軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18 可能性の塊 1

デントさんに何気なく主人公たちを紹介してくれるように頼めたのは僥倖だ。

「あいつらをか?別にいいぞ」

そして特に紹介することに問題ないなら、そのまま紹介されることになる。

「おーい!ステラ!アステル!ちょっと来い!」

こんなにあっさりと出会えるものなのかと思ったが、もし物語であったとしても、全ての出会いが劇的と言うわけではない。

こうやってさりげなく普通に出会うことだってあるだろう。

デントさんが振り返って名前を呼びながら手を振れば、呼ばれた二人が駆け足でこっちにやってくる。

近寄ってくるのは藍色の髪を持った男女の双子だ。

そして呼ばれた名前を、俺は知っている。

「デントさんどうかしましたか?」

「何か問題が?」

近寄ってきて、デントさんにかけた声もFBOにデフォルトで設定されていたボイスチェンジャーの声だ。

これはいよいよ、違うと言える要素の方を探す方が困難になってきた。

「なに、このどでかい都市を作った英雄様に、うちの期待の新人を紹介してくれって頼まれてな」

「どうも、紹介された英雄こと、リベルタです。孤児たちの護衛ご苦労様」

主人公と敵対するのは、ラスボスを敵に回すよりも厄介だと言うのが全ゲームの鉄則だろう。

なので、できるだけ穏やかに接する。

「初めまして!私はステラと申します!冒険者ランクはDです!」

「同じく、駆け出し冒険者のアステルです。ランクは同じくDです」

途端に気を付けの姿勢をとり、胸に手を当て頭を下げるという貴族の挨拶をする。

「ほら、期待の新人だろ?」

「確かに、冒険者の中でもここまで礼儀を守れる人って多くないですよね?」

「前に世話したガキは、冒険者だからっていう理由で子爵の令息にため口をきいて首を切られそうになった」

「・・・・・比較対象がおかしいですけど、そもそも冒険者だからっていう理由はどういうことで?」

「冒険者は粗野だからって、礼儀は気にしなくていいんだって言ってよ。まぁ、冒険者流の礼儀作法をしっかり叩き込んでおいたが」

「まぁ、デントさんから2人が期待されているのはわかりましたよ」

おそらく失敗した子供は頬にグーパンチをかまされたのだろうと、握りこぶしを作るデントさんの言葉に俺は苦笑し、改めてステラとアステルの2人に向き合いなおす。

変なプレッシャーとか、妙な好感度上昇とかは今のところは発生していない。

ひとまず普通に接してみようという気にはなった。

子供の俺と大人のデントさんのコントを黙って聞いて待っているあたり、冒険者らしくない。

冒険者は、無学で、畑を継げない村人や、食うに困って就いたりする人が多い。

そんな人が多いゆえに、気性が荒かったり、粗暴だったりする。

なので、いかに俺が偉くとも信じられなければ子供の俺に突っかかって来てもおかしくはない。

俺の周囲に護衛がいるということもあるだろうし、リーダーであり大人のデントさんが俺に礼儀を持って接しているのを見ているから、慎重になってそういう態度をとっているのかもしれないが、いずれにせよこういう対応は珍しかったりする。

