軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1203 家庭人としての魔王

俺です。

今日は久々に農場でのんびり……と思ったら、何やら見慣れぬ展開が目の前で起こっております。

「おりゃりゃぁあああああーーッ!! 次は、矛で渦巻きを起こす戦法だ!!」

「はい、師匠!!」

なんかアロワナさんとゴティアくんが仲よい。

アロワナさんは人魚王で、ゴティアくんは魔族の国の王子様。

二人が和気藹々なのは世界平和にも繋がってたいへん喜ばしきことなのだが、今まで見なかった組み合わせなので若干の違和感を拭いきれない。

いつの間に仲よくなったんだあの二人?

「つい最近よ、って言うかついさっきよ」

通りがかったプラティから説明されて『やっぱり』と一人納得する。

しかし、ついさっき、かよ……。

人ってそんなに超スピードで打ち解け合えるものなんだな。俺には想像も及ばない陽キャレベルなんだが。

アロワナさんって、ああ見えてカテゴリ的には全然陽の者だよな。

王族なんだから当然と言えば当然だが……。

見た目もサーファーっぽいし……。

「王族だから明るいなんて偏見が過ぎるわね旦那様?」

俺の独白に反応してプラティ参戦。

どうして?

「アタシもまた王族であることを忘れていないかしら? しかしアタシは同時に魔法薬研究者でもあった。研究者なんて陰の中の陰カテゴリじゃないの」

偏見に偏見が折り重なっておる。

そうは言ったってプラティは見た目からまとう雰囲気からキラキラ光り輝いておるではないか。

陽キャのさらに上のプリズムキャラといった風格なのだが……?

「ちっちっち……、わかってないわね旦那様。そういうキャラが普段はウブな地味子を装っていて、婚約破棄をされたきっかけでよりハイスぺなイケメン旦那様に溺愛されるのが最近のトレンドなのよ」

お前は婚約拒否する側だったろうがよ……。

それに何が『最近のトレンド』だよ三児の母にまでなって……。

「誰がおばさんじゃあ!! うおがぁあああああああああッッ!?」

うわッ? どうした急に?

いきなり乱心するなんて、プラティもついに年頃に関して繊細になるお年頃となったか!?

「三児の母の何が悪いのよ!? 母親であることは誇らしいけど、別に三児の母でかつお姉さんでいいじゃない!! その二者は共存し合えるはずよ! 太古の昔からそう決まっているはずよ!!」

とプラティが過ぎ去りし時を求める最中……。

「ふふふ……聖者殿はいつまでも夫婦仲良好よな……。こんなに会話が弾むなど……」

おや魔王さん?

魔王さんも農場に訪問なさっていたんですか、いらっしゃい。

「ちょうど政務に穴が開いてな。農場で勉学に励んでいる息子の様子でも見に来ようと思ったんだが……」

当の息子は、あっちで知り合いのおじさんと大盛り上がりしている。

「人魚王十六連戟!!」

「凄いですアロワナ王! ボクにもその技教えてください!!」

そんな様子を、指をくわえて羨ましそうに眺めているゴティアくんの実父。

「ぬおぉおおお……魔王家には代々伝わる二十四連撃の必殺技があるというのに……!」

「はぁ? だったら人魚王家には奥の手の五十六連の技があるわよ! アロワナ兄さんは子ども向けに一番初歩的な技を披露しているだけよ!」

連射の数で競い合わないで。

しかし魔王さん、そんな羨ましげに眺めるならご自分も交ざりに行けばいいのでは?

せっかく愛息に会いに来たんですから、こんなところで傍観する意味もないでしょう?

「いや……しかし……!」

? どうした?

魔王さんにしては歯切れの悪い?

「せっかくゴティアがあのように溌溂と楽しんでいるのに、我が割り込んでいったら楽しみを壊さないかと……!」

え?

いや、そんなことは……!?

「市井の親子関係ならないであろうが、魔王とその息子となるとどうしてもな。実際ゴティアも、我と面すると遠慮がちなところがあるし……!」

そう言われると、そう思える事態が実際にあったようななかったような?

