軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 雨の日後晴れの日 2

バリスタの攻撃がレイニーデビルに有効だと判断した。直後に連続攻撃を指示。

「防御部隊、触手迎撃!攻撃の手は緩めないで!!ここから先は各々のタイミングでバリスタを撃ち続けて!!」

第三波まではこっちが一方的に攻撃できていたが、第二波を打ち込んだ段階でレイニーデビルはこっちを敵と認識しその様相を変えた。

一瞬で表面全体を警戒色である赤色へと変化させた。

それは夕焼けのような優しい色ではなく、血のように黒みを帯びた赤い色。

その色を俺たちプレイヤーはブラッディレインと呼んでいる。

空が血のような色になり、触手までその色になるからだ。

レイニーデビルが捕食ではなく戦闘モードになったことを示す色合い。

戦闘状態に入ったレイニーデビルはタンクのヘイト管理を無視し、ヘイトを与えてくる相手に満遍なく攻撃することができる。

もしこいつに対して完璧なヘイト管理を行うというのであれば、俺ならアミナクラスのアイドルユニットを四人は用意して四方に分散させ敵の注目を引き付ける。そこまでやればレイニーデビルのヘイト管理は可能だ。

流石にそれは今回できない。

だからこそレイニーデビルを包囲するように布陣しての全方向からの一斉射撃だ。

こんな状況でもレイニーデビルの注意は全方位に向いている。

それは上空にも警戒しているということ。

今は少しでも地上だけに注意が向くように攻撃を重ねるだけだ。

「降下部隊はまだ待機!!」

『『『『『承知!!』』』』』

俺たちの二の矢であるマッスル精霊部隊のポージングを見て、少しだけ和んでから真剣な顔に戻る。

触手がバリスタを発射する精霊回廊にめがけて伸びているのが見える。

その数は1本や2本じゃない。

少なくとも5本、多いところには10本の触手が向かっている。

獲物を捕獲するときは、少ない触手で多くの餌を確保しようとする。

所謂コスパを気にした動きというやつだ。

だが、明確に殺意を向ければ、向こうもコスパではなく殺意を相応に返してくる。

精霊回廊に配置している精霊たちは6人で1部隊にしている。

一人が射手、四人が護衛、一人が通信士という配置だ。

いかに強力な耐性を持っていると言っても、触手にまで及んでいるというわけではない。

触手になるとある程度耐性は下がり、魔法攻撃も通る。

ただ、触手をいくら削っても本体のダメージにはつながらない。

眼下では精霊回廊からバリスタ攻撃をし続ける精霊たちと、その精霊回廊に侵入し中にいる精霊たちを捕まえようと触手を伸ばす攻防が繰り広げられている。

それが膠着状態になりつつある。

「闇さん!第四部隊に攻撃開始の指示を!!」

『承知した!』

今回射手で参加してくれた精霊の数は240。

自由落下部隊で参加してくれた精霊は50。

爆撃部隊で参加してくれた精霊は10。

射手を全部で四部隊に分けて、段階的に投入しこっちの攻撃圧を変化させることで、敵のヘイトをより一層バリスタ部隊の方に向けさせる作戦だ。

最後のバリスタ部隊が投入され、その攻撃によってレイニーデビルの動きが一時的に止まった。

その隙にさらにバリスタの矢を体に突き立てる。

ダメージは確実に与えている。

徐々にだけど相手の命を削っているというのはわかる。

けど。

「ダメージは相手のHPの一割未満、予定通りのダメージは与えられているけど・・・・・」

予定通りに進んでいるのは間違いないが、裏を返せば予定通りの余裕しかないということにもなる。

「予備の矢を追加で発注しておいてよかった」

『追加で二千本と言われたときはどうしたものかと思ったがな』

「闇さんならばできると信じてましたので」

『まぁ、そのあとにライブ以外にも面白いアイテムの話を知れたから良しとするがな。会長以外であれば断っていたところだぞ』

念には念をで追加で矢の材料を確保し、それぞれの部隊には矢を多めに渡してある。

これだけしかないと思うよりは、まだ予備があると思って矢を撃ち込んだ方が心に余裕をもって戦いに挑めるというわけだ。

