軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1451 ジュニアの冒険:代打ちエンゼル

「エンゼルおばさん……!?」

そこにいたのは紛うことなき我が叔母。

その外見には見覚えがある。

三十も過ぎてツインテールなんぞにしているエンゼルおばさんを置いて他にはいない!

「誰がオバサンだ、ぐおらぁー!!」

げふッ!?

“両親の兄弟”という意味でのオバサンでキレられたのは、さすがに初めてだ!?

それよりもエンゼルおばさん!

何を愉快そうに遊んではるんですか!?

僕たち、おばさんがピンチだという話を聞いて気が気ではなかったんですよ!

こうして救出のために現地突入したぐらいですし!

それなのに、いざ到着してみたら本人は愉快にゲームなどしていらっしゃる!

一緒に遊んでおられるのはどちら様!?

その卓を囲んでおられる三人ですよ!

もしやエンゼルおばさんを拘束したテロリストの方々と言うんじゃあるまいな!?

「アタシの見張り役よ」

やっぱり!

犯人と遊ばないでくださいよ、これがいわゆるストックホルム症候群てヤツか!?

「ちっちっち……わかってないわねジュニア。これがネゴシエーター・エンゼル様の、相手の懐に飛び込むための交渉術ってヤツよ」

これが?

「人間、ゲームの時こそそれぞれの性格がもっともよく出てくるものよ。その点に着目したアタシは、交渉相手の人となりを知りつつ懐に入るためにゲームを嗜んでいるのよ。決して自分の楽しみのためじゃないのよ!」

はあ……。

言われた瞬間、これは確実に自分の楽しみのためなんだな、と思った。

大体このゲームは何なんですか?

見覚えがあるようでないんですが?

「ふふふふふ気になるでしょう? これこそ、異世界人である我が義兄の知識を結集して構築したまったく新しいゲーム……名付けてポージャンよ!」

ポージャン!?

「あれ、あるいはマーカーだっけ? どっちでもいいや、このゲームが誕生したきっかけは、義兄のとある一言からだったわ」

――『いやー俺、麻雀は 七対子(チートイツ) ぐらいしかわかんねぇー!』。

「……と。それを聞いてアタシは思ったの。不完全な知識であれば、別のゲームから知識を引っ張って補完すればいいのよ、と!!」

そして完成したのが、このゲームだというのか!?

「ポージャンは、一三六枚の牌と五四枚のカードを併用して戦うゲーム! 自分の番が巡ってくるたびにカードを引いて、特定の役を作り出した者が勝ちよ!!」

カードだけ引くの?

牌は?

「特に意味はない」

なんだよ!?

じゃあ卓囲む意味もあんまりないじゃないか! 雰囲気だけで打とうとしていないか!?

「大丈夫よ、そこはちゃんと考えてあるから。……知ってるジュニア? この卓を囲む席の位置にもちゃんと意味があるのよ。東西南北と。だからプレイヤーは自分が役を作って上がる時、自分の座っている席位置に対応した技名を叫ばなければいけないの!」

東:旭日刃。

西:残日獄衣。

南:火々十万億死大葬陣。

北:天地灰尽。

「……と、叫ばないといけないのよ!」

言わなかったらどうなるんです?

「ペナルティで牌を二十枚引く」

またなんか別のゲームが交じり合ってない?

……いやいや、そんなこと言っている場合じゃない。

『アタシの考えた最強のゲーム!』を聞いている場合じゃない!!

外では、エンゼルおばさん救出のために四魔女の皆さんが必死に動いて隙を作ってくれているんだ。

彼女らが作ってくれた時間を一秒だって無駄にはできない。もう大分無駄にしてしているけれども。

「……あッ、ところで?」

なんです?

「ジュニアなんでこんなところにいるの? うわー久しぶり大きくなったわねえ! 顔つきがすっかりお父さんに似て!?」

気づいた!?

今気づいた!?

というか今までその点まったく頓着せずに謎ゲームの概要を説明していたのですか!?

どんだけマイペースな性格なんだこの人!?

いや、そういう性格だったわ!

