軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1171 海中の天使

あーしは天使ソンゴクフォンっすぅー。

マジ最悪。

今までアレクさんとこで世話になって好き勝手できてたっていうのに、今日からパッファ姐さんの監視の下、管理生活に突入すっよー。

クソだるぅー。

なんで今更、一日中生活習慣を見張られながら生きてかないといけないんすかぁー?

「アンタがテキトーに生きてるからいけねえんだろ」

などと言って怒ってくるのはパッファ姐さん。

あーしと熱い魂を分け合ったソウルメイトっす!

「テキトーな紹介文作るんじゃねえよ。まあアンタとは古馴染みと言っていい仲だから更生させるのも吝かじゃないけど……。まったくアンタもだらけちまったもんだねえ。皆で旅していた頃の張りの強さはどうしたんだい?」

そう……あーしとパッファ姐さんの出会いは旅先でのこと。

姐さんが惚れている人魚王子アロワナの修行の旅にお互い同行することから始まったっす。

あーしはその当時、復活したばかりで一般社会に対応できるか疑いをもたれてたんすよね神々から。

だから常識を学ぶためにもと、その時ちょうど修行の旅をしていた姐さんとアロワナ一向に加わることになったんすよね。

旅の仲間たちは協力して、様々な困難を乗り越え、ついに修行を完成させてアロワナのアニキは人魚王子から人魚王へとランクアップ!!

あの時は達成感が半端なかったっすよねマジで!

アロワナはあーしが育てた、みたいな!

「誰がアンタの傑作だって!? 思い上がんじゃねえよ! ウチの旦那様はなあ、アタイが心血注いで支えて、ここまで偉大になった自慢の夫なんだ!! 手柄ブン取るつもりなら叩き潰すよ!!」

ひぃいッ! ごめんなさぁーッ!?

……こえーこえー、やっぱアロワナのダンナが絡むとパッファ姐さんはガチヤベェぜ……。

マジ旅してた頃からアロワナのダンナにベタ惚れだったもんねぇー。

修業時代からダンナを支えて、一緒に実績積み上げていって……。

果ては人魚国の王様夫妻として君臨!

マジ立志伝っすわー。

「ふッ、まあこうして思い返すと懐かしいね。アタイと旦那様と、アンタとあともう一人で旅して、陸の世界中を回って。……あの頃は背負うものも何もなくて、ただ恋にひた走るだけだった……。がむしゃらだったけど、それだけに楽しかったあの頃……!」

過去を美化するようになったら人生かれた証拠っすよー?

……いえ! なんでもないっす!!

姐さん今日もお奇麗で……ヘヘヘ……!

「まあ、今だって充分生活充実してるけどねアタイは。お妃業も軌道に乗って来たし、子宝にも恵まれた。旦那様も今んとこ問題なく国政を担えているし、言うことのない人生だよ」

ええ~? でもそれなんか退屈じゃねえ?

やっぱ人生、刺激がないと? なんて?

よし! ここは全国民を出場者にした血で血を洗うバトルロワイヤルを……!!

「いい加減にしな」

ぎゃぴぃッ!?

姐さんの氷結魔法薬で血も凍る!?

「スリルに快楽を求めるヤツの行く果ては破滅しかないってわからないのかい? アンタがそんなんだからウチへ奉公へ出されたってまだわからないのかい!?」

えぇ~だってぇ~?

別にご奉公ならアレクさんとこでもしてるしぃ~!

「ダメだよ、アレキサンダーさんところは結局甘いから最後まで躾きらないんだろう。ここは百中の百三十アンタに厳しく当たれるアタイこそが適任っていうわけさ! スリル満点だしアンタも願ったりだろ?」

ぎゃあああああああっす!

こんなスリルは望んでねええッ!?

「旅してた時はアタイも旦那様のお世話することが第一でアンタにまであんまり気が回らなかったからねえ、今思い出すと。そのことを反省点にして、今度はキッチリ世間様の厳しさってものを叩き込むつもりさ。安心しな、アタイも二児の母になって子どもの扱いには慣れてきたつもりさ」

あーし、幼児とまったく同じ扱い!?

勘弁してくださいよ! あーしもアレクさんとこでそれなりに社会経験積んだつもりなんすから!

今更一から勉強しなおすなんて小っ恥ずかしいっすよー!!

「退屈してるんならちょうどいいだろう勉強しな! まったくアンタは、アタイらと旅してた時からちっとも成長してないんだから、その停滞ぶりで退屈ぶるなんざ十年早いよ!!」

うぐぐぐぐ、姐さんめ……!

昔はアウトローぶってたくせに今やすっかり後進を導く指導者みたいになりやがって!

角の取れた人間はもう終わりっすよ姐さん!!

「というわけで、アンタの成長を促すために一つ課題を与えようと思う」

課題!?

いやっすよ姐さん! あーし宿題とか課題とか大嫌い!

そんなんだったらまだ退屈の方がマシっすよ!!

