軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26 事件はすでに解決済み

時間制限系のクエストは正直好きじゃない。

忘れていたらクエスト自体が消失したりして、それで他のイベントも連鎖的になくなるというトラウマがあるからだ。

忘れもしない、フラグを立てるのを忘れてからの、イベント未発生。

そして最初からのやり直し。

こんなパターンと一緒にするのは申し訳ないが、子供たちの命をイベントでおいそれと危険にさらさないで欲しい。

「さすがのあなたでも気を張っていたようですね」

「まぁ、今回はマジで気疲れが多いですね」

ゲームと違ってガチで子供たちの命がかかっていると知ったら普通に焦る。

知ってしまった以上、行動せずにはいられない性分だからキツイ。

だから、向こうで無事に笑えている子供たちの姿を見れて一安心だ。

解決できて良かったと心の底から安堵する。

もし仮に厄介なネームドや、それに準じる人物やモンスターがいたらと思うと、この結果が変わっていたかもしれない。

ゲーム風にいうなら、このクエストの結果はSランク評価だ。

しかし、難敵がいたらA以下の評価に落ちていてもおかしくはなかった。

「緊急事態と聞いて急ぎ駆けつけましたが、着いてみればあなたが余裕の顔をしていましたから、そこまで気負ってはいないのだと、最初は思っていたのです。実は長としての自覚から、表情に出さなかっただけですか」

「俺が不安な様子を見せると、ガチでみんな焦るんだもん。迂闊にヤバいって口にすることもできないよ」

いや、難敵がいなかったとしても気づくのに遅れていたら、或いは天気が雨だったら。

もし他に事件があったりしたらなど、色々と条件次第ではこの事件に気づくことはできなかったかもしれない。

運が良かったとあえて言わせてもらおう。

「当然です。過去の経歴を思い出してください。あなたがヤバいかもと言った出来事は、すべて本当に危ない物ばかりでしたよ」

「正直者なので」

「危機管理ができていると思っておきます。今回もその危機管理のおかげで解決しましたから」

運が悪かったら子供たちが助からなかっただろうし。

「正確にはまだ、解決していないんだけどな」

「事後処理ですか」

「そう、あの子供たちをどうするか考えないといけないし、生き残った邪神教会の連中の尋問も残っているし、ここで何があったかの証拠を隠滅しないといけないし、うーん・・・・・やることがたくさんある」

「大々的にやればすぐに終わると思いますが」

「それだけはヤダ。秘密裏に片付ける」

「では神殿との連携が必要ということですね」

そしてここまでの話は過程だ。

物語では戦いを終えれば、あとは勝手に事後処理がスタートするけど、現実のこの世界では自力でどうにかしないといけない事後処理というのが発生する。

「誘拐等で攫われた子供が二十七名、孤児が四十三名、ほか、借金等の理由で連れてこられた大人が十名」

この事後処理の厄介なことは、これをしっかりとやらないと、後々他のことに多大な影響が出るということだ。

下手クソな事後処理をしてみろ、その手抜きのツケが巡りに巡って自分の首を絞める。

それを避けるには、今回の事件は誰がやったかわからないように痕跡を消す必要がある。

ジュデスたちも駆けつけてくれてかろうじて人手は揃った。

今は絶賛山の中に敵がいないか捜索中、今回の件を完全に闇に葬るには目撃者と言った情報源を絶つ必要がある。

そのための指示を出した時の、『分かってる、分かってるけどさ……!』という何とも言い難い表情をした彼らに心の底から謝罪する。

もし仮にこれが俺の勝手な都合でのクエスト受注だったら、バチクソにキレていただろうと想像するのも難しくないくらいに働かせているからな。

ジュデスたちが怒らないでいてくれるのは、ヤバいところにさらわれそうになっていた子供たちを救出するという、怒ることが筋違いと言えるほどの正当な仕方ない理由があるからだ。

