軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 雨の日後晴れの日 3

「すごいわ」

「ここまで爆風が届いてくる」

肉片すら残す気はないと言わんばかりの一点集中爆撃。

今回の戦闘用に作ったすべての爆弾を全投入すればこんなことになり、これほどの威力を発揮するとは俺も思わなかった。

ネルの呟きも、アミナの驚きも、天まで轟く爆発音によって聞きづらいが、ステータスによって強化された耳で拾うことはできる。

「ですが、これほどの攻撃を与えても生きているのですね」

そして冷静に見下ろすクローディアの声も聞こえる。

まだ爆弾の雨は途切れていない。

俺たちよりも低い高度で、そして爆弾の効果範囲外から今も間断なく爆弾を投下し続ける精霊たちの精霊回廊が見える。

究極の高火力を出せる、クラス7の雷竜の魔石すらふんだんに使用して作り上げた爆弾を投入した爆撃は、この土地を全て地形ごと変えてしまうのではと思うほどの威力を発揮している。

「あんな、爆発のなかでも動きますのね」

しかし、その威力をもってしても爆発の中でうごめく存在がいる。

闇さんの精霊回廊の出口は広く、パーティー全員で横並びになって覗き込んでもなお余裕がある。

イングリットが一人後ろに控えるように立っているが、それ以外は全員でこの爆撃を見ている。

そして俺を含め全員に、この地形を変化させるほどの爆撃の業火の中で耐え抜いている存在がいることも見えている。

「身動きが取れなくなっているからこそ、防御に専念してこの攻撃を耐えているんだ」

レイニーデビル、今は耐える時だとわかっているかのようにジッと触手を傘の中に引っ込め、浮かぶ力もすべて防御に回し爆撃の雨を耐えている。

「爆弾、足りるかしら?」

爆風、そして爆音、さらにこの光景を目の当たりにして、爆弾の威力がとてつもない物だとネルもわかっている。

だが、そんな威力を発揮しているからこそ、それに耐え抜いている存在が異常だとも理解している。

「在庫はまだある。このまま爆撃し続けてダメージを蓄積する」

「でも、最後まで倒し切れなかったら」

「その時は撤退だ。精霊たちにもそのことは伝えてある。レイニーデビルは放っておけば立ち去ってくれるモンスターだ。こいつを倒したいのはこの後の戦いである対アジダハーカ戦を有利に進めるためだけ。命を賭けるほどではない」

温存した方がいいのではと言いたいアミナの言葉に首を横に振り、このまま爆弾の全力投入を続行する。

クラス5の魔石から、風竜のクラス6の魔石、さらに雷竜のクラス7の魔石。

「なぁに、心配するな。本番はここからだ」

いかに爆弾の威力の源となる魔石の数を用意しようとも、上位精霊という存在によってグレネードランチャーのようにとにもかくにも投げ続けられれば三十分ほどで爆弾の在庫は一掃される。

爆撃に一瞬の隙間ができる。

そこには、傷を負いつつも真っ赤な傘を維持し続けるレイニーデビルがいた。

怒り心頭、攻撃してきた相手にはもう欠片も容赦しないと言わんばかりに再浮上を開始するが。

「全員耳は耳栓で塞いだな?その上から手を添えたな?サングラスはかけたな?あとマジックバリアを展開したな?」

その浮き上がるレイニーデビルの上空に、禍々しいと形容するしかない物体が全部で十個出現する。

これから起きるのは、FBO時代でもラスボスにすらダメージを与えられる威力の爆撃だ。

「闇さん、爆弾投下後投下班は精霊回廊を閉鎖」

『すでに指示は出してあるのである。精霊たちは総員退避済みである』

その破壊が発生する前に、パーティー全員には耳に手を当て口を開けるように指示をだしてある。

全員の防御姿勢を確認してから、勢いよく落としていた爆弾とは違い精霊回廊からそっと放り投げるように落とされた爆弾を見る。

爆弾はゆっくりとレイニーデビルに迫る。

バリスタの射撃、格下の魔石とはいえ上位精霊の制作した最高の火力の爆弾、この二つの猛攻によって蓄積したダメージはいかに回復力に優れたレイニーデビルであってもすぐに回復しきれるものではない。

