軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1450 ジュニアの冒険:地方動乱

そんなわけで、反乱の現場へとやって来た僕ジュニア。

ここは海底の片隅にある人魚族の村。

人魚は、巨大魚ジゴルの体内に住んでいるのが全員ではなく、海中に村を作って静かに暮らしている人々も大勢いるらしい。

今回の舞台となっているのもそんな集落の一つ。

人魚の村・深海平原十六番地集落。

そこで反乱が起こったという。

「でも一体なんで反乱なんかを?」

目標の村を遠目に眺めて、僕はまず最初に浮かんだ疑問を口にする。

「反乱って言うからには国に何か不満があったってことでしょうか? 重税とか?」

反乱の動機なんてそれぐらいしか思い浮かばない僕。

でもアロワナおじさんやパッファおばさんが、国民の我慢もブチ切れるほどの無茶な税率を課すようには思えないし、他に何か動機があるのだろうか?

「それがよくわからないらしいわ」

僕と同行しているディスカスおねえさんが答える。

四魔女の皆さんも反乱鎮圧&エンゼルおばさん救出のために現地入りしている。

他のお姉さん三人は別行動をとり、他の地点から村を包囲して気づかれぬように様子を窺っている。

すべては反乱の被害を最小限に食い止め、エンゼルおばさんを無傷で救出するためだ。

「実は最近、こういうことが何度も起こっているらしいのよ」

「え?」

こういうこと?

反乱がですか?

「反乱というか、そうとも呼べないくらいの些細な不満の噴出といったところかしら? 理由は特にないわ。重税を課してるわけでもなければ弾圧もしていない。それでも、充分な善政を敷いても出てきてしまう小さな不満が民心を荒ませ、人魚宮まで届いてしまう」

そんなことがあるんですか?

「人魚宮はそのたび様々な手を打って民心を慰撫し、反抗心を治めてきたんだって。今回みたいにエンゼル様を派遣とかして」

出動前に仕入れたらしい話をディスカスおねえさんは語る。

「話し合い程度で収まるような軽微な反抗心だから人魚宮も重く見ず、しかも数あるから段々と刺激にも慣れていって油断に繋がったみたい。アロワナ陛下も、あんまり大事にしたら罰を下さなきゃだしで難しい決断だったみたい」

重く見れば処断を下さねばならず、軽く見れば禍根を残す。

匙加減の難しさですな。

「それで今回も今まで同様だと思ったら、まさかのエンゼル様拘束。一体何が起こっているのかしらね昨今の人魚国は?」

そうした反乱モドキがいくつも起こってるってことでしょう?

今回はもうガチの反乱だけれども。

アロワナおじさんはちゃんと王様やってると思うんだけどなぁ。

「ちゃんとしてても起こる時は起こる。それが反乱よ」

そういうものですか。

「それよりもジュニアくん。エアもずく(三倍素)の効果はどう?」

と尋ねてくるディスカスおねえさん。

はい、とっても具合良好です、と笑顔で返す僕。

「プラティ様が開発したエアもずくに改良を加えたものよ。口内で噛むほど酸素を放出し、陸人も海中活動できる効能をそのままに、原型一番の問題点でもあった『飲み込むと効果が失われる』も改良されたわ」

そ、それはどうやって?

「ガム状にして飲み込みにくくした」

思ったより力技だった。

「聖者様も『もずくだから飲み込みやすいんだよなー、ガムなら飲み込まないよなー』と仰っていたわ。それから水中でも酸素を取り入れながら喋れるように、口吻をシャボンで覆うという処置をとったわ」

そのシャボン壁が、口内に海水が入るのを防ぎ、それでいてシャボン壁を振動させて声を伝えることができる。

十数年前に父さんを窒息に追い込んだ未完成品だったが、今ではもう充分完成の域に達していた。

「ちょっと待って。……こちらディスカス……うん……はい……みそバター……はい……」

ディスカスさん、なんか何もないところに向かって会話を始めた。

気でも触れたか? と思ったが、恐らく通信魔法か何かで別地点にいるベールテールお姉さん、ヘッケリィお姉さん、バトラクスお姉さんと会話している模様。

「ヘッケリィが村の様子をスキャンしてくれたわ。人数は約三百。そのうち戦力になりそうな若い男人魚が五十ほど。私たちみたいな魔法薬使いはいないみたい」

この短時間で、そこまでの調査を?

