軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1347 ジュニアの冒険:蠱毒

「ちょーいちょい! ちょいちょいちょいちょいちょい……!!」

慌てた風に割り込むのは四天王のマモルさん。

貧乏くじを引き続けて頂点にまで立った男。

「ジュニア王子……、さすがにその説明だけでは乱暴では? もう少し説明を……!」

戦場で、いつでも充分な情報を得られることがあるんですかッ!

「それはそうだけれどキミ、ヤケクソになってない? そういう目をしている人を、私はこれまで何人も見てきたんだが……!?」

そりゃあヤケクソにもなるでしょうよ!

魔国を訪れたら唐突に幹部候補の選抜に駆り出される意味不明の展開!

ヤケクソにでもならなきゃやってられませんっつーの!

「彼もまた、苦労人の系譜につらなる者か……」

なんかマモルさんの視線が遠くを向いた気がした。

「いや、そんなんで納得できるか!」

とヤジが飛んだのは、僕と相対する数十人の群衆からだ。

「いきなり招集されて、この場でバトルロイヤルしろだなんてふざけているのか!?」

「そうだそうだ! しかも命令するのがゴティア魔王子やマモル司令ならともかく、どこの誰かわからん人族なんて!?」

「せめてお前が何者かくらいハッキリしろ! オレたちは魔王軍の上官以外には従わない!!」

もっともな正論だ。

僕が彼らでも同じことを言う。

所在も明らかにせず指示する相手になんて。

「僕は……ゴティア魔王子から全権を委ねられた者だ」

それ以外にみずからを語りようがない。

だって魔王軍から見たら完全部外者だし。

「だがキミたちの言いたいこともわかる。そこでこういうのはどうだろう」

僕も殺し合い……もとい、バトルロイヤルに参加する。

僕のこの目と手で、次代の魔王軍を担う幹部候補を見極めてくれよう。

「あの……彼の身元は私が保証するんでさ。キミたちもしばらく付き合ってはくれないか?」

申し訳なさげに言うマモルさん。

「今日のこれもちょっとした演習と思てくれればさ。キミたちにも実のある経験になると思うよ。成績優秀者にはさ、魔軍司令から特別評価つけちゃう!」

「マモル司令がそう言われるなら……!」

さすがマモルさん。

人の動かし方がわかってらっしゃる。

ゴティア魔王子はただひたすらこの人を大事にしておけばいいんじゃないかとすら思える。

「それにね……これはけっこうマジなんだけど。彼との手合わせは、この上ない成長材料になると思うよ。キミたちは彼から大きな学びを得るだろう。それを魔軍司令として保障させてもらうよ」

「……!」

マモルさんの言葉は当然のように思い。

困惑交じりの視線が僕に集中する。

「まあ、特別訓練ということで始めてくれ。……では、スタート!!」

なんやかんやでバトルロイヤルの火ぶたが切って落とされた。

すると真っ先に僕へと向かってくる数人。

僕は格好の標的のようだ。

「わけのわからんまま戦わされるのは御免だ!」

「何より真っ先に、お前の化けの皮を剥いでやるぜ!」

まあ、わけもわからんまま戦わされるのに納得できないキミたちの気持ちもわかる。

僕も限りなく彼らに近い状況なのだから。

だから僕もせめて、彼らにとっても有意義な戦いを行わなければ。

……農場神拳。

「はッ?」

「ふるわッ!?」

僕の手に触れたものは、その潜在能力のすべてを封じられて無力と化す。

魔族の基本的な戦い方は、魔法もしくは魔法と併用した近接攻撃。

しかしそれらすべては僕の『究極の担い手』に無力。

スポンスポーンと転がされた僚友たちを見て、呆然とする魔王軍の若手たち。

「…………!?」

「マジで?」

恐らく魔族から見れば想像したこともない戦法に、呆然とするしかないのだろうな。

呆けた心を現実に引き戻さんとするかのように、パンパンと乾いた音が鳴る。

「戦場で呆然自失とするのは死と同義だよ。わからなくてもとりあえず動く。そして考えることをやめない。それが生き残りの鉄則だよ」

マモルさんが、実に魔軍司令らしい教導的なことを仰っている。

ベルフェガミリアさんよりあの人の方が全然指導者然じゃない。

「なんだ、あの人族……まったくわからねえ」

「しかしただ者じゃないのはたしかだ」

「何十年前の先輩はあんな敵を相手に戦っていたのかよ?」

ちょっと違うと思いますがね。

「だったらもう、これをいい経験と思うしかないぜ!」

「マモル司令のおっしゃった通りに!」

「こうなったら破れかぶれだ! この突撃を明日への糧に繋げてやる!!」

と一斉に僕へと襲い掛かる。

バトルロイヤルとは何だったのか? 完全に僕一人vs魔王軍のルーキー全員という構図だ。

始まりから言ってそうなっても仕方がないのだろうけれども。

僕は真っ向から受けて立ちますぜい。

そして僕は掴んでは投げ、掴んでは投げ……。

遠距離からの魔法攻撃か!? 『究極の担い手』で魔法効果を無効化だ!

前衛と後衛で連携し始めた!?

むぬぬぬぬ、いい指揮官がいるな。即席でなかなかのコンビネーションを発揮している。

「……レコムトは真っ先に突撃、その果敢さは素晴らしいが逆に迂闊であるともいえる。チョモテは慎重だな、後方支援隊への配備を検討しておくか……」

マモルさん……、観戦しながらしっかりルーキーたちへの評価をつけてらっしゃる……!

細かいというか抜け目ないというか……!

やはりあの人は管理職にピッタリな人材なのでは……!?

頼むマモルさん。その勢いでゴティア魔王子が信頼を寄せる腹心を選び出してくれ!

そして戦いが進むごとに人も減っていく。

敗北条件は主に定めなかったが、僕の当て身とかで戦闘不能に追い込まれてドンドン脱落していく。

僕も注意しながら戦ってきたが、取り立てて注意を引く人はいなかった、

そう思った瞬間だった。

「…………ッ!?」

奇妙な違和感があった。

次々と襲い来る魔王軍ルーキーを捌いてきたその瞬間だ。

体に衝撃が走った。

そして吹っ飛ばされた。

バカな?

僕に加えられた攻撃はすべて『究極の担い手』で無効化したはずなのに!?

『究極の担い手』でキャンセルしきれなかった攻撃がある!?

吹っ飛ばされたのは、むしろ衝撃を感じてみずから後退したからだ。

そうやって攻撃の威力を殺す。

オークボさんやゴブ吉さんから体術を習っておいて正解だった。

やはり一つの手段だけで同行するのは誤りってことだな。

「ジュニア王子に攻撃が通った? バカな……!?」

マモルさんも驚きの様子。

改めて前方へ視線を向けると、ルーキーはもう一人しか残っていなかった。

その一人が不敵にこちらを見詰めている。

若い男性魔族だが、一目見て不思議な感覚に襲われた。

これと言って特徴はなく、印象にも残らない。

それなのに、その印象の薄さが酷く不気味で、総毛立つ。

彼が……。

僕の『究極の担い手』を突破して攻撃を当ててきたのは疑いない。

「ザーガ、彼が……?」

マモルさんが彼に向っていった。

その彼は、まるでこちらを値踏みするように視線を向けてくる。

「農場神拳の攻略法……理屈通りに進んでいるな、今のところは」

!?

攻略法、どういうことだ!?

「このようなところで実験データが取れるとは好ましい。こうなったからにはとことんまで付き合ってもらいましょうかジュニア王子」