事実、こうやって闇さんが通信の管理をしながらちょっとした冗談を飛ばせる程度にはまだ余裕がある。

「さて、そろそろか」

そしてしばらくジッと見つめ続け、矢の消費具合、そしてヘイトの拡散具合を確認し続けること10分。

レイニーデビルの自然回復具合を計算に加え、そしてダメージリソースとの比率から算出したタイミングがここだと俺は判断した。

「闇さん!予定通り第二フェーズに移行します!!射手は敵の上部を狙わないように細心の注意を!」

『承知した!通達!通達!!これより第二フェーズに移行する!繰り返す!これより第二フェーズに移行する!射手は落下部隊に考慮した射撃体勢に移行せよ!』

『『『『『『ヤー!!』』』』』』

しかし、闇さんの格好も相まってこういう指示がよく似合うな。

次に作る装備の俺たちの衣装は軍服っぽい物にしようかなと、ちょっとだけ雑念を抱いたのでそれを振り払って戦闘管理に集中する。

徐々に下がる射線、そうなってくるとダメージの通る部分が限られてくるので当てるのも大変になるが、散々訓練してきた彼らにとってレイニーデビルの一部分を狙うことなんて朝飯前。

闇さんの指示にも的確に反応して、理想の箇所に集中砲火を浴びせてくれる。

攻撃速度も俺が理想としたものを維持してくれているから、本当にすごいと思う。

とかく本番になると、焦って攻撃速度が想像以上に早くなったり、逆にこれくらいだろうと思って遅くなったりすることもある。

それは仕方ないことで、俺もそれを考慮して矢を多めに渡してあるのだが、心配無用と言われていると錯覚するような見事な連携射撃。

時折響く魔法の爆音が、まるで砲火の演出音を奏でているかのように綺麗な攻撃を演出している。

「さぁ、皆さん出番ですよ!」

『任せろ会長!!ちょうど筋肉のウォームアップが終わったところだ!!』

『見よ!この美しき筋肉を!!』

『クラゲ程度にこの逞しき筋肉が貫けると思うか!!』

『よ!!肩にスイカが乗ってるよ!!』

『ハハハハハハ!!!!!レッツマッスル!!』

その綺麗なバリスタの攻撃の後に飛んで来るのが、このマッスル集団だ。

通信水晶の向こう側を映す映像にはポージングしている精霊たち。

なんで綺麗に揃っているのだとツッコミを入れたくなるが、その熱さが今は頼もしい。

さりげなくチームとして派遣したサポート精霊たちの掛け声で、マッスルメテオ部隊は気合が跳ね上がっている。

「闇さん、降下カウントを全体周知」

『承知した!これより降下部隊が攻撃を開始する!繰り返す!これより降下部隊が攻撃を開始する!10秒前!!』

筋肉精霊たちが安全に降下できる下地は揃った。

最終確認でレイニーデビルを見下ろすと、奴は下から攻撃してくる精霊たちの矢に意識を割いて上空への警戒がおろそかになっている。

奴の上空への警戒心は、レイニーデビルと同じ世界を巡回するワールドモンスターへのものだ。

強さは同格。すなわち相手は捕食する存在ではなく、自分が捕食される可能性を持っているモンスター故に中々その警戒心を解除させることはできない。

奴も自分の弱点が上からの攻撃だということを理解している。

地表への攻撃に特化している姿をしているからこそ、上からの攻撃には最大の防御を振っていると言っても過言ではない。

同格のモンスターの並大抵の攻撃なら防いで見せるという自信、そして一度防げば超近接戦に持ち込み触手で絡めとり状態異常を与えて捕食するという後の先戦闘スタイル。

そんな戦闘を繰り返したからこそ、上空へのヘイトが常時展開されている。

しかし下からの攻撃でそのヘイトもだいぶ減ったはず。

闇さんのカウントダウンがどんどん減っていき、残り一秒となるまで俺はレイニーデビルの動きを凝視し続けた。

『降下!!』

そして闇さんの声が発せられ、賽は投げられた。

『『『『『『イヤッホォーーーーーー!!!!』』』』』』

元気よく飛び降りていく50人のマッスルたち。

背中にパラシュートなんて便利な物なんてない。

しかし彼らには恐れるなんて感情は欠片も存在しない。

むしろ楽しんでスカイダイブした。

親方!!空からマッスルたちが!?