しっかりと礼儀をわきまえ行動している、そういう点で言えば、冒険者らしくはない。

「それで、2人の実力は?」

「アステルの方はそれなりにやるぜ?俺と戦って、十回やれば一回くらいは勝てる」

「ほうほう」

「相性がいいだけです。自分の得物はデントさんよりも大きいんで」

「そのデカブツを振り回して俺に当てられるだけ大したもんだよ」

そんな2人のことを知るためにさらに一歩踏み込んでみる。

冒険者になっているということは、2人のどちらか、あるいはどちらも戦闘系のスキルビルドをしているということ。

事実アステルの背中には、大振りな両手剣が背負われている。

冒険者ランクBのデントさんに対して、模擬戦と言えどランクDの状態で勝つか。

ゲームであれば、色々と工夫して格下であっても勝つ方法はいくらでもある。

しかし現実でそれを実行できるのは大したものだと素直に感心できる。

謙遜し、顔を横に振り自分はまだまだだと言えるのも向上心があるように見える。

「妹のステラとコンビを組んだら、俺も本気でやらないと勝てないからな」

「ほうほう」

「リベルタも気を付けろよ。尻を触ろうとした男の指を切り落とそうとしたくらいに気が強いから」

「ちょっと、デントさん!」

そんなアステルは口数が多くはないが、実直という印象を抱く。

では、対してステラの方はどうかとなる。

装備を見る限り軽戦士。

左腕に装備したバックラーと片手剣。

オーソドックスな前衛の戦闘スタイルとみる。

レイピアみたいな刺突武器ではなく、しっかりとした造りの両刃のショートソード。

「2人組なら、デントさんにも勝てるか・・・・・ふむふむ」

前衛と後衛に別れているのではなく、前衛が2人。

となると、前の方で見事なコンビネーションが取れるということか。

見たい、そして体験してみたい。

主人公と戦えるなんて機会はFBOではなかった。

なにせ主人公イコール自分だ。

ある意味でPVPで、プレイヤー同士で戦うのが主人公同士の戦いとも言えなくはないが、それでも物語の主人公と戦っているという感覚ではない。

なので、普通に戦ってみたいという感情が芽生えるのはゲーマーとしての性だろう。

「デントさん」

「おい、何だその笑みは、変なことを考えていないだろうな?」

「嫌だなぁ、こんなにいい笑顔をしているリベルタ君を前にして変なことなんて・・・・・ちょっとしか考えてないですよ?」

「語るに落ちたな。素直に白状すればいいってわけじゃねえんだぞ」

しかし、こんな場でいきなり模擬戦を申し込むのは当然ながらよろしくはないし、たぶん圧倒的に勝ててしまう。

いや、もしかしたらとてつもない主人公補正で俺に勝つかもしれないな。

そうなると、やはり脅威認定はここでしっかりとすべきか。

変なことを考えたことは否定しない。

代わりにお願いがあると首を傾げたら、デントさんの表情が引きつった。

「で?なんだ変なことって」

「この2人と戦ってみたいなぁと」

「はぁ!?」

我ながら少々バトルジャンキーな発想だけど、相手を知るには拳を交えた方が早いというのもまた事実。

「おいおい、英雄と語られるお前がDランクの冒険者と戦うっていじめになるぞ」

「先駆者として、後輩に胸を貸そうというわけですよ。デントさんが期待するほどの新人ですし?どんな実力者なのか普通に興味があります」

ニコニコと、笑顔で理由を説明すれば、それに反比例するかの如くデントさんの表情がしかめっ面になっていく。

「・・・・・手加減するんだろうな?」

「けがをしたらしっかりと治療しますよ」

「心が折れたらシャレにならん。そこら辺も考えているんだろうな?」

その表情の奥には実力者と戦える経験の価値を知っている故に、後輩の将来のためにやるべきかどうかの葛藤が入り混じっている。

「そんなに軟な人たちには見えなさそうですけどね」

そんな心配を知っていても、俺の申し出にやる気になっているのが若干二名。

ちらりと本人たちを見れば、アステルは静かに闘気を滾らせ、ステラは顎に手を当て考える仕草をしているが、目は戦わないという選択肢はないと語っている。

「どうせ、今日は泊まるんですし、このまま一戦どうです?」

「どうするよ、お前ら?」

「やります」

「やらせてください!!」

