軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20 天空石のゴーレム

クローディアがスタートダッシュを決めたのを確認したと同時に俺たちも行動を開始する。

「アミナ!!」

「僕がセンターだ!!」

まずは敵の注目をこっちに向ける。

戦況というのはヘイト管理でいくらでも変化する。

敵の攻撃を誘導できるか否かで、戦いやすさは雲泥の差となる。

亀形ゴーレムの舞台の上でアミナのセンターライトを発動させ、ここまではいつも通り敵の注目を惹きつける流れ。

ここからが違う。

「防御陣形!!」

完全に防御力に全振りした陣形を取る。

二体のアングラーゴーレムがタワーシールドを両手に構えて敵の射線からアミナを守る態勢を取る。

それだけじゃない。ネルも自分の体を覆いつくすほどの巨大なカイトシールドを構えている。

「物理はゴーレムとネルが受け持ってくれ!魔法攻撃は俺とエスメラルダさんで受け止める!!」

そして俺は普段は使わないマジックアイテムを片手に持っている。

それはアングラーゴーレムの肩に乗ったエスメラルダ嬢とおそろいのアイテム。

闇さんに頼んで作ってもらったマジックアイテム、守りの杖。

クラス4のマジックシールドが張れる代物で、二人で連携して防御すればクラス6の魔法にも対応することができる。

「防御モード起動!」

『『『いっくよー!!』』』

今回は動き回ることができない。

相手を動き回らせると、その分だけクローディアが攻撃するために移動しないといけない。

となればこっちは防御に専念して相手を釘付けにする方が、クローディアの攻撃の自由度を上げて効率的に相手にダメージを与えられる。

ソロ討伐がクエストのクリア条件と言いつつも、ダメージさえ与えなければパーティーメンバーのサポートは許容してくれる辺り、ルールの抜け道を用意しているのがFBOらしい。

亀ゴーレムの甲羅が変形して、防御モードに移行する。

頭と足が甲羅に収納され、その代わりに甲羅の縁の魔道具から全体を覆う結界が展開される。

「これでどれくらい持ちそう?」

「この結界だけで五分、再展開に十分、その間全員で凌ぎ続けてこっちの魔力と体力が尽きるまでなら二時間は持つはず」

ここから俺たちは一方的に攻撃にさらされ続ける。

勝利の条件はクローディアが天空石のゴーレムを打倒してくれることだけ。

「第一段階で、まずは翼を叩き割れれば勝ち筋はある」

その覚悟を決めて俺たちが防御の陣形を取ると、天空石のゴーレムに動きがあった。

「初手でロケットパンチ・・・・・幸先悪いなぁ」

二本ある左腕の上の腕を大きくのけぞらせ、何もない空間を殴るようなモーション。

そのあとにやってくるのは巨大なクリスタルの腕が本体から切り離されて、錐揉み回転しながら飛んで来るという質量兵器による物理攻撃。

「ミーちゃん!フーちゃん!頼む」

『まかせろー』

『そらすよー』

物理担当の二体のゴーレムが即座に反応し、息の合った動きで、迫りくる巨大な腕を二枚のタワーシールドで受けるのではなく、パリイで弾いて崖の方に逸らした。

勢いはそのままで後方に流れていく剛腕。

多脚型ゴーレムゆえに踏ん張ることができているが、それでも若干後方に下がらされた。

『おもいー』

『ゴーレムが軋むー』

後ろの崖から少し距離を置いて、中央からは離れている位置に陣地を形成したが、まったく動くことができないのはやはり前途多難と言わざるを得ない。

盾は大丈夫だとしても、精霊たちが使うゴーレムの方が衝撃で持たない。

「もう一発来るわよ!!」

『『受け止めるー?』』

「いや!今度はネル頼む!!」

「任せて!!」

連続で受け続ければ、ゴーレムが壊れてしまう。

このパーティーで一番ステータスを体力に振っているネルが、連続モーションで上側の右腕を振り上げロケットパンチを射出しようとしている天空石のゴーレムの動きに合わせカイトシールドを構える。

