軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 やるべきこととやりたいこと

さて、計画を立てたは良し。

しかし、実行しなければ机上の空論に終わる。

であれば、動こう。

「んー、今日もいい天気だ」

夜更かしをしたというのに、今日の目覚めは格別良いと思えるのは、昨夜にしっかりと開き直ったからだろうか。

体を伸ばし、ベッドから起き上がり、今日の予定を考えながら服を着替える。

頭の中に描かれているプランを進めたいが、現実のスケジュールは忙しいの一言。しかし隙間がないわけではない。

やるべきことをやり、やりたいことをやるための隙間時間作成を考えれば。

「なんだ、やる気の問題だったか」

あら不思議、自分が考えていたよりも余裕があることが判明する。

午前中はクラリスに昨日約束したハイエルフになる方法やもろもろを教授し、そのあとは指導をする。

お昼には公爵閣下と昼食をとりながら、今後の予定の打ち合わせ。

午後からは、エスメラルダ嬢とイングリット、そしてクローディアの報告を聞く。

夜はパーティーメンバーの装備の強化用の素材集め。

ああ全く忙しいったらありゃしない。

だけど、時間がないわけではない。

「んーとりあえず、夜はアミナに頼んで精霊界に行きますかね」

今日の体感で言えば、レベルアップで強化された体は睡眠不足にも関わらずぴんぴんしている。

元々ゲーム時代でも、アバターの方は不眠であってもバッドステータスが付与されることはなかった。

あるのは現実の疲労のみ。となれば強化された体の限界を把握すれば睡眠時間を削れるという、ゲーマーの本質とも言える時間捻出方法が使えるということだ。

今日はもう少し睡眠時間を削ろうかと思いつつ着替えを終えて、イングリットが作ってくれているであろう朝食を摂りに階下に降りる。

「さぁさぁ!今日も張り切って強くなりますよぉ!!」

そして朝食でエネルギーを補給したら笑顔で、訓練所に待っている面々に会いに行く。

俺の担当は西の英雄チーム。

ネルたちには引き続き、イリス嬢や公爵家の私兵たちのレベリングを担当して貰う。

「師匠、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」

「「「「お願いします!!」」」」

「はい、よろしくお願いされますよっと」

若干テンション高めで挨拶をしつつ、このエルフ集団の希望を聞いて昨夜しっかりと仕上げてきたた育成指南書を取り出す。

「クラリスさん、契約の方は昨日のうちに済ませてありますね?」

「はい、師匠。エーデルガルド公爵立ち合いの下で契約を済ませてきました。こちらが誓約内容になります」

エルフって言えば、他の民族を見下しているっていうのがデフォなのがFBOでの常識だった。

長寿故に、他の種族より鍛えられる年月が長いので強くなれる特性があることがその思想を生み出しているという設定だが、クラリス含め、やってきたエルフたちは俺のような人物に指導されることを嫌がっていない。

それに関しては正直意外だと思ったが、精霊の俺への好感度が影響しているのかと納得した。そして今日からのパワーレベリングの準備として、公爵閣下にお願いして昨日のうちに合意に至った内容で全員に契約してもらった。

だからこその師匠呼びなのだろうが、公爵閣下の私兵たちからも師範とか師匠と呼ばれているので、最近名前で呼ばれなくなったなと思う。

「うん、問題ないね。レベルのリセットは?」

「そちらの方も問題なく済んでいます」

「よろしい。それじゃぁ、さっそく訓練を始めるよ」

そんなことを考えつつも、やるべきことはやる。

そしてやることと言えば、この前ジュデスたちにやった方法と変わらない。

「弱者の証と、修練者の腕輪は装備し忘れないでね」

「はい、全員!もう一度装備の確認!!」

俺が指示を出すのはクラリスだけ、そしてその指示をクラリスが伝達することで指揮系統の混乱を避ける。

神様が西の英雄に与えてくれた装備はかなり優秀だ。

標準でクラス7、強化すればクラス8までは持っていける。

最終決戦までは使えないと思うかもしれないが、この装備の最大の強みは育成環境を簡単に用意できるということだと俺は思う。

数は力だ。

神の装備で強化された存在が大勢集まれば、それだけで全体の強さに直結する。

損耗しても修理できる力を持つ彼女が装備を管理すれば、瞬く間に強大な軍勢を作り出す。そして彼女は神に与えられたスキルで今使っている装備を上回る装備を作り出すことができる。