と驚く方向性が別次元になりそうな絵面を見るために、俺は自分の居る精霊回廊よりも高高度からダイブするマッスルたちを見上げる。

レイニーデビルの通常の棲息域は空の中層、高度2000メートルから7000メートル付近だ。

だが、今は捕食行動のために高度を地表付近まで下げている。

であれば、最重量級のマッスルたちが高度3000メートルからダイブし、重力加速度に加えヘビースタンスなどの自身の体重を上げるスキルを使用し、高速で飛来する物体に変化すれば。

俺の眼前に高速で飛来するマッスルが爆誕する。

俺の目の前を通り過ぎたのは降下の合図が出てから僅か20秒後。

普通にスカイダイビングをすれば一分くらいは時間がかかるはずなのに、通常の三倍の速度で落下している。

その降下速度の理由は、普通ならありえないその姿勢。

地面に向かってショルダータックルの姿勢で空気抵抗を限界まで減らし、加速に加速を重ねるマッスルメテオ。

俺の視力でとらえたのは、地属性の精霊たちらしく全身を金属化するという、どこぞのRPGでは身動きできない代わりに無敵状態になるという魔法のようなスキルだ。

それによって防御力と加速度を確保。さらにスキルを重ね掛けして防御力を跳ね上げているという事実。

質量×速さ×防御力×筋肉。

こんな数式が頭の中に思い浮かぶ。

そして着弾する前に俺はその数式の答えを呟く。

「イコール、それは」

だがそれを言い切る前にマッスルたちは警戒網に引っ掛かるものの、迎撃しようとするレイニーデビルよりも早く、その体に鍛え上げた筋肉をぶつけるのであった。

「破壊力」

弾力があり、耐久値のあるレイニーデビルだからこそ貫通はしなかった。

いや、貫通させなかったと言った方が適切か。

目的はダメージよりもレイニーデビルを地面に叩き落とすこと。

なので、マッスル集団はタックルというスキルを発動させているから、マッスルたちの攻撃はダメージよりも吹き飛ばし効果の方が優先される。

だからこそ、爆発音がそこら中に響く。

いや、打撃音が大きくなりすぎて爆発音に聞こえただけだ。

そして遅れるようにその吹き飛ばし効果によって、瞬間的にレイニーデビルという巨体は自身で発生させる浮力では自身を浮かせることができなくなり。

地面に叩きつけられる。

木々を圧し潰し、地形を変え、古代遺跡マダルダに少し被るような形で地面に墜落した。

レイニーデビルが体勢を立て直す前に俺は目を忙しなく動かし、マッスル集団が全員自身の精霊回廊に避難し、最後にこのマッスル降下部隊の隊長になった精霊が歯を白く輝かせサムズアップをするのを確認して。

「爆弾投擲!!バリスタ射手は精霊回廊を閉鎖!!」

『バリスタ射撃中止!!射手は精霊回廊を閉鎖して退避!!そして爆弾投擲開始!!』

『『『『『ヤー!!!』』』』』

第三段階の爆弾投下の指示を出した。

その爆弾の破壊力は遠距離から打ち続ける射手たちをも巻き込む可能性を秘めているので退避の指示も出す。

「遠慮はいりません!!すべての爆弾を叩きつけろ!!」

『聞いたか諸君!!派手に行こうじゃないか!!!』

『『『『『『『ヤー!!!!』』』』』』』

国家予算を数年分つぎ込むような量の爆弾。

闇さんは温存するなという俺の指示に頷き、精霊たちに伝達するとすぐに爆弾は俺たちの目の前を通り過ぎて。

地面に叩きつけられ、復帰しようと浮上を始めるレイニーデビルの傘の上に一つの爆弾が着弾する。

そしてその爆発は一つで収まらない。

レイニーデビルが自信をもって身を守る術だと思っている傘を破壊すべく。

闇の上位精霊が手を抜かず、そして俺たちが素材を提供した爆弾の雨がいま降り注ぐのであった。