軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

225 新四天王の活躍(上)

私はエーシュマ。

栄えある魔王軍四天王に選ばれた新たなる一人。

とは言え現在は聖者様の農場のご厄介になり、至らぬ自分を鍛え直す日々。

今回のお話は、そんな私の苦難と成長を綴ったものである。

* * *

「フレイムブレイス! 炎よ! 我が剣となり給え!」

呪文詠唱中。

この間いかにカッコいいポーズを決められるかが魔族戦士にとってのキモである。

「獄炎霊破斬!!」

両手から放たれる大炎が天を焦がさんばかりに吹き上がる。

ただのデモンストレーションなので何か具体的に燃やすわけにもいかないから、空へ向けて放つのだ。

「おおー!」

「スゲー!!」

それを見て驚嘆しているのは人魚の少女たち。

何か彼女らも勉強のために農場に住み込んでるとかいないとか。

「私、魔族の魔術魔法初めて見ましたわ!」

「噂に聞くけどやっぱり派手なんだなー」

「い、いやそれでもアタイたちのパッファ様の方が!」

「イカレ具合でならガラ・ルファ様の方が!!」

ディスカス、ベールテール、ヘッケリィ、バトラクスとか言う四人。

この若い四人は、私のすることに素直に驚いてくれるから好きだ。

変に擦れてしまったバティやベレナよりよっぽど可愛げがある!

「はっはっは! 凄かろう凄かろう! 獄炎霊破斬は、私の持つ魔法の中でも一番攻撃力の高いものだからな!!」

私はこの魔法で、三ッ星ダンジョンのモンスターを仕留めまくったこともある!

凄いだろう!?

魔族の魔術魔法は凄いだろう!?

「無垢な少女たち相手に力自慢しないでくださいよ、恥ずかしい……!」

「そういうお前は、擦れてしまった元同輩でかつ後輩?」

ベレナが現れた。

「誰が擦れてるんですか? 聖者様の農場に住んでれば誰でもこうなるんですよ?」

「こうなるとは?」

「高等魔法程度じゃ誰も驚かなくなるんです」

心外な。

魔王軍四天王に選ばれる、この私がもっとも得意とする魔法だぞ!

これで驚かないなら、何に驚けと言うのだ?

「そんなエーシュマ様に今日は、魔法の先生をご紹介します」

「魔法の先生?」

「先方と聖者様のご厚意によるものなんで、しっかり学んでくださいね。自分の身の程とかを」

はっはっはっは……。

ベレナよ、四天王に抜擢された私が、今さらヒトから何を教わるというのだ?

生涯学習は、志として立派なれど、あまりに度が過ぎると卑屈となる。

敵から畏怖されるべき魔王軍四天王としては、あまりに情けないことではないか?

「というわけで先生、教育のほどよろしくお願いします」

『うむ』

…………。

あれー?

目の前にアンデッドがいるぞ?

アンデッド。

不死の魔物。

ダンジョンより理外の力を受け活動するようになった死にながら生き、生きながら死んでいるもの。

しかもこの立ち姿から発せられる瘴気と、完成された佇まい。

これはもしや、アンデッドどころかあらゆる類の生き物の中でもっともヤバいと言われる。

ノーライフキングではないですか。

「ノーライフキングの先生です。親しみを込めて先生と呼んであげてください」

やっぱりノーライフキングだった!?

世界二大災厄の一方と言われている凶悪存在に、なんでフラリと遭遇しているの私!?

本物だろ!?

人魚少女たち四人が脱兎のごとく逃げ去っちゃったし!?

『ここに来る途中、大炎が吹き上がるのを見たが……』

ノーライフキングが喋った!?

会話可能なのか!?

『あれは魔術魔法の獄炎霊破斬だな? 上級精霊イフリートの力を借りて使う高等魔法。その若さで難しい魔法をよく会得したものだ』

「ああ!? ……は、はい!」

なんか褒められた?

ノーライフキングすら私の実力を認めるなんて、さすが四天王の私!

