軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1278 ジュニアの冒険:農場国の先入観

人間国は王都におりますジュニアです。

無事冒険者に登録できてこれからクエストをガッポガポと受けようかと思っていたところ。

しかしまだそこまでには至れぬようです。

「ジュニアきゅんの冒険者就任を祝ってー!」

「カンパーイ!!」

現在、この僕が冒険者になれたお祝いということで、お食事会が繰り広げられております。

僕の審査に関わったC級冒険者のヒビナさんとA級冒険者のシャルドットさん、それに受付嬢のサリメルさんまで来ております。

前二人はともかく、受付嬢さんはこういう賑やかな集まりには出ないように思ってたんだが……。

「人間を表面だけで判断するのはいただけませんね。私だってギルド受付嬢として最低限の社交性は持ち合わせています」

ああ、なんか……すみません。

「クエストを円滑に進めるためにも、ギルド側と冒険者の関係は良好でなくてはいけません。だからこそこうしたプライベートな集まりにも顔を出してできるだけ壁を取り除いておかないと」

「ホント真面目だけが取り柄なのよねアンタはー」

ヒビナさんが赤ら顔で笑っていた。

もう出来上がっている……!?

「冒険者なんて刹那的な商売よ。笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣いて、酔っぱらいたい時に酔い、金がある時に散在する。いちいち戸惑ってたら取り残されちまうぜー」

A級冒険者シャルドットさんも緩み切った笑みで、ジョッキ一杯のエールを一気に呷った。

こっちも出来上がっている!?

「まあ、ジュニアきゅんも早速一杯。今日はアンタのお祝いなんだからジャンジャン飲みなさいよねー」

「そうだぞ! オレらの奢りなんだから遠慮なんかするなー!!」

「そうよ! シャルドットA級冒険者様の、奢りなんですから!」

「オレたちの、奢りな! わかるな!? ジュニア以外は割り勘だからな!!」

いやあの……奢ってくれるところ申し訳ないんですが……!

僕まだ未成年なので、お酒は……!?

「ん?」

「みせいねん? 何それ、美味しいの?」

通じない!?

二人ともそれぐらい酔っぱらっているのか!?

そんな記憶野に支障をきたすほどに瞬時に酔ったの大丈夫!?

「……農場国では法律により二十歳未満の飲酒喫煙は禁止されているんです。そういう、まだ酒の飲めない十九歳以下の若者のことを未成年というらしいですよ」

おお、物知り。

っていうか、もしかして人間国には未成年という概念自体がないのか!?

酒はいくつから飲んでも大丈夫な国!?

『ルールや常識は地域によって違う』と父さんからも教えられたが……。

こうして肌で実感してみないとわからないものだな。

「ひえーッ、二十歳になるまで飲めない!? じゃあ私もアウトじゃん!?」

ヒビナさんが言った。

これは『フィクションなので実在の異世界とは関係ありません』とか但し書きが必要なヤツ!?

「マジかよ……オレは絶対我慢できねえ十歳頃には飲みまくってる。オレ、農場国に生まれなくてホントによかったぜ……!!」

農場国にもいいところはたくさんあるんですよ!

酒だけじゃなくてごはんも美味い!

ジュースやお茶やコーヒーもあるんだから、お酒がなくってもやり過ごせますって!!

「ヒト様の出生国を悪く言うものではありませんよ。しかも本人の目お前で」

「おッ、ああすまん!」

お詫びに一杯……とピッチャーを傾けようとするが、だから酒飲めないんですって。

「別に農場国を非難したいわけじゃないんだが、逆にオレは今日で一気に農場国へ興味が湧いたぜ。お前さんみたいな物凄いヤツがいる国って」

「そうねえ私も、農場国っていうくらいだから、住んでる人は皆農民とばかり思ってたわ。戦士や騎士がいるとは、とても……」

ヒビナさんが追従するように言う。

農業国は、外からそんな風に思われていたのか。これも国内にいてはわからないことだな。

ここは一つ、外から見た農場国の印象というものをできる限り聞いてみようじゃないか。

「んー、農場国って、たしか聖者って人が治めているんだろう?」

「現在では聖王と呼ばれることが多いようですね」

そうです、そうです。

「突如としてこの世界に現れ、人魔戦争を終結に導いたと言われています。ドラゴンやノーライフキングを従え、本人も世界を揺るがす神通力の持ち主とか」

「はー、でも戦争って言っても私の生まれる前でわかんないなー」

「私もそうですよ」

今や戦争を知らない世代も圧倒的に増えた。

僕もその一人ではあるんだが。

「魔国の魔王や人魚国の人魚王も一目置き、我が国のリテセウス大統領も聖者の弟子であったという噂がチラホラあります」

「それって都市伝説じゃねーの?」

ところがどっこいリテセウスさんが農場で学んでいたのは本当だ。

僕も幼い頃遊んでもらった記憶があるし。

でもリテセウスさんまだ大統領やってたんだな。

『絶対三期で引退する!!』って気合入れてたんだけど、叶わなかったか。

この国はまだ彼を必要としているんだなあ。

「でもどうでしょう? 私は聖者の存在自体が都市伝説だと思っていますがね」

おおっとぉ?