ジュデスたちも自分自身にその手の経験があるから、思うところがあるのだろう。

文句を言いたげだけど、全てのみ込んでしっかりと働いている。

しかし、真面目に働くからこそ最近は過重労働になっているのもまた事実。

クローディアも襲撃事件の調査中に呼び出してしまっているから、ちょっと申し訳ない。

みんな理解して、真剣に対応してくれているから本気で頭が下がる。

「被害者の子供たちの内、誘拐組は親元に返したいんだけど、表向きは神殿で救助したってことにしてもらえないか?」

「その方が良いでしょうね。追加で両親の身辺調査もした方が良いですね。親が子供を売ったのなら親元に返す方が悪い場合もあります」

「・・・・・ジュデス怒らないかなぁ」

「私も一緒に頼みますから。それに神殿の方でも動きます。もとより邪神教会と神殿の関係性はお互い不倶戴天の敵と言っても差し支えない仲ですから、この程度のことで何か変わるわけでもありませんので」

「今度神殿に菓子折り持って、挨拶しに行くか。俺たちがどうにかしたって喧伝したら、もうめんどくさいことになるのがわかってて押し付けるわけだし」

なのでこっちも、疲れた体に鞭打ってってほどじゃないけど、そこそこ頑張った体をさらに働かせて事後処理をする。

「普通なら、自分が倒したと堂々と言いふらす人の方が多いのですが」

「そうした方が良い?」

「いいえ、現実的に見てあなたにはメリットがありませんから」

「目立ってなんぼの貴族様でもないし、知名度を高めても損しか今はないからなぁ」

せっせと指示を出しつつ、子供たちの世話をしているアミナとネルの様子も見守る。

少し年上のお姉さんとして頑張っている二人がいるから、最初は不安だった子供たちも安心するようになっている。

温かいスープを飲ませて、ゆっくりと休めるようにしているのも大きいな。

「私としてもやりやすくて助かりますよ。名誉欲にとらわれた人間は、理屈ではなく感情で動きますから」

「そういう人多いよな」

「多いですね」

落ち着いたら、あとは帰るだけとなっている。

その光景の中には、直したクマのぬいぐるみを大事に抱えている少女に服の裾を掴まれて困っている次女さんの姿もある。

彼女は誘拐された組だ。

親がいるはずだから、クローディア経由で神殿に保護されてそのまま家に帰されるはず。

クローディアの心配する親がまともじゃないパターンもあるからそこら辺は慎重に行動しないといけないけど。

いずれ次女さんとは別れるのだが、その時どうなるか想像しやすいほどに少女が次女さんに懐いてしまっているのは心配だな。

「まぁ、そういうことは良しとして。邪神教会の面々は全員神殿の方に引き取ってもらうってことで良さそう?」

「ええ、貴方の報告で近くの街に潜伏しているメンバーを包囲し捕獲する準備も進めていますので、そのついでに引き取ってもらいます。手にした情報に関しましてはこちらと共有というところで」

「ああ、それで頼む」

別れるときにひと悶着がありそうなことを想像しつつ、こっちはこっちで後片付けの方に精を出す。

エンターテイナーたちが、応急措置で生きていた邪神教会の面々を治療して捕縛、そして移送をしつつ、同時にこの戦いで事切れた遺体に関しては魔法が使えるエンターテイナーによって、火葬される。

