軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 北の英雄

「そろそろか」

「ええ、時間的にはそろそろかと」

「そう聞いてますなぁ」

東西南北の英雄の集結となれば、国からしたら一大行事なのだろう。

警備の近衛兵はピリピリしている。

王城は空気が張り詰め、この城で一番豪華な部屋で待機している俺、クラリス、コンの周囲にいる護衛からも緊張が伝わってくる。

「戦闘狂って聞いているけど、いきなり戦いを挑まれたりしませんかね?」

その緊張の理由は北の大陸の風習というべきか、弱肉強食を地で行く部族体系ゆえに、弱者には発言権を与えないという文化に倣って、横暴な存在が来るのではと警戒しているからだ。

強者には敬意を払うが、それ以外はぞんざいに扱う。

国家間の交流にとって、致命的と言えるような文化。

「ありえます。私の国でも交流ができるのは一部の温厚な部族だけです」

「僕のところも一緒ですわ。商売ができるのは数字に強い部族だけで、他のところとは話がしづらいです」

FBOでゲームを始めるとき、北の大陸はハードモードと名高い場所だった。

戦闘の難易度が他の大陸とは段違いに高い。

もしこの世界に転生した先が北の大陸だったら、下手をすると死んでいた可能性は十分にあった。

それくらい弱者には厳しい世界なのだ。

「噂を聞く限り、獅子族の戦士ですよね?」

「はい、師匠。武勇に優れ、統率力にも長け、北の大陸の群雄割拠を終結させつつあると聞いています」

「まだ歳はリベルタ殿と同じくらいだと聞いてますけど、当時の部族の長を片手で倒したと聞いてますなぁ」

そしてこれから来る人物は、その厳しい世界でも部族の頂点に君臨している存在だ。

噂という名の事前情報では、戦闘が好きな獅子族の男、歳は俺と同じくらいでカリスマ性もある。

実力は大陸全土に轟くほど。

「そんな人物が俺に教えを乞いに来ると?」

そこまで強いならわざわざ俺に何を聞きに来るのやら。

「神のお言葉はそれだけ影響力があるということですよ」

「僕たちがどれだけ強くなろうともさすがに神様には敵いませんからなぁ。この世界で頂点と言っても、天におられる尊き方々には僕たちなんて蟻ん子同然ですわ」

邪神を倒そうとしている身としてはそこまで神と実力に差はないと思うが、それは言わないでおこう。

来る理由が神様に言われたからというのなら、そこら辺は承知しておこう。

そんな雑談に興じていると扉がノックされる。

『北の英雄、バルバドス様をお連れしました』

その言葉で緊張が走る。

「「「・・・・・」」」

3人で顔を見合わせ頷いて、立ち上がる。

「どうぞ」

俺が代表して扉の近くにいる兵士に許可を出すと兵士は頷き扉を開けた。

「揃っているな」

入ってきたのは、北の英雄を出迎えた国王陛下とエーデルガルド公爵閣下。

俺たちが揃っているのを確認するとスッと横に一歩ズレる。

そこには獅子族の少年がいた。

「我が北の英雄!!バルバドス・レオンであるぞ!!!」

そして堂々と胸を張って自己紹介をしたのだが・・・・・

『『『小さい』』』

きっと俺を含め、クラリスもコンも同じことを思ったのだろう。

堂々と自己紹介する姿は、カッコいいとか、凛々しいという言葉からかけ離れ可愛いという言葉が先に出る。

燃え上がるような金色の髪、あどけなさが残るも快活な笑顔の口元に見える犬歯、小柄な体であっても鍛えてあるとわかる肉体。

なるほど、特別というのは間違いないと納得させられる空気をまとっている。

しかし、それを加味してもなんというか、必死に背伸びしている感が否めない。

「西の英雄、クラリス・ノーランドです」

「東の英雄、コン・ジンサイですわ」

そんな自己紹介に遅れることなく、俺に促されクラリス、コンと自己紹介を返し、バルバドスはその自己紹介を聞くたびにまだ声変わりもしていない声で『うむ!』と返事を返し。

