軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1392 ジュニアの冒険:世界一の企業

僕ジュニア。

今、世界の理不尽を見ています。

「優勝! レタスレート優勝!」

「本大会六連覇! 誰もその快進撃を止めることはできぬ!!」

今年もディフェンディングチャンピオンとして頂点に君臨した暴君レタスレート。

誰も彼女を止めることはできぬ。

この大会やる意味あんのか。

「今年も見事でしたレタスレート」

「お互いいい汗かいたわね!!」

準優勝したホルコスフォンおねえさんと固い握手を交わす。

多分実力で勝ったんだよな、天使に。

「ヘイ、テメエら、今年も優勝は私のものよ! 従って農場国との独占契約権も私のもの!」

挑発的なマイクパフォーマンス。

かつては冒険者ギルド主催の女子プロレスでならしたものだからお手の物だ。

「一気に富を独占よ! 悔しい? もうこんな大会やめたら? 無駄なことに

没頭する商人ほど見苦しいものはないわねー、時は金なりじゃなかったのー?」

うわぁ、見事なまでの煽り。

会場からブーイングが巻き起こった。

「お疲れ様ですレタスレート」

「いやー、バカの相手は疲れるわねー」

ホルコスフォンおねえさんと一緒にリングから降りてくるレタスレートおねえさん。

会場全体を敵に回しながらも、その態度は悠然として尊大だ。

「勝てないとわかっていて、毎回こんな大会開催すんだもの。ハコ用意するにも金掛かるでしょうし、いつまで続ける気なのかしら?」

「農場との独占契約が成れば、巨万の儲けが約束されますからね。どんなに低い確率でも挑みたくなるものなのでしょう」

ホルコスフォンおねえさんが冷静に分析する。

「まぐれ当たりでも優勝すればウハウハだもんねー」

「レタスレートがいる限り、可能性は京が一もないでしょうが」

「ホルコスちゃんもいるから隙も生じぬ二段構えだしねー」

二人は何故そこまで入念に、一般参加者の優勝を阻止しようとするのか?

「そりゃもちろん決まってるじゃない。アンタのお父さんから頼まれたからよ」

ええぇ~?

急に僕へ話がふられてくる?

ホルコスフォンおねえさんも解説に加わる。

「マスターは、このようなお祭り騒ぎで取引相手が決まることをお望みではありません。取引相手に求めるのは誠実さと信念とのことです」

「だから、この大会の趣旨をぶち壊すために送り込まれた刺客が私たちなのよ。まったくいい迷惑だわー、私たちの時間も無駄に使わせているって誰か気づいてくれないのかしら?」

た、たしかに……。

この大会、毎年やってるらしいから一年ごとに契約相手が替わったら農場側も戸惑いだろうしな。

農場引いては父さんにとっても、このレタスレートさんたちの狼藉は有難いというわけか。

でもそしたら、ここ何年かはずっとレタスレートおねえさんたちが農場と独占契約しているの?

「いいや、そんなわけないでしょう?」

「そもそも我々事態農場から派生した一部ですからね。そんな相手と契約するなど、自分自身と契約しているようなものです」

そりゃそうだ。

「農場との契約権は、一旦こちらでまとめてから、魔国の各商会へ振り分けているのよ」

「それぞれの得意とする分野や、日頃の実績を精査して決めております」

「それがまた手間でねー、ホント各商会の経営状況からしっかし見ないといけないから。変なとこと契約結ばせたらプラティがカンカンよ」

これ、実質的にレタスレートおねえさんが農場と魔国商人との契約窓口を務めているってことじゃないの?

まずは実力でねじ伏せて、わからせてから。

手口が甚だパワープレイではあるが。

ここまでシステムが整備されているのに、まだこの武闘会をやめないのはレタスレートおねえさんたちの言う通り、万が一つのチャンスを狙ってのことなんだろうなあ。

欲に溺れているよなあ。

その番人として立ちはだかり、欲望を遮断するレタスレートおねえさん。

彼女のお陰で、今日の魔国の商売界も平等で平和だ。

「ではレタスレート、余事も片付きましたので通常業務へ戻りましょう。本日は複数個所の工場視察と、研究部門からの経過報告が予定されています」

「え~?」

一瞬、レタスレートさんの目がこちらを向いた。

何でしょうか?

