軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1333 ジュニアの冒険:森の血祭り

こうしてエルフの森での陶芸勝負は無事終わった。

僕を含め、関わった人それぞれに得るものはあっただろうか?

「私はこのまま止まらない! エルロン宗匠の期待に応えるために必ず一人前の陶工になって見せる!」

ひとまず少女エルフのエルクさんは、成長の一歩を踏み出せた模様。

「課題は把握できたわ! 宗匠の作風に寄りすぎている自身から脱すればいいのよ! オリジナルよ、オリジナル!」

おおう、成長途中の創作家にとってかなり危険なワード。

「こういうのはどう!? 宗匠の作風に、人族の好戦的な一面と残虐性を併せてみたわ!」

何故それを併せようと思った?

そしてキミは人族を何だと思っているのか?

自分の中のオリジナルを無理やり見つけ出そうとして迷走が始まった。

「迷ったっていいじゃない、エルフだもの、えるろん」

エルロン宗匠に新たな作風が芽生えている!?

アナタ陶芸だけじゃなくてそっちの方面でも行くんですか!?

「ところでご子息、せっかくエルフの森まで来たんだから、ここでしか体験できないイベントを楽しんでいかないか」

急激な方向転換に首の骨折れるかと思った。

何ですかいきなり?

イベント?

そりゃあ現地でのお祭りは観光地の目玉でしょうが……。

エルフの森でも何かあるんですか。

モリザキ春のエルフ祭り?

点数集めてエルロン宗匠のお皿をゲット?

「それよさそうだな。L4C様に相談してみるか」

また彼女たちに商材を提供してしまった。

「しかしこれから始まる祭りはそうではなく、……もっと血生臭いものだ」

そのワードの時点で気が進まないのですが。

血生臭いと言いましたか。

それ、疫病と戦争の次位に聞きたくないワードです。

そんな形容詞がかかる時点で穏やかじゃないじゃないですか。

「人生というのは、奪い合いや戦いなんだなあ、えるろん」

その作風止めろ!

やるならもうちょっと穏やかというか希望散りばめるようにやって!

「まあ仕方あるまい。ヤツらが相手となるとこちらもそれなりにケンカ腰にならざるを得ないのだ。なにしろ……種族の誇りをかけての争いだからな」

エルロン宗匠は不敵な笑みを浮かべて言った。

その表情には、感性豊かな陶芸家とは打って変わった、戦士としての覇気が伴っていた。

これは、それだけの闘志がお祭りに向けられてるってこと?

祭りは祭りでも血祭りってか!?

聞けば聞くほど不安になってくる。

お祭りとやらが始まる前に帰ろうかとも思ったが、それは状況が許さないようだ。

「参加するわよね人族! お祭りは楽しいわよ! 新作の着想も得られるかもしれないし!」

後ろからエルクさんがべったりくっついてくる!?

これが同調圧力!?

自分たちと同じ方向へ進むことを言外に強制してくる!?

「あ、あの……!」

せめてもの対抗として、言った。

「人族って呼ぶのやめてくれませんか? 僕はジュニアっていう名前があるんで……!」

「わかったわジュニア! 私はエルク・エル・トリエル! エルフ族の聖なる語“エル”を三つも備えたステキな名よ!」

はい、そのように伝え聞いております。

エルフ族のネーミングセンスは独特で、名前に“エル”が入っているほど格式高いんだとか。

中には冗談かというぐらいたくさん“エル”が入っていて、冗談かというぐらい名前の長いエルフもいる。

「そうじゃ、エルロン宗匠も、我らエルフにとって得難い存在になって久しい。立場に見合うように改名し、その名により多くの“エル”の聖号を加えてもいいのではないか?」

「えぇ~?」

「そうじゃ、“エルエルロンロン”というのはどうじゃろう?」

ちょっと待て。

なんで“ロン”の方まで増やした?

* * *

そんなこんななうちに祭りの本番が始まった。

エルフたちは森の入り口に集まって、皆揃って一方を睨みつけている。

まるで何かを待ちかまえているかのようだ。

「ヤツら……なかなか来ないな」

「今年はヤツらの訪問年だというのに、どこかで道草食ってるんじゃあるまいな……!?」

何ともジリジリした気配が伝わってくる。

一体何を待っているのだろうか?

そういえばこのお祭り話が始まってから、エルフさんたちは皆対決ムードだけれど。

そして僕は待ち続けるぐらいなら集落部に戻ってごはんでも食べたいんだが。

森だからその辺に果物でも生ってないかな。

「宗匠! 前方より影が!」

「ヤツらか!? やっと来たな!」

えッ? 来ちゃったの?

せっかく集落に引っ込もうとしたのにタイミングがいいというかなんというか。

たしかに、森の外の地平線辺りがモヤモヤと蠢いている。

何らかの一団がこっちに向かっているのは間違いない。

だんだんと近づいてきて、色も輪郭もハッキリしていく。

そしてやっとわかった、こちらへ向かってくる一団の正体が……!

「……ドワーフ……!?」

現れたのはドワーフ族。

エルフ同様、この世界に点在する小種族の一つ。

しかも独自の技術を持ち、数ある小種族たちの中でも大いに成功している一族だ。

ドワーフが得意としているのは鍛冶や建造。

伝説級の武具はいずれもドワーフたちが工房で打ったものだし、お城や豪邸といった有名建築物もドワーフ族が手掛けたものだ。

魔族人族といった大種族もドワーフのことを重宝し、丁重な扱いで接している。

手に職持つが故の大いなる存在。

それがドワーフ族だった。

そんなドワーフの一団がパッと見五十人ほど。

エルフの森の入り口までやってきて、鋭い視線を交わす。

「遅かったな、頭でっかちのドワーフ族。我らエルフに負けるのが嫌で足が重くなったか?」

「ワシらドワーフが、お前らエルフに負ける要素などどこにある? 技術もないくせに小難しい戯言で誤魔化そうとするエルフなんぞに」

「なんだと!?」

「なにおぅ!?」

おおぅ。

いきなり険悪だ。対決ムードがヒシヒシと伝わってくる。

両者の間に電撃が走る幻影が見えるかのようだ。

何ッ? ドワーフとエルフってこんなに仲が悪かったの!?

不倶戴天の怨敵じゃないか!?

そう言えば昔、父さんが言っていた気がする。

――『エルフとドワーフが揃って芸術論的なことを話し出したらすぐ逃げろ。面倒なことになるから』

と!!

今まさにそんな状況。本能が僕に逃げろと言っているけど、既に出来上がっている状況が許してくれない。

一体何なのか、コレ!

「数年前から始まった。エルフとドワーフが共同で行う祭りよ」

隣に控えるエルクさんが説明してくれる!?

「エルフとドワーフの芸術観は真逆。ゆえにどちらが正しいかをハッキリさせるために年一で、対決し合うことにしたのよ! 名付けて『真秀! ドーエル芸術合戦!』」

ドーエル芸術合戦!?

それがこれから行われるお祭りだというのか!?

「一年ごとに各々のホームで行われることが決まっているこの祭り。今年は我らエルフが開催地の持ち回りよ! 七年目となったこの催し、通算成績は三対三のイーブン! 今年の結果でどちらかが一歩リードできる! ゆえに絶対に負けられないわ!」

ドワーフ、エルフそれぞれのキルマインドが燃え上がっていくのがわかる。

今ここに、血生臭い祭りが敢行される!?