軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10 ユニークスキル 2

ユニークスキルって言うのは、ゲームにおいて一種のバランスブレイカーだ。

しかしFBOの場合、ユニークスキルによってヌルゲーになるというよりはこれを獲得してようやく運営側の悪意と対等になれるかといった感じの、傾いた天秤を水平に戻すという意味でバランスブレイカーだ。

「ええと、ネル、イングリットさん、クローディアさんの順番でスキルを身に着けて、次は?」

そのどれもが強力なスキルであるが、使い勝手はそこまで良いわけではない。

あくまで切り札。

そういうポジションのスキルだからこそのユニークスキルと言っていい。

「俺かエスメラルダさんかな」

「え、僕が最後?」

「アミナのラストソングはアミナがもう少し育ってからじゃないと、得られる効果のメリットとデメリットの損得勘定が合わないからなぁ。申し訳ないが、優先度合いはこの中では一番低い」

「もっとパッシブスキルを増やしたらどうなるんですか?」

「増やすというよりも天声術が手に入っていたらネルの次だな。イングリットよりも先に取りに行ってた」

今回は二か月以内に全員のユニークスキルを習得するにあたって、効率的にそして安全に獲得することを重視している。

取りやすさだけに焦点を合わせるのならまた別の順番になるけど、蘇生魔法が現状見つかっていないことを考えるとこの順番になる。

アミナは自分のユニークスキルは強いと聞いていたから、最後になるとは思っていなかったらしく驚いている。

「では、私とリベルタのどちらを先に取りに行くんですの?」

「俺のユニークスキルは単体火力を底上げするのに必要なやつで、エスメラルダさんのユニークスキルは範囲攻撃魔法。優先度で言えばどっちでもいいと言った感じですけど」

「では、リベルタのスキルを先に取りましょう。どのようなスキルなんですの?」

アミナのスキルも強力ではあるのだが、現状のパーティー戦での恩恵を考えると優先度が下がるということで申し訳ないが後回しだ。

「俺のユニークスキルは虚無の一撃というスキルです」

俺のスキルはそれ自体に攻撃力はないが、とある一定条件を満たすと通常攻撃からスキル攻撃、はたまたアイテムを使用した攻撃まで幅広く火力を上げてくれるというスキル。

「このスキルは俺へのヘイトがゼロの時、要は俺に誰も敵意を向けておらず注意も向けていない時のみに発動できるスキルで、このスキルを使用した後に行った攻撃をすべて防御無視のクリティカルダメージに変換し、さらにスキルレベルに応じてダメージ量を上げてくれるスキルです」

