軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8 ハッピートリガーコンボ

クラス6のレベリングは、四カ月ほどで終わった。

対レイニーデビル用のバリスタの矢の素材が思った以上に集まらなくて、苦労してしまったよ。

闇さんが、今も必死にバリスタの矢を作ってくれていて、そのお礼にライブの最前列のチケットを渡したら涙を流して喜んでくれた。

「思ったよりも時間がかかりましたわね」

「後半の経験値テーブルが高くなったからですねぇ」

次はクラス7、もっとレベリングがきつくなる。

エスメラルダ嬢もクラス6のレベリングは中々大変だったようだ。

しかし。

「ですが、それに見合うスキルは手に入れましたわ」

「早く試したいって思ってます?」

「もちろんですわ!!」

その強くなっていく過程で、最終的には風竜を前衛無しの一対一で倒せるまでになっているのだから、自分なりに成長した手ごたえを感じているようだ。

ユニークスキルのオリジンコメットはまだ手に入れていないが、現時点では十分な成果だと思う。

「今回は思う存分試せるんで、全力戦闘していいですよ」

「ええ!リベルタから説明を聞いて、楽しみにしていましたのよ!!」

その気持ちはよくわかる。

ゲームをしていて、自分自身が強くなっていると自覚できるとその力を試したくなる。

エスメラルダ嬢の場合、歴史あるエーデルガルド家でもその武勇伝を語り継がれる偉大なご先祖様たちに肩を並べられる伝説の領域に、自分が足を踏み入れているという自覚があるがゆえに、その気持ちがなお一層強いのかもしれない。

「ユニークスキルはまだ手に入っておりませんが、それでも十分に強いと実感できますわ!」

「そこら辺は精霊たちに感謝ですね。本当に、彼らには足を向けて眠れませんよ」

三カ月という月日があれば、精霊たちの人海戦術により俺たちが欲しいスキルを次から次へと獲得してくれる。

ミミックアーマーから出る古代の武具、あるいはゲーム後半の高難度ダンジョンからしか出ないものを除けば、現時点で望みうる最高のスキルのスクロールをしっかりと用意してくれた。

FBOではクランを作ってある程度NPCたちを仲間にすると探索コマンドが解放されて、レベルと装備さえ整っていれば彼らがこうやって自動的にスクロールを手に入れてきたり素材を集めたりするようにはなるが、ここまで一気に成果を上げてくれることなどは土台無理だ。

着々とポーションとかもストックできているから、気兼ねなく消費できる。

感謝の気持ちを込めて、定期的にライブをしたりイベントを実施しているが、それだけでお礼ができているかも謎なくらいにしっかりと働いてくれる。

精霊たちはお金とか利権とかにはまったく興味はないんだけど、なんというか彼らなりに欲求はある筈なんだ。それでも裏を感じないやり取りができて、こちらはかなり気持ち良く付き合えている。