「せーの!!」

ネルにはゴーレムの腕ほどの質量はない。

そのまま受ければ、タンク用のスキルがないネルだと弾き飛ばされてしまう。

しかしタイミングを合わせて、飛んで来る腕の下に潜り込みそこから後方を跳ね上げるように進路を変えてやれば、逸らすことはできる。

質量差をステータスで誤魔化すような力技であるが、できるのならやるしかない。

初手連続ロケットパンチという最悪の開戦だったが、その隙にクローディアが天空石のゴーレムの背後に回り込み、クリスタルの翼に物理防御を下げるデバフを与える魔法液の入った瓶を投げつけるまでの時間は稼げた。

「近づいてくるぞ!!」

だが、そのデバフが付与されたまま天空石のゴーレムは意にも返さずこっちに迫ってくる。

物理攻撃スタートは、しばらく物理攻撃のラッシュが続く。

出来れば魔法攻撃スタートで遠距離戦に釘付けしたいところだったけど、そうは問屋が卸してくれないようだ。

「精霊二人は右腕を対応!!攻撃無し、すべて受け流してくれ!!」

『わかったー』

『がんばるー!』

「ネルは左腕を対応してくれ!!」

「まかせて!!」

受け流された両腕をドローンのように操って再度元の位置に戻した天空石のゴーレムは、こっちに勢いよく迫り、今度は近距離戦で渾身の右ストレートを放ってくる。

『流すー』

『次も流すー!』

アングラーが機敏に反応してその攻撃からアミナを守るが、繋がる左フックが迫ってきている。

「やらせないわ!」

それをネルがカイトシールドで受け流してくれているが、天空石のゴーレムにこのままここに居座られてラッシュ攻撃で殴られ続けるとこっちとしてもかなりきつい。

ちらりと翼付近を見ると、作業の様に連打攻撃をしているクローディアが見える。

右左、左左、右と綺麗につなげるコンビネーションブローを放っているが、元々翼も腕も本体とは空間で分かたれている存在。

本体の動きで翼が揺れる心配はないようで、着々と小さくともダメージを与える連打攻撃が作業のように進んでいる。

「っ!」

その間に一発、防御モードになった甲羅の結界に天空石のゴーレムの拳が当たりステージが揺れる。

まだ結界は持つが、そう何度も打ち込まれて持つわけじゃない。

時間にして二分かそこら。

天空石のゴーレムの攻撃をしのぎ続けていると、クローディアが思いっきり拳を振り上げるのが見えた。

そしてその振り上げた拳が翼にめり込んだ。

『■■■■!?』

その攻撃で一瞬、俺たちへの攻撃が止まる。

きっと顔があれば驚いて振り返っているのだろうが、生憎と正八面体のこいつには顔がない。

奇妙な音を発しているから驚いているのは伝わってくる。

きっとその音が言葉を表しているのなら、なぜ攻撃が通るという驚愕の言葉だろうか。

そりゃせっせとデバフアイテムを使い続けて限界まで防御力を下げれば素手でもダメージは通るし、いまクローディアはバフアイテムでステータスをガン盛りしてるから通常よりも攻撃力が高い。