中々肝の据わっている2人だ。

主人公らしいと言えばそれまでだが、それでもしっかりと英雄と語られる格上の存在に明確に挑戦できる者は中々いない。

「ああ!もう、わかったよ。ただし、他のやつらにも見せるぞ」

「構いませんよ。それじゃ、ひとまず孤児たちの受け入れだけを先に済ませておきましょうか」

そんな2人の覚悟をデントさんは止めることができない。

大きくため息を吐いてから、頭を掻き、了承する。

「ああ、ったく、酒が飲みてぇ」

「ジンクさん、今日は早上がりでいいんで、デントさんと飲んできては?」

「夕飯の支度をテレサがしているだろうし・・・・・どうだいデント。今日は一緒に夕飯でも?」

「遠慮なく、行かせてもらうぜ。ったくよぉ」

責任者は大変だと、苦笑しつつ。

冒険者の宿泊所の手配と、孤児たちの受け入れを進める。

何をやるにも、仕事はしっかりと済ませねばと思い。

俺も、孤児たちの移動を指示しようとした時だ。

「「・・・・・」」

遠くから視線を感じ、そちらを見ると、俺が嫌な予感を感じた少女二人が俺を見ていた。

ジッと、本当に俺を見ているだけだけれど、何か圧のようなものを感じる。

「リベルタ、あの2人と知り合いか?」

「いいえ、初対面です。彼女たちは?」

「ライナとジュリだ。アステル達のパーティーメンバーだ。あの歳で腕のいい魔法使いだぜ?」

「・・・・・知らない名前ですね。なんで見られてるんだろ?」

完全に初対面のはず、それなのに俺を見る。

この世界に来てから色々な人と知り合っているが、直接の知り合いではないのは確か。

となると間接的に誰かの知り合いで、その経由で俺を知っているのか?

「さぁな、意外と一目惚れだったりするかもよ?」

「止めてください。ただでさえ、目立つようになってからそっち方面の話でお腹いっぱいだっていうのに」

「なんかあったのか?」

「知らない貴族令嬢からの縁談を断り続けるのって、面倒なんですよね」

「・・・・・すまんかった」

そんな2人の視線をデントさんが揶揄ってくるが、俺が黒い笑顔で苦労話を語るとそっと視線を逸らして謝ってきた。

「はいはい、2人とも雑談はそこまでにして、この後も予定が詰まっているんだから仕事しようか」

「はい」

「わかったよ」

そんなやり取りをしていると、ジンクさんが一回拍手をして注目を集め仕事を再開する合図を送る。

そうすることで、場は動き出し、ステラとアステルもその場から離れて視線を送っていた少女たちと合流して仕事に入る。

流石に仕事になれば、ジッと俺を見てくることもなくそのまま孤児たちの誘導作業に入ってくれる。

フライハイト側では一度やっていたこともあって孤児たちの受け入れはスムーズに進む。

電車に乗せて戸惑う子供たちと一緒に学生寮に向かい、ガトウに連絡を入れて先輩である元孤児たちと一緒に受け入れる。

同じ境遇の子供がいるだけで、移民してきた子供たちの心理的ハードルはグッと下がる。

受け入れは順調、そして特段問題なく進めば、そのまま学園に作った訓練場に移動する。

「どんなヤバい街を作る気だよ。王都より設備がヤバいぞ」

「目指すは世界一の街です」

「普通なら大法螺を吹いたなって笑うところなんだけどよ・・・・・お前だと出来ないって断言できない俺がいるぜ」

その過程で見せて来た街の設備にデントさんは頭痛が止まらず、そして胃痛もしてきたと、頭とお腹を一緒に押さえている。

多分だけど、冒険者ギルドへの報告でどうすればいいか頭を悩ませているんだろう。

そこは大人の苦労でどうにかしてもらうとして。

「まぁ、いいじゃないですか。そういうのは後でジンクさんと飲んでいる間に相談してもらうとして、今はこっちを楽しむとしましょうか」

少し離れた場所では、さっき俺を見ていた少女二人を側に、ステラとアステルが体をほぐし、入念に準備している姿が見える。

「本当にやるのか?」

「やりますよ、しっかりとハンデはつけますんで安心してください」

そんな2人に対して、ガチ装備を持ち出すのは大人げない。

なので、俺が使うのはただの木剣で弱者の証も使っていない代物だ。

対して向こうは本気の装備を使ってもらう。

さてさて、他にもハンデを付けるが、果たして主人公がどれだけ実力があるか楽しみだな。