そして最後になった俺を見つめた。

「知恵の女神の使徒、リベルタです」

その瞳に混ざっているのは好奇心と闘争心。

クラリスとコンは違うと即座に判断し、目的の人物が俺だとわかった途端に。

「お前、強いな!!」

獣のような笑みを浮かべる。

動物的本能で言うのなら、危険な存在に対しては動物は近づかないし、警戒心をあらわにして威嚇行動を始める。

だが、バルバドスは違う。

俺が強いと本能的に察して、それを喜んだ。

ずんずんと力強い足取りで俺に近づき、下から見上げるように俺を見た。

「戦闘の神アカム様のお言葉に間違いはなかった!!我にはわかるぞ!!お前と戦えば我はもっと強くなれる!!」

その根本は向上心の塊。

強さに貪欲。ジャカランとは違う真っ白な強さへの渇望。

「だから戦え!リベルタ!!我らレオンの一族は戦って心を通わす!全力での試合を申し込むぞ!!」

ゆえに小細工は無用。

真っ向からの要求は、今まで回りくどい交渉をしてきた人たちと違ってシンプル。

うん、シンプルイズベストという言葉が思い浮かぶほどまっすぐで。

「いいよ、戦おうか」

俺の闘争心に火をつけた。

自然と浮かぶ笑み。

その際に俺から何かが漏れ出たのであろう。

一斉に周囲の人が身構えた。

「は、ハハハ、我は今まで武者震いというのは数えられるくらいにしかしたことはなかった。しかも、ここまで震えたのはリベルタ、お前が初めてだ」

「そうか、それは光栄だ」

いや、舐められているのではない。

その感情は、俺からしたら好ましい感情なのかもしれない。

戦闘狂と聞いて少し身構えていたが、こういうタイプの人間であるのならむしろ育て甲斐があるのかもと思ってしまっている。

「陛下、と言うことで訓練場をお借りしてもよろしいですか?」

「う、うむ。良いぞ。そなたの実力を見せてくれ」

「かしこまりました。イングリット、俺の完全装備を持ってきてくれ」

「・・・・・よろしいのですか?」

「ああ、どっちにしろ決戦になったら披露することになるし、なにより」

そして同時に、懐かしさを感じる。

FBOで古参プレイヤーたちと共に戦った日々。その時に見た新規参入プレイヤーたちの中に見られた感情。

「彼の挑戦に礼を失したくない」

「かしこまりました」

彼に勝つだけなら、正直竹槍でも十分だ。

だけど、それでは彼の気持ちに応えられないような気がする。

ついでに、ここいらで俺の実力を見せて公爵閣下の協力者が強者であることを強調して、残った二つの公爵家への牽制に使ってもらうか。

「そう言えば、僕もリベルタ殿の本気は見たことがありませんでしたなぁ。クラリス殿は見たことがおありで?」

「いえ、私たちでは師匠の本気を引き出すことはできませんでした。時折、師匠がパーティーの方々と模擬戦をしている姿を見てはいましたが、あれでも本気ではなかったですね」

