軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18 裏事情

「ジュデス改め、ジャック=サン」

「いや、普通にジュデスでいいけど」

「じゃぁ、ジュデス。この商会を調べてくれ。十中八九ボルドリンデ公爵と邪神教会とのつながりがある」

情報精査は、仕事でもやってたし、ゲームの検証でもやっていたから苦ではない。

なんなら推理小説を読んでいるような感覚で楽しめたりもする。

「え、でもここってこの 領地(ホクシ) では珍しいくらいにまともな商売をしているところだぞ?」

「でも、リベルタ君が指摘するって言うことは何かあるって言うことだよね?」

「どういうこと?」

「考えても見てよ。あのボルドリンデ公爵がわかりやすいところに悪事の証拠を残すと思う?僕だったら、有能で証拠の管理が上手いところを重用するけどな」

「あ」

ジュデスたちが集めてくれた情報の中で、怪しいと思った商会はこの 領地(ホクシ) でも老舗であり、中堅と大手の中間付近の規模の商会だ。

周囲があくどい商売をしている中でまともに商売し、嫌がらせを自前の兵力で追い払っている善良な商人に見える。

長い歴史がある老舗って言うことは、それなりに商売のノウハウも蓄積して、値段を安くしても店を存続させることができている理由に繋がる。

店の見た目も豪華ではない。質素とも言えないがシンプルで外装にはこだわらず商品の品質で勝負しているという善良な商会の典型的な外見だ。

「シャリアの言う通りだ。普通に考えれば、力があるから貴族の無理な命令にも反抗できて、市民のために頑張っている健全な商人に見える。実際、このオトバ商会以外にもそういう商会はいくつかある」

しかし、ここはボルドリンデ公爵のおひざ元。

弾圧的なことはしないにしても、そんな善良で面倒な商会が存続して利益を出せるような環境を残すかという疑問が生じる。

さらに情報を加えれば、このオトバ商会を中心に商会連合が出来上がって互助しあい、商品のやり取りもしているっていう。

「だけど、オトバ商会を中心にした互助会っていうのがどうも気になるんだよねぇ」

「普通に地元で商売するために助け合っているって考えないのか?」

「考えないね」

これがもう少し、裏の勢力が深入りしていない地方の都市部とかだったらそういうものだと納得できるんだけど、領都のここだと逆にそれが演出だって考える。

「たとえばこの書類」

「これって」

「そう、互助会に入っている小規模の商会。互助会に入っていないと絶対に潰されるか、他の悪いことをしている商会に囲まれて飼い殺しになるような立地で経営しているのに無事、なのにこの書類を見ると」

「あ、こっちの商会とこっちの商会で同じ商品が入荷している。でも、仕入れ先が・・・・・こんな商会あったかな?」

「それがこの真ん中のところで構えている小規模商会の別名だな。こっちの書類、こっちの書類も同じ名前の商会から仕入れているって書かれているけど、どれもこの小規模商会を中心にして近い商会ばかり」

周囲にきな臭い噂が流れている商会がある中で、信用というブランドを担保にして客から安全だと思われている店ならそうそう疑われる心配はない。

「それでこっちの書類は」

「商会の輸送部隊の門の出入りの記録だよな、別におかしくはないだろ?」

「ここ、ここ、しっかり見てみろ」

「ここって、日付?別におかしくはないだろ」

「門の兵士が適当に誤魔化そうとして手を抜いたのがわかるだろ。持ち込んだのは春先にできる野菜で秋のものじゃない」

「あ」

「それにこっち。この地方じゃ手に入らないような鮮魚が持ち込まれている。乾物ならわかるが、生だぞ生。どうあがいても腐るだろ」

輸送部隊が運んだ物はどれも日用品や食料のように偽装されているが、年中休みなく同じものを安定して仕入れているのには違和感が出てくる。

ハウス栽培や、魚の養殖技術が確立しているのならともかく。

「たぶんだが、ローテーションで暗号が変わるようになっていて今月はこの品名って言う形になってるんだろうな。季節外れだったりあり得ないような品名なのは季節物と被らないようにするための措置だろう」