作業の仕上げとばかりに左右の拳の高速連打で次々にクリスタルの翼を砕いて行って、あっという間に左側の三枚の翼が落ちた。

クリスタルの破片がキラキラと光りながら散る様は幻想的で綺麗だが、天空石のゴーレムからしたらたまったものじゃない。

これで飛行能力が失われ、ぐらりと天空石のゴーレムは傾き、まだ浮遊出来ている右側とバランスを取ろうと下側の左腕で地面に手を突いてバランスを取った。

ヘイトが一時的にクローディアの方に向いた。

「だめだよ!僕を見て!!」

それを見てすかさず、センターライトを発動させてアミナが惹きつける。

攻撃対象はこっちだとタンクの本領を発揮されれば、天空石のゴーレムからしたらそっちを攻撃せざるを得ない。

クリスタルの本体から光の魔法陣が展開される。

「エスメラルダさん!」

「ええ、合わせますわ!!」

こんな至近距離で防御することになるとは思わなかったが、俺とエスメラルダ嬢が同時に杖を振るい魔力を送り込むことによって二重に重なるマジックシールドが展開される。

そして展開された直後に、光の魔法陣から極太のレーザー光線が放たれ受け止めたマジックシールドの一枚目があっさりと砕かれる。

そして二枚目で受け止めている間に、俺はもう一度マジックシールドを展開。

二枚目が砕かれると三枚目のマジックーシールドで受け止めて、その間にエスメラルダ嬢の四枚目が展開。

「リベルタの予想通り、八枚で受け止め切れましたわね!」

「魔力消費も許容範囲ですね」

魔法攻撃はこの重ねマジックシールドで防ぐ。

こちらの魔力が尽きる前にクローディアに倒して欲しいとは思うが、天空石のゴーレムのHPの多さはここにいる誰よりも俺が知っている。

「イングリット!!」

「はい、さっそく投げさせていただきます」

だが、物理攻撃パターンから魔法攻撃パターンへ変化した。

その機を逃さず待機していたイングリットに指示を出すと、彼女は持っていた球体を地面に突いてバランスを取ろうとしている敵の左手に向けて投げつけた。

それは腕に接触する手前でさく裂し、その中から黄色い液体をその手に振りかける。

「特製の瞬間接着剤だ。地面と引っ付いてもう離れないぞ」

このゴーレムを倒す方法は多々あるが、結局のところ動きを封じるのが一番効果的なんだよね。

ダメージを与えてはいけないという条件をクリアしているし、使い勝手もいい。

これで使える腕は三本、そして。

「まだございます」

イングリットの手にはまだ接着剤が大量にある。

次から次へと投げつけ、接着剤でべとべとにして、どんどん地面に突いた左手をその場に固着させていく。

それを助けようと他の腕がその腕を掴めば、今度は腕同士がくっついて使い物にならなくなる。

右腕が左腕を助けようと握ったが最後。

くっついて離れなくなった左右の腕。

四本あった腕のうち半分が使えなくなった。

本来であれば、フルアーマーダマスカスゴーレムもこの手段で完封する予定だったんだが、まぁいいか。

アミナの歌による惹きつけ、イングリットが当てた接着剤。

この二つでクローディアへのヘイトはだいぶ減らすことができた。

となれば。

この機を逃すわけもなく、ドゴンと大きな打撃音が一発響いたかと思うと一気にそれが連打音に変わる。

それも可愛らしい音ではなく、破砕音と言えるほどの強烈な連打の音。

青みのある色合いのクリスタルの向こうに見えるわずかなクローディアの影が、全身で躍動するように連打攻撃して天空石のゴーレムを砕こうとしているのがわかる。

物理防御デバフをかけつつの全力攻撃。

「まぁ、こうなったら腕をパージするしかないよなぁ」

このままいけば一方的に攻撃されて消滅してしまうという危機感から、接着剤でくっついてしまった腕をパージして一旦距離を取る選択を取るのもわかる。

このゴーレムは空から予備パーツを呼び出し回復することができる。

そのモーションの前兆。

それをされたらダメージを与えた意味がない。

だけど、そのために準備はしっかりとしているんだよねぇ。

上を見ると、空から降ってくる物体が見える。

輪郭からしたら間違いなく、このゴーレムの腕だ。

接続したら回復してしまう。

そう、接続したら。

「イングリット!接続する前に消し去れ!!」

「かしこまりました」

しかし、接続する前ならそれはモンスターの体の一部とは認定されず、なおかつあの状態の腕はステータスを持たない物体でしかない。

ダマスカスゴーレムダンジョンで何度か使ったため、パーフェクトクリーンの熟練度も上がって効果範囲が大きくなっている。

そして空から来るがゆえに誤射の心配もない。

箒を構えてイングリットは跳び出し、接着剤のかかっていない場所を器用に踏み天空石のゴーレムの体に飛び乗って、そのまま上を見てタイミングを合わせ跳躍した。

「パーフェクトクリーン」

そして白く輝く箒を振るい、空からの飛来物を消し去って見せた。

「よし!これで次に来るのは一時間後!!その間に削り切るぞ!!」

この予備パーツを呼び出すモーションのリキャストタイムは一時間。呼び出しが失敗すればHPが回復することもない。

腕が二本欠け、さらに翼も折った。

これで行動パターンは絞れた。

あとは天空石のゴーレムの反撃を抑え込んで、油断して事故らないように気をつけて、こっちに敵の注意を惹きつけつつクローディアが殴り続ければ勝てる!!

ただ、こうなった状態でもHPが多すぎるのと素手の攻撃ではダメージ量が少ないから削り切るのに時間がかかるけどな!!