助けてもらっているのだから、こっちも全力でお礼をしたい。

そんな裏表のない気持ちのやり取りができる。

もし、アジダハーカが復活して暴れるようなことになったら、そんな精霊たちの世界も危険にさらされる。

精霊たちと一緒に過ごしてきて、それは絶対に避けないといけないと強く思う気持ちが俺に芽生える程度には、彼らと仲良くなってしまったというのもあるけど。

「さてと、なんとかできたな」

「それが五竜ダンジョンの花冠?」

だからこそ、この検証はいい結果に終わってほしいと願ってしまう。

せっせと手元を動かしながら作ったのは、五色の花を備えた花冠。

黄色、灰色、薄い水色、オレンジ色、そして紫。

「そうそう。雷竜、鋼竜、氷竜、炎岩竜、そして牙毒竜と、クラス7の五竜のボスラッシュダンジョンの花冠だ」

挑むのは前もやっていたボスラッシュダンジョン。

ただ今回挑むのはクラス7。この精霊界で作ることのできるダンジョンでは最上位の、難敵揃いのボスラッシュダンジョンだ。

危険性は前回やったボスラッシュと比べて段違いに高い。

しかし、前に出た課金アイテムの出現を検証するのであれば、このダンジョンが必要になるのだ。

「イングリット」

「はい」

「このダンジョンの攻略の鍵は君だ。事前に打ち合わせした通り、頼むぞ」

「はい、お任せください」

安全性と攻略確率は限界まで上げた。

その鍵となるイングリットにも追加でスキルを覚えてもらい、対策も万全にした。

「それじゃ、始めよう」

皆に確認して、頷くのを見てダンジョンを起動させる。

このダンジョンの戦場は闘技場。

そこはこのボスラッシュダンジョンの不変のルール。

「雲が出始めたよ!」

「アミナは歌い始めてくれ!!ここからはどれくらいの速度で攻略できるかが勝負だ!!」

しかし、ボスが使用するギミックのいくつかは適用される。

まず一番手で出てくる、雷竜。

この雷竜がギミックで使う雷雲が出現する。

風竜のダンジョンでは雷竜はこの雷雲の真下に陣取っていたが、ボスラッシュダンジョンの時はその雷雲の中から出てくる。

しかも、初手から雷を纏ったフルチャージ状態での出現。

「ブレス来ますわ!!」

おまけに、雷雲から顔だけ出しての先手攻撃。

それを知っているからエスメラルダ嬢の警告に真っ先に動く存在がいる。

「ミーちゃん!ピーちゃん!!お願い!!」

『『まっかせてぇ!!』』

スムーズにブレスの射線上に出るゴーレム二体。

その巨体に見合う巨大な大盾を二枚持って正面に立ち、多脚の特性を生かしブレスで吹き飛ばされないように踏ん張る。

「これが終わったら新しいゴーレム作るからな!!だから、頑張ってくれ!!」

『『うん!頑張る!!』』

性能的にもうアングラーは限界だ。

現時点で防御に専念してギリギリ。これ以上のモンスターとの戦闘になると性能面で追いつかない。

闇さんも他の錬金術を修めている精霊たちも総出で忙しいから、ゴーレム制作まで手が回らず後回しにしていた。

しかし雷竜のブレスを受けとめるアングラーの姿を見て限界だと悟る。

ミーちゃんと、ピーちゃんの二人が盾で防ぐブレスが途切れると同時にとんでもない轟音とともに何かが射出される。

「当てましたわ!!」

「ナイスです!!」

エスメラルダ嬢の新しい魔法、アイスカノン。

氷の砲弾を生成し打ち出す魔法だが、威力は高いものの弾速が低いために当てにくいことで有名な魔法だ。

おまけにこの魔法は単体魔法。範囲攻撃ではないからある程度の速度で動いているモンスター相手だとほぼロマン砲と化す魔法だ。

だが、魔力消費を度外視していくつかの魔法スキルと組み合わせればとんでもないスキルと化す。

「続けていきますわよ!!」

その一つがリボルバースペル。

この魔法スキルは一回使うとリキャストタイムが二十分と再使用に時間がかかるが、その代わりにスキルレベルカンスト状態では一つの魔法スキルを連続6回使用できるようになるという凶悪スキル。

対象になる魔法スキルによって魔力消費量が変わるという特異な性質を持つゆえに、大火力のアイスカノンを6発連続で使うとなると魔力のステータスが人の範疇を超え始めている今のエスメラルダ嬢であっても合計で三割弱の魔力を持っていかれる。