触手を傘の中にしまっているから再展開にも時間がかかる。

この爆弾は傘で防ぐしかない。

「良し」

俺はこの展開を待っていた。

徐々に回復するための魔力、そして爆撃に耐え続けるための魔力。

いかに膨大な魔力を持つレイニーデビルと言えども、このダメージを抑えるために消費した魔力は決して少なくない。

「レイニーデビル、お前は確かに強い。だが、それゆえに行動パターンが決まっていて対応がしやすい」

もうすぐ爆発する爆弾を見つめ、俺はレイニーデビルの欠点を告げる。

触手による状態異常の付与、空中浮遊による安全圏の確保、魔法耐性による遠距離攻撃に対する高い防御力、自然治癒能力も全モンスターの中でも上位に君臨する。

ワールドモンスターという存在は基本的にどれも理不尽だ。

三段階変身といったボスモンスター特有の能力を持つワールドモンスターも存在する。

レイニーデビルにも切り札が存在する。

それは傘を硬化させ、防御力を跳ね上げ、硬化している間に自分の体力を全回復するというリセットボタン的なスキル。

俺たちはその行動をリセットボタンとそのままの名称で呼んでいたが、散々削って、いざとどめというタイミングで傘が残っていて、魔力も残っているとそのスキルを使用されて台パンしたくなるような気持ちになる。

おまけに再生後は強化されるのだから、それが展開されたらまず勝ち目はないとプレイヤー間では絶対注意のスキルとして伝えられている。

しかし、発動させなければそれは脅威ではない。

「くらえ。クラス8の魔石をフル活用した戦略級の爆弾だ」

ダメージ計算、そしてタイミング調整は万全。

魔石一つを加工しただけの爆弾ではなく。

この10個の爆弾には、各々に100個のクラス8の魔石が使用されている。

爆弾の外殻が急展開され、その中から魔力が噴出する。

魔力を感じさせないように爆発直前まで封印状態だったのが、タイマーによって解除され、その威力を最大限に発揮するための魔力を放出する。

その脅威にレイニーデビルは反応しようとしたのだろうが、同じ爆弾だと思ったのが運の尽き。

そしてお前がこれを防ぐには切り札であるリセットボタンのスキルを使うしかないんだけど、それを使うには回復と防御で魔力を消費しすぎだ。

わざわざ俺が何のために、素の防御力だけでは防げず、魔力を消費するスキル防御でわずかなダメージに抑えられるよう調整した攻撃をしていたと思う?

全ては切り札のリセットボタンを使わせないようにお前の魔力を消耗させるためだよ。

そして10個の爆弾が同時に着弾した瞬間に、世界中の音が一つになり、色が消え、そして熱が世界を支配した。

「くぅ!!闇さんたちに依頼したクラス8の魔石で作った防御結界が無かったらヤバかったなぁ!!」

その破壊力には最早笑うしかない。

僅かな爆撃の隙間は、衝撃対策を確認していたというのもあるが、この爆弾を起爆するために手順を踏んでいたからだ。

こんな威力の爆弾がピン一つで管理されているなんて何の冗談だ。

光の柱、いや、この場合は熱の柱か?

普通に爆発させたら古代遺跡なんて跡形もなく消し去ってしまう。

そんな被害はさすがに避けるために、円柱状の結界を爆弾を投げた後にレイニーデビルを中心にして展開した。

最大威力を発揮するのなら、レイニーデビルを爆弾とともに閉じ込めるような形で覆えばいいのだが、そんな威力に耐えられるような結界装置を作ることはできないし、スキルもない。

なので天井を空洞にすることで破壊力を上に逃がし結界を保つようにした。

まぁ、円柱状にしたことで爆発に指向性を持たせているから飛び上がろうとして地面と爆弾にサンドイッチされたレイニーデビルのダメージはヤバいことになっているだろうがな。