法律で雁字搦めの日本なら考えられない方法での措置。

それがこの世界ではまだまともな方法での対処だというのだから笑える。

「おーい、リベルタ。後片づけ終わったぞ」

「助かった。いや本当に。エンターテイナーたちにはボーナス弾むって言っておいてくれ」

「報酬は休暇で頼む」

「ガチの真顔で言うな」

「金はある、だけど、使う暇がないんだよ!!この前なんて親に孫はまだかって真顔で言われたんだぞ!」

そんな仕事を終えたジュデスが鬼気迫る顔で俺に近づき、本気の目で休暇を申請してきた。

流石にこれ以上休ませないのはまずい。

「俺だって結婚したいんだよ!デートがしたいんだよ!イチャイチャしたいんだよ!だから今回のボーナスは、リベルタが主催で合コンな!」

「俺が主催したら背後から刺される」

「じゃぁ、女の子を集めて婚活パーティーだ!リベルタが司会進行をしてくれればいいだろ?」

「まぁ、それなら?」

そしてジュデスの背後で、うんうんと頷く男衆ことエンターテイナーたち。

御庭番衆の方は家庭持ちが多いが、それに反比例するかの如く、彼らエンターテイナーたちは全員独身だ。

年齢的には結婚していていてもおかしくはない年齢なのだが、ここ最近の忙しさ故に彼女を作っている暇もない。

女性の紹介と言われても、商店街の若い女性を紹介するか、御庭番衆の家族の中で適齢期の女性を紹介してもらえるか。

何人かは心当たりがあるが、全員のお相手となると厳しいというのが正直なところ。

ちらりとクローディアを見れば。

残る可能性は神殿関連の人。

情報を扱う人間を外部の人と繋がらせるのはあまりよろしくないが、神殿関係者ならギリギリ大丈夫かという判断だ。

「・・・・・神殿関係者で良ければ紹介しますよ。神殿側からしてもつながりは欲しいですので」

「だって」

俺の考えを察して苦笑しながらも、必要だと判断し仲介をしてくれることを了承してくれる。

神に仕える神殿が、神の使徒である俺のところに変な輩を送り付けてくるとは思わない。

腐った宗教の世界だったら御免だが、この世界の神殿は信頼できる組織だ。

「聞いたかお前ら!この仕事が終わったらシスターさんと合コンだ!!」

「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」

「はしゃいで全裸になるなよ」

「ここには子供がいるのです。教育に悪いことをする方には紹介しませんので」

「「「はっ!?」」」

その話を聞き嬉しさのあまり、服を脱ぎかけるやつが何人かいたが、クローディアの言葉で正気に戻り、手を止める。

「そういうことで、休暇と合コンのためにもうひと踏ん張りしてくれ」

「任せろ!行くぞ野郎ども!!」

「「「「「おう!」」」」」」

そして再び森の中に飛び込んでいき、あっという間に夜の闇に消え去る。

「さてと、誘拐された子供の保護と邪神教会の生き残りの尋問は神殿に任せて、残ったのは孤児たちとあとは」

「彼女たちですね。借金をして連れ去られて来たと聞いていますが」

「どうしよう?」

「神殿でも引き取れますよ。いままでフライハイトに受け入れてきた人たちと比べれば風紀的によろしくない人であるのは間違いないので、神殿で奉仕活動に勤しむこともできますので」

そして残る問題は、帰る場所がない面々だ。

孤児というかストリートチルドレンのような子供たちは妙に目が据わり、達観している。

攫われている子供たちの中でも自力で生きて来た経験のある者は肝が据わり、弱みを見せたらだめだというのがわかっている様子。

もう片方は、借金により生活の破綻した、色々とダメだった大人たちだ。

人数は十名と子供と比べると少ない。

それは何故かと考えるのなら、抵抗されたら面倒だから大人が少ないと考えるのが妥当だろう。

ペトラがいたことは驚きだが、大人組の中では一番まともなのが彼女なのがまた驚き。

FBOではかなりヤバめのギャンブル中毒として知られたネームドなのだが、それでもしっかりと子供のことを気遣えるだけまともだ。

他の大人九人は、男女混ざっているがそれぞれまぁ一癖も二癖もある面々ばかり。

しかし、道中子供を気遣う様子もなく、自分のことばかり考えている。

借金の理由もお察しと言わんばかりの態度で、正直引き取りたくないと思うには十分だ。

なので、クローディアの提案は嬉しい限りだ。

「じゃぁ、ペトラ以外の大人はよろしく。正直、今のフライハイトにあれは入れたくない」

「承知しました」

なので即決で決められる男たちの引き取り先として、神殿預かりにしてもらった。

「残った、ペトラだけど、これからちょっと面談してくる」

「それがいいですね」

ペトラの処遇は面談で決める。

そうするのであった。