そして今の装備を卒業することができれば、さらに配下を育成できる。

普通にそういうことをすれば横領なり、窃盗で武器を持ち逃げするような輩が現れるだろうが、西の英雄を見出した裁定の女神様の眼は確かだ。

真面目さとは時には煩わしいと思う輩もいるが、その真面目さに惹かれる人もいる。

そして、その真面目さを見定める目をクラリスは持っていた。

装備の紛失がゼロというのが何よりの証拠。

班分けを迅速に行い、1パーティー6人編成で、展開されたモチダンジョンに規律を持って突撃する軍団。

そう、突撃しているのだ。

彼らは重そうな盾と斧を持った前衛部隊。

装備もフルプレートアーマー。

エルフと言えば軽装の弓使いや魔法使いというイメージを持つが、冷静に考えて前衛のいない後衛だけのパーティーなどあほかと言いたくなるような編成だ。

しかし、それはエルフだけで編成する場合の話だ。

「いやぁ、バランスのいい構成でこっちも育てやすくて助かりますね」

「戦場において偏った力は脆いです。彼らはドワーフの中でも体格に優れた者たちですので、前衛の任を全うしてくれています」

「人材に恵まれていて、羨ましいです」

このクラリスの編成はそんなことはない。

俺もフルプレート集団の中身を知って驚いたが、この部隊、エルフとドワーフの混成部隊なのだ。

元来エルフとドワーフと言えば、物語で不倶戴天とまでは言わなくとも仲が険悪で有名な種族だ。

そして、西の大陸ではドワーフとエルフで縄張り争いが起きるくらいに種族間の仲が悪い。

それはFBOでも一緒で、物語でもちょくちょく出てくるほど有名な話だ。

だが、今待機している面々はエルフが和やかにドワーフに話しかけ、ドワーフも快活に笑いエルフの同僚と話している。

とてもじゃないが仲が悪いとは思わない。

あのリストの中にドワーフの職人が入っていたのが不思議だったが、この交流ができているからこその提案だったか。

前衛に筋肉があって、斧を振り回せるドワーフが前線を維持し、後方から正確無比の弓矢や魔法が飛んで来る。

これだけ攻防のバランスが取れている組み合わせは中々ない。

ぶっちゃけて言えば、エルフとドワーフというコンビが成立すれば性能的に義賊集団を育成していた時よりもだいぶ楽な育成環境とも言える。

どれくらい楽かと言えば、義賊集団がハードモード育成だったとすると、エルフとドワーフの混合チームはノーマル通り越してイージーモードだと言える。

潤沢な装備、バランスのいい編成、意欲のある人員。

うん、これでクソみたいな強さに育てたら育成する側の問題になるな。

「はい、頼りになる仲間です」

そしてそんな仲間に信頼を寄せているからこそ、彼らも彼女の期待に応えたいと思いやる気をみなぎらせるというわけか。

うん、いいパーティーだ。

上下関係はあるが、距離感が絶妙。

西の大陸の権力者の頭の固い老人たちからすれば、若手の優秀な人材が集まっていることは目の上のたん瘤だったのだろうが、今回の神託で体よく追い出すようにこちらへ送り出してくれたお陰で、俺からすればこのパーティーを育てればこっちとしても助かる目もあるということだ。