「アンタが人魚国にいるなんて、不死山麓にワカメが生えるぐらい珍しいじゃない?……はッ、いや待て? 息子がいるってことはまさか、その母であるウチのクソ姉も……!?」

と、警戒のポーズをとりながら周囲を探るエンゼルおばさん。

大丈夫ですよ、我が母ことプラティは現着しておりません。農場で呑気に茶でもシバいておるはずです。

僕もいい加減に母離れしていますって。

「そう? はー、よかった。最近とみに口煩くなって喧しいのよねー、あのバカ姉。こっちもいい大人になったんだから少しは尊重してほしいもんだわ自主性を」

いい大人になっても落ち着きがないから口煩いのでは?

今現在だって、テロリストに拘束されたからって心配して来てみれば、ノンキに牌打ってるし。

「わかってないわねえ。別に遊んでいるわけじゃないのよこれは。これこそがネゴシエーター・エンゼルの完全完璧なる交渉術ってことよ」

それ前にも言ってましたが。

まあたしかに遊んでいるうちに相手と打ち解けて、お願い事切り出したり秘密を聞き出したりする雰囲気は作れるんじゃないかと思いますが。

「甘いわねジュニア。アタシはこのゲーム交渉で百発百中、こっちの主張を通してきた実績があるのよ」

マジで?

盛ってないですか、相手がエンゼルおばさんだけに話を二~三倍膨らましている可能性は大いにある。

「アタシが布教していったお陰で、ジャン並べの愛好家は世界中に散らばっているのよ」

ゲーム名称変わってない?

「我が国はもちろん、魔国や人間国にもヘビーなユーザーはいて、そんな人たちほどアタシと会って打ちたいと思っているのよ! そこへご本人様登場したら期待度爆上がり。交渉だって通りやすくなるものよ!!」

そうして外交官エンゼルは勇名を馳せているというのか?

ウソのようなホントの話というか丸々信じるわけにはいかないが、それでもエンゼルおばさんがお仕事頑張っているのは最低限確かなようだ。

「国内だって同様で、ここ最近は反乱放棄する地方に出向いてはこのジャーポンで人心を慰撫し、平和裏に解決してきたのよ! いやー、引っ張りだこで辛いですわ人気者は!」

ゲーム名統一してくれません?

でも今回は失敗したんですよね。だから拘束されて捕虜になったんでしょう。

「……そうだ、そういえばアタシ今囚われの身だったわ」

忘れていたんですか、今の状況を!?

ちょっとしっかりしてくださいよ、アナタの状況を案じて色んな部署が動揺しているんですよ!

「だ、大丈夫よ。アタシだってみずから状況を打開しようと、こうやってまず周囲の見張りから手懐けることから始めて……」

それでゲームに熱中していたと?

大分のめり込んでいた風に見えていましたがね……?

「とにかくそういうわけだから、もう少しで見張りさんたちもこっちの味方に引き入れられるわ! そうしたら脱出のチャンスも巡ってくるだろうからジュニアも大人しくしているのよ!」

いやその……!

脱出を助けるため果敢に突入してきたんですけれども僕。

ともかく見張りをどうにかしないといけないのはエンゼルおばさんの言う通りか。

ならば実力行使で行こう。

農場神拳、豪農波。

凄まじい衝撃波が範囲攻撃で、僕の目の前にあるものらを根こそぎ吹き飛ばしていく。

「きゃああああああッッ!? なんてことするの暴漢! 乱世の覇者! 大丈夫皆、死んでない!?」

と雀卓諸共吹っ飛ばされた見張り役たちに駆け寄るエンゼルおばさん。

いや、その人たちアナタを不当に拘束した反乱者……?

「何言っているの、一度でも一緒に雀卓囲めばもうダチよ! 人類は皆ゲームを通して心を一つにできるのよー!」

特定ジャンルの少年漫画みたいなこと言いだした。

とにかく細かいことは抜きにして、速やかにここから出ましょう!

今こうしている間にも、アナタの友だちの四魔女が必死になって注意をそらしているんですよ!

ここでアナタが脱出できなかったら、彼女らの苦労が海の藻屑で水の泡!

「エンゼル様エンゼル様ー」

「うわッ、本当にいた!?」

「懐かしいーお変わりないー」

「お久しぶりですエンゼル様ー」

うわッ、四魔女の皆さん!?

おもむろに入室して、陽動作戦はどうしたんです!?

「え? そんなのジュニアくんが連れ出すのが遅いから……」

「とっくに全域制圧しちゃったわよ」

ええ……!?

エンゼルおばさんのトンチキぶりと四魔女さんたちの有能ぶりによって。

僕がいる意味まったくなくなってしまった……。