俺たちがレベリングをしているのは、クラス8まで。

カンストはダンジョンボスの関係上できていないが、四分の一である100までレベリングはできている。

しかも、クラス8まで上がるとボスでしかレベリングできないし、ボスラッシュダンジョンはクラス7までしかない。

となればどうなるかと言えば、ひたすらクラス7のモンスターが出るダンジョンに挑み、クラス8のボスを狩り続けるという作業が発生する。

一周するだけでもかなりの時間がかかるというというのに、それでもレベルは100まで上げた。

その間に手に入ったクラス7の魔石でクラス8の魔石を加工し、爆弾と結界装置を作ったのだ。

最短経路で攻略できて、かつEXBPを確保できるクラス8のボスがいる最高効率のダンジョンを知らなかったら、爆弾の数はもっと少なかった。

爆発した時間は一瞬、その熱が収まるのに数分。

その間、俺たちはジッと結界の中を見続けるしかない。

「生きてる!?」

「あんな爆発を受けたのに!?」

あんな理不尽な破壊を受けたのだ。

ネルとアミナは倒したかと思ったのだろうが、煙の中からうごめくレイニーデビルが現れて愕然とする。

やったか!?とフラグを立てないだけでも十二分だ。

「ですが傘は壊れていますわ!!」

「リベルタ!どうするのです!?」

そして煙の先に映ったのは半分以上消え去ったレイニーデビルの傘。

そこには露出したレイニーデビルの心臓部、コアが見えていた。

千載一遇のチャンスだとエスメラルダ嬢が叫び、クローディアが前傾姿勢で俺に問いかける。

「闇さん!精霊たちに援護の指示を!」

『うむ!健闘を祈る!背中は任せるのである!!』

その答えは決まっている。

背中に背負っている闇さん特製の槍を確認して。

「皆!行くぞ!!」

「ええ!」

「うん!」

「参りますわ!!」

「そうこなくては!!」

「どこまでもお供します」

精霊回廊から俺は飛び出し、俺の背に皆が続く。

「アミナ!!」

「うん!ゴーレム召喚!!」

空中に身を投げ出す。

今の俺たちなら、普通に着地できる。

アミナに指示を出したのは救助を頼むわけではない。

「さぁ!僕の新しいステージだぁ!!!」

そこに出現するのは、土星のような円環を持った透明なガラス状の球体型のゴーレム。

スフィアゴーレム。

素材によって性能が左右されるゴーレムだが、雷竜を素材にしたそのゴーレムの性能はこの戦闘でも十分に通用する。

そしてその円環は楽器を持った精霊たちが並ぶステージである。

これは音楽特化の、アミナの歌をさらに効果アップするためのゴーレムだ。

アミナはその中に入り込むと、球体の中のステージに立った。

「みんな行くよ!!」

この日のために練習してきた。

アミナと契約した三人の精霊がスフィアゴーレムを制御し、精霊回廊から飛び出してきた魔導楽器を持った精霊たちが円環のステージで伴奏してアミナの歌を盛り上げる。

「僕がセンターだぁ!!」

アミナのセンターライトによって、スフィアゴーレムが輝く。

その輝きはダメージを負い、急所のコアを露出しているレイニーデビルに降り注ぐ。

『アミナちゃんに指一本、いや、触手一本でも触れさせるな!!アミナちゃんファンクラブの意地を見せる時だ!!総員!!フルアタック!!』

『『『『『『『オオオオオオオオオ!!!!!!!』』』』』』』

注目がアミナに集まり、レイニーデビルが爆弾によって減った触手をアミナに伸ばそうとした瞬間に精霊回廊があちらこちらより出現し、再び出現するバリスタに筋肉精霊。

筋肉精霊はその身を盾にするように触手に襲い掛かり、バリスタ部隊は残った矢を使いつくす勢いでレイニーデビルの本体を狙う。

今度はアミナの歌というバフがかかった状態だ。

威力はさっきの比じゃないぞ。

『『『『『『『みなぎってきたぁ!!!!』』』』』』』

アミナの歌という最高の援護を受けた精霊たちが邪魔な触手を防ぎ、浮上を妨害してくれる。

そんな状態で俺たちはレイニーデビルのコアが目前にある場所に着地するのであった。