軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1237 修行は続くよどこまでも

ちなみにシルバーウルフさんやカトウさんはどうやってゴールデンバットに攻撃を当てられたんだろう?

「色々あるが一番大きな要素は予測だな。ヤツの動きを予測して、ヤツが来るところへ攻撃を置きにいく感じ」

また高度なことを言い出した……!

「もちろんゴールデンバットも簡単に予測させてくれるような粗末な動きをしないので、まずは二手、三手繰り出して動きを誘導し、ヤツ側の選択の幅を狭める。それでも並みの使い手では二手、三手流しているうちにゴールデンバットの動きを追いきれなくなるがな。ゴールデンバット自身もただ避けるだけじゃなく奥の手の一つや二つ持っているから、そう簡単な話じゃない。カトウくんが浸透勁決めたのも十に一度の奇跡のようなものだったしな」

なんか物凄いハイレベルな攻防がされていることを創造させた。

「それ以外だと完全な不意打ちか。先ほど私がやったような。それも完全に意を消して打ち込まないとあのコウモリには気づかれる。それに意を消しても空気の流れで結局気づかれるので、空気を割って瞬間的に繰り出すパンチでないとダメだな。私が対ヤツ用に特別に編み出した必殺技だ」

という『言うは易し、行うはヤバし』の究極みたいな話をされて……ああ、S級冒険者ってやっぱりヤバいんだなあ、とあらためて思った。

それはともかく問題のモモコさん。

自身の閃光攻撃で自傷自爆状態となって医務室に担ぎ込まれた。

そこで適切な治療を受けること早や十分……。

「……はッッ!?」

目覚めた。

「あのクソコーモリはどこ!? 試合は!? 世界の命運は!?」

慌てながらに状況を探っている。

こういうところはファイティングマインドの塊なんだが……。

シルバーウルフさんがなだめるように語り掛ける。

「ここはギルド本部内の医務室だ。キミは自分自身の閃光を浴びて大ダメージを負い、意識を失ったんだよ」

「そうか……結局あのクソコーモリに勝てなかったのね……!」

意識を取り戻した瞬間、真っ先に気にすることはそれかとモモコさんの勝負の意気込みに圧倒される。

「クソコーモリのヤツは……?」

あッ、勝負がついたのでもうお帰りになりました……。

本当のことを言うと、やっぱりアイツもあの大閃光で大ダメージを負ったためにどこぞで治療を受けているんだけれど。

それをモモコさんと同じ医務室でしない辺り、やはり負けん気の強さがにじみ出ている。

医務室でモモコさんと鉢合わせたら自分も無傷で済まなかったとバレてしまうからな。

悟らせることなくモモコさんに一部の隙もない敗北感を擦り付ける。

それを狙っているゴールデンバットまずます性格悪いなと思った。

「たしかにゴールデンバットのヤツを倒すことはできなかったが、得るものも多かったのではないか?」

シルバーウルフさんが枕頭に侍り、言う。

「ゴールデンバットは性格に多大な難のある男だが、今日の戦いを通じてモモコくんに多くのことを教えた。冒険者の勝負とは、敵と戦って倒すことではない、と言うのが最たるものだな」

「うううううう……たしかに……」

モモコさんも気づけたところがあるのか、それ以上何も言えず歯ぎしりした。

やはり基本的に負けたことが悔しい模様。

「私にとって『勝つか負けるか』は『倒すか倒されるか』だったわ。この世界に召喚されてから、ずっとそうして戦ってきたから」

「戦争に参加していたら、嫌でもそうなるだろう」

「でも冒険者は戦うことが仕事じゃない。ダンジョンを攻略したり、まだ人が知らない場所を探検したり……。多岐にわたる。そのことを理解しないうちは半人前だって、あのクソコーモリは教えたかったのね」

どうだろう?

あの性格劣悪コウモリとしては単に新人のモモコさんにマウント取りたかっただけのようにも感じられるが……。

「そこに気づいてくれたなら、この手合わせ。モモコくんの勝ちも同然だ。改めてキミをS級冒険者として迎え入れたい」

「えッ? でも私はクソコーモリに負けたのに?」

「キミは既に四人のS級冒険者から承認を当ている。今更ゴールデンバット一人がゴネたところで影響はない。何より冒険者の等級任命権は最終的にギルドに帰属する。ゆえにギルドマスターである私がOKといえばキミは今日からS級冒険者だ」

本来そうだよね。

当のギルドマスターが『任命します』って言ってるのに、そこからさらなる遠回りを重ね……。

シルバーウルフさんからしてみたらしなくてもいい手間をかけさせられて、ここでも苦労人ぶりが垣間見れる。

「……いいえ! まだ私にはS級冒険者になるには足りないわ!!」

「ええー?」

なのに解決に向かわない。

モモコさん、まだまだ納得できないことがある模様。

「現役のS級冒険者たちを見てきて気づいたわ。彼らは皆戦うことではなく生きることに最大特化したエリート……いえ叩き上げエリートだわ」

矛盾してない、それ?

