軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1017 兄妹は他人の始まり?

こうして何の益体にもならない授業が終わった。

ほんまにしくじり王女よ。

授業自体が何の教訓も与えてくれない。

「いい気になってんじゃないわよレタス風情が! アタシこそが史上最もやらかした王女になるんですからね!!」

「はぁー!? そんなん国滅ぼしてからほざきやがれー!!」

なんかどうでもいいことでいがみ合うレタスレートとプラティ。

二人のことは放置しておくことにして、肝心のこの授業を必要としていた本人だが……。

「マリネちゃん?」

大丈夫?

こんなくだらん授業でキミの若き貴重な時間を無駄にしてしまい……!?

「……とても勉強になったのーん!」

マジか!?

ちょっとマリネちゃん本当にそう思っている?

あまりにも得るもののなかった結果に無理して何かを得たと錯覚しようとしていない。

「やっぱり先達の実体験は参考になるんな! 魔王女として一歩高いステージに上った気がするん!」

「そうですか!」

「今、その成果をお見せしますん! 今日の授業を参考に編み出した新必殺技! 魔王女光線なん!!」

ピカーッ!!っと。

マリネちゃんの両腕からまばゆいほどの閃光がほとばしった!

さらに閃光は、一直線状に駆け抜けていき、その先にあったモノ言わぬ岩に命中し、瞬時のうちに蒸発させ欠片も残さない!!

「うわー、開墾の邪魔になっていた大岩が!」

「消え去って大助かり!」

なんぞこれ?

マリネちゃんが新たに習得した必殺技?

でも今日の益体ない授業で必殺技を覚える要素があったっけ?

教えた以上のことを独りでに習得することを『一を聞いて十を知る』とは言うが、一を聞いてまったく関係ないことを覚えることなんてあるのだろうか?

「魔王女Wカッターなのんー」

マリネちゃんが両手から発生させる真空刃×2で、その辺の雑草を刈り尽くした!?

間髪入れず新必殺技を開発してんじゃねーよ!?

……ともかくマリネちゃんが末恐ろしい子である。

彼女がある程度成長した時一体いかなる女傑が完成されることか。

考えてみれば父に魔王さんという当代随一の傑物、母にグラシャラさん……かつて剛力無双を誇った魔王軍四天王であるために血統で言えば申し分ない。

二人の親から優れ際立った因子を引き継げば、間違いなく英雄の質となるだろう。

さらには魔王さんの為政者として賢明誠実な面を譲られれば、人の上に立つ才覚にも恵まれる。

そして幼い頃よりここ農場に出入りして、気骨溢れる人々から薫陶を受け続ければ、才能も開花するに充分な刺激。

そうやって形となったのがここにいる才気満ち溢れた魔王女マリネちゃんということか。

……魔国の未来は安泰だなあ。

「ボクの未来は真っ暗だぁーーッッ!!」

明るい未来を空想する俺の隣でお先真っ暗な子がいた。

彼はゴティアくん?

先にマリネちゃんに絡んでから、存在感はなかったがずっと同行はしていた。

「我が妹であるマリネがここまで才気に恵まれていたなんて……これじゃあボクが魔王となる未来に凄まじい暗雲となるじゃないか!」

それは、まあ……。

正当な順位で言えば、魔王さんの長男であるゴティアくんが次期魔王となるのが当然の筋。

しかしながらいつの世にも実力主義ははびこるわけで。

能力において圧倒的に上ならば、たとえ後から生まれた子でも、あるいは娘でも、長兄を差し置いて王位につけたいということになるかもしれぬ。

過去そうやって巻き起こった骨肉の争いのなんと実例豊富なことか。

枚挙に暇がない。

実際に優秀でないとしても『オレの方が兄上よりできるんだ!』と思っただけで起こるものだから後継争いは。

いつだってどこだって頭を悩ませる問題であることだろう。

その問題が今、魔国においても勃発目前!?