さすが現役魔女、やれることが多い。単純に強いだけじゃなく。

「エンゼル様の居場所もわかったみたい。村の中央にある一番大きな建物の最上階。いかにもって場所ね」

そんなところまで!?

救出対象の位置がわかればもうあとは行動に移すのみじゃないですか。

魔女有能……農場で漬物作ってるだけの人たちかと思っていたのに。

「はい……はい……いぶりがっこチーズ……了解」

また通信を続けてディスカスおねえさんが表情を引き絞る。

「エンゼル様を救出する作戦が固まったわ。それでジュニアくんにも受け持ってほしい役割があるんだけれど……!」

もちろんです!

役立つためにここまで来たんですから、存分に使ってやってください!

「じゃあジュニアくんには村に潜入してエンゼル様を助け出してもらうわ」

一番重要な役どころ!?

いいんですかそんな核心的なところを僕のような若僧に!?

「私たちは村内の撹乱制圧を進めるわ。ジュニアくんにはその混乱に乗じてほしいの。キミは身体能力高いし期待してるわよ」

そう言われてはやるしかありませんが。

でもそれ裏を返すと敵勢力の制圧をたった四人でやってやるということ。しかも人質の安全を確保しながら。

それどんだけ難易度高いの……と思いつつも目の前のディスカスさんの表情に陰りはない。

「じゃあ、始めるわ。騒ぎ出したらジュニアくんは村に潜入して。タイミングの判断は任せるわ」

ええええッ!?『任せるわ』って言われましても、こっちに判断投げられるのが一番困るんですけれども!?

止めようと思ったらもうディスカスさん飛び出ちゃったし! やっぱり海中では人魚のスピードには敵わねえ!

「行くわよ! 四魔女フォーメーション!」

突如、村の全体を明るい光が覆う。

海水を伝播して伝わる轟音も。

「なななッ!? なんだッ!?」

「敵襲だぁああああああッッ!!」

この派手さに反応し、建物から次々と人魚が飛び出す。

村人たちだろう。

遠目に見ても反乱なんか起こしそうにない凡庸で大人しい感じの人々だが。

「次のステップに行くわよ! 海流氾濫!」

四魔女のお姉さんたちがさらなる攻勢を巻き起こす。

凄まじい、暴風のような激海流を生み出し、それを村へぶつけたのだ。

「ぎゃあああッ!? 今度は何だぁあああッ!?」

「流される!? 流されるうううううッ!?」

海底に住む人魚にとって巨大な海流は、台風か竜巻と同じ。

平和な日常を一撃粉砕する天災だ。

それを人為的に生み出す魔女の能力も凄まじいが、どういう理屈かこんなに渦巻く海流なのに海底に建てられた人魚の家屋は吹き飛ばされる(押し流される?)素振りもない。

「いや……感心している場合じゃない!」

ディスカスお姉さんたちの派手な陽動が効いている今がチャンス!

どさくさに紛れて村に侵入だぁ!

うおおおおおおおッ!?

でも僕自身も激流に無影響ではいられない!

流される流される!?

……いやッ、『究極の担い手』を使えば流れもうまく利用できるか。

そこまで考えて僕を突入役に選んだのか?

さて、ディスカスお姉さんの話によれば、『村の中心の一番大きな建物』だったなエンゼルおばさんが捕まっているのは。

あの建物かわかりやすい。

その最上階だったな。

よし、ディスカスさんたちが起こした海流を上手く利用して……潜り込めた!

建物の中だ!

幸いなことに誰もいない、見張りも騒ぎで出払ったか!?

よし、このまま一気に……!

ドアを蹴破りドーン!

エンゼルおばさんいますか!?

助けに参りました!

「きたぁ! メンタンピンドラドラ四暗刻ロイヤルストレート五光を添えて火々十万億死大葬陣よ!!」

「「「「ぐわぁあああああーーッ!?」」」」

エンゼルおばさんがなんかよくわからないゲームで大勝ちをキメていた。