「ここ人魚王宮で一ヶ月後、茶会が予定されている。その差配をアンタに任そうじゃないか」

茶会!?

ジャパニーズ・サドウ!?

「そっちの茶じゃねえ。王妃稼業もなかなか面倒くせえ余事が多くてさ。その中でも特に面倒なのが貴族階級との近所づきあいよ。人魚王妃たる者、名だたる人魚国に貴族夫人やら令嬢との関係を密に取らなきゃいけないからねえ」

そのためのお茶会と?

「卓を囲んで茶でもすすりながら誰かの陰口噂話でも喋りあう。女にとってこれほど結束の高まるものはないのさ。っつーわけでアタイも定期的に茶会を開いて貴族の奥様を招待しなきゃならねえ。王妃の務めってことさ……」

なるほど姐さんも大変っすね……。

全然そういうの性に合わないのに……!?

「まあ、ここ最近は産後の肥立ちってことで免除してもらえてたんだがね。でもそろそろ休養期間は終わりにしろってことで茶会の再開をせっつかれてるんだ。久々の開催ってことで何か趣向を凝らしたいと思ってたところ、天使が主催の茶会ともなれば話題性もあんだろ」

あーしを客寄せに使おうってことですか姐さん!?

ひでえっすよ、共に旅した陸遊記仲間をパンダ扱いして、心痛まないんですかい!?

「何言ってんだい。遊び惚け天使に仕事を与えてやってるんだから、むしろ感謝してほしいところだよ」

ダメだ何を言っても通じねえ!?

人魚王妃として幾多もの修羅場を潜り抜けてきたであろうパッファ姐さん。理論武装値が掛け値なしだぜ!!

「とにかくアンタは、この茶会のセッティングを通じて人同士の付き合いってものを学びな。人脈が九割で成り立っている貴族階層の、噂話で九割成り立っている女どもの集まりだ。いわば人付き合いの最高峰。アンタにとっちゃいい経験になることだろうよ」

そんな、やだぁ……!?

あーしは誰の制限も受けずにのんびり気楽にやっていきたかったのに。

しかしパッファ姐さんだけは例外。

この人の言うことにだけは逆らえねえ。

やるしかないのか? こんな面倒くささの塊みたいなミッションを?

こんなことならアレクさんのダンジョンで退屈かましてた方がよかったよー!

退屈しのぎにかましてやろうとか思ってた過去の自分が憎たらしいぜ!!

「ちょっといいかしらパッファさん?」

「はいッッ!?」

そこへ、おもむろに部屋へ入ってくる人が。

この女性……見覚えあるっす!!

「グッピーちゃんがお昼寝から覚めたみたいなの。おっぱいを上げてくれないかしら?」

「合点承知いたしました! 子どもたちを見ていてくれてありがとうございます、お義母さまッ!!」

そうっす。

この人はアロワナのダンナのお母さんで、先代の人魚王妃。

しかしその強さは超絶規格外でパッファ姐さんも手も足も出ず。

ドラゴンノーライフキング天使だって敵うかどうかわからない現行の化け物。

「モビィ・ディックちゃんもお昼寝から起きたから連れてきたわ。起きた時にママがいないと泣き出すなんて、まだまだかわいい盛りねえ」

「ああもう、こんなことで泣くなんて次の人魚王が務まると思ってんのか?」

「いいじゃない、可愛いのなんて今のうちよ。男の子なんてすぐに生意気になって可愛げがなくなるんだから」

クックック……王妃様になってすっかり偉そうになった姐さんも、姑にはかなわねえってことなんすなあ。

こちとら散々いびられたんでこういう光景を見るとスカッと爽やかってなもんよー。

「あらアナタ」

そんな前王妃様の視線がこっちを向いたッ!?

「話は聞いているわよ。アナタが今度の王宮茶会を差配するそうね。よしなに願いますわよ」

へ、へへぇーッ!!

「わっかていると思いますけれど王宮で開かれるお茶会は、王妃が直々に開く最高権威の催し。そこで手違いが起これば、どういうことになるかおわかりよね?」

はひッ!?

「アナタがお茶会でしくじれば、それは主催者となっているパッファさんのしくじり。人魚王妃であるパッファさんのしくじりは、人魚王家そのものの名に傷をつけます。もしそんなことになったら……うふふ、アタシ恥ずかしさのあまりに平静を保てなくなるかも」

そッ、それは……!?

皇帝竜すらビビらせた先代人魚王妃の猛威があーしに向かうってこと?

絶対失敗できないですやん!

全力で、必死にやるしかないですやん!?

あー氏の平穏な生活を守るために!?

「お義母さま、ナイス追い込みです」

「パッファちゃんの言う通り、とことんまで追い詰めないと実力を発揮できない子のようですからね。ウチで預かった以上は、たとえ死んでも真人間となって巣立ってくれないと」

意外とコンビネーションいい、この嫁姑!?

くっそう、こうなったら飛び切りの天使お茶会、何としても成功させてやらぁ!!