モチダンジョンは全部で十個展開している。

今回引き連れてきているのは、総勢百人。

事前にカガミモチを倒す前に全員で最弱武器で攻撃した後にクラス7の武具の一撃で屠るように指示をしてあるから、計算だと20分ほどで第一段階は完了する。

その後はクラス4のダンジョンに移動して、熟練度を一気に上げる。

今日はそこで終了かな。

レベル無しの状態でクラス4のダンジョンを歩き回るのは中々疲れるだろうし、東の英雄が来る前にはジョブ厳選が終わるくらいにはしておきたいね。

「では、師匠。私の番になりましたので行ってまいります」

総勢百人の育成をクラス3までとはいえたった一週間で終わらせるなんて狂気の沙汰だ。

クラリスの背中を見送ったが、5分もしないうちに戻ってくるだろう。

一応手元を見れば、あらかじめ知らされているクラリスたちのパーティー構成を記したリストが見れる。

「・・・・・」

ドワーフとエルフの比率は1対1になるようになっている。

ドワーフを完全に信頼して前衛を任せ、後衛をエルフが固め支援する。

FBOのNPCでやったらパーティーを組むまでに相当苦労が必要だったなと内心で思うと、苦笑の一つや二つ出てくる。

それを成し遂げた彼女の能力は一級品だ。

今も仲間と規律を持ってダンジョンの中に入って行くが、その雰囲気には信頼を感じさせる。

あれは一種の完成形のパーティーだ。

足りないのはステータスだけ。

それも今回である程度は補填できる。

「こんなのがあと2人も来るのか?」

自分の知識があれば最強になれると思っていたが、世の中には才能がある輩というのは多いようだ。

東の英雄と北の英雄、その2人もこれくらいの才能だとすればかなりすごいことになる。

アジダハーカ戦においては頼りになると考えれば、かなりいい流れだと思うんだけど。

「そうは問屋が卸さないだろうなぁ」

残りの2人がここまでお行儀よく学んでくれるとは限らない。

東の英雄の噂、北の英雄の噂は俺も聞いている。

そこから推し量る2人の人格を考えると、ここまで順調に物事を進めることは難しいかもしれない。

公爵閣下からしたら残り2人の英雄とも交友をもって他の公爵を抑え込みたいと考えているのだろうが。

「北はともかく、東はなぁ」

直感だが、東の英雄の方は完全に面倒事の予感しかしない。

北に関してはなんだかんだ一回は戦うことになるだろうが、その一回で解決しそうなので問題はない気がしている。

あとはグルンドの行方が気になる。

間違いなく北の領地のどこかにいるはずなんだけど、そいつが見つからない。

精霊たちに頼んで探してもらっているけど、見つからないんだ。

あいつは邪神教会とのつながりもあるから見敵必殺で頼んである。

アジダハーカの復活のトリガーとなったのもあいつだと俺は踏んでいる。

そしてエンターテイナーに追い込まれるボルドリンデ公爵の裏側の主戦力は、今後は徐々にグルンドの盗賊団へ主軸を置き始めるはず。

ジュデスたちの活躍で相手側の暗部は相当数を行動不能にできている。

彼らと公爵閣下の暗部にボルドリンデ公爵の本体を探ってもらっているが、その尻尾も一向につかめない。

その不気味さの真意を考えると、おのずと答えが出てくると思っていた。

下手したら、東か西、どちらかの公爵に匿われているのではないかとも思っている。

可能性が高いのは東の方。西はとある理由でボルドリンデ公爵との関係がよろしくない。

なので、このタイミングで西の英雄から1週間遅れて東の英雄が来ると言うのがどうもきな臭い。

考えすぎかもしれないが、何か裏があると考えて動いた方がいいような気がするんだよね。

どっちにしろ、会ってみないと何とも言えないけど。

「師匠、終わりました」

「お疲れ様。10分休憩したら、次の段階に行くよ」

「はい、総員10分休憩!!そのあとダンジョンに入る!」

「「「「「了解!」」」」」」

そんな悩みも抱え込まないといけないところまで来たかと思いつつ、受け身じゃなくこっちから行動してどんどん圧を与えて相手の動きに制限をかけていった方がいいと腹をくくる。

「ジュデスに、手紙を書いておくか」

「師匠?なにかおっしゃいましたか?」

「何でもないよ」

まったく、忙しいね。