リキャストタイムは僅か二十分と短く、消費魔力もそこまで高いわけではない。

「相手に気づかれないように動き回る必要があるスキルですか」

「はい。スキルを使用し攻撃がヒットするまでの間にヘイトを向けられるだけで効力の切れるスキルなんで、使い方が難しいですけどその分ダメージ増加率はかなり高いですよ」

「正しく、暗殺者のスキルですわね」

そのスキルを得ることができれば、間違いなく俺の攻撃力は格段に上がる。

もともとうちのパーティーはアミナが注目を集めて、バフを振りまきながらゴーレムでモンスターを足止めするという戦法を主軸にしている。

それに加えて前衛に高火力のネルと格闘戦を繰り広げるクローディアがいて、後衛には遠距離範囲攻撃のエスメラルダ嬢がいる。遊撃の俺へヘイトが向くことがほとんどない。

それに今後は暗殺者のジョブで手に入れられるヘイトを下げる系統のスキルも順次とっていく予定だから、このユニークスキルの効果はドンドン高くなる。

「それで、五番目に私のオリジンコメット、六番目にアミナさんのラストソングを取る。順番はひとまずこれでいいとして取得条件はどうなっていますの?」

「それも順番に説明しますね」

これでひとまずユニークスキルの獲得順番は決まった。

次にユニークスキルの獲得条件と言うことになるが。

「まず最初に取りに行くネルの招福招来の獲得条件は全部で三つだ」

「たった三つ?」

「もっと多いと思ったか?」

「ええ。ユニークスキルって言うから大変だと思ってたわ」

「そもそも、万能の二つ名がないと取れないスキルだからな?それにたった三つとはいえ難しくないとは口が裂けても言えないぞ」

ほとんどのユニークスキルは、第一の難関である二つ名の獲得がスキル獲得条件が発生するカギになっている。

二つ名がない状態でこの条件を満たしてもユニークスキルは発現しない。

「一つ、一か月以内にダンジョンで金の宝箱を合計で二十個、虹の宝箱を合計三つ出現させる」

「……最初から運が絡んでくるのね」

「ドロップ確率を操作するスキルだから、それに準じてって感じだな。これのカウントは最初の金の宝箱が出た段階で時計がスタートしてそこからって感じだ」

「最近は金の宝箱が出てないからそこは大丈夫ね」

「そういうこと。精霊界にいるからそこら辺のカウンターはリセットされているはず」

「そうね。二つ目は?」

招福招来を取るにはとにかく運が絡む条件を満たしていかないといけない。

ネルであればそこら辺も楽に攻略してくれそうな気もするが、さすがのネルでも簡単にはいかないと俺は踏んでいる。

「二つ目、シーフキャットのダンジョンで現れる金色のスカーフを巻いたシーフキャットからドロップする黄金の招き猫を手に入れる」

そして二つ目と中指を立て二つ目の条件を提示した瞬間にネルの顔が歪んだ。

それは嫌なことを聞いたと言わんばかりに歪んだ表情。

シーフキャットはその名の通り、物を盗むスキルを持ったモンスターだ。

直訳すれば泥棒猫ともとれるネーミング。

商人ゆえにそのモンスターの見た目の愛らしさを台無しにするほどの被害の実際をネルは知っているのだろう。

「あれと、戦うのね」

「知ってるって顔だけど、昔何か嫌なことがあったか?」

「お父さんの仕入れている商人が被害にあったことがあったのよ。そのときに盗まれた商品が私の誕生日プレゼントで、プレゼント無しの誕生日があったの」

「「「あー」」」

運がいいと思っていたネルにも運が悪い出来事はあったか。

ある意味で因縁の戦いというわけか。

「対策しておけば問題ないから、あまり気負うなよ?」

「わかってるわ。全部倒せばそれでいいのよ」

「その通りだが・・・・・まぁ、いいか。三つ目の条件を言うぞ」

「ええ」

そこら辺に関してはあまり触れない方がいいと思って、ダンジョンに挑むときはサポートしようと思いつつ三つ目と薬指を立てる。

宝箱を出現させる、黄金の招き猫をドロップさせるときて、ある意味では一番運要素が問われるのはこの三つ目だと言っても過言ではない。

「一つ目の条件を達成し、シーフキャットのダンジョンで黄金の招き猫を使ってのみ現れる隠しダンジョン、黄金猫御殿に現れる試しの間の試練を達成することだ」

「試しの間?何が起きるの?」

「全部で百通りの中から一つの試練が課せられるんだけど、完全にランダムだ。簡単なのだとその試練の間にいる大人しい猫の毛をブラッシングするだけでいい」

「え?それだけ?」

「あくまで一番簡単な奴でな。本当に難しいと理不尽過ぎる試練を与えられるからな。不幸中の幸いはどれも命の危険は全くない試練ばかりだということだけ。他は全て運要素が絡んでくる。俺の知っている限りでこれがきたら諦めろというのは、やたらじゃんけんが強い猫に百連勝することだな」

運と実力が試される黄金猫御殿の試しの間。

試練が簡単であればあっさりとクリアできる。

「試しの間の試練を達成するとその先に宝箱があって、その中にスクロールが入っててそれを使えば招福招来が手に入るって言う寸法だ」

「スクロールと言うことは、どなたでも獲得することができますの?」

「しっかりと万能の二つ名を持っている商人ならできますけど、他のジョブの人の場合は消滅して終わりです」

「……いやなところで罠を張ってきますわね」

「ユニークスキルですから」

そこに運が絡み、運が多少悪くても実力があればクリアはできるというシステムの最後の罠に、エスメラルダ嬢がしかめっ面をしているが、これはほかのユニークスキルでも言えることだ。

もし他のジョブのユニークスキルが取れるとなったら、流用できるユニークスキルでスキルビルドを構成した方が断然強くなる。

そんなチートはさすがに許してくれなかったわけだ。

「どんな失敗をしてもこの猫御殿は、宝箱の条件を達成した状態だったら黄金の招き猫を使えば何度も挑戦できる。だからどれだけ早く宝箱の条件を達成してシーフキャットから黄金の招き猫を大量にゲットできるかがユニークスキル習得のカギになる」

