軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1499 ジュニアの冒険:ゴッドスレイヤー

それは魔法のような光景だった。

充分に神力を蓄積した腕輪が、鈍い光を放ちながら巨大化し、僕の腕どころか僕自身を全体的に覆う。

その間も巨大化した腕輪はなんか変形分解を繰り返して、何やら複雑怪奇なパーツが増殖してく。

ある程度増殖したところでパーツが一斉に結合!

そして出来上がった姿は、山と見紛うほど大きな鋼鉄の人形だった。

『が……、ガ……、ガン○ムだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!?』

クロノス神が大声を上げた。

どうした?

僕自身は鋼鉄巨人の内部に取り込まれて、何やら小部屋のような場所に安置? というか監禁? されている。

それなのに何故、鋼鉄の巨人とか外の情報がわかるかと言うと、僕のいる小部屋の中にいくつもの鏡面みたいなものがあって、そこから外の様子が見えるのだった。

何らかの遠視の魔法か?

さらにこの小部屋は、外部を目視するだけじゃなく様々なボタンやレバーが連動して、この鋼鉄巨人の手足を動かす仕組みになっているようだ。

要は、ここは鋼鉄巨人の操縦室?

僕は操者ってことか?

『くほぉおおおおおおッッ!! カッコいぃいいいいいッッ!? ヘパイストスめ、こんなイカしたデザインを考えるとは、さすが我が孫神! 私にも一個か二個作ってくれないかぁあああああああッッ!!』

なんでクロノス神が、そこまで熱狂しているかはわからないが。

とにかくこれが、邪神と融合したゼウスに撃滅するための切り札ってわけだ。

幸い巨大化したことで、スケールもあの邪神と互角になった。

ここからは純粋なるパワーの勝負だ。

覚悟はいいか邪神with邪神よ!

『うぬぬぬぬぬぬぅ……! ヘパイストスめ、余計なものを人間に与えおって……!』

僕が貰った腕輪はそもそも、この僕ジュニアが神からの贈り物を貰わないために用意された空費アイテムだ。

そこへ、こんな隠し機能。

この贈り主であるヘパイストス神は、きっと先まで読んでいたに違いない。

僕がいずれクロノス神のいるこの世界まで訪問し、邪神と化したゼウスと激突することまで。

だから先手を打って渡しておいた。

クロノス神の力を受けることでのみ発動し、ゼウス神を粉砕することのみを目的とした、この神具を。

オリュンポスの神々は『さらなるものを与えるな』のルールがあるため、僕のものであるこの腕輪に力を与えられるのはティターン神族であるクロノス神ぐらいのもの。

そしてここまで巨大な鋼鉄人形だと、同じく巨大な邪神化ゼウスぐらいしか対抗場面がなくて、他の対象だと大柄すぎてもて余すことだろう。

本当の意味でゼウス対象に限定された必殺神具。

そんなものを作り出すなんてヘパイストス神はよっぽどゼウス神のことを嫌っているということなんだろう。

『ヘパイストスのクソ役立たずめ! 余の命令では百に一つも作らないくせに人間どもにはホイホイ神具を渡す! どうして余に奉仕せぬ親不孝者が!? 育ててやった恩を返しやがれ!』

アナタのことが嫌いだからでしょう。

『親不孝で言うならお前の方がぶっちぎりだしな』

『煩いわ旧世代神!』

『お前も育ててもらった恩返せよ』

親の立場を笠に着るヤツに対して、その親の立場が強すぎる。

言うこと全部ブーメランになるから。

『……ハッ、ハハハハンッ!! ヘパイストスが寄越した屑鉄など、この異界の邪神と融合した大邪神ゼウスの前では敵ではないわ! すぐに本物のクズ屑鉄に変えてやろう!』

ついに自分で邪神を名乗りだした。

いいだろう、ここまで来たら舌戦の段階は越えて、実力行使の段階だ!

ヘパイストス神から授かった鋼鉄巨人の力を見せてくれよう!

行くぞ必殺! 鋼鉄ジュニアパンチ!!

『おぐっふぅッ!?』

いいぞ、邪神の触手群にぽっかり浮かんでいるゼウスの身体にうまくヒット!!

ここで手を緩めるな!

畳みかけの鋼鉄ジュニアミサイル!

『おごごごごごごごッ!?』

『凄いぞミサイルも搭載か!?』

盛り上がるクロノス神はどういう立ち位置なのだろう?

ともかく連続攻撃! 鋼鉄ジュニアビーム!!

