軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1495 ジュニアの冒険:人類創造教室

はるか遠くの異世界まで来て、人間作りの手伝いをすることになった僕!

一体なんで!?

と困惑しきりだが、一度請け負ったことは責任もって遂行する僕!

さあ始まりの神プロメテウスよ!

創作意欲の消化不良を思うまま僕にぶつけてくれ!

その結果、何らかの化学反応が起こり打開策が見えてくるかもしれない!!

『おう……人間か、思えばお前らはいい仕上がりになったな』

一目見てそのセリフ?

一体なんですか?

『お前ら人間は、オレが素体を組み上げたものだ。あの時の作業は楽しかったなー。拙いながらも、これからどう進化してくれるかとワクワクしたもんだ』

こうして語りを聞くと、やはりプロメテウスさんは職人肌な神様なのだなとわかる。

『オレの手から離れても人族魔族人魚族と、それぞれ独自の進化を遂げて、その根幹の仕事に関われたオレも誇らしいと思っている。ただそうした過去の功績があるからこそ、新しい仕事にかかりづらいというか……』

ああ、ありますよね。

過去に大きな仕事を成し遂げたからこそ、それが重荷になってしまうという。

人間、過去を乗り越えたいものですからね。

目の前のこのヒト(?)は神ですけれど。

『長いことブランクが開いて当時の感覚を取り戻しづらい……と言うのもあるが、それ以上にオレの心に引っかかっているものがある!』

ほう、なんでしょう!?

お腹にため込んでいないで、お兄さんに話して御覧なさい!?

……これが農場家長男テクニック、聞き上手の術!

弟妹の話をじっくり聞くことにより、家庭円満を実現! 何度も兄弟ゲンカを仲裁してきた我が最大奥義!

次兄ノリトには無効!

それで、アナタの引っかかっているものとは?

『パンドラだ』

パン……ドラ?

パンジャンドラムの略?

『オリュンポス天界神のヤツらが勝手に作り出した、オレとは違う原点を持った人だ。ある時ヘパイストスが気まぐれに作り出したらしい』

訥々と語りだすプロメテウス神。

その表情には苦渋が浮かんでいる。

『完全無欠の一点モノを好むヘパイストスだ。それこそ最大限のリソースを懸けて、もっとも美しくもっとも優秀な人の女を造り上げた。ゼウスら天空の神々はその出来栄えに有頂天なって様々な贈り物を与え、必要以上のチューンナップを行った』

その結果……。

『パンドラは神々の手に負えない最強の厄災と化してしまった。ついには冥界神、海神の手まで借りて封印が精いっぱいという大騒動まで引き起こしてな。それを見て、オレがどう思ったか、わかるか?』

オリュンポスの神、間抜けすぎひん?……とかですか?

『オリュンポスの神、間抜けすぎる。自分のしくじりで大損害ウケててざまあ、と思ったな』

ほぼ当たりというか、それ以上に辛辣だった。

『その次に思ったのは、やはり突出した能力など種族の害になる、ということだ。人間は群れる生き物だ、そのなかで秀ですぎた人材がいても和を乱し、結局は種全体の災いとなる。その好例がパンドラだったのではないか?』

随分とがった意見と思うが、たしかに聞く限りパンドラさんとやらの件は失敗以外の何物でもないように思えます。

『だからこそオレは、今回新しく創造する人間はより平均性を高めて、突出した才能を出にくくするべきかと思っている! それこそ泥縄で人類を作り出した女媧さんみたいに!!』

その例えはあまりよくわかりませんが、聞く感じだと手を抜きすぎているようにも思えますが?

『そうなんだよなあ……、それに念頭の平均化を推し進めすぎても、それもまた創造主であるオレの気持ちの押し付けじゃないかと思えてきて……何が正しいのかわからなくなってしまってなあ』

それで手が止まってしまったというわけか。

……マズい。

何がマズいかってガチの職人の悩みで、僕のような素人には何も言えなくなるからだ。

建設的な意見なんて出しようがない。

かといって無言のまま引き下がるのは気まずすぎるし。

進も地獄、引くも地獄。なんてところに突っ込んでしまったんだ僕は!?

……。

「……ところで人間ってどうやって作るんですか?」

強引に話題を変えることにした。

しかしこれは逃げではない。基本に立ち返ることで何か重要な突破口が見つかるかもしれないでしょう。

急がば回りこまれる。遠回りこそが本当の近道だった。

そんな展開だってあり得るじゃないか!

『うむ?……まあ、そうだな。人間はこうやって土をこねて作るんだ』

プロメテウス神も話の繋がりに多少違和感を覚えながらも乗っかってくれた。

基本善良な神なのだろう。

……しかし会話の字面が凄まじすぎるな。

前後の流れを関知していないと『何言ってんだコイツら?』とか思われそう。

『土を原料にするのは、古今東西割とポピュラーな工法だな。場所や制作者によっては、これに火を加えたりもするらしいが』

地方性とかあるんだ。

『心を込めて土をこねて、人の形を整える。ある程度出来上がったら、祖神となる神から息吹を入れてもらって、それが魂となる。肉体と魂が合わさり、最初の人間の完成だ!』

な、なるほどー。

とは言っても正直どんなリアクションとればいいかもわからないが。

『……あ、そうだ』

そこでプロメテウス神が何か思いついたように言った。

『人の子よ、名はなんと言ったか?』

え? 僕ですか?

ジュニアと申します……名前をよく聞かれる日だな。

『なるほどジュニア、一つオレの代わりに人間を創ってみないか!?』

ええええええええええッ!?

人が人を創るの!?

それ何かの倫理に触れたりしませんか!? 人の分際で命をどうのこうの……とか!?

『意外にコンプライアンスしてんなー。誰からの教育だ?』

父ですッッ!!

いやー、ウチの父さんの教育は最先端いってるので……!

『いい父親を持ったんだな。まあ今回は神であるオレが監督しているということでセーフとしておこう』

いいんですかそれで?

僕が困惑する間もプロメテウス神はいそいそと原料と道具を引っ張り出して準備を整えていく。

『さあ、やってみろ! 大丈夫、最初は皆ヘタクソさ!』

そう言われましても。

ここで僕の造形力如何によって生まれてくる命の一生が左右されるんだろう?

責任重大だよ!

『まあまあまあ、何も考えず手が動くままに作ってみなよ。そうしたらオレが思ったこともない新境地が生まれるかもだから』

そんな偶然に未来を懸けないでもらえますかッ!?

……ええい、こうなったらなるようになれ!

目の前に盛り上がった土をコネコネ捏ねる!

素人の僕にはせめて、指先にまできっちりと気持ちを込めてこの生命が立派な形になりますようにとコネコネする以外にない!

コネコネ……。

コネコネ……。

コネコネコネコネ…………。

……ん? 待てよ?

途中から気づいた。僕の手には、父から受け継ぎし能力『究極の担い手』がある。

触れたものの潜在能力を限界以上まで引き出す能力だ。

その能力を持った手が、人間になる予定の土に触れている。

そしてコネコネ捏ねている。

したらば、どうなるかというと……!?

『え? 何? なんで土が輝いているの!?』

僕の掌中での異変にプロメテウスさんまでもが驚愕する。

はい、光ってます。

土をこねていたら光り出しました。

これ仕様でしょうか?

『んなわきゃねえ!!』

ですよね。

ということはこの光り輝きは『究極の担い手』の方の仕様?

輝く土塊は、僕の拙い捏ねくりでかろうじて人型になっていたが、その人の形の捏ねくりが輝きながら、立ち上がり、言った。

「偉大な人間とは、輝いているものだ」