軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1498 ジュニアの冒険:伏線回収

この平和で長閑なアトランティスにも、見過ごせない災厄があった。

邪神ゼウスの襲来。

いや邪神というか邪神の一部になったというか。

とにかく迷惑な存在であることに変わりない。

しかしゼウスは何故この世界を執拗に狙ってくるのか。

話を聞く限り、幾度となく撃退されては逆襲してくるを繰り返しているらしい。

それが何度……いや何百回続いているのかはわからないが。

やっぱり相手が父親……しかも神界大戦の果てに討ち封じたってこともあるんだろうか。

『いや、そういうのは関係あるまい』

クロノス神がやれやれと言った表情で言った。

『アイツとしてはどこでもよいのだろう。さっきも言ったがヒトのものを何でも欲しがるヤツなのだ。そこに領土があれば侵攻し、人妻がいれば言い寄る。そういうことを「腹が減ったら食う」のと同じぐらい自然に行えるヤツだ』

うわぁ、どうしようもない。

これまで行く先々で出会ってきた神々が素直に嫌うわけだ。

『この世界を狙うのは、ただ出来てから日も浅く攻めやすいからだろう。ヤツはかつて、お前たちが住む世界にも侵攻したことがあった。その時は天地海のオリュンポス神が珍しく総力を結集して撃退したのだ。それだけゼウスのヤツが誰からも嫌われていたということだな』

普段反目しあっていても、その時になれば力を合わせるぐらい打倒ゼウスの目標は高いということか。

想像するだけで悲しくなってくる。

『その時こっ酷くやられた記憶が、同化した邪神の方に残ったのだろうな。邪神の危機回避本能によって、神々や人々がしっかり守っている世界には手を出さなくなったようだ』

この世界を襲ってくる理由はそれか……。

生まれたばかりで、守り手と言えばクロノス神だけのこの世界は、邪神からすればさぞかし手薄に見えたことだろう。

『ティターン神族も他にいるにはいるが、今は世界の構築中であちこち飛び回っているからな。なかなか迅速に駆け付けられないのが現状だ』

うーん、オリュンポスの神々に救援を要請してみてはどうですか?

ハデス神はともかく、ポセイドス神は見るからに暇そうでしたから頼めば簡単に来てくれそうですけれど?

『嫌だ!!』

何故そんなにキッパリと即答!?

『アイツらには頼りたくない! 何かあるとすぐ見下そうとしてくるし!』

そんな子どものような?

まあたしかにあっちの神々もまあまあ性格悪いし借りを作りたくない気持ちもわかりますが。

しかしクロノス神にとって大事な大事なこの世界を守るためなら背に腹はノーチェンジでしょう。

守るもののためならプライドだって捨てましょう!

『しかし……! 息子らに頭を下げるのは父の威厳が……! ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎ……!』

クロノス神の葛藤が凄い。

しかしながら、あの邪神ゼウスの襲来はこのまま放置していてはダメだろう。

向こうは諦める気なさそうだし。

長引けばどう転ぶかわかったものではない。

無事に済んでいる今のうちになんとか手を打たなければ。

何とか……。

……うん?

* * *

そしてほどなくして、またしても邪神ゼウスが次元を破って進行してきた。

『くとぅる~っふっふっふっふっふっふ!! こんな綺麗な世界はオヤジにはもったいない! 余が貰ってやろうというのだ! 喜んで差し出すのが摂理というものだろう!!』

『世迷言は黙っとけバカ息子』

再び大鎌をかまえ、迎撃態勢をとるクロノス神。

『お前の凶行もここまでだ。今日の我々には、お前を完全に打ち崩す切り札がある!』

『ねーよそんなの!』

そこへ進み出る僕。

クロノス神と同じ目線、足並みを揃えて、あの変わり果てた邪神へ敵意の視線を注ぐ。

『あぁ? なんだこの人間風情が? 男はいらん、失せろ! そして女を出せ!』

『清々しいまでの色欲っぷり』

あの一貫性だけは物凄いと思う。

尊敬する気にも感心する気にもなれんが。

『とぅるっとぅとぅとぅとぅとぅとぅ……! 気でも違ったかオヤジ、この最高神にして至高神ゼウスに、たかが人間一匹を出して対抗できると思ったか? これだから旧式神はモーロクしやがって……!』