『えべべべべべべべべべッ!?』

どうだ鋼鉄巨人の目から発射される一千億度の熱閃は!?

よし、この攻勢を緩めることなく、勝利のその瞬間まで攻め立てる!

ターンを相手に渡す道理なし!

鋼鉄ジュニア、ローリング全体重アタック!!

『べふぅッ!?』

相手の動きが止まったところでロマン武器の使用チャンス!

鋼鉄ジュニア、パイルバンカーで風穴を空けろ!

『ばしゅぅううううううッ!!』

そしてそろそろフェイバリットだ!

サン○イズパースからの、鋼鉄ジュニア一文字唐竹割り!!

『びゅっへぇええええええええッッ!?』

よし! 手応えあり!

今ので邪神の力の大半を打ち砕いた!

『うおおおおおおッ! 今のシーンHGで再現できるのかッ!?』

クロノス神の言っていることが意味不明だが。

どうだゼウス神、今ので戦闘不能は避けられないはず……?

ッ!?

これまでの猛攻でついた傷が、急スピードどんどん回復していく!?

『くとぅっるるるるるるるるるるる……! 愚かな人間め、この程度の損傷で万能の神ゼウスを止めたつもりか……!』

不敵な笑みを漏らすゼウス。

『時止め』

アシストありがとうございますクロノス神。

それではロボットパンチ連打、連打連打連打連打連打連打連打。

『ぎゃひぃいいいいいいッ!? 時間止めて再生も止めた上から追撃猛攻やめれぇえええええッ!!……ハァハァ、それも無駄だ!』

ここまでボロボロにされながら、まだ自信満々で返してくるゼウス神は、無根拠な自己肯定感の塊なのか?

『るふふふふ……! 我が勝利の揺るがぬ秘密を教えてやろう。ズヴァリ! 余が融合した異形の邪神の強さゆえ!』

『結局、他神頼りかー』

『煩いよ!!』

クロノス神からのヤジも何のその。

『お前たちから見えている、この異形の邪神の身体は、実のところほんの一部に過ぎない。その全体は世界一つ分を優に超えるほど巨大なのだ! 精々小指一本の部分をどれだけ壊そうとも他大部分から送られる神力によって何万回でも再生可能! これこそお前たちが永遠に勝てない理由よ!』

ゼウス神の触手部分が完全に元通りになった。

ヤツの言う通り、異形の邪神を元にした触手部分は永遠不滅なのか。

と思っていたら……。

『アレ?』

ずるずる、ずるずる、という質感で動きながら、大触手が引いていく。

みずからが出てきた次元の穴へ。

つまり……退却している?

『なななな、何をしている邪神の触手よ!? まだ戦いは終わっていない! 戦うのだ! 敵を食らいつくせ! 余が支配するべき世界がぁああああああッッ!?』

ゼウス神の方はまったく戦意を失っていないようだが、それに反して触手はズルズル次元の穴へと消えていく。

一体化しているゼウス神も否応なしに次元の穴へと消えていく。

『そうか……異形の邪神の意思か』

何かに気づいたかクロノス神が呟く。

『ここまで一連の攻撃に、ゼウスと同化した異形も邪神の方が嫌気を差したのだ。元々この戦いに意欲があるのはゼウスの方だから、まったく関係ない邪神の方はいい迷惑だろう。それで小指程度とはいえ傷を受けて痛い思いをすればなおさらな』

ズルズル引っ込んでいく触手に流されながらゼウス神は喚き散らす。

『待てぇえええッ! 逃げるな引くな! 余はこの敵地を制圧するのだ! すべて余のものだぁあああああッッ!』

融合しているとはいえ、ゼウス神と邪神の対比は世界一つ分と人一人。

まったく比にならない。

どちらかと言えばゼウス神が邪神に寄生していると言うのが正確だろう。

だから邪神の意思を抑えることなどゼウス神にできようもない。

『邪神の意思はむしろ本能に忠実だ。わざわざ痛い思いをするこの世界にはあえて近づくまい。アトランティスから、邪神の脅威は去ったのだ』

『こぎゃああああああッ!? 余の征服計画が! 領地が! 女が! 世界中の若い美女がぁあああああッ!?』

相変わらず最低の断末魔を上げてゼウス神は次元の狭間に消えていった。

クロノス神の推察通り、主導権は異形の邪神にあるようだ。

つまり邪神がこの世界を厭う限り、ゼウス神は二度とここへは来られない。

世界は救われたのだった。