軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1018 縁起物に頼んで

なんか最近周囲に振り回されがちだが……。

俺もみずから率先して行動を起こしていきたく思う。

それでもやるべきことは今一番大変な奥さんに関してのことだが。

現在三人目の子どもを妊娠中のプラティのために何かしたいと考えておる

何しろ妊娠出産を頑張ることができるのは女性のみであるからな。

男は常に傍から見守ることしかできない。

生みの苦しさを真から理解することもできず『がんばえー』と応援することしかできないのだ。

歯痒い。

なので少しでも彼女らの助けになるようなことができればと、色々考えろ巡らせてみる。

ジュニア&ノリトがお腹にいた時も様々やることはやってきたが、その際の反省を踏まえれば、より妻の助けとなれることをできるはずだ。

さらに今回は多くの家庭が同時多発オメデタでもある。

どこぞのお節介な神の差し金でな。

さて、何をしようか? と考えてみる。

先のジュニアやノリトの時には考えもつかなかったこと。

そこで思いついた。

縁起でも担いでみるか。

世の中には様々に理屈を無視した願いごとの叶え方がある。

願掛け、おまじない、ジンクス、神頼み、そういった事柄が。

多くの人がそういったことを『気の迷い』と嘲笑う。

しかしながら世間には必ず存在する、人事ではどうすることもできない、ということが。

本当にビックリするぐらいたくさんある。

そういうものに直面した時、人はそれまで散々バカにしてきたとしても思わず縋ってしまうものだ。

神や霊という存在に。

妊娠出産もそうした超理論の存在に縋りたくなる事柄の一つであろう。

いかに科学が発展したとしても、子どもは授かりものであるし得ようと思って得られるものではない。

無事お腹に宿ったとして、その子がちゃんと世に出られるかも確実とな言えない。

だからこそ人は神に祈るのであろう。

家内安全、交通安全、学業成就、商売繁盛、怨敵調伏、悪霊退散、ブラック企業消滅。

それらに合わせて“安産祈願”も神社への祈祷によくある項目であることからも窺い知れる。

ジュニアやノリトの時は、ただひたすら生まれてくれることに集中していたので脇目も触れなかったが……。

……いやむしろ第一子二子が無事生まれた感謝も加えて、第三子の無事なる誕生を祈って、何か縁起を担ぐのがいいかなと思いついた。

三人目にもなってやっと思い当たったのは、元から信心深い方ではないということでご容赦くれ。

そして元から信心深い方でないために、安産祈願で具体的に何をすればいいかもよくわからない。

とりあえず御守り買っとけばいいか? 安産祈願の?

それではステレオタイプすぎていまいち深く刺さらんな?

他に何かいい手はないものか?

何をすべきかわからぬ時は、専門家に聞くのがもっともよい。

ということで俺は農場内にある異世界天満宮へと出向き、その祭神であるところの菅原道真公に尋ねんとした。

『直接神に尋ねるというのもダイレクトすぎて剛毅だな』

やっぱりそう思いました?

しかしながら、縁起物とかの風習に詳しい人と言ったらアナタしか心当たりがないのですよ。

アナタは神ですけど。

こっちの世界にも安産を祈る風習もあるでしょうけれど、祈る相手があのゼウスとかの神々だと思ったら全然信用が置けないなと思いまして。

『たしかに……こちらの神々のちゃらんぽらんさは、見ていて頭痛がしてくるものよ……!』

と道真公、眉間を揉む。

何か言い知れぬ苦労を感じ取った。

そういや最近道真公は、なんや用事があってここの天界に通っているという話を聞いたことがあるが……。

『……まあ、愚か者にこそ学問は必要なのだからな』

その件は深く追求するのを控えた。

『それよりも今は、聖者の用件が本題であるな。……安産祈願の風習か、一般的なのは戌の日に腹帯を巻き、安産のご利益がある神社へお参りに行くことだな』

戌の日?

腹帯?

安産のご利益?

一気に興味深いワードが湧き上がってきた。

まず“ 戌(いぬ) の日”とは何ぞや?