「いい気にならないでください。先生は褒めて伸ばすタイプです」

うっさいよベレナ。

『ゆえに今、おぬしが学ぶべきことは世界の広さ。今自分の立ってる場所が頂点などではないということ』

「はい?」

『さすれば井の中の蛙となることもなく、先に進み続けることもできよう。……先ほどの魔法を』

ノーライフキングは凄いことを言い出した。

『……ワシに撃ってみるがいい』

「はあ!?」

いくらノーライフキングでも悪ふざけが過ぎるだろう!?

獄炎霊破斬は魔術魔法の中でも最上級の一角。いかに最強のアンデッドと言えども食らえばタダでは済まんぞ!?

『いいからいいから。気にせずやってみなさい』

「くっ、どうなっても知らんぞ?」

私はたっぷり詠唱して魔力を込めて放った。

「獄炎霊破斬!!」

しかしである。

私はまだ世界二大災厄を舐めていたということだろう。

同時にノーライフキングが放った魔法炎が、私の最強魔法を飲み込み完全に封殺。

しかもそれだけでまだ勢いを衰えさせず、私へ押し寄せる。

「うがわぁぁーーーーーーッ!?」

『おっと、力を入れ過ぎたか無効化』

魔法炎は、私に届く寸前で放った当人によって瞬時に消された。

おかげで私は、魔族の黒焼きになるのを寸前で免れた。

「……何と言う凄まじい魔法力……!?」

私の最強魔法が、同属性で完全に押し負けていた。

勝負の形にすらなっていなかった……!?

「同じ獄炎霊破斬でも、使い手の魔力量でここまで威力に差が出るということなのか……!?」

『いや、今のは獄炎霊破斬ではないぞ』

え?

いや。

まさかこの流れは……!?

『炎だ……!』

最下級の火精霊の力を借りて放つ最下級魔術!?

魔族の子どもが焚き火の種火程度に使うアレで、私の必殺魔法を上回った!?

『魔力の絶対量によって魔法の威力が変わるというのは見立て通り。しかしその規模はおぬしが想像するより遥かに大きい。それを意識し、向上心に結び付ければ、おぬしはどこまでも強くなれるであろう』

規模の差が、オシッコちびりそうなレベルなんですけれども!!

こんなのどうやって受け止めればいいんですか!?

『ワシは不死化する前は人族だった故、魔族の魔法は専門外じゃが、できる限りのことはレクチャーしてしんぜよう。ヒトに教えることは好きでな。人であることを捨てたこの身に人の繋がりを思い出させる……』

* * *

くっそう。

先生の授業、超ためになった。

魔力の効率的な運用法が身に着いたし、たくさんの上級精霊と新たに契約することができた。

「あの知識量で、魔術魔法は専門外ってどういうことよ……!?」

ノーライフキングは超越的存在。

頭ではわかっているつもりだったが、私はその超越ぶりをしっかり実感できていなかったということか……!

「で、でも、今日の授業にレヴィアーサはいなかった……! 同じ四天王として差をつけることが……!!」

「レヴィアーサ様ならとっくに先生の講義修得済みですよ」

「なにぃッ!?」

意味もなく同行してくるベレナに教えられて、私驚愕。

「あの人は有能ですからねえ。教えられるまでもなく先生の存在を探り当てて、自分から先生のダンジョンへ教えを請いに向かってましたよ」

「くっそう! アイツ有能か!?」

「だから有能なんですって」

聞けば、我らが魔王ゼダン様やアスタレス様も、先生の授業を受け上達したという!

そんな偉大な御方が、あっちから来てくれるまでのほほんとしていたのか私は!?

「くそッ! 私の腑抜け……!」

「そうですね」

妹のように面倒見てきた元同輩が、慰めの言葉もかけてくれない!?

このままでは! このままでは私の四天王としてのプライドがズタボロに!?

何か、何かないか? 私の存在を支えてくれる何かが!?

そこで私は発見した。

野外で、土と戯れる無垢な少女の姿を。

「あっ、ヴィール様?」

後ろでベレナがなんか言った気がするが、気にしない。

「エーシュマ様? なんで少女形態のヴィール様に視線釘付けになってるんです? ……すっごい嫌な予感する……!?」