そんな進んだ設備を用意できるか否かでいうのなら、俺の都市構想の中には組み込まれているからできないとは言えない。

しかし、あっちの知識無しでできるかと言われればできないだろうなというのが個人的見解だ。

であれば、この食品たちが密輸品の隠語と言うことになる。

「へー、そうなんだ」

「いずれはこういうところも調べられるようにしていくからな。勉強してね」

「わかった」

「はーい」

ボルドリンデ公爵の攻略クエストの時にこういう暗号系のものが必要だとはわかっていた。

だからこそ、こういうところに着眼点を持てる。

「ん?」

一通り確認して、オトバ商会を調べればボルドリンデ公爵の居場所がわかるかもしれないと思っていると、1つの報告書に目が留まる。

「どうした?」

「いや、この討伐報告書」

「ああ、それ?貴族の館から盗ってきた物だよ」

すでに女装することが日常になっているシャリアが近寄ってきて、いい香りがしたような気がするけど、そこら辺は意識的に無視する。

「盗賊の討伐記録……」

この書類はざっと見た限り、盗賊を吸収するためにした偽装記録のような気がする。

王家に報告し、職務を全うしていると言うだけの報告書。

だけど、盗賊の規模、そしてそれに対応するための動員人数が他の討伐記録よりもはるかに多い。

「なんでこんな規模を出せる?偽装?でも、こんな偽装をしても王家に目を付けられるだけ……いや、報告相手はボルドリンデ公爵……書類の制作日は昨年?」

その部分が妙に気になり、この貴族の館から持ってきた他の書類を確認していく。

仕入伝票、出納帳、領収書、売買契約書。

ごっそり持ってきているからこそ、ごちゃごちゃしているように見えるが金の流れからわかることもある。

「ああ、ああ、そういうこと?そういうことやっちゃってる?」

そして見えてきた物がわかり、俺は頭をガシガシと掻き始める。

「おい、独りでわかっていないで俺たちにもわかるように説明しろよ」

独りで納得していると、ジュデスがもっとわかりやすく説明しろとせっついてくる。

そちらを見れば隣のシャリアも可愛らしいリアクションで頷いている。

「このお貴族様は邪神教会とつながりがあるのはこの資料からわかるよな?」

なので、この2人にもわかりやすく説明するためにまずは必要な書類を集める。

ごそごそと何枚かの書類を探し当てて、並べる。

「うわ、奴隷取引じゃん」

「この国での奴隷の扱いってどうなってたっけ?」

「限りなく黒寄りのグレーゾーン。無許可でやったら極刑だなぁ」

この世界には奴隷は存在するが、その全ては盗賊とかの犯罪奴隷だけだ。

懲役刑というやつで、鉱山や道路工事、開拓事業など肉体仕事がメインの重労働の際に労働力として派遣される人材だ。

その奴隷を保持するのにも国の許可が必要だし、それどころか許可を貰えるのは司法を取り扱える上流階級や王家と繋がりがある人物に限られる。

ただし、それはあくまで保持であって売買の許可は別だ。

基本的にこの大陸での奴隷の扱いは、裁判で奴隷にするという判決を受けてそのままその地方の貴族に預けられるのではなく、一旦中央の王家に所有権が移される。

国の法律で裁かれるのだから、国が所有権を保持するという建前らしい。

ただ、その都度奴隷を王都に輸送するのは大変だから、こういう罪で奴隷にしましたと裁判記録の書類を送り、王都で審査を受け許可を出し、派遣先を決めるなんて流れができている。

「となると?」

「この貴族、この書類を王家に送り付けるだけで一族郎党縛り首は免れない。証拠能力に関して言えば、この書類を渡して王家の調査団を入れれば問題なし。違法臭がプンプンとしているし、家族が知らないとも思わないからこっちの資料と合わせて容赦なく送り付ける」