周囲は興味半分、戸惑い半分と言ったところか。

クラリスとコンも、俺の実力を見たいと言うことで乗り気になっている。

「では、レオン殿移動しましょうか」

「バルバドスでよい!敬称も不要だ!」

「じゃあ、バルバドス。行こうか」

「うむ!!」

その空気に押され、バルバドスを連れ立って移動を開始する。

先日も使った記憶があるが、最近はモンスターよりも人と戦っていることが多い気がするな。

まぁ、ダンジョンでも戦っているから絶対にモンスターとの戦闘の方が多いのは間違いない。

訓練場の更衣室にそれぞれ入り、俺はイングリットが装備を持ってくるまでその場で待機。

「ほー、それがレオン殿の装備ですか」

バルバドスの侍従は女性の獅子族の人だが、男子更衣室にはさすがにクラリスは入ってこない。

侍従が装備に着替えさせている最中、それを見て感想を言ったのは同性だから入ってきたコンだ。

「我が仕留めたモンスターの中で一番大きく強かったものの毛皮を使った装備だ!」

見られても困らない。自身の力に絶対の自信があるからこそ、観察するコンに対しても余裕を維持し、もっと見ろと堂々としている。

「グラトニーマンモスか」

「知っているのか?」

「北の大陸に出るクラス5のモンスターだな。タフさと力の強さは同格の竜をも凌ぐと言われているパワー型のモンスターだ」

黒みがかったこげ茶の毛皮で作った蛮族スタイルの装備。

頭には討伐の象徴であろう頭蓋骨の兜が被せられ中々圧のある戦装束だな。

兜をかぶる前に顔に施された戦化粧がさらに迫力を増していると言っていい。

そういえばFBOの友達でこの手の装備を好んで使っている奴がいたな。

視覚的に強そうと思わせることは意外と対人戦において有効だ。

中には威圧的な外見と相性のいいスキルというのも存在する。

特にタンクが使用する威圧と言ったスキルは、その容姿が影響されるというのもあってかこういう戦化粧は効果的だ。

「知恵の女神の使徒は侮れんと言うことか」

「侮っても良いぞ?」

「そんなつまらんことはせん。獅子は狩りをするときは全力を尽くす、それだけだ」

所々金属を使っているが、それでも基本はモンスター素材。高位モンスターの毛皮や骨といった希少な素材を贅沢に使った装備だ。

要所で装飾を施しているが、動くのに支障がないように作っているのは個人的にはポイントが高い。

北の大陸は、南の大陸の貴族と違って過剰な装飾は好まない。

実用主義の一点。

ザ・戦いますという雰囲気にワクワクしている自分がいる。

「リベルタ様」

そんな彼の装備を評価していると、装備を取りに行っていたイングリットが戻ってきた。

「ありがとう。それじゃあ俺も着替えるか」

バルバドスには申し訳ないが、本気を所望ということで俺も手は抜かない。

イングリットがマジックバッグから俺の装備を取り出した途端に周囲が息を飲んだ。

「・・・・・こら、あかんなぁ」

精霊たちが紡いだサンライトシリーズ。そしてクラス7のゴーレムダンジョンのボスから手に入れ精霊が鍛えたオリハルコンで作った鎌槍。

着替えをイングリットに手伝ってもらい、戦装束を着て手袋を装着しているときに唯一言葉をこぼしたコンは、恐ろしい物を見たと言わんばかりに声を震わせている。

「レオン殿、ほんまにリベルタ殿と戦うので?」

「無論、こんな機会滅多にない。お前も手合わせできず後悔しているのではないか?」

「僕のところは、レオン殿と違って面倒事が多いんよ。ただまぁ、正直に言えば、しがらみが少ないレオン殿がうらやましいと思うわ」

最後にマントを羽織る。

「リベルタ様、こちらを」

「ありがとう」

そして鎌槍を握れば戦闘モードに変更完了だ。

この更衣室にいる人たちからの視線を一身に浴び、ゆっくりとバルバドスに向かって振り返る。

「待たせた」

「いや、待つと感じぬほど目が離せなかった。うむ、これはこれは楽しみで仕方ない!!」

戦闘方面の趣味趣向はクローディアさんに近いのだろうな。

彼女と引き合わせたら、朝から晩まで戦い続けるかもしれない。

いや、実力的に先にバルバドスが倒れて早々に決着がつくかもしれない。

訓練場は更衣室のすぐ近く、外に出てそのまま訓練場入りすれば、決闘の女神の神像が見えた。

「!」

「リベルタ、レオン殿準備は良いか?」

「はい」

「うむ!!」

陛下は俺の装備を見て目を見開き、その驚きに気づいてかエーデルガルド公爵が進行役を務めてくれる。

「では、互いの誇りにかけ神に宣誓を」

「我、バルバドス・レオンはこの戦に正々堂々挑むことを誓う!!」

バルバドスが「戦う」のではなく、己は挑戦者だと宣言することにすでに観客席に詰めていた北の一行はどよめく。

北では最強の名を冠している少年の挑戦者としての宣言にはやはり驚くか。

「俺、リベルタはこの戦いに正々堂々戦うことを誓う」

その挑戦を受けると宣言すると再び訓練場はどよめくのであった。