エリートの叩き上げ。

「頭では理解できても私はいまだ戦闘特化の勇者……。S級冒険者となるためにはより冒険者に適応するように体を作り直す必要がると思うの」

モモコさんは意外に真面目だった。

前の世界では運動部にでも所属していたのだろうか。実にそれっぽいことを言う。

「私にはまだまだS級冒険者になるので努力が必要だわ! 完全にマッチするように仕上げてくるから、もう少し時間をくれないかしら!?」

「完璧主義者!?」

モモコさんの燃え上ったやる気を抑える方法はないようだ。

こうなったら、ある程度は彼女のやりたいようにしてやるほかない。

「ああ、彼女の就任がまた遠のく……!?」

シルバーウルフさんはガックリと肩を落としていた。

きっとS級になった彼女に片づけてほしいクエストが山ほどあるんだろうな。

「……そうだ!」

しかし、そこは敏腕新任ギルドマスター。

すぐに妙案を思い浮かべて……。

「では、冒険者としてワンステップ成長したいモモコくんに、格好の修行場所を紹介しようではないか!」

「えッ! そんなことしてくれるの!? さすがギルド、至れり尽くせりのサポート体制だわ!!」

モモコさんがすぐさま飛びついた。

ここからはもうシルバーウルフさんによるギルドマスター級交渉術の独壇場となるだろう。

俺にできることはないな……と思い一旦医務室を退出、そして肝心のもう一人はどこにいるかと思って探したら、何故か屋根の上でうんうん唸っていた。

屋根の上?

ゴールデンバットよ。医務室に入りたくないにしても何故こんなところに?

「バカ者、S級冒険者たるものが無様な姿をさらせるものか。誰に対してもだ」

だからって屋根の上というも……。

「それより、折角来たんだから手当ぐらいしてくれ。薬とかもってきてないのか? せめて水は? 役立たんな」

……。

それは気が利かずに申し訳ありません。

俺は緊急時のためにプラティから預かっている魔法薬を一つゴールデンバットに振りかけてやった。

ズドーン。

「ふぎゃああああああああッッ!?」

あッ、これ爆裂魔法薬の方だった。

いっけなーい聖者間違えちゃった。

めんごめんご。

* * *

それから数日後。

モモコさんはすっかり回復して、修行の地に向かうことになった。

修行の地とはどこぞ?

シルバーウルフさんから紹介された目的地は、人間国の王都から遠く南下して、魔国とは逆方向の地域にある深遠の地。

人など滅多に立ち入らぬ場所として、さらに踏み入った者は帰ってくることがないと恐れられた秘境であるという。

「聞くばかりでも面白そうな場所じゃない! 修行しがいがあるわね!」

出発の時点でモモコさんはやる気に満ち溢れていた。

なんだろう? 修行が趣味の人なのだろうか?

少年漫画にいそうだな?

「ここからずっと行った先に、冒険者界隈でも有名な難関ダンジョンがあるそうなのよ! その名も、迷いの森!!」

迷いの森?

なんかいかにも聞き覚えのある名前だな。

「そうよね! どこにでもありそうよね迷いの森! そこはベテラン冒険者でも遭難しかねない変幻自在、難攻不落のダンジョンで、ギルドから選ばれた人しか入れないらしいわ!」

そんな場所なら冒険者として、生き抜くための直感やサバイバル能力を鍛えられるだろうかなって。

「この試練を耐え抜いて、私は最強のS級冒険者になって見せるわよ!!」

一体いくつの試練を乗り越えれば気が済むのか?

もはや試練が目的になっている試練マニアになってない?

「ところで聖者さん?」

ん?

「何でアナタまでいるの」

いや、折角だし子どもたちを見知らぬところに連れてってあげようかと思って。

大事でしょ家族サービス。

たまには家族でお出かけしないと。

「よろしくおねがいしますー」

「まだみぬせかいへー」

ウチの子たちもあいさつがちゃんとできて偉いねえ。

「きゃああああ! カワイイいいいッ!……じゃなくて、今から向かうのは前人未到のダンジョンなんですけど! 親子で行く観光地と違うんですけど!」

モモコさんの見事なノリツッコミが決まった。