魔王さんとこは単純な父子関係に収まることもなく、全魔族を統治し守るべき魔王の称号を受け継がせる大事な宿命も課されている。

そんな状態でとてもじゃないが、ただ仲がいいだけの親子ではいられまい。

「その割には、自分も王様でありながら親戚のおじさん感覚で接している御方もいるが……」

アロワナさん、ヒトん家のお子さんを抱え上げて高い高いしておられる。

「ウチの兄さんは大家族の長男だからねー。弟妹がたくさんいて、子どもの扱いにも慣れているというか……」

次子にして長女プラティの解説が入る。

「下の子の世話とかも率先してしてたし……って言うかさせられてたし。『自分たちが親になった時の練習になるから』というパパママの意向で……」

「うぐおおおおおお……そう言われれば、我は幼い時から親子関係というのが希薄で、子どもにもどう接していいか……!!」

魔王さんが頭を抱えてしまった。

そういわれると俺も一人っ子で、我が子に恵まれた際は何もない一からの経験で苦労したものだが……。

魔王さんもそんな感じなのだろうか?

「いや……我は兄弟が多いと言えば多かったが……!」

ならアロワナさんやプラティとこの家庭と似ているじゃないか。

さぞ賑やかなご家庭だったのでは?

「しかしながら我が父たる先代魔王は多くの妃を持っていてな。一番多い時期は十人以上の妃がいたとか。妃に入らない側室とか、一夜のお相手なども含めればさらにたくさんいただろうな」

oh my god。

中世王族にありがちお盛んな閨事情。

「相手の数が多ければ、その間に生まれる子どもの数も多く……、我もその中のだったということだ。同じ兄弟姉妹と言えども半分しか血が繋がっていないとなれば関係も希薄。それどころか次期魔王の座を巡って互いの命を狙うとか骨肉の争いも……!」

もはや和気藹々な家族事情とは程遠い殺伐とした間柄。

先代人魚王と先代魔王。

同じ子だくさんでありながら内情的にまったく違うという奇怪さ。

「ウチの兄弟は全員ママがお腹を痛めて生んでるからねえ。今にして思えばよく一人で生んだもんだわ」

プラティが感心しているような呆れているような、俄かに判別しがたい口調で言った。

「でも王族としては魔王さんとこの方が圧倒的にありそうな形ではあるけれどね。ウチの親どもがオシドリ夫婦過ぎるのよ」

「我も今更、両親に文句を言うわけではないが。そういう経緯なわけで自分の娘や息子にもどう接していいのやら……。魔王たるものが経験不足で情けない……」

そういや元々そういう話だったな。

魔王さんは統治者としても戦争を終わらせて、革新的な政策をいくつも打ち出している理想の君主なのに。

家庭人としても完璧を目指そうというのか。

普通ならどっちか一方でも満たされていれば充分と思うんだがなあ。

「我も、父ほどではないが二人の妃を持ち、我が子らは腹違いで半分しか血の繋がっていない兄弟もいる。そういう子たちがいがみ合って対立するようなことはないようにしたいのだ。我自身が若い頃、そうした環境で苦しんできたゆえにな」

自分と同じ苦労を我が子に掛けたくないと。

本当に子どもたちのことを想っていて立派じゃないですか。

でもまあ、魔王さんのお子さんたちに関してはいがみ合う心配はないと愚考する俺。

何しろ魔王さんの子どもたちの中にマリネちゃんがいるからな。

彼女なら、ゴティアくんがどんなに突っかかっても気迫と正論で丸く収めてくれることだろう。

ん? そういう問題じゃない?

「いや、苦手だからと言って背を向けていれば何の成長もない! 困難を乗り越えてこそ人はさらなる高みに立てるのだ!」

「その姿を子どもらに見せてやれば充分教育になるんじゃない?」

「我も政務だけにかまけず、子どもらとの時間を大切にし、末永く尊敬される優良な父親を目指さねば!!」

そうは言っても魔王さんも頑張って子どもらに歩み寄ってるじゃないですか。

そういう事案が実際にあっただろう。

なんだっけ……あの、神フィギュアみたいな。

「あの件はな……逆に我の方がのめり込みすぎてゴティアに引かれてしまったのだ。むしろゴティアの方がさっさと飽きて勉学に励んでいるのだが」

悲しい。

お父さんの方がホビーにのめり込む、けっこうありがちな構図。

「あの時の失敗で及び腰となっていたが、魔王たるもの逃げるわけにはいかん! 今度こそ幼子と打ち解け、ゴティアはじめ我が子たちと健全な親子関係を築き上げるのだ!!」

魔王さんの立派な宣言。

おおー、と思わず拍手を鳴らす。

となったら俺たち農場の面々が協力差し上げるパターンだな。

いいだろう。

喜んで魔王さんとお子さんたちの間を取り持つ特別イベントを企画して見せようではないか。