しかし大火力魔法を連続で6発撃ち出せるという凶悪性は、その魔力消費に目をつむってでも頼もしいと言える、殲滅志向の魔法使い御用達のスキル。

これによって火力を上げ、そしてダメージソースを増やしても、肝心な魔法自体が当たらなければ意味がない。

そしてこれは命中率を上げるための魔法というよりは、相手に回避させにくくする魔法と言えばいいだろうか。

雷や炎、風そして光闇と言った質量がない魔法スキルには適用されないが、地、水、氷と物体として実体をもつ魔法にだけ適用されるという少し特殊なスキル。

その名はカタパルト。質量を持つ魔法スキルの弾速を格段に引き上げて威力も上げてくれるスキルだ。

演出グラフィック的には、魔法文字で筒状の物が生成されそこを通る魔法スキルが加速されるという仕組みだ。そのイメージはレールガンといったところか。

しかし一度出現すればずっとその場にいるのではなく、加速エネルギーを発現させるためにはその都度魔法スキルを発動しなくてはいけない。

攻撃力は高いが弾速の遅い地属性の射出系のスキルと併用することの多いスキルだが、氷魔法とも相性がいい。

そんなスキルだが、ここで一つ疑問が生じるだろう。

魔法スキルは特殊なスキルがない限り、一つ発動している最中に他のスキルを発動することはできない。

連続で魔法を使うことはできるが、並列、要は同時に魔法スキルを複数発動することができない。

右手でファイアボールを発動しながら、同じタイミングで左手でウォーターボールを発動できないという感じだ。

となれば、さっきのエスメラルダ嬢の魔法はカタパルト発動、リボルバースペル発動、アイスカノン発動という手順になる。

しかし、これではカタパルトは最初の一発にしか発動せず、一発撃った後のアイスカノンには適用されない。

初撃で当てて、その隙に後の弾も当てると考えればそれでもいいかもしれないが。

空中でよろけても、まだ雲の中から落ちてこない雷竜に当てることは難しい。

しかし、そのあとも射出されたエスメラルダ嬢のアイスカノンは連続で高速飛翔し、すべての氷の砲弾を雷竜に直撃させてみせた。

その数、『十二連射』

リボルバースペルの装弾数の二倍の火力を叩きだす。

「撃ち落して見せましたわ!!」

「エスメラルダさんは次の鋼竜までマナチャージで回復を!!場合によっては援護をしてください」

「承知しましたわ!!」

その全ての氷の砲弾はカタパルトの効果が適用された弾速になり、雷竜に躱すことを許さずたった一度の砲撃で致命傷にまで追い詰めるという凶悪コンボを実現した。

レベルが上がり、クラス6のレベリングの後半戦で風竜のダンジョンのボスであった雷竜のHPを九割削ってみせたこの初手の攻撃。

カラクリはダブルスペルというスキルにある。

このスキルはそれ自体等の並行発動スキル以外の魔法スキルを、同時に二つ発動できるスキル。

普通に考えればこのスキルは攻撃力を二倍にするスキルだと思われるが、こいつの本質はそんな生易しい物ではない。

このダブルスペルというスキルと、マジックストックの組合わせがエスメラルダ嬢をチートの領域に足を踏み入れさせている。

先ほどの、高速化したアイスカノン12連射の手順はこうだ。

マジックストックでダブルスペルを3回分ストック。

ダブルスペル自体の魔力消費量はそこまで重くはないのでストックコストも軽い部類に入る。

1回目のダブルスペルのストックを開放し、ここで発動するのは二つのリボルバースペル。

これによってこの後に発動する二つの魔法が連続6発使用できるようになる。

そしてここで発動するのは、ストックしていた残り2回分のダブルスペル。

ダブルスペルを同じダブルスペルで直接重ね掛けすることはできないが、リボルバースペルを経由すればダブルスペルを連続で並行して合計24回使うことができる。

この下地が出来上がれば後は簡単だ。

ダブルスペルの組み合わせで、アイスカノンとカタパルトのセットを12セット作ってやればいい。

そうすれば、2つの砲門から連続して高速で飛翔する氷の砲弾が完成する。

これはマジックストックの関係上無限にできるというわけではないが、それでも魔力の使用限界値でパターンを組み合わせればとんでもない火力が飛び出す。

俺たちFBOプレイヤーはその燃費ガン無視の火力重視のコンボからこう命名した。

『トリガーハッピーコンボ』と。

単体の最大火力はネルの持っているゴールドスマッシュには劣るものの、連続殲滅火力では魔力ステータス極振りのキャラがこのコンボで放つ極大魔法スキルの雨が最恐と言われている。

魔力量さえあれば、どんな場所であっても焼野原にしてしまう。

まだ未完成のエスメラルダ嬢の攻撃であっても、クラス7のボスでしかもボスラッシュダンジョンで強化された雷竜が、登場したてだというのにもうすでに虫の息になっている。

「招福招来!!」

その前でネルがスキルを発動し、その彼女に続く形でクローディアと一緒に突撃した俺たち前衛組が落下してくる雷竜の着地点に滑り込み、着地狩りをすれば最初のボスはあっという間に狩られるのであった。