「すべての条件に運が混ざっているのね」

「だからこそ、これを達成できれば招福招来、幸福が招かれるってわけだ」

「なるほど」

ちなみに、このユニークスキル。

取れるときは意外とあっさり取れたりする。

同じプレイヤーでも確率が収束して、文字通りとんとん拍子で取れたりするときがある。

だけど、その反面沼るととことんまでできない。

ネルの場合はあっさりとクリアできそうなイメージがありつつ、もしかしたらこういう土壇場でできないのではと不安になっている部分もある。

「習得の流れ的には、シーフキャットのダンジョンを周回して金の宝箱と虹の宝箱を狙いつつ、黄金の招き猫のドロップを狙って黄金猫御殿を目指すって言う形だな」

「やり方はわかったけど・・・・・」

「けど?どこか気になることがあるのかアミナ?」

「ネルのユニークスキルの取り方だけですっごく大変なのはわかったよ」

「うん」

だけど、なんだかんだ言ってネルだから一番最速で手に入るのではとも思っている。

そんな楽観的な俺とは裏腹にアミナが不安気な顔で俺を見てきた。

よくよく見れば、全員似たり寄ったりの顔をしている。

イングリットだけはいつもの無表情だが、それでもなんとなく雰囲気が暗いのがわかる。

「もしかして、僕たちのスキルもこんな感じなの?」

「うーん、運要素はともかくとして手間がかかるのは似たり寄ったりかなぁ」

取れれば強力なユニークスキルだが、取るのは大変。

人によっては取らずにゲームを攻略する人もいるくらいだ。

「イングリットはRTA系で、クローディアさんは縛り系。俺はスニーク系で、エスメラルダさんは謎解き系」

指折りで数えながら概要だけどどういうクエストが待っているかを伝える。

「そしてアミナは合戦系だな」

全員が頭の上に疑問符を浮かべるような内容であるが、それは仕方ない。

だってこういう言い方でしか表現できないんだから。

「RTA・・・・・リベルタ様に教えていただいた内容から推察しますと、素早く何かを成さないといけないわけですか」

「イングリットは特殊なダンジョンで、通常モンスターをすべて倒してからボスを取り巻き含めて全滅させての攻略を連続五種類だな」

「……」

詳細を省きイングリットに説明すると沈黙してしまう。

「縛り系とは?」

「武器禁止の素手で、ゴーレム系の特殊なダンジョンのボスをソロで攻略してもらいます。そのダンジョンを出現させるために岩、鉄、ミスリル、ダマスカスの四種類のゴーレムを順番に倒します。そうすると最後のミスリルゴーレムのダンジョンから連戦で天空石のゴーレムのボス部屋に繋がるのでそれを素手で倒してください」

「……この拳で打ち砕けと?」

「あ、アミナのバフはOKですけど俺たちが攻撃したら一からやり直しなのであしからず」

次のクローディアは討伐系だが、物理ダメージに強いモンスターを相手取るということでかなりきつい。

「謎解き系とはなんですの?」

「古代の遺跡系のダンジョンで、古のダンジョンシリーズって言うのがあります。その中に幻想の賢者って言うモンスターが出るダンジョンがあって」

「幻想の賢者ですか?」

「ええ。そこでテストを受けてもらいます」

「テストですの?」

「はい。なのでエスメラルダさんは今夜から俺と勉強ですね」

「それは、問題ありませんわ。これでも学園では成績優秀で通っておりますの!それくらいなら」

「古代文字なので、言語を一から覚えないといけませんけどね」

「……!!」

そしてエスメラルダ嬢の試練は本当に知識問題で勝負しないといけない。

幻想の賢者のダンジョンは泡沫のダンジョンで再現できるからいいけど、今日から初挑戦の古代言語でテスト勉強をしないといけないと考えるとエスメラルダ嬢には同情する。

「そしてアミナ」

「!?な、なに?」

「お前は一番大変だけど、頑張ろうな!」

「どういう内容なの!?」

そして俺も俺で大変だけど、アミナよりはマシだなと思いつつ、アミナの肩を叩き励ますのであった。