軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1348 ジュニアの冒険:農場神拳やぶれたり

僕の防御を突破してきた……!?

僕の『究極の担い手』は、手にするものの潜在能力を限界以上まで引き出す。

使いようによっては逆も可能で、それによって強制的に能力ゼロにされた僕への敵意ある行動は何の意味もなさない。

それがこの僕の農場神拳の神髄だというのに……。

僕の能力が無効化できない攻撃?

そんなものがあるのか?

「ザーガ、キミは一体……!?」

演習を見守る魔軍司令のマモルさんも困惑風味だ。

マモルさん、彼は一体……!?

「今年から入隊してきた幹部候補生の一人だ。……とは言っても同じような待遇の新人はそれなりにいるし、その中では取り立てて目立つところもない、極めて平凡な人材のはずだったんだが……」

あの身のこなしは、とても『平凡』とは言い難いぞ。

試しにこっちから攻撃をしてみた。

「精霊砲!」

精霊たちの力を借りて放ったゴンぶとビーム。しかし相手はヒラリと宙を返して難なくかわす。

その動きはさながら蝶の舞だ。

「いや、それもアレだけどなんだあの広範囲攻撃は!? しかも詠唱なし!?」

いや精霊砲は、精霊と心を通わせた僕の基本攻撃なので魔法ではないです。

よって詠唱も必要なし。

だがだからこそモーションなしの突発攻撃を、あそこまで完璧にさばききる相手に驚きだ。

ほぼ不意打ちのタイミングだったのに。

反射速度、身体能力。

どれ一つとっても一級品だ。少なくとも今日集められた新人ルーキーの中では断トツ一位。

「……何者だ?」

自然とそんな声が漏れ出た。

想像を超えた強さだけでなく、その佇まい、存在そのものが、僕の警戒心をざわつかせる。

「何も、ただの魔王軍の新人士官ですよ」

「ただの新人に、僕の能力を突破することなどできない」

「大した自信ですな。農場国の王子ゆえの自己肯定感なのかな?」

さっきも言っていたが、僕の正体を見透かしている。

本当に、一体何なんだ?

何故こうも唐突にシリアス展開?

「本当は迷ったんだ。あのままポンコツの振りをして、その他大勢と一緒に薙ぎ倒されてもよかった。でも、せっかくアンタと直接対決できる機会に恵まれたんだ。ならばオレたちの鍛え上げた技が、どこまで通じるか試す方が断然有意義だと判断した」

相手のかまえが、独特なものへと変わる。

いかにもなんかの拳法を習ってそうな。

「出し惜しみはしないでくれよ。せっかく魔王軍へ潜入した成果を台無しにするんだ。それ相応の手応えがないと帰って怒られちまうからな!!」

猛スピードで飛び込んでくる。

僕は後退しながらさばいていくが、やはりいつもの手応えが感じられない。

『究極の担い手』で相手のパワーを減殺できない。

何が起こっているんだ!?

「混乱しているか!? わけがわからないか!? 能力に頼り続けた結果がこれだ! 唯一の取り柄を封じられ、何もできないまま打ち崩されるがいい!」

「はッ!? よッ! ほえぁッ! おふぁッ!」

「案外しぶとい!?」

『究極の担い手』が機能しなくても、僕はオークボ&ゴブ吉さん譲りの体術で、なんとか攻撃を凌ぎ続けた。

ライトターン! レフトターン! アップダウン! アップダウン! ボンサオパクサオ!

しかし後手に回っていてはいつまでも勝利はできない。

それに僕自身にとっても『究極の担い手』が通じないというのは由々しき問題だ。

今後のためにも、どうしてこんなことになっているのか詳細を解き明かさねば。この戦いの中で。

僕は、相手の猛攻をしのぎながら視線を周囲に巡らせ、何ぞやかないか探す。

……ううん、あんなのしかないか。

僕は一旦倒れるふりをしながら地面に堕ちてた小石を拾って、すぐに立ち上がった。

小指の爪よりも小さな、砂利といっても差し支えない小石。

さすが魔王軍の訓練場、入念に掃除されていて拾えるとしたらこんなものしかない。

欲を言うなら小枝の一本でもあれば、剣代わりに使えたのに。

しかし文句を言っても始まらない。

小さな小さな頼りない石を、アンダースローで投げつける。

豆鉄砲にもならない小石の投擲だったが、僕の手から離れた途端に凄まじいスピードで、かつ直角的にグニャグニャ折れ曲がるという物理的にありえない軌道を描きながら、それでも狙いはあやまたず、相手へと命中する。

「ぐぬぅッ!?」

相手も痛かったのか、腹部に命中した途端苦しげに後退した。

二、三歩よろめいて、何とか踏みとどまる。

「まるで弾丸……、腹を刺し貫かれたかと思ったぞ。これもまた『究極の担い手』の力か?」

やはり別の使い方をすれば『究極の担い手』はしっかり作用する。

能力そのものを封じられたわけではないようだ。

問題なのは、あのザーガとかいう若手士官からの攻撃が、こちらに触れた瞬間。

その時たしかに『究極の担い手』が無効化されているのを感じる。

いや、むしろどこか意図せぬ方向へ受け流されているような?

