軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1069 復讐の女神

わ……私は戦争の女神アテナ……!

天地海の三界の中にてもっとも強く、もっとも賢く、そして美しい、勝利と凱旋を司る女神。

ヘラ義母よりも、アフロディーテのアバズレよりも、この私こそがもっとも美しいのよ!!

そんな私に……!

おのれぇ、こんな狼藉を働くなんてぇ……!?

一体何だったのあの閃光は?

ただの聖剣による神聖攻撃とは思えなかったわ。この神の肌を焼く、鮮烈な光は……!

ん?

ぎゃあああああああああッッ!?

焼け焦げている!? この女神の玉の肌が!?

年中美容のためにネクタルの風呂に入り、ポセイドスを負かせた記念に植えたオリーブ油で磨いた肌が……!?

たとえ聖剣の光といえども、人間風情の繰り出す攻撃でここまでやられるものなの!?

ううう……!!

おのれ、絶対許さないわ人間め! せっかく異世界から召喚して期待をかけてやった恩を忘れ、私に反逆するなんて……!!

討論会なんてまどろっこしいことをしようとした私が間違っていたようね。

こうなったら地上すべてを滅ぼしてやる!

この戦争の女神たるアテナの全力でもって地上全土を焼き尽くして、リセットした上で私たち神々に従順な生物を新たに生み出せばいいのよ!

失敗よ!

この世界は失敗なのだわ!

この女神アテナがそう決めたのだから、この世界はもう終わりなのよ!

よし、そうと決めたら天界に戻って、このリセットオブワールドというナイスアイデアを披露するわよ!

きっと賛同してくれる神々も多くいるでしょう!

というかここはどこ?

あの反逆人間にフッ飛ばされて、よくわからないところまで飛んできてしまったけれど……。

『ここは世界の西の果て、ヘスペリデスの園ですよ』

通りかかったニンフに言われてしまった。

マジで!? そんなところまで吹っ飛ばされるなんて、なんて威力の閃光なの!?

さすが私の選んだ勇者……いや、もうアイツは許されざる反逆者だったんだわ。

神に逆らった以上は断罪され、生きたままハゲタカに腸をついばまれたり、永遠に転がり落ちる岩を積ませる苦役を強いてやるんだから!

そうと決まったら天界へ帰還!

到着した!

さあ天界の神々よ、私のナイスプランを聞いてあそばせ!

『ダメに決まってんだろ』

なんでッ!?

私のプレゼンに真っ向から異を唱えてきたのは太陽神にして芸術の神アポロンだった。

パパゼウスが不在の今、実質天界を率いているのはこのアポロン。

そのアポロンが真っ向から反対したら、さすがに企画そのものの可否に関わってくるじゃない。

『何を言ってるの兄弟!? このままじゃもうどっちにしても地上は我ら天界神のものにはならないのよ! だったらもう滅ぼしちゃえばいいのよ! オールリセットよ!!』

自分たちのものにならない世界なんて、何の価値もないわ!

この戦勝の女神アテナに敗北の汚泥を塗り付けた罪深き記憶と共に、消滅の闇に葬ってしまいましょう!!

『ふざけるな。地上に暮らす多くの命を、何故我らの都合で消し去らねばならん? この世界は神のものではない。その世界に生きる生命一つ一つのものだ』

ええ子ぶりやがって、この芸人神がぁあああああッッ!?

パパ亡き天界を取りまとめるコイツが、こんな弱腰だから地上支配も上手くいかないのよ!!

だからこそパパが封印されたあとに私が代表に就くと手を挙げたのに!

ベラスアレスやヘルメスが向こう側について、さらには冥界のハデス、大海のポセイドスまでもが後ろ盾になったことで私も黙るしかなくなった。

くっそ、なんで誰も私に投票しないのよ!?

『お前に人望がないからだ』

ぬがぁあああああッッ!?

何なのよどいつもこいつも!?

世界一強く賢く美しい女神アテナを何故誰もが讃え慕わないのよぉおおおおおッッ!?

『日頃の行いからだろ。お前ら天界の女神は地上の人間が自慢話するとすぐ生意気だって言って潰してくるし、それに何よりポセイドス伯父さんと壊滅的に仲悪いだろお前。仮にお前に理があったとしても、300%の確率でポセイドス伯父さんが敵に回るんだから何をするにしても不利なんだよお前は』

そんな真顔で正論言ってこなくたってわかってるわよぉおおおおおッッ!

『それに、仮に私が賛同して地上殲滅計画を天界神で実行したとしよう。そうなった場合確実にハデス伯父さんとポセイドス伯父さんが止めに来るぞ。冥界神と海神たちのタッグにお前は対抗しきれるのか?』

うぐッ?