受付嬢サリメルさんから何とも大胆な推察が?

「存在自体? それってリテちゃんとの関係性だけじゃなく、聖者自体いないかもってこと?」

「もちろん農場国の王としての聖者は実在するでしょう。ですが『戦争を終結に導いた』とか『ドラゴンやノーライフキングを従えている』といった話はあまりに常識ハズレで眉唾に思えます」

「だったらなんでそんなウソを?」

「新興国を一刻も早くまとめるために象徴が必要だったのでは? 強力な求心力があれば国がまとまるのも早い。そのためにも“聖者”という絶対的な存在を使ったのでしょう。農場国を立ち上げるのに、既存の人魔人魚……三大国が協力したと聞いています。示し合わせるのは難しくないかと」

「うわぁ陰謀論~」

サリメルさんもとんでもないことを言い出すかと思ったが、一方そう言われるのも仕方ないと思った。

父さんってやることなすこと常識ハズレで、しかも滅茶苦茶ハデだから聞くだけじゃデマと見分けつかないだろうし。

「でもよ、オレはまんざらデマでもないと思うぜ」

シャルドットさんが酒を飲む手を止めずに言う。

「何故です?」

「そりゃあ今日、ジュニアの強さを目の当たりにしたからな」

と僕の方に視線が来る。

え? 僕?

「ジュニアの強さはそれこそ常識ハズレだぜ。制度もあるからそう簡単にはいかないが、オレに権限があれば即日A級に昇格させてたところだ」

「えッ!? シャルドットさん私は!?」

「ヒビナは、あと二年C級で頑張れ」

夢見るヒビナさんを置いて、シャルドットさんは続ける。

「一般市民のジュニアでこれぐらい強いなら、王様の聖者はどれくらいつよいんだよ!? って思うがな」

「私はジュニアくんの戦いぶりを直接見てないんですが、そんなに凄いんですか?」

「あたぼうよ! A級にもコイツに勝てるヤツが何人いるか!」

自信たっぷりに言うシャルドットさん、聞いててこっちが恥ずかしくなる。

「農場国に住んでるやつ全員がジュニアくらい強かったらこの世の終わりだぜ。なあジュニア、正直なところお前の強さって農場国でどの程度なんだ? ごくごく平均的か、それとも……?」

「もー、んなわけないじゃない! ジュニアきゅんはきっと農場国最強の戦士なのよ! 世界一強いに違いないわ! ジュニアきゅんみたいなのが何百人もいて堪るもんですか!」

「オレもそう思うがなー! わっはっはっはっは!!」

その追及に何と答えたらいいか僕はわからなかった。

まあ真実は、たしかに僕ぐらいの強さの人はあまりいないかもしれない。

でもそれを正面から認めたら、なんかいい気になってるみたいじゃない?

こういう時に父さんから受け継いだ謙遜の心がうずき出す。

「ぼ……僕なんてまだまだデスヨ?」

「またまたー」

虚言と傲慢、どちらの罪も犯さずに済むにはどうしたらいいのだろうか?

「そういやジュニア言ってたな。時々冒険者が遊びに来てたって。ソイツから鍛えてもらって強くなったのか?」

「そ、そうです!」

僕は渡りに船とシャルドットさんの作った流れに乗った。

先代シルバーウルフさんやゴールデンバットさんから教わったこともそれなりにあるからウソにはならぬ。

「農場国には、かつて大量の冒険者が流入したと聞きます。開拓者として草創期に活躍したとのことですよ」

受付嬢サリメルさんが、チビチビと飲みながら解説を加える。

「ただ、そういう経緯で農場国に渡った冒険者はうだつの上がらないものが多かったらしく、要は『厄介払い』だったようです。そんな元冒険者が指導に回ったとして、強者を育て上げられるとは……」

「だよなあ、そんな大したことない輩じゃジュニアの指導役は務まらないよなッ!!」

とシャルドットさんは高笑いしていたが、その相手が自分のところのギルドマスターだとは思いもしないのだった。

あえて訂正する必要もないので僕はただ黙って唐揚げにレモンをかけた。