とにかくその謎を解かない限り、僕の攻撃は向こうには届かない。

なんてったって体術に関してはあっちが完全に上のようだ。

ここまで拳を交えた以上は歴然とわかる。

そしてもう一点気になるのは、相手が徹底して徒手空拳で戦うということ。

他の魔王軍若手士官は、それぞれ得意らしい武器を携帯していたし、魔族らしく魔法に頼ることもあった。

しかし今、目の前にいるザーガさんとやらは徹底して武器を使わず、魔法すら使わない。

マーシャルアーツが彼のスタイルだとしても、魔法すら封じて体術一本で戦うのはあまりに非合理だった。

そもそも魔族は身体能力においては三大種族最低。

魔法を併用することで何とか他種族と渡り合えるというのに。

彼の秘密はその辺りにあると見た。

「どうした王子様、ギフトがなければ何もできないのか?」

「僕の能力はギフトじゃないよ」

神から与えられた、スキルを超えしギフト。

そう呼ばれるのは父さんの『至高の担い手』だけだ。

僕の能力は、父さんのギフトが遺伝という形で発現した、生まれ持ってのもの。

いわばオリジナリティ(個性)だ。

しかしギフトのことまで知っているとは益々何者なんだ?

「フン、ギフトであろうとなかろうと、お前の能力がオレに通じないのは事実。このままジリジリと追い詰められるしかないぞ。このオレがお前に、無様な敗北を教えてやろう」

とうとう『お前』呼びになった。

なんか知らんけれど、何故そんなに僕に向けて当たりが強いの? 僕なんかやった?

だが僕の『究極の担い手』を舐めないでほしい。

さっきの投石のように、直接相手に触れなくたって効果を発揮できる方法はいくらでもある。

相手に直接触れる効果のみを無効にされるのだから、他にやりようはいくらでもある。けれど、その上で僕はこの戦いが続行されているうちに彼の秘密を解き明かすべきだと考えている。

だから、僕はこの殴り合いを放棄することはできない。

「……なんとかして、自分の能力が無効化されるカラクリを暴こうとしているな? しかし無駄だ、お前にこの農場聖拳を破ることはできない」

農場……聖拳……?

ってなに?

「お前には理解が及ぶまい。お前の力を破るために編み出された究極拳術。お前はそれに圧倒され倒れるのみだ!」

ますますわけがわからない。

だが、僕の能力が無効化させるのが“のうじょーせいけん”のお陰だというなら、そこに何らかの術理が働いているということになる。

僕は自分から突進し、彼に向って拳を見舞ってみた。

「はぁああああああッ!」

「無駄だ、ほれほれほれ!」

やはり攻撃から防御に回っても、やはり僕の手が向こうに届く感覚がしない。

しかし二度、三度と繰り返していくことで少しずつだが、わかってきた気がする。

彼が何をしているのか。

そしてタネが割れてくると同時に、その推測を実証したくなる気持ちに駆られた。

「うごわッ!?」

僕の拳に吹っ飛ばされる彼。

やはり、推測は当たっていた。

彼は魔法を使い、自分の回りにごく薄い空気の層を張っていたのだ。

それは、バリアとしてはあまりに弱くて薄い、実戦には使えないシロモノだったが、それでも僕が直接彼の身体に触れることぐらいは阻めた。

僕の『究極の担い手』は、この手に直接触れなければ効果を発揮しない。

だから触れることを遮断するだけで充分だったんだ。

しかしタネがわかってしまえばもう効かない。

『究極の担い手』の効果対象を、彼自身から周りに張ってある空気の層に切り替えればいいだけだ。

空気の層のコントロールを『究極の担い手』で奪い、圧縮させて爆発させた。

そんなことを直近でやられたら溜まったものではないだろう。

しかしこれで実証された。

もはや『究極の担い手』は、彼に通じない能力ではない。

今度はこちらから言おう。

農場聖拳、やぶれたり。