それは……そう天界神で力を合わせて?

『力を合わせて一致団結できるほど仲いいか? 私たち?』

のごッ?

『天界にもまともな神経の持ち主はいるから、まずベラスアレスとヘルメスが離反するだろう。きっとハデス伯父さんの側に回るだろうな。ヘラ義母さんとて、あの人は父上の浮気相手の子どもすべてを憎んでいるからお前の味方はしないだろう。ヘパイストスは元からモノ作り以外に興味を示さないし……』

そう聞くと……私に賛同してくれる神ってどれくらいもいないの?

なんて自分勝手なの天界の神々は?

『お前が連れている勝利の女神ニケはどうした? アイツはお前の随神なのだから、さすがに最後まで付き従うだろう?』

……。

アイツなら『勝てない戦いに興味はありません』と言ってとっくの昔に飛び去って行ったわ。

私以上に勝利にしか興味がないのよアイツは!!

ニケのヤツが去り際になんていったと思う!?『勝てないアテナ様に意味などありません』とか言いやがったのよ!!

『常勝の秘訣は勝つ側につき続けることか……ある意味真理だな』

そんなこと落ち着いて言ってる場合じゃないでしょ!

結局どうなの! 地上殲滅計画はするの!? しないの!?

『もちろんしないよ。どうしてすると思うの?』

がぁあああああああああああああああッッ!?

どうしてよッ!?

何故どれもこれも私の思い通りにいかないのッ!?

今まではそんなことなかったのに、そうよパパゼウスが封じられたのがケチのつき始めよ。

封印された当初は別にどうでもいいかと思ったけれど、やっぱりパパゼウスが率いてこそ天界は最強であり続けるのよッ!

今、その重要性に思い至ったわ……!

天神王ゼウスを復活させるのよ!

そこに気づくなんて私、やっぱり天才ね!!

『え? 今頃気づいたの? 遅くない?』

煩いわね芸人アポロンが!

『じゃあさらに聞くけれど、父上の封印どうやっても解除できないこともわかってる?』

はあ?

そんなわけないじゃない。

たとえどんな強固な封印だろうと、神の力を持ってすれば……!

『その封印を施したのも神なんだけど。父上の封印施設は造形神ヘパイストスの特別製だよ。アイツの作ったものはすべての神を凌駕するシロモノなんだから、父上自身だって内側から壊せない。主神でもない私やお前にならなおさらどうにもならないシロモノさ』

あのヘパイストスが……。

不細工でデブでコミュ障の分際で、偉大なるパパゼウスを閉じ込めるなんて……。

こうなったら力ずくで脅して、封印を解かせようかしら!

そうよ、あんな気弱オタク、戦争の女神である私にかかれば虫けらみたいなものなんだから無理矢理言うこと聞かせるなんて簡単!!

シコシコとモノ作りしている下級神よりも、戦争を司る私の方がよっぽど上位だものね!!

『言っておくけどヘパイストスになんかしたら私が全力で潰すよ?』

えッ?

アポロンが!? なんで!?

『ヘパイストスが天界でもっとも重要な神であるからに決まっているだろう。彼が創り出す神具はどれもこれも世界に二つとない一級品だ。この世界どころか別の世界からも、彼の作品を求めにくる神もいる。そんな彼を粗末に扱ったと知られたら戦争ものだぞ』

ええッ!?

そんなあのブサメンが!?

『彼のような職工神は、全世界見渡しても貴重なんだ。それに比べてお前のような戦神も美容自慢の女神も、どの世界にも最低一神はいて珍しくもない。貴重さで言えばお前とヘパイストスは天地の差だぞ。もちろんお前の方が下な』

私のプライドを抉って何が楽しいの!?

『だからこの世界の神々はヘパイストスを全力で保護する。私だけでなくハデス伯父さんもポセイドス伯父さんもだ。お前も父上同様の身になりたくなければ、迂闊な行動は慎むんだな』

くッ、釘を差されてしまったわ!!

どうすればいいの!? パパゼウスの封印を解くにしても、その封印を作り上げたヘパイストスでもなければ実行不可能。

脅して解かせるという手段も先手を打って塞がれたし……!

一体どうすればいいの!?

常勝不敗の戦女神アテナがこのまま辛酸舐めさせられるばかりでいいの!?

こんなの間違っているわ!!

……ん?

ヘパイストス?

そうだわ、ヤツに関する切り札が私にはあったじゃない!

いいわ、このプランでパパゼウスを解き放って見せるわ!!