『旧暦では一日一日に干支が割り振られていて、そのうちの戌の日だな。サル、トリ、イヌ、イ、の戌だ』

はい。

さすがの俺も十二支はご存じありますわ。

『動物の犬は、一度にたくさん子どもを産むだろう? それでいてお産が軽いとも言われる。それにあやかって、我が身も犬のような安産で済みますようにと祈りに行くわけだな』

はぁ、たしかに犬は一度にたくさん生まれるイメージだな。

近所で『飼ってる犬が子ども産んだよ!』と。

母犬が複数の子犬を甲斐甲斐しく舐めていた記憶がある。

「……でも猫も一度にたくさん産むんじゃ?」

『猫は十二支におらんだろう』

そうだった。

そうか。

「じゃあ虎は? 同じネコ科なんだから複数生みそう。十二支ならネズミもいるじゃん。ネズミ算言うくらいだから犬にも負けずに多産安産しそうだよね? それに蛇は卵生だけど、だからこそ一度にたくさん産むだろうし……!!」

『そういうツッコミはキリがないからやめろ!!』

はい。

失礼しました。

たしかに縁起物にケチをつけるなんて罰当たりだよなあ。

ご利益を当てにするんだから疑心など捨ててとにかく縋らねば。

『……次に腹帯』

それは知ってる。

妊婦さんがお腹を保護するために着用するものでしょう。

プラティもジュニアやノリトがお腹にいる時は着けていたし、より着心地よく、お腹を完璧にガードすることを目指してバティが新型腹帯の開発に苦心してもいた。

そこは大丈夫。

手抜かりなし。

『習わしでは安産祈願の戌の日参りから腹帯を着けるとされているが……。まあよい、では残るのは安産のご利益で有名な神社参りだな』

あの……ちなみに道真公は、そっち方面のご利益は?

『あると思うか? 生前、ゴリゴリの権力闘争に明け暮れた男にそんなご利益が?』

たしかに。

『安産のご利益で有名なのはとにかく女神だろうな。鬼子母神とか木花咲耶姫、豊玉姫などがご利益満載だ』

鬼子母神は俺でも知ってる。

アレでしょう? 何百人も自分の子どもがいるのを仏様が一人さらって隠しちゃったからさあ大変!ってヒトでしょう?

だいぶ端折った。

『咲耶姫や豊玉姫は、天孫の代の女神であるが双方出産にまつわる尖ったエピソードの持ち主でな。それにあやかって安産の神と見做されているようだ』

「尖ったエピソードって?」

『浮気の子でないと証明するために火を放った産屋で出産するとか』

ロックな女神様だな。

『まあ神社参りしたいなら私のようにこの世界に召喚する必要があるだろうがなあ。あの不死王に頼めば造作もないことであろうよ』

そうだなあ。

たしかにノーライフキングの先生ならば大抵のことは即座に解決してしまう、究極存在めいたところはあるけれど、さすがにそこまで大事にしたら何か不都合が起こりかねない。

『であろうな、この世界の神々も完全無視されて異世界の神まで召喚されたら愉快ではなかろう』

それをアナタが言うのもどうかとですが。

『……あ、そうだ。安産といえばもう一神。天之御中主という神もなかなかのご利益をお持ちであるが、この神が天地開闢より在る始原の神で、それゆえに新しいものを生み出すのにいいイメージがあるようだ。そちらを呼び出してみるのも……』

いいわけねーだろうがよ。

そんなビッグバンみたいな神様を異世界に呼んで、大変なことになったらどうしてくれる!?

こうして話してみたら、やはり安産祈願の御参りは総じてNGそうだな。

担当の神様を召喚するのも角が立ちそうだし、腹帯も元々あるから特別感がない。

唯一戌の日だけはよさげだがよく考えてみればこの世界、明確な暦がなかった。

暦がなければいつどの日が戌の日なのかもわからねー。

すべての案が全滅じゃないか。

どうしてくれるんだ? ここまでの時間?

「こうなればせめて本物の犬に願掛けを……そうだウチにはポチという正真正銘の犬がいるじゃないか!!」

『いや、それは犬の方も困るのでは?』

しかも我が農場にいるポチは厳密に犬ではなく、ヒュペリカオンというオオカミ型モンスターだった!

これは安産ご利益作戦、早くも万事休すか!?

『ふむ、それではもっと俗っぽいジンクスなどを頼ってみたらどうかの?』

道真公が提案してきた。