僕の父親譲りの危機察知能力が即座にざわめき出したぞ!?

「ジュニア、せっかくだからアンタも一緒に来なさい」

えええええええッッ!?

なんでですかッ!?

「アンタ、跡継ぎとして見識を積むために武者修行中なんでしょう? ならば我がレタスレート&ホルコスフォン豆カンパニーの業務を見学することは、必ずやアナタに有益な経験をもたらすわよ?」

言われて見れば確かに。

だが断る!

レタスレートおねえさんと必要以上に一緒にいたら必ずや壮大な厄介事に巻きこまれる可能性大!!

コーラを飲むとゲップが出るというぐらい確実に!

有益な体験をするにしても僕は、平和に経験したいんだ!

波乱万丈なら何でもいいわけじゃない!

……そうだ!

僕はパンデモニウム商会の前商会長シャクスさんのお誘いでここへ来たわけでして!

帰りも彼の案内に従わないと失礼に当たるでしょうから!

レタスレートおねえさんの提案は非常い有難いものではありますが、ここはいったん解散ということで……!

「あ、ジュニア様、吾輩はここで失礼いたしますぞ」

シャクスさん!?

「早速これからバカ息子の再教育をしないといけませんからな。こちらから招いておいて失礼かと存じますが、あとはレタスレート様が引き継いでくれるようなので問題ありませんでしょう」

「オーケー、引き継ぎ完了よー」

そう言ってシャゼスさんを引きずり去っていくシャクスさん。

待ってください!

これはもはや引継ぎというより引き渡し!

護送される犯罪者の気持ちが理解できるんですが!?

「じゃあ、行きましょうジュニアよ共に! いい後継者になるための血肉となる経験がアンタを待っているわ!!」

「ただ視察は退屈だから、いい退屈しのぎを伴いたいだけですね」

というわけで一難去って一難。

魔国一の商人親子に散々振り回された僕は、そのまま間髪入れずに世界一の豆キチコンビに振り回されることになった。

* * *

そしてたどり着いたのが、ここ。

「豆流通センターよ!」

豆流通センター?

僕の目の前にはとにかく壮大な光景が広がっている。

お城か? と思うぐらいに巨大な……それでいて無機質な外装の建物に入り、その内部は意外と清潔で……。

しかしそれ以上に印象的なのは、建物内を所狭しと流れまわる無数の……大量の豆だった。

どれほどの量なのか、もはや想像もつかない。

重さで言えば数百トンはあろうか。

粒の数でいえば、もう数億はあるのではないかと思われる。

その豆が、さながら大河のように大きな流れとなり、建物内のあらかじめしつらえられたルートを通って。

終着点では用意されていた袋の中にピッタリ同じ量詰められて、さらにベルトコンベアの上を流れていく。

最終的には、荷車に詰められて魔国中の津々浦々へと送り出されるのだろう。

「我らレタスレート&ホルコスフォン豆カンパニーは、今や人魔人魚三大国の多くに豆畑を所有して潤沢な生産量を誇っています。各所で生産された豆は、このような流通センターにいったん集められて品質を確認したあとパッケージ、各小売店へと発送されます」

そんな仕組みが……。

「このような流通センターは各国に複数あり、確実で効率的な豆流通を実現するために日夜取り組んでいます」

「かつて人口大増加で、食料の不足が懸念されたけれど、その問題を見事に解決したのが我が社の流通網よ。豆は栄養満点エネルギー満点! 豆だけ食べていれば人は生きていける! ゆえに豆は優良なる完全食品! 豆は主食!」

「我が社の豆は、食糧危機を乗り越えるのに大きく貢献したということで各国の評価も高まっています。そのお陰でこのように大掛かりな事業も推進できます」

こうしてレタスレートおねえさんたちは、自分たちの会社を成長させていた。

機会に乗じ、チャンスを最大限に生かす明敏さ。

今、世界企業の核心へと迫る。