵、その他さまざまな建築物を建築するのはオークたちの担当だった。

彼ら力持ちだからね。

それが気づいたらいつの間にか、こんな立派な建築マニアに育っていたとは……。

建てること自体に喜びを感じるようになってしまったんだね。

女道楽に食道楽、様々な道楽あれど、究極の道楽は普請道楽なんて言ってる場合じゃねえ。

「いやあ、でも待って? 城なんてどこに建てるつもりなのさ?」

ウチの農場のどこに建てても邪魔になると思うよ?

城ってあれでしょう?

やたらでっかくて、豪勢で、石造りで造っちゃうやつでしょう?

そんなの我が農場に建設して、どう活用するつもりだよ?

「心配は御無用にございます。城を建てるのは農場内ではありません」

「農場の中じゃない?」

じゃあどこに建てるのよ?

「エルロン殿が、ここに来る途中に見かけたそうなのです。城を建てるのに絶好の条件を持った土地を」

「エルロンが?」

エルフのエルロンが?

彼女たちは、元々魔国人間国を荒らし回るエルフ盗賊団だったのが、盗賊ゆえの逃亡生活の果てに、ウチまでたどり着いたという。

その途中、何か色々見ていたとしてもおかしくないが……。

「その場所で、納得いく城を建ててみたいのです!」

「待ってそれ、農場の外に出ていくってこと? キミらが全員農場を離れるのは寂しいんだけど……!?」

「行きはヴィール様に運んでいただけるよう話はついています! そして現地に着いたら転移ポイントを設置しますので、毎日、夜には帰ってくることができます! 転移魔法で!」

色々完璧じゃないか。

「我が君の許可を頂きたく! お願いいたします!」

「「「「お願いいたします」」」」

今までずっと農場で暮らしてきたオークたちを外に放つのは心配だけど、ここまで本気で頼んでくるのを無下にもできないし……。

冬ですることが極端に少なくなってるから、それを埋め合わせるためにもいいかな。

「よきにはからいなさい」

「ありがとうございます!!」

こうしてオークの出張城づくり編が始まった。

* * *

「……ここが、絶好の城作りポイントかぁ……!?」

俺も気になったし暇だったしで、オークボたちの城作り遠征に同行してみることにした。

ドラゴン形態のヴィールに乗って、エルロンの案内で空を飛ぶこと……。

体感的に三時間程度だったかな?

そこは小高い丘で、頂上に立ってみると大変見晴らしがいい。

見下ろすと大きな川が流れているのが見え、その先には雄大な平地が広がっていた。

「……耕したら、さぞいい田畑になるんだろうなあ」

と思ってしまうのは、もはや職業病だろうか?

「オークボリーダー! この丘上の土地! 平らな上に広大です! デカい建築物を建てるにはもってこいです!!」

「あの川! あの川まさに天然の堀じゃないですか!? 飲み水としても使えるし!」

「待て落ち着け! 川の水を飲料に使う場合、上流から毒を流される可能性を考慮しておかなくては! 手分けして調査だ! 水源の位置を確認して来い!」

「この頂上を築城予定地とするのは確定として……。ここまでに至る山道を確認するぞ! そこにどんな罠を設置するか皆で会議だ!」

……。

オークたちの意気込みがガチすぎて引く。

そういえばお城というのは本来、敵が攻め込んできた時に立てこもって応戦するための、戦争施設であったと聞く。

最初『城を建てたい』とオークボたちが言い出した時、単にでっかい建物を建てたいだけなのかと思っていたけれど、そうじゃないっぽい。

コイツら、攻城戦に耐えきれるガチな城を建てようとしてやがる……!?

この城に籠もれば十年戦えるぞ的な!?

何処からそんな知識を仕入れてきたというのか? これが建築マニアの情熱ということか!?

「転移ポイントの設置完了しましたー」

何気に同伴していたベレナが仕事していた。

これでオークたちは来たい時いつでもここに来れるわけだが……。

オークたちの冬の工作、城作りが始まった。

* * *

……一ヶ月後。

俺はオークたちの工作ぶりを見学するため、再び丘の上を訪れていた。

……。

丘の上の城。

というのを思いついたが言わないことにしよう。どうせ異世界の人には伝わらないし。

そもそも崖の上でもないし。

……丘の上の動く城

いかん色々混ぜ過ぎだ。

そんな益体のないことはともかく、もうかなり完成していた。

最初来た時はただの平地だった丘の上に、見るも立派な城が建てられてた。

西洋風の石造り。

防護用の城壁とか見張り用の側塔とかもしっかりしていて、ちょっとやそっとでは切り崩せなさそう。

「我が君! ここにカタパルト置いて一斉投石するとカッコよくありませんか!?」

「川の向こうまで長距離で飛んでいくのを鋭意設計中なので!!」

「見てくださいここ! この壁の穴から矢で狙い撃ちにできるんですよ!!」

「この通路を通ろうとした敵が落とし穴に落ちて、上からボッコボコってスンポーですよ!!」

オークたちが楽しそうなのはいいが、どんな難攻不落の要塞を作る気なのか?

闘争心剥き出しすぎる施設になっているじゃないか。

城はまだ完全に完成とはいえず、そこかしこからトンカン木槌の音が聞こえてくるものの、実質的に今敵が攻め込んできても充分対応できそうな出来に仕上がっていた。

でも、これ出来上がったあとどうするんだろ?

動機からして「作りたいから作りました」としか言いようがない始まりだったからなあ。

「オークボリーダー! 我が君! 大変です!!」

なんかオークの一人が、慌てて駆け寄ってきた。

俺も居合わせていたのが幸いと、報告してくる。

「休憩がてら、ちょっと周囲を散策してみたのですが、とんでもないものを発見してしまいました!」

「ん?」

「人族の村があります!!」