これでさらにボルドリンデ公爵の監督能力の無さを露見させることができるから、地位をはく奪することに一歩近づいた。

この書類の貴族も含めて、まぁまぁどブラックな奴隷の取引をやっちゃいけない相手とやっているわけで、今頃証拠隠滅の準備でもしているかもしれないが、仮に奴隷が既にいないという状況でも問題になる。

「どこに?」

「知り合いの貴族」

「それって、大丈夫なの?」

「敵対している貴族だから、容赦はしないのは保証する」

「あー、そりゃ大変だ」

奴隷売買は原則ダメ。特例も一応存在するけど実質無理。

暗黙の了解でできなくはないってレベルだけど表ざたになったらほぼアウト。

そして証拠が出てきたから完全にアウトというわけで、これでボルドリンデ公爵の配下の貴族が4つくらいお家取り潰し状態になる。

貴族であったジュデスは敵対貴族に家の弱味を握られた際の末路を知っているから、肩をすくめて(それほどの大罪なら)安心と苦笑している。

「話を戻すぞ。この奴隷取引の相手、偽装しているけど間違いなく邪神教会に奴隷を流している」

「それって」

「そう。もう処置無しってこと」

そして奴隷の行先は邪神教会で、さらに1回の取引で100人規模の取引が成されている。

「王家が入る前に僕たちが動くべきじゃない?今なら助けられる奴隷もいるかもしれないし」

「あと、仲間にできるかもしれないよ」

「神様の契約で縛られていない奴隷なら、物理的な拘束しかないはず。逆に犯罪とかで神様の契約で縛られている奴は放置でいいから、助けられる奴隷だけ助けておいてくれないか。こちらで支援物資と隠れる場所を用意して保護できるように手回しするから」

その実情を聞いて、ジュデスとシャリアの表情から感情が抜け落ちる。

いわれのない罪で奴隷にされるなんて許してはいけない。

俺もそのあたりは同感だし、ここら辺で致命的な情報を流布しておいて罪を犯した貴族連中の立場をさらに落としておいた方がいいだろう。

正式な奴隷は、神様公認の契約が施されているはずだから極悪人認定で問題ない。それ以外の奴隷はいわれなき罪で捕らえられた人たちと言うことだ。

いやぁ、本当にこの国のお貴族様はクズぞろいですなぁ。

「できるの?」

「やるの。幸いちょっと狭くなるかもしれないけど避難先には心当たりがあるし」

だけど、ここでボルドリンデ公爵の手足をもぎ取れるのなら積極的に刈り取って行こうか。

「あとこっちのリストの商会も潰しておいて。邪神教会に支援物資を送り付けている商会だから、あ、前言訂正だ。オトバ商会の方はこっちで潰すから手を出さないで」

ついでにエーデルガルド公爵に陛下の尻を蹴飛ばしてもらって、しっかりと王権で今回の件を裁かせよう。

動かなかったらわかるよな?と脅すためにこの資料という証拠はしっかりと添付してもらう。

これで、ボルドリンデ公爵の裏の資金源の8割は削り取れる。

そして支配地域から追い出す前に、ボルドリンデ公爵の本体の居場所を見つけないとダメだな。

さっきの盗賊討伐報告書、いきさつは村を襲う大規模盗賊を討伐するために派兵って書いてある。

そして盗賊に襲われたことによって村が1つ壊滅している。

まるでそこから人を遠ざけるような行為だ。

この動きはゲームで知っている。

ボルドリンデ公爵が隠れ家を作るときにやる、裏工作のモーション。

商人ではそれはできない。

かといって表立って公爵閣下が動いたら目立つ。

なので配下の貴族にやらせたんだろうな。

手がかりは見つけた。

証拠はオトバ商会が握っている。

さてさて、蛇狩りのお時間といきましょうか。