『お前こそ異界の邪神に浸食されてSAN値がマイナス振り切っているようだな。人は無限の可能性を秘めている。ハデスのように良識ある神ほどそれをよく理解しているものだ』

『どうでもいい! おい人間の男! お前に姉か妹か恋人はおらんか!? このゼウス大神が妾にしてやるぞ!』

この瞬間……元々決まっていることだが、この邪神を徹底的に滅殺することが決定した。

まだ恋人もいない僕だが、いずれ出来るかもしれない大切な人を守るのに一切の情けは懸けない。

それに姉はいないが妹はいる、まだ小さい妹が。

そんな妹に下卑た感情を向けるオッサンがいたら、歯が全部折れて顔の原型を留めなくなるまで殴ってもまったく気が済まない。

僕は、左手をかざした。

あの醜い邪神に向けて。

『ん? 何だその手は? 余への祈りの仕草か?』

お前という神は祈るに値しない。

この左手に着けられた腕輪は、お前を粉砕するための最強の武器だ。

何の変哲もないクズ鉄製に見えるその腕輪。

デザインも武骨で、くすみ輝きもない。

どこぞのガラクタ屋で二束三文で売られているような風情だ。

『そんなゴミクズがどうした!? 神への捧げものならもっといいものを用意しろ! いや、物より女がいい!』

黙れクズ神め。

それにこの腕輪は、お前が思っているよりずっといいものだぞ。

お前の節穴の目じゃわからんだろうがな。

『何おぉおおおおッ! 神に対して不敬な! 十代先まで呪うぞ!』

『そうしたら私が加護を与えて呪いを打ち消してやろう』

後援ありがとうございますクロノス神。

でも大丈夫、これからあの邪神は人の手でバッキバキボコボコにされますから。

『不敬不敬不敬フケフケフケフケ!! そのゴミ腕輪が何だというのだ!?』

だからコイツをゴミと言うだけお前の格付けチェック度が下がるだけだ。

何しろこの腕輪は、ヘパイストス神が僕にくれたものだからね。

『なにぃいいいいいいいいいいいいいッッ!?』

さすがに節穴ゼウスも驚いたか。

それもそうだ天界が誇る最高の職人ヘパイストス神の名が出れば、驚かないヤツはよっぽど鈍いかモノ知らずなんだから。

『あの生意気なヘパイストスが……息子の分際でまだ余に歯向かうかぁあああッ!? この父にぃいいいいいッッ!!』

『お前だって父親に歯向かってるだろう』

直近の被害者たる父親クロノス神が言う。

……この腕輪は、元々は別の意図で授かったものだ。

この僕は、聖者の長男として生まれ、その因果から“神のギフト”に匹敵する力を、生まれながらの能力として得てしまった。

その上で神から何らかを授かれば、より力が増して誰も手に負えないモノになってしまう。

対応不可能な脅威が生まれかねない、それを危惧したヘパイストス神が、僕の無欲を確かめるために、この何の役にも立たない腕輪を贈った。

『神はさらなるものを与えてはならない』、その神の掟を逆手にとって。

生涯一回の権利を空費させる覚悟はあるか。世界の安定のために。

それを問うために贈られた腕輪だと思っているが。

こんな隠し機能があったとは。

『クロノスパワー、チャージイン!!』

クロノス神の力が、腕輪に注がれていく。

まるで乾いたスポンジのように、神力を吸収していく腕輪。

『あーッ! ズルいぞ! 神は一人に一回しか与えてはいけない決まりだ!! ルール違反だ!』

『そのルールはオリュンポス神族が作ったものだろう。我らティターン神族には関係ない』

『屁理屈ぅううううううッ!』

『違うわ』

苦笑するクロノス神。

『そもそもそんなルールだって、お前一神のせいできたんだろう、どうせ。目に浮かぶもん、女を口説くために際限なく貢ぐお前の姿が』

『ぐぬぅうううううううううッッ!?』

ヘパイストス神はここまで読めていたのだろうか。

いや読めていたからこそ、この腕輪に隠し機能を付けたのだろう。

系譜が違うクロノス神の力を込められることによってのみ、変形、巨大化する隠し機能を……!

チャージは充分、あとは起動させるだけ。

『鋼鉄王、ショータイム!!』