「ボクが魔王となるためには、血統の優位性だけでなく実力でも王位に相応しいものだと示さなければならない。父上自身が、元々継承順位が低いところから実力で魔王の座につき、それ以降も人魔戦争を終結させるなど多くの功績を挙げた御方。だから後継者にも実力を求められる……!」

何かゴティアくんが独白しました。

「だからこそ日夜努力を続け、昨今は農場学校に入り益々飛躍を実感してきているのに……我が妹マリネの方が遥かに先を行っているじゃないか。能力も気概も。これでは生まれた順番や性別に関係なく、マリネを次期魔王に推す者も増えていくことだろう。そうなればボクが魔王となる未来が!?」

「落ち着いて、落ち着いて」

ただでさえゴティアくん、少年期は情緒不安定だからな。

多感な時期でもあるから、果てしなく広がる未来への期待や不満も著しく広がっていく。

「こうなったら……そうだ、マリネもまだ子どもであれば才能も完璧には目覚めていない。成長しきる前に亡き者とすれば、ボクの第一後継者の座は依然として安泰……!」

「こらこらこらこら」

やめろやめろやめろ。

それは大河ドラマとかで自滅する系のキャラの考え方だ。

大体後継争いで、分際を弁えずに暴走した挙句、主人公のトラウマとして残り続けるヤツ!

そんな哀れなやりとりを魔国で再現しちゃいけません!

魔王さんが悲しむだろうが!

「ここで唐突に作文を読むのんー」

「えッ? 何!?」

本当に唐突すぎて驚くんですが!

マリネちゃんの行動が読めな過ぎて戸惑う!

「タイトル『私の家族』」

本当に読み出した。

そもそも作文用意してあったの?

たしかにしくじり王女の授業直後で作文読めるような雰囲気はあったけれども。

それでも強行できるマリネちゃんはやっぱり大物だぜ!

「『人』という字は、人と人が支え合ってできてるのんー」

冒頭からパクリくさい格言が来た。

「それと同じように家族も支え合っていくものなのん。我のお父さんには奥さんが二人いますのん。普通この時点で家庭崩壊待ったなしだけど、意外とうまく行っておりますのん」

「何を語っているのだマリネは……!?」

ゴティアくんも妹の謎行動に興味を引かれたようだった。

そしてなおも作文朗読を突き進めるマリネちゃん。

「お父さんは仰ったのん。『魔国に住む人々の暮らしを支えるために魔王がいる』と。そんなお父さんを支えるために我たち魔王の家族がおりますのん。だからグラシャラお母さんともアスタレスお母さんとも仲よくして、家族一丸となってお父さんをお助けしますのん。それが魔王の家族の務めだと信じて」

「マリネ……?」

「そして将来は、立派な魔族淑女となって社交界で天下無双となってみせますのん。そうすることで、にぃにぃの助けになると思いますのんから。にぃにぃの夢は、お父さんの跡を継いで魔王になることですのん。そのために日夜努力を欠かしていませんのん。教師の言うことをよく聞いて、農場学校へも真面目に通っておりますのん」

なんかスゲーお兄ちゃんを持ち上げる方向にシフトしておる?

「我が、魔王女として高い評価を受ければ、にぃにぃの助けになりますのん。にぃにぃが立派な魔王になるために、我は国士無双な魔王女を目指しますのん」

「マリネぇええええええッッ!!」

うわ、ゴティアくんが感涙した?

「お前はッ、そんな風に思って日々頑張っていたのか!? ボクのために、ボクが立派な魔王になるために自分自身も頑張っていたと! そんなお前の気持ちもわからず、ボクはなんて愚かな魔王子なんだぁあああああああッッ!!」

「……というわけでうちの家族は皆仲よしですのん。おわり」

周囲の雑音も意に介せず作文を読み終わるマリネちゃん。

そしてゴティアくんは、感動癖をお父さんから譲り受けたらしいな。

魔王さんもそうやってすぐ感動するんだ。

「マリネよ……! 兄は盲が晴れたぞ。たとえ母は違うとも我々は偉大なる魔王を父に持つ兄妹。二人力を合わせてこそより発展した魔国を築き上げていくことができるのだ!」

「一致団結、家族団欒なのんー」

「これからは力を合わせて魔国発展に寄与していこう!!」

これは、一時は骨肉の争いになるかと思われたが無事回避できたということでいいかな?

魔王家の危機は去った……!

それも一旦は闇落ちしそうになったゴティアくんを、マリネちゃんが上手いこと引き戻してくれたという一点に限る。

兄を上手くコントロールしている妹。

やはりではあるが、マリネちゃんの方が人の上